リウマチャー的話題
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【2023.9.22】ピロリ菌感染で関節リウマチのリスク上昇(この研究では)
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの炎症性の疾患や胃癌などの発症と密接に関連しています。 日本では除菌が推奨されています。
このピロリ菌は、関節リウマチを含む自己免疫疾患に関連すると考えられてきましたが、その関連を検討した研究の結果は一貫していないようです。
台中栄民総医院のTzu-Hsuan Lee氏らは、台湾の国民健康保険研究データベースを使ってピロリ菌の2000〜2017年の感染者97,533人の後ろ向きコホート研究を実施しました。 その結果、感染者では非感染者と比べて関節リウマチの発症リスクが有意に高く、30歳未満の女性で最もリスクが高かったと発表しました。
30歳以下で2.19倍、45〜64歳で1.5倍、30〜44歳で1.4倍、65歳以上で1.25倍の順にリスクは高くなった。 さらに、感染診断後1年以内のリスクが最も高くて1.58倍、その後1〜5年以内のリスクは1.43倍、5年以降のリスクは1.44倍だったとのことです。
ただし、ピロリ菌感染と関節リウマチとの関係についての研究は他にも発表されていて、逆の結果(感染がリウマチに好影響)を示した研究もあります。 その関連性のメカニズムを解明するには、さらに研究を重ねる必要があります。
この研究成果は9月13日に、Nature Portfolio の発行するオンライン学術雑誌 Scientific Reports に掲載されました。
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(この間のニュースの記載が遅れています、ごめんなさい)
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【2022.12.1】ナノゾラ皮下注30mg(一般名:オゾラリズマブ)が発売
抗リウマチ薬のナノゾラ皮下注30mg(一般名:オゾラリズマブ)が、大正製薬株式会社より12月1日に発売されました。
ナノゾラ皮下注は、2つの抗TNFαナノボディ(TNFαに結合する部分)と抗血清アルブミンナノボディ(血中半減期を延長する部分)が融合した三量体構造のヒト化低分子抗体です。
4週間に月1回、上腕部、腹部または大腿部の皮下に注射します。
ナノボディとは抗体の構造のうち、抗原を認識する最小のタンパク質断片で、従来の抗体より小さく、従来の抗体がたどり着けない患部に届 く可能性や、生産しやすいことで注目されています。
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【2022.11.16】「メトジェクト皮下注」(一般名:メトトレキサート)が発売
抗リウマチ薬のメトトレキサートの皮下注射製剤メトジェクトが、エーザイ株式会社より11月16日に発売されました。
メトジェクト皮下注は関節リウマチを対象とした国内初のメトトレキサートの注射製剤で、海外では約50カ国にてすでに承認されています。
剤形は7.5mg シリンジ0.15mL、10mg シリンジ0.20mL、12.5mg シリンジ0.25mL、15mg シリンジ0.30mL。 週1回の皮下注射で、自己投与も可能です。
注射なので吐き気や消化器症状が少ないという利点があるそうです。 また、従来の内服のメトトレキサートは2回に分けて服用している方が多いと思いますが、注射だと1回で済みます。
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【2022.1.24】22人に1人が自己免疫疾患に罹患
関節リウマチの新情報とかではないのですが、興味深い記事がありましたので、取り上げてみます。
自己免疫疾患のは自分自身の免疫が自分の身体を攻撃してしまう病気です。 関節リウマチは自己免疫疾のうち全身に炎症が起こる膠原病の一種で、攻撃の対象になるのは主に関節ですが、血管、心臓、肺、皮膚、筋肉などの全身が攻撃されることもあり、全身性自己免疫疾患に分類されます。
特定の臓器だけが攻撃を受ける病気は臓器特異性自己免疫疾患に分類されます。
たくさんの自己免疫疾患かあり、世界人口の4.5%、つまり22人に1人がかかっているのだそうです。
オーストラリア国立大学のジョン・カーティン医学研究院で個別化免疫学センターによる2012年の報告では、自己免疫疾患に該当する病気は約80種類に上るとのことです。 アメリカの通俗科学の雑誌Scientific American(米サイエンティフィック・アメリカン)がこの論文をもとに、免疫の専門家やAmerican Autoimmune Related Diseases Association(米国自己免疫疾患協会)の情報に基づいて、個々の自己免疫疾患について、発症頻度や発症年齢などを整理し、リストにまとめました。
日経サイエンスの日本語記事では患者が1万人に1人以上いる比較的多い病気について、元のScientific Americanの記事では1万人に1人以下の病気についても見られます。
このリストからは自己免疫疾患の特徴が見えてきます。 やはり女性患者がとても多いです。 他に発生頻度、発症しやすい年齢が記載されています。 やはり、関節リウマチの人数はとても多いですが、この中の他の病気を複数併発されてる人も少なくないですよね。 そして、まだ原因や完治の方法がわからないものが多く、世界中でとてもたくさんの人々が病気と闘っています。 この機会に関節リウマチ以外の自己免疫疾患について思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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【2021.10.26】関節炎が同じ場所で繰り返し起きやすいのは組織常在型メモリーT細胞のせい
みなさんも関節リウマチの主症状の関節炎が、何度も同じ箇所の関節で繰り返し起こるということは経験されていると思います。 長い期間症状が治まっていても、次にまた同じ関節が再度炎症を起こすことは多いですよね。 なぜ同じ場所で再発しやすいのかに関する新たな研究を、Boston Children's Hospital(ボストン小児病院)とBrigham and Women's Hospital(ブリガム・アンド・ウイメンズ病院)の共同研究チームが発表しました。
ボストン小児病院の免疫科長であるピーター・ニグロヴィッチ氏は、炎症を起こした記憶が関節の内側にある滑膜に存在する組織常在型メモリーT細胞(TRM)に保存されているのではないかと考えました。 ニグロヴィッチ氏によれば、組織常在型メモリーT細胞は関節炎が治まった後も関節に存在し続けて、炎症再発のきっかけになるとのことです。
ニグロヴィッチ氏の研究チームは、炎症性関節炎のモデルマウスで、関節の滑膜に常駐する組織常在型メモリーT細胞が他の免疫細胞を集め、それ以降は特定の関節に限定して関節炎が引き起こされることが確認しました。 そして、この組織常在型メモリーT細胞を除去することで、関節炎の再発が抑制されることがわかりました。
研究チームは、他のタイプの自己免疫性関節炎も同じように作用する可能性があると考えており、もし同じプロセスがヒトでも起こることが確認できればそれを標的とする治療法の発見につながると考えているとのことです。 ただし、関節炎の記憶保持には他のメカニズムも関与している可能性やT細胞が主原因ではない症例もある可能性があるので、今後の研究によって分析できるようしたいとのことです。
この研究成果は10月26日に、Cell Pressの発行する査読付き学術雑誌 Cell Reports のオンライン版に掲載されました。
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【2021.9.13】ヒュミラサポート便の開始
アッヴィとエーザイとEAファーマ株式会社が、2021年9月13日よりヒュミラを処方されいる患者向けに「ヒュミラサポート便」を開始したそうです。
患者の希望により、サポートツールを直接自宅など指定の場所に届ける無料のサービスで、Webサイトや所定の用紙により申し込めます。
サポートツールとは、使用済みシリンジ用廃棄ボックスやペン用廃棄袋のほか、各疾患別の体調管理ノート、患者向け冊子などで、従来は医療機関を受診した際に、これらを受け取っていましたが、必要なサポートツールが医療機関にない場合は、入手まで時間がかかり、必要な時に提供されない可能性がありました。 また、使用済みシリンジ用廃棄ボックスのような大型のサポートツールについては、自宅まで持ち帰る際に負担となっていました。
このサービスにより、サポートツールを入手するまでの時間を短縮するとともに、持ち帰りの負担を軽減することを目指すとのことです。
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【2021.8.18】小児期の受動喫煙で成人後の関節リウマチ発症のリスクが高くなる可能性
アメリカのBrigham and Women's Hospital(ブリガム・アンド・ウイメンズ病院)の吉田和樹氏が、受動喫煙は子どもの肺に悪影響を及ぼすことに加え、両親に喫煙習慣があった子どもは、後年に関節リウマチを発症しやすいことを、新たな研究で明らかしました。
吉田氏らは、1989年から2017年の間に35〜52歳の米国人女性9万923人から2年に1度の頻度で集められたNurses' Health Study II(看護師健康調査II)への回答データと、この参加者の診療記録から得た関節リウマチの発症と血液中の関節リウマチに関わる抗体の有無についての情報を、統計的モデルを用いて解析し、受動喫煙が発症に与える直接的な影響の大きさを推定しました。
中央値で27.7年間に及ぶ追跡期間中に、532人がRAを発症しました。 解析の結果、小児期に親からの受動喫煙に曝露していた女性では発症リスクが75%高く、対象者自身が能動喫煙者である場合にはさらにリスクは上昇していました。 これに対して、母親の妊娠中の喫煙および18歳以降に喫煙者と同居した期間と発症との間に有意な関連は認められませんでした。
吉田氏は「小児期の親の喫煙と成人期の関節リウマチ発症との間に認められたこの関係は、リウマチ学の範囲にとどまらない可能性がある。今後の研究では、小児期の吸入物の曝露により、後に、自己免疫疾患全般の発症リスクが増加する可能性について検討する必要がある」と述べるとともに、今回の研究対象者に男性が含まれていなかった点をこの研究の限界として挙げ、「今後は、男女を対象に研究を継続する予定だ」とも述べています。
なお、6月にもフランスの女性約1万人を対象にした調査の結果で、受動喫煙が関節リウマチの発症リスクを上昇させることが示され、小児期の受動喫煙により発症時期が早まる可能性があるとの指摘が出ていました。
この研究の詳細は8月18日に、米国リウマチ学会の公式ジャーナルのArthritis & Rheumatologyに掲載されました。
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Smoking Exposure During Childhood May Increase Risk of Rheumatoid Arthritis(2021/8/18) by Brigham and Women's Hospital
Passive Smoking Throughout the Life Course and the Risk of Incident Rheumatoid Arthritis in Adulthood Among Women(2021/8/18) by Arthritis & Rheumatology
Kids Who Grew Up With Smokers Have Higher Odds for Rheumatoid Arthritis(2021/8/19) by HealthDay
喫煙者の親を持つ子どもは、成人して関節リウマチを発症するリスクが高い(2021/9/5) by ダイヤモンド・オンライン
【2021.6.28】超音波検査による関節リウマチの診断に新展開、リウマチ性多発筋痛症との違いを解明
山梨大学の医学部附属病院のリウマチ膠原病内科の 中込大樹 病院准教授と小林惠 医師らの研究グループが、関節超音波検査を用いて関節リウマチとその類縁疾患であるリウマチ性多発筋痛症との違いを解明することに成功したそうです。
関節リウマチもリウマチ性多発筋痛症も関節炎が起こって関節が痛みます。 これまで関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症の違いははっきりと分かっていませんでした。 特に高齢発症の関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症は非常に症は非常に症状が類似しているため、両者の鑑別鑑別は困難です。
関節超音波検査検査では関節内外の炎症を詳細に把握することができるため、関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症の違いを見いだすことができるのではないかと考え、関節症状があり、確定診断がついていない人を対象に関節超音波検査を実施した結果 、関節リウマチは関節の中の炎症である関節滑膜炎が主な病態であり、リウマチ性多発筋痛症は関節の外の炎症である腱鞘滑膜炎、腱炎、滑液包炎が主であることがわかったとのことです。 これまで、関節リウマチは手足を含めた全身の関節に炎症を 起こす疾患、リウマチ性多発筋痛症は主に肩と股関節に炎症を起こす疾患とされ、関節炎の部位でおおまかに区別されてきましたが、今回の研究により関節超音波検査が両疾患の病態解明と鑑別に役立つと証明されました。 また、リウマチ性多発筋痛症における関節炎は肩と股関節に起こると考えられてきましたが、膝関節にも炎症が起こることが同時に示されました。
この研究成果は6月23日に、英国リウマチ学会(BSR)の発行する雑誌 Rheumatology のオンライン版に掲載されました。
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【2021.6.16】受動喫煙で関節リウマチの発症リスクが上昇
近年、喫煙は関節リウマチ危険因子として確立しましたが、受動喫煙の影響はまだ明らかではありませんでした。 6月2日〜5日にweb開催された欧州リウマチ学会(EULAR2021)で、フランスのパリ=サクレー大学(Universite Paris-Saclay)のYann Nguyen氏らは、フランスの女性約1万人を対象に小児期/成人期の受動喫煙への曝露と発症リスクの関係について前向きコホート研究である E3N-EPIC で検討した結果、「受動喫煙により関節リウマチのリスクが上昇することが示された」と報告しました。 E3N-EPICは1990年から、主に教師を対象とする国民健康保険の加入者で健康なフランス人女性9万8,995人を追跡し、同国における慢性疾患と関連する環境因子を検討する前向きコホート研究です。
発症リスクは能動・受動喫煙ともに未経験者に対して、喫煙未経験かつ受動喫煙経験者では33%、喫煙経験者かつ受動喫煙未経験者では32%、能動・受動喫煙ともに経験がある者では50%、いずれも有意に上昇したとのことです。
発症年齢と能動喫煙および小児期の受動喫煙の関係を見ると、能動喫煙者かつ小児期の受動喫煙経験者で有意に低かった(平均60.6歳)、能動喫煙と受動喫煙(小児期/成人期)との関係を見ると、能動・受動喫煙ともに未経験者で有意に高かった(平均66.5歳)そうです。
以上の結果を踏まえ、Nguyen氏は「小児期/成人期の受動喫煙への曝露は、関節リウマチの発症リスクを上昇させることが示された。 小児期の受動喫煙により発症時期が早まる可能性がある。 受動喫煙は関節リウマチの初期症状が認められる何年も前から、関節リウマチの遺伝要因保有者のタンパクのシトルリン化を促進する可能性がある。 したがって特に関節リウマチのリスクがある人では、予防するために受動喫煙を可能な限り回避すべきだ」と結論しました。
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【2021.5.6】過剰な免疫反応を抑制する制御性T細胞(Treg)の発生過程を明らかに―免疫寛容に不可欠な非コードDNA領域を発見
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの実験免疫学教室のの川上竜司招へい教員、北川瑶子研究員(当時)、坂口志文特任教授らと京都大学ウイルス・再生医科学研究所とアメリカのスタンフォード大学との共同研究のグループが、制御性T細胞が発生する際に利用されるDNA領域を調べ、制御性T細胞の分化と免疫恒常性の維持に不可欠なDNA領域を発見したそうです。
他のT細胞の働きを抑えて免疫応答のブレーキ役となる制御性T細胞(Treg)は、様々な免疫応答を抑制することにより自己免疫疾患の発症や過剰な免疫応答を防ぐ役割を担っています。 これまでに、Tregが抗原刺激を受けたCD4陽性T細胞の一部から分化すること(2013年1月21日の記事を参照)、核内タンパク質のひとつである転写因子Foxp3が免疫抑制能に重要であること(2007年3月22日の記事を参照)がわかっていました。 しかし、細胞の核の中でどのような現象が起こってTregが生まれてくるかは明らかではありませんでした。
研究グループがマウス胸腺細胞で、T細胞に分化する途中の未熟な細胞からTregに分化するまでに活性化するDNA領域を、次世代DNAシークエンス技術を用いて調べたところ、Foxp3遺伝子領域周辺に、T細胞分化の初期から活性化しているDNA領域が2か所に分かれて点在していることがわかりました。 これら2か所の領域はX染色体上にあり、それぞれCNS0、CNS3領域と呼ばれる400塩基対と200塩基対の小さなDNA配列で、タンパク質の設計図情報をもっていない非コードDNA領域です。
非コードDNA領域とは、ゲノムDNAのうち,遺伝子・タンパク質をコードしていない、つまり設計図情報として使用されない領域。 真核生物DNA全体のほとんどを占めます。 ジャンク(がらくた)DNAとも呼ばれますが、染色体上で起こるほぼ全て制御する重要な機能を持っているということが解明され始め、解読・研究が進められています。
ゲノム編集技術で作成したCNS0またはCNS3それぞれ片方だけ欠損したマウスではTreがわずかに減少しましたが、個体は正常に発育しました。 一方で、2か所を両方とも同時に欠損したマウスは胸腺でのTregが正常に分化ができず、全身の臓器で深刻な自己免疫疾患を発症しました。 これらの実験から、Tregの発生と自己免疫寛容の成立のために、タンパク質の情報そのものではない非コードDNA領域が重要な役割を果たしていることが証明されました。
また、これらの領域はT細胞分化の過程で独立して活性化し、Foxp3遺伝子周辺のDNA領域間で立体的な相互作用を形成することもわかり、CNS0、CNS3領域はTregの分化段階において、Foxp3遺伝子のプロモータ領域と立体的に相互作用して協調的にFoxp3遺伝子の発現を調節する機能があると結論づけられました。
今回の研究でTregが発生する際に機能する重要なDNA領域が同定されたことは、関節リウマチを含む自己免疫疾患の発生メカニズムの理解にとって大きな一歩であり、これをもとに、過剰に活性化したT細胞をTregに転換する方法や、体内にTregが発生しやすい環境を作る方法を考えることが可能となり、さまざまな免疫疾患の根本的な予防や治療法の開発につながることが期待されるとのことです。
この研究成果は4月29日に、国際科学雑誌 Immunity のオンライン版に掲載されました。
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【2021.4.30】免疫の個人差をつかさどる遺伝子多型の機能カタログを作成
これまでにも、ゲノムワイド関連解析(GWAS)のニュースは時々掲載してきましたが、同定された疾患の発症と関わる多くの遺伝子多型がどのように疾患発症に関わるかを解明するには、疾患と関わる細胞の遺伝子発現とゲノム配列であるeQTL(expression quantitative trait locus)を統合した大規模なデータベースが必要でした。
今回、東京大学の太田峰人特任助教、藤尾圭志教授(免疫疾患機能ゲノム学講座)、理化学研究所の山本一彦センター長、中外製薬の角田浩行創薬基盤研究部長らの研究グループは、免疫疾患患者および健常人、計416例の末梢血(血管の中を流れる血液)から分取した28種類の免疫細胞9,852サンプルを解析し、過去の報告を大きく上回る規模の遺伝子発現データベースを構築し、ゲノム配列との関連を解析し、これらの免疫細胞における遺伝子多型の機能についてのカタログを作成したそうです。
このカタログは免疫細胞のeQTL(expression quantitative trait loci)遺伝子の発現量の個人差と関連するゲノム領域データベースを作成しました。 eQTL 解析は遺伝子多型と遺伝子発現の関連解析で、ある遺伝子多型があった時に、どの細胞種における、どの遺伝子の発現量を上げるのか、または下げるのか、という情報(eQTL 効果量)が得られます。さらに、eQTL データをGWAS データと組み合わせて解析することで、疾患の発症に重要な細胞や遺伝子を同定することができます。
今回作成したカタログはGWASデータと組み合わせて解析することで、免疫が関連する疾患・形質の原因解明に役立つものと考えられます。 また、ゲノム機能のデータベースは、これまで欧米人主体に作成されてきましたが、アジア人とのゲノム構造の違いが課題となっていました。 本研究により日本発のカタログを作成したことで、アジア人を対象としたゲノム研究の発展や、欧米人のデータとの統合解析によるゲノム機能の詳細な解明に役立つことが期待されます。
本研究成果は、4月29日に米国科学誌 Cell(オンライン版)に掲載されました。
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Parsing multiomics landscape of activated synovial fibroblasts highlights drug targets linked to genetic risk of rheumatoid arthritis(2020/11/2) by Annals of the Rheumatic Diseases
【プレスリリース】免疫の個人差をつかさどる遺伝子多型の機能カタログを作成(2021/4/30) by 東京大学医学部附属病院
免疫の個人差をつかさどる遺伝子多型の機能カタログを作成(2021/4/30) by 理化学研究所
Dynamic landscape of immune cell-specific gene regulation in immune-mediated diseases(2021/4/29) by Cell
【2021.3.26】生物学的製剤投与中止後の再燃を予測する血液中バイオマーカーの組み合わせ(sTNFR1とIL-2)
関節リウマチでは20〜30%の患者が生物学的製剤で治療しており、寛解率も向上しています。 でも、高額であるため、できれば薬をやめたいと考えている人は少なくありません。 これまでの研究で、生物学的製剤を中止すると1年以内に約半数の患者に再燃が見られることが報告されています。 いつ止めれば再燃しないのか、何か基準はないのか知りたいですよね?
これは、寛解後の再燃を予測し、生物学的製剤の中止の目安を探る研究です。 東邦大学医学部の内科学講座膠原病学分野の亀田秀人教授らの研究グループが、再燃を血液中の2つのバイオマーカーを組み合わせることで高い精度で予測することができることを見出したそうです。
今回の研究では、2014年11月から2018年1月にかけて、生物学的製剤の投与で国際的に認められている厳格な寛解基準(SDAI 3.3以下)を少なくとも3ヶ月以上(中央値20ヶ月、半年未満は2例のみ)維持していた患者のうち、高額であることなどの理由により生物学的製剤の投与中止を希望した患者36名が本研究に登録され、2年間にわたって再燃の有無などを観察されました。 中止後2年以内の関節リウマチ再燃は20例(56%)と、従来の報告と同程度に見られました。 臨床症状や関節超音波検査の所見などの従来からの手法では中止時に再燃を予測することは困難でしたが、血液中の2つのバイオマーカー、すなわち可溶型TNF受容体1(sTNFR1)とインターロイキン2(IL-2)を組み合わせることで、中止後の寛解維持を予測できると考えられました。 すなわち、生物学的製剤中止時の血液中のsTNFR1濃度が低く、IL-2濃度が高ければ83%の患者が2年間にわたって中止後も寛解状態を維持できるという結果でした。 sTNFR1の濃度が高い場合には、IL-2濃度によらずほとんどの患者が再燃を生じていました。
この研究結果より、今後関節リウマチにおける生物学的製剤の投与中止が従来よりも適切に行われ、医療費の削減にもつながることが期待されます。
なお、生物学的製剤ではTNF阻害薬が72%を占めていました。 この研究で再燃を経験した人は、同じ抗リウマチ薬で再治療することにより寛解または低い疾患活動性を回復することに成功したそうです。
本研究の成果はオンラインでオープンアクセスの学術雑誌である Scientific Reports に3月25日に発表されました。 2020年7月に国内特許出願済です。
※sTNFR1(soluble TNF-alpha receptor 1、可溶型TNF受容体1)は、炎症反応の細胞によって分泌される、TNF-α・TNF-βの膜貫通受容体です。 TNF-αやTNF-βと結合して炎症を抑制します。
※IL-2(Interleukin-2、インターロイキン2)は、ヘルパーT細胞によって産生されるサイトカインの一つで、T細胞・B細胞・単球・マクロファージ・NK細胞などの活性化したり、免疫抑制作用を示す制御性T細胞(Treg)の生成に必要です。
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Prediction of disease flare by biomarkers after discontinuing biologics in patients with rheumatoid arthritis achieving stringent remission(2021/3/25) by Scientific Reports
プレスリリース 発行No.1126 令和3年3月26日 「関節リウマチ患者の生物学的製剤投与中止後の再燃を予測」(2021/3/26) by 東邦大学
関節リウマチの遺伝素因と関連する新規治療標的を同定(2020/11/6) by 理化学研究所
関節リウマチの再燃を高精度に予測 血中バイオマーカー2種の組み合わせ(2021/5/5) by 読売新聞ヨミドクター
【2021.1.29】関節リウマチ発症に対する生活習慣関連因子の寄与度をメタアナリシスで定量
関節リウマチは生活習慣病ではありません。 しかし、今までにも発病や悪化に喫煙や繊維粉塵暴露などの要因が影響しているという研究結果が報告されてきました。
中国の浙江中医薬大学のDing Ye氏らが、アメリカの成人を対象に、遺伝子とは無関係のリスク因子が関節リウマチの発症にどのくらい寄与しているかを調べる研究を行ったところ、発症例の約3分の1は、喫煙、高BMIおよびアルコール摂取量の少なさに起因すると考えられるという結果が得られたそうです。
まず、2005〜2006年に国民健康栄養調査(NHANES)に登録された15歳以上の6,437例を対象として、一般集団のリスク因子の保有率を推定した。 次にPubMedおよびWeb of Scienceに2019年3月31日までに登録された論文を検索し、米国の成人を対象にリスク因子とRAとの関連を検討した疫学研究を抽出しました。
各リスク因子の人口寄与割合(PAF)は、喫煙14.00%、過体重または肥満14.73%、アルコール摂取量の少なさ8.21%でした。 喫煙、過体重または肥満、およびアルコール摂取量の少なさの3因子を統合した人口寄与割合(PAF)は32.69%でした。
これはアメリカのデータに基づく研究ですし、要因どうしの相互作用の可能性を正確に把握できるデータがなかったり、取り上げられていない他の要因の影響も不明ですが、のDing Ye氏らは「関節リウマチのリスクを軽減するためには、適正体重を維持と禁煙を推奨するためのエビデンスは十分あると考えてよいだろう」と述べています。
本研究成果は、1月26日にイギリスの医師会雑誌BMJに掲載されました。
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Lifestyle factors associated with incidence of rheumatoid arthritis in US adults: analysis of National Health and Nutrition Examination Survey database and meta-analysis(2021/1/26) by BMJ
Meta-Analysis Quantifies Lifestyle Factors Accounting for RA Incidence(2021/1/29) by HealthDay
関節リウマチ発症に対する生活習慣関連因子の寄与度をメタアナリシスで定量(2021/4/30) by HealthDay
【2020.11.18】ジセレカ錠(一般名:フィルゴチニブマレイン酸塩)が発売
抗リウマチ薬のジセレカ錠100mg、同200mg(一般名:フィルゴチニブマレイン酸塩)が、エーザイ株式会社より11月18日に発売されました。
ジセレカ錠はJAK1阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)です。 剤型は淡褐色のフィルムコーティングの100mgと200mg経口投与の錠剤です。 通常、成人は200mgを1日1回経口投与、状態に応じて100mgを1日1回投与です。
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【2020.11.6】関節リウマチの新規治療標的として転写因子MTF1を同定
東京大学医学部附属病院のアレルギー・リウマチ内科の土屋遥香 助教、太田峰人 特任助教(免疫疾患機能ゲノム学講座)、藤尾圭志 教授と、理化学研究所生命医科学研究センターの鈴木亜香里 自己免疫疾患研究チーム副チームリーダー、山本一彦 センター長らの研究グループが、関節リウマチと変形性関節症で炎症が起こっている滑膜線維芽細胞での炎症メディエーター(炎症の引き金や増幅につながる物質)の発現とクロマチン(細胞核内にあるDNAとタンパク質の複合体)の構造変化と疾患感受性多型(疾患の発症しやすさに関連するDNA多型)の関連を初めて明らかにし、スーパーエンハンサー(DNAが露出した長大なエンハンサー領域)の構成に重要な転写因子としてMTF1を同定したそうです。
これまでに行われた大規模なGWAS(ゲノムワイド関連解析:Genome-wide association study)により、関節リウマチでは100以上の疾患感受性多型が同定されました。 GWASで明らかにされたDNA多型と関節リウマチの発症の因果関係は頑健ですが、その多型の存在により、「どの細胞に」「どのような変化が起こることで」関節リウマチの発症につながるのか、メカニズムは十分に解明されていません。
一方、自己免疫疾患を対象とした過去の研究では、疾患感受性多型の多くが細胞種特異的、時には環境特異的に特定の遺伝子の発現を制御すると報告されています。 つまり、関節リウマチの炎症ネットワーク形成における滑膜線維芽細胞の詳細な役割や、滑膜線維芽細胞を標的とした創薬の可能性を追求するうえで、ゲノムだけでなく、トランスクリプトーム(transcriptome:ひとつの細胞中に存在する全てのmRNAの全て。 ゲノムは原則として同一個体内のすべての細胞で同一だが、トランスクリプトームでは組織ごとに、あるいは細胞外からの影響に呼応して固有の構成になる)やエピゲノム(epigenome:同じDNAの配列で多様な表現型を生み出すしくみ。 DNAの塩基配列は変化せず後天的な環境要因によって遺伝子発現が変化する)などを統合的に解析することが重要です。
今回、研究グループは、関節リウマチと変形性関節症の各30例から滑膜を採取し、滑膜線維芽細胞を単離しました。 更に、これらを関節内の代表的な8種類のサイトカイン(IFN-α、IFN-γ、TNF-α、IL-1β、IL-6/sIL-6R、IL-17、TGF-β1、IL-18)のそれぞれ、または関節内の複合的な炎症環境を真似たこれら8種類の混合物(8-mix)で刺激しました。 また、同じ患者の末梢血から、5種類の主要な免疫細胞(CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞、NK細胞、単球)を分取して、これらのトランスクリプトームを定量し、次世代シーケンサー(一度に大量の塩基配列を読み取ることができる装置)でエピゲノム(ヒストン修飾情報やクロマチンの構造変化)やゲノムとの関連を統合的・網羅的に解析しカタログ化しました。 滑膜線維芽細胞のDNA多型を含む多層的解析は、世界で初めての試みだそうです。
その結果、まず、関節リウマチと変形性関節症の滑膜線維芽細胞では、炎症刺激に対する応答の大部分は疾患間で共通していましたが、無刺激の状態から一部の遺伝子発現には明瞭な違いを認めました。 その理由として、長期間の炎症環境への暴露により刷り込まれた関節リウマチのエピゲノム異常に由来する可能性が考えられました。 また、DNA多型による発現の制御には、細胞種や疾患による違いに加え、炎症刺激による違いが確認されました。 加えて、滑膜線維芽細胞は複合的な炎症環境にさらされることでダイナミックなクロマチン構造の変化を起こしスーパーエンハンサー(DNAが露出した長大なエンハンサー領域)に関節リウマチの疾患感受性多型が多く存在していました。 このことは、活性化した滑膜線維芽細胞が、関節リウマチの疾患感受性と関連した炎症ネットワーク形成の一部を担うことを示唆しました。 更に、複合的な炎症環境下のスーパーエンハンサー構成に重要な転写因子としてMTF1を同定し、関節炎の形成に重要であることが証明されました。
この研究は、関節内の炎症環境により活性化した滑膜線維芽細胞が関節リウマチの病態形成に果たす役割と、遺伝子発現制御メカニズムを包括的に明らかにするものです。 関節局所に存在する滑膜線維芽細胞を標的とした創薬候補が発見されたことで、既存の薬剤とは全く異なる経路を介した、より全身的な免疫抑制作用の少ない治療開発につながることが期待されます。 今後は、MTF1の滑膜線維芽細胞や関節炎モデルマウスにおける詳細な機能解析と、臨床への還元を目指したいと考えているとのことです。
本研究成果は、ヨーロッパリウマチ学会・学会誌 Annals of the Rheumatic Diseases のオンライン版に、11月2日掲載されました
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Parsing multiomics landscape of activated synovial fibroblasts highlights drug targets linked to genetic risk of rheumatoid arthritis[Abstract](2020/11/2) by Annals of the Rheumatic Diseases
【プレスリリース】関節リウマチの遺伝素因と関連する新規治療標的を同定(2020/11/6) by 東京大学医学部附属病院
関節リウマチの遺伝素因と関連する新規治療標的を同定(2020/11/6) by 理化学研究所
東大と理研、滑膜線維芽細胞のクロマチン構造変化が関節リウマチの疾患感受性と関連することを解明(2020/11/6) by 日本経済新聞
【2020.9.11】体外から侵入したDNAを認識するセンサー「cGAS」が自己の染色体DNAを見分けるしくみを解明
東京大学の東京大学定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授らのグループは、アメリカのロックフェラー大学の船引宏則教授らのグループと共同で、自然免疫におけるDNAセンサーcGASが、自己の染色体DNAによって不活化されるしくみを解明したそうです。
自然免疫で中心的な役割を担うcGAS(cyclic GMP-AMP synthase)-STING(stimulator of interferon genes)経路では、体外から非自己DNAが細胞に侵入すると、DNAセンサーであるcGASが結合して活性化し、STINGを通じて炎症反応が誘起されます。 一方で細胞内には、自己の設計図である染色体DNAが存在するため、自己のDNAに対する免疫応答を回避するためにcGASは染色体DNAに対しては常に不活性化されている必要があります。 船引宏則教授らによる近年の研究から、cGASが染色体の基本単位であるヌクレオソームに結合すると、cGASのDNAに対する応答反応が不活化されることが報告され、これにより自己免疫応答が回避されることがわかってきました。 しかし、その詳細なメカニズムは不明でした。
今回の研究では、最新のクライオ電子顕微鏡による立体構造解析と生化学的解析とを組み合わせて、cGASの活性化に必要な、3つのDNA結合領域と二量体形成領域のすべてがヌクレオソームによってブロックされることを発見しました。 そして、立体構造情報に基づき変異体解析を行った結果、cGASのヌクレオソーム結合領域の変異によって、ヌクレオソームによるcGASの不活化が損なわれ、自己免疫応答の状態になることがわかりました。
今回の発見は、cGASが関連するウイルス感染症、自己免疫疾患、癌、老化、神経変性疾患など、多岐にわたる広範な疾患の原因解明や治療法確立のために重要な情報を提供すると考えられるとのことです。
本研究成果は、米国科学誌 Science のオンライン速報版に、9月10日掲載されました
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【2020.7.29】体内の免疫反応にT細胞の糖代謝が必須であることを証明
愛媛大学の大学院医学系研究科の山下政克教授らの研究グループが、生体で免疫反応が起きるためには、T細胞の中での糖代謝が活性化することが必須であることを証明したそうです。
これまでに、細胞レベルではT細胞の活性化に伴って糖代謝(グルコースの消費)が増加することや、糖代謝の増加が、T細胞が機能を発揮するために必要であることが示されていました。 しかし、体内の免疫反応でも本当にT細胞の糖代謝が必要なのかどうかは十分に証明されてはいませんでした。 今回の研究では、解糖系酵素の一つホスホグリセリン酸ムターゼ1(Pgam1)をT細胞で欠損させたマウスを作製し、感染免疫応答、慢性炎症疾患の発症について解析しました。 その結果、T細胞でPgam1がない、つまり糖代謝が十分に行えないことで、感染免疫応答、慢性炎症疾患の発症が著しく低下することが分かりました。 今回の研究によって、生体内の免疫反応にはT細胞の糖代謝が必須であることが明らかとなりました。
また、細胞が持続的に糖代謝を行うためには、アミノ酸 の一種、グルタミンが必要であることもわかったそうです。
今回の研究成果は、自己免疫疾患を含む慢性炎症疾患の治療薬や免疫抑制薬の開発、免疫細胞の暴走で引き起こされるサイトカインストームの抑制法の確立につながることが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌 Communications Biology に、7月24日に公開されました。
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【2020.7.7】本物の軟骨に匹敵する強度と耐久性を持つ新型の人工軟骨
アメリカのデューク大学の化学科のベンジャミン・ワイリー教授と工学科のケン・ガル教授の率いる研究チームが、ゲルでできた新しい人工軟骨を開発したと発表しました。 開発された新型の人工軟骨は本物の軟骨に匹敵する強度と耐久性を持ち、体重の2〜3倍という力を吸収することができるとのことです。
研究チームは、1970年代から人工軟骨の素材として有望視されているゲルに注目しました。 ゲルは「滑りやすく衝撃を吸収する」という特性を持っていましたが、膝のように体重がかかる部位に使用するには強度が低過ぎることが問題とされていました。 そこで、研究チームは2つの高分子で構成したゲルを開発しました。 このゲルは伸縮性のあるスパゲティのようなヒモ状構造の高分子が、頑丈で編み目のような構造の高分子に絡み合う構造となっており、さらにセルロース繊維がその高分子の編み目を補強しています。 ゲルが引っ張られるとセルロース繊維によって形が保持され、押しつぶされると高分子の電荷によって水分子が付着し、元の形に戻ろうとする仕組みになっています。 なお、このゲルはおよそ60%が水でできているヒドロゲルだそうです。
研究チームがこの新型ゲルを他のゲルと比較しながら調査したところ、本物の軟骨と同じくらいの強度が得られたと判明。 また、10万回に渡って新型ゲルを引っ張る実験を行ったところ、人工骨に使われる多孔質チタンと同程度の強度が確認できたそうです。 さらに、45kgの重りを新型ゲルの上に載せても崩壊しなかったとのこと。 さらに、新型ゲルを100万回にわたって自然の軟骨にこすりつける実験を行ったところ、潤滑面の耐久性は本物の軟骨と同程度で、従来の人工軟骨よりも4倍高い耐摩耗性があるとわかりました。 また、人の細胞に対しても無害であることが実験から示されています。
この素材は関節リウマチで破壊された軟骨の補充や人工膝関節の耐用年数の延長に役立かもしれません。 現時点ではまだ実験室レベルであり、臨床で利用可能なレベルにまで研究を進めるには少なくともさらに3年はかかるとワイリー教授はみているそうです。
本研究成果は、ドイツの科学誌 Advanced Functional Materials に、6月26日に公開されました。
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【2020.6.23】B細胞の暴走を防ぐスイッチを発見−Tet分子が自己免疫疾患を抑制する
九州大学生体防御医学研究所の免疫ゲノム生物学分野の准教授の田中伸弥氏、同教授の馬場義裕氏、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの分化制御研究室の特任准教授の伊勢渉氏、同特任教授の黒ア知博氏らの研究グループは、エピゲノム制御因子の1つでDNAの脱メチル化反応を引き起こす水酸化酵素Tet分子(=Ten-eleven translocation)が、B細胞の自己の組織に対する攻撃性を抑えることで自己免疫疾患発症を抑制することを世界で初めて明らかにしたそうです。
関節リウマチを含む自己免疫疾患では、自己抗原(自己の組織や細胞)に対して攻撃性を持つ自己反応性リンパ球が何らかの原因で異常に活性化しています。 Tet分子が正常に働かないとリンパ球の1つであるB細胞が自己抗原を認識して共刺激分子CD86を過剰に発現することによって自己反応性T細胞が活性化され、自己免疫応答が起こってしまいます。 これまで、ふだんはどのようにしてこのしくみが抑制されて自己寛容が維持されているのか不明でした。
今回研究グループでは、Tet分子が、B細胞において、T細胞との相互作用を促進するCD86分子(T細胞の活性化に重要な共刺激分子)の過剰発現を阻止することで、自己免疫疾患を抑制していることを解明しました。
マウスを使った実験で、B細胞でだけTet分子を欠損させたところ、異常に活性化したB細胞が脾臓等のリンパ組織への蓄積、全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患が現れ、その原因はB-T細胞相互活性化を促すCD86分子の過剰な発現であることがわかりされました。
さらに、網羅的な遺伝発現解析を行って、全ゲノムDNA配列でのヒストン脱アセチル化酵素HDAC結合およびアセチル化ヒストン分布を調べると、Tet分子欠損によってCD86遺伝子座でのHDACの集積が減少し、それに対応してアセチル化ヒストンの過剰集積が認められました。 このことから、Tet分子はCD86遺伝子座に転写抑制構造をつくり出すことにより、CD86過剰発現を阻止して過剰なB細胞-T細胞相互作用を阻害することで、自己寛容の誘導および維持を担うと考えられるということです。
今後、Tet分子または、その関連分子を標的とした新たな治療薬開発が期待されるとのことです。
本研究成果は、英国科学誌 Nature Immunology に、6月22日に公開されました。
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【2020.6.8、2020.6.19】研究者おふたりの受賞
関節リウマチの研究でニュースに登場することの多い大阪大学の研究者おふたりの、最近の受賞の知らせが届いています。
大阪大学栄誉教授の坂口志文先生が、Tregの臨床応用研究で、ドイツの「ロベルト・コッホ賞」を授与されるそうです。
Wikipediaによりますと−−−ロベルト・コッホ賞はロベルト・コッホが自身の結核に関する研究をサポートしてもらうことを目的に設立し、結核菌を発見した折には多数の国際的援助がついた。 現在、ドイツの学問の賞の中で最も高額かつ名声の高い賞であり、医学研究のなかでも主に微生物学・免疫学分野における優れた業績に対して与えられる。 ロベルト・コッホ賞は、コッホ賞とコッホ・ゴールドメダルの2つからなり、コッホ賞は医学研究で新しい発見をした者に対して与えられ、ロベルト・コッホ財団から賞金100,000ユーロが贈られる。コッホ・ゴールドメダルは医学研究において優れた業績の蓄積がある者に対して与えられる。−−−とのこと。
大阪大学名誉教授の岸本忠三先生は、IL-6の発見・研究で、台湾の「唐奨」の「バイオ医薬賞」を受賞。
Wikipediaによりますと−−−唐奨(とうしょう、Tang Prize)は、2014年に台湾で創設された世界的な賞である。 「持続可能な開発」、「バイオ医薬」、「中国学」、「法の支配」の4分野で顕著な功績を残した人物に贈られる。この賞は「東洋のノーベル賞」、「台湾のノーベル賞」と呼ばれる。−−−とのこと。
ちなみに、岸本忠三先生は2001年にロベルト・コッホ ゴールドメダルを受賞されています。
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【2019.4.24】リンヴォック錠(一般名:ウパダシチニブ水和物)が発売
抗リウマチ薬のリンヴォック錠50mg、同100mg(一般名:ウパダシチニブ水和物)が、アッヴィ合同会社より4月24日に発売されました。
リンヴォック錠はJAK1阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)です。 剤型はフィルムコーティングの7.5mgと15mg経口投与の錠剤です。 通常、成人は15mgを1日1回経口投与、状態に応じて7.5mgを1日1回投与です。
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【2020.4.22】Notch3シグナル伝達は関節リウマチの滑膜の過形成において極めて重要であることを発見
アメリカのBrigham and Women’s HospitalのSoumya Raychaudhuri、Michael B. Brennerらの研究グループが、関節リウマチの滑膜線維芽細胞の病因性が血管内皮細胞由来のNotchシグナル伝達によって支えられていることを発見したそうです。
関節リウマチでは滑膜に炎症が起こり、過形成(関節の内側に増殖して他の組織を壊す)とで軟骨や骨が破壊されます。 滑膜には表層と深層の2種類の線維芽細胞があり、今までに同研究グループより、このうち深層にあるCD90陽性の線維芽細胞が関節リウマチに関わっていると報告されていましたが、この線維芽細胞の分化や増殖のしくみは不明でした。
今回の研究では、Notch3シグナル伝達が、病原性の滑膜繊維芽細胞サブセットの分化および増殖の根底にあることを突き止め、動脈系の血管内皮細胞に発現するリガンドが線維芽細胞上Notch3を刺激し,CD90陽性線維芽細胞への形質変化や細胞増殖を促しているとわかったとのことです。 炎症性関節炎のマウスモデルでは、Notch3シグナル伝達を阻害すると関節炎が軽減し、関節損傷が防止されました。
現在、Notch3阻害剤はがんの治療薬として臨床試験が進められており、今回の研究結果により、Notch3阻害剤を関節リウマチの治療薬としても開発される可能性があるとのことです。
研究成果は2020年4月22日に英国の総合学術雑誌Natureに掲載されました。
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【2020.1.23】抗リウマチ薬のリンヴォック錠が承認されました
アッヴィ合同会社が、リンヴォック錠(一般名:ウパダシチニブ水和物、開発コード:ABT-494)の製造販売承認を取得しました。 これは、2019年2月26日にに申請されたものです。 薬価収載の後、発売されます。
ウパダシチニブ水和物は、経口投与のJAK1阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)です。
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【2020.1.15】軟骨細胞が関節の炎症を誘導することを発見
北海道大学の遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループが、関節リウマチおよび変形性関節症の軟骨細胞で炎症アンプが活性化していることを発見、さらに炎症アンプ関連遺伝子のうちTMEM147(Transmembrane protein 147)が軟骨細胞に発現してNF-κB経路を活性化していることを初めて明らかにしたと発表しました。
自己免疫疾患である関節リウマチや炎症性疾患である変形性関節症の病態に大きく関わる関節組織の細胞は滑膜細胞であるとこれまで考えられ、広く研究されてきましたが、今回の研究ではこれまであまり着目されてこなかった軟骨細胞に注目し、軟骨細胞が関節リウマと変形性関節症の病態に炎症アンプを介して関与するという仮説を立てて研究が行われました。
炎症アンプ(炎症回路)とは非免疫細胞において種々の炎症性サイトカインやケモカイン、増殖因子などが大量に持続的に産生される分子機構のことで、これによって免疫細胞の浸潤が局所的に誘導され、組織恒常性の破綻から慢性炎症が引き起こされます。 かつてはIL-6アンプと呼ばれていました。
村上教授らの研究グループによって、すでに炎症アンプの関連遺伝子は同定されており、自己免疫疾患をはじめとした多くの慢性炎症性疾患に関連することが明らかとなっています。
今回の研究では、関節リウマチモデルマウスおよび関節リウマチ患者、変形性関節症モデルマウスおよび変形性関節症患者から軟骨組織を採取した軟骨細胞を免疫組織染色(抗体を使って組織内の抗原を発色させて可視化する)で炎症アンプが活性化していることを発見しました。 さらに炎症アンプ関連遺伝子のひとつとして同定されたTMEM147が軟骨細胞に強く発現して、炎症アンプの主要な経路のひとつであるNF-κB経路を活性化していることを初めて明らかにしました。 反対に抗TMEM147抗体が生体内で炎症アンプの活性化を抑制することもわかりました。
このことは、関節リウマと変形性関節症の治療に対して新たな方向性を示すものであり、治療の突破口となる可能性があるとのことです。
研究成果は2019年11月29日米国リウマチ学会の公式ジャーナルのArthritis & Rheumatologyに掲載されました。
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【2020.1.6】T細胞受容体シグナル伝達を細胞骨格アクチンが促進する機能を解明
京都大学の大学院医学研究科創薬医学講座の成宮周 特任教授、タムケオ・ディーン 特定准教授、及び桂義親 博士課程学生らの研究グループが、T細胞受容体(TCR=T cell receptor)によるシグナル伝達において、重要なシグナル分子であるタンパク質Zap70による基質LATへのシグナル伝達に、フォルミン(formin)タンパク質ファミリーによって重合されるアクチン(actin)が不可欠であることを発見したそうです。 さらにforminファミリーの中でもmDia1とmDia3が特に重要な働きをすることも明らかになったそうです。
T細胞の表面に発現しているTCRが抗原を認識すると、サイトカインの産生や細胞増殖といった活性化や分化が起こり、感染細胞の殺傷や抗体の産生など一連の免疫応答の引き金になります。 この過程には、TCRの活性化による種々のタンパク質のリン酸化とそれに伴うシグナル複合体形成が非常に重要な働きをしていることが知られています。 これはTCRシグナル伝達と呼ばれます。 シグナル伝達とは、細胞外の刺激を受けて細胞内のたくさんの因子が連鎖的にシグナルを受け渡し、最終的には細胞の機能を変化させたり遺伝子の転写を調節したり、と大きな反応を引き起こす仕組みです。
そのTCRシグナル伝達の中の入口である細胞膜の表面の近くで発現する重要なタンパク質としてZap70(Zeta-chain-associated protein kinase 70)と、そのリン酸化を受ける基質であるLAT(linker for activation of T cell)があります。 しかし、Zap70によるLATのリン酸化がどのように制御されているのかは未だに明らかになっていません。 また、TCRシグナル伝達には細胞骨格(細胞の形を維持したり、細胞内外の運動に必要な力を発生させる細胞内の繊維状構造)のひとつであるアクチンが不可欠であるということはわかっていますが、アクチンが具体的にどのような機能によってシグナル伝達に関与しているのは不明でした。
そこで今回はactinとZap70によるシグナル伝達の関係性を明らかにするため、actinを核化・重合するタンパク質ファミリーのforminに着目した研究が行われました。
はじめに、マウスから精製したナイーブCD8陽性T細胞(まだ抗原刺激を受けていない細胞傷害性T細胞)にforminによるactin重合活性を阻害する薬剤SMIFH2を使って、TCRシグナル伝達の過程ではforminによるactin重合がZap70によるLATのリン酸化を促進することが明らかにされました。
次に、より生理的な条件下での検討を行うために、人工的な脂質二重膜に抗原と接着分子を組み込み、T細胞による抗原認識の際に形成される構造(免疫シナプス)を模倣しました。 この免疫シナプスの高解像度イメージングを用いた解析により、forminによって活性化されたactinがT細胞刺激によってダイナミックに重合・脱重合し、Zap70およびLATの空間的な配置を制限することでLATへのリン酸化を促進して情報を伝達することを見出したとのことです。
最後に、forminファミリーの中でどのタンパク質が重要であるのかを明らかにするため、T細胞に発現するforminを解析しその結果し、forminファミリーのうちmDia1とmDia3が高発現していることを見出しました。 そこでその双方を遺伝子欠損させた所、阻害薬のSMIFH2を用いた実験と同じ現象が再現され、それに加えて、マウスの胸腺において胸腺細胞の分化に異常をきたしていることも発見しました。 胸腺細胞の分化にはTCRシグナル伝達が必須であるため、今回発見した機序が成熟したT細胞の機能のみならず、T細胞の発生にも関与していることが明らかになりました。
T細胞による抗原認識は感染症の防御だけでなく、自己免疫疾患においても最初期に関与するため、この研究で得られた知見をもとに自己免疫疾患に対する新たな治療法が開発される可能性があるとのことです。 また、特定の白血病におけるT細胞ではmDiaを活性化させるRhoAというタンパク質に遺伝子変異があることが報告されており、白血病発症のメカニズムの一部を解明できる可能性も期待されるそうです。
研究成果は、1月2日に米国の科学雑誌 Science Advances のオンライン版に掲載されました。
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【2019.11.27】エタネルセプトのバイオ後続品が発売
日医工株式会社がエタネルセプトのバイオ後続品を今日の薬価基準収載と同時に発売しました。 販売名はエタネルセプトBS皮下注10mgシリンジ1.0mL「日医工」、エタネルセプトBS皮下注25mgシリンジ0.5mL「日医工」、エタネルセプトBS皮下注50mgシリンジ1.0mL「日医工」、エタネルセプトBS皮下注50mgペン1.0mL「日医工」です。 これは、共和薬品工業株式会社が2018年3月に承認申請、2018年6月に日医工が販売権を取得、2019年3月に承認されたものです。
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【2019.12.6】キャロライン・ウォズニアッキさん、引退を表明
2017年に関節リウマチと診断された、デンマーク出身のプロテニス選手のキャロライン・ウォズニアッキ(Caroline Wozniacki)さん(現在29歳)ですが、とうとう引退されると、自身のTwitterで発表されました。 病気と引退は関係ないとのことですが・・・やはり残念です。 今後は関節リウマチの啓発活動に携わっていきたいとのことです。
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【2019.11.19】関節炎で骨を破壊する「悪玉破骨細胞」と、FoxM1によって調節されるその前駆細胞「AtoM」を発見
大阪大学の大学院医学系研究科の長谷川哲雄特任研究員、石井優教授(免疫細胞生物学)らの研究グループが、破骨細胞には正常な破骨細胞とは性質も起源も異なる「悪玉破骨細胞」が存在することを世界で初めて明らかにしたそうです。
破骨細胞は、古く傷んだ骨を壊し、その後骨芽細胞による骨新生を促すことで骨の健康さ(新陳代謝)を維持するという良い働きをします。 その一方で、関節リウマチやがんの骨転移といった病気では、この破骨細胞が異常に活性化することで骨の破壊を起こすという悪い働きをしてしまいます。 これまでは、この破骨細胞は一種類であり、働き方が異なることで、良い働きや悪い働きを行うと考えられてきましたが、今回の研究では、これらの細胞は元々異なるものであり、病的な骨破壊を行う「悪玉破骨細胞」が存在することを同定したとのことです。
これまでに破骨細胞とその前駆細胞の研究は、骨髄や脾臓や血液の細胞を用いて数多く行われてきましたが、実際に病的な骨破壊が起こる関節組織を用いた解析は、病変部位が非常に小さいため詳細に行われてきませんでした。 そのため、正常な破骨細胞の発生過程と病的な破骨細胞の発生過程が同じなのか、明らかではありませんでした。 今回の研究では、関節炎を発症させたマウスの炎症関節組織(骨破壊が起こる部位である関節組織と骨の境界領域)の細胞を回収し解析する独自の方法が確立されました。
その炎症関節組織には、病的に骨を破壊する「悪玉破骨細胞」へと変化する特殊なマクロファージである悪玉破骨前駆細胞が存在することがわかり、これをAtoM=arthritis-associated osteoclastogenic macrophage(アトム)と命名しました。 正常な破骨細胞は元から関節に存在しているマクロファージですが、AtoMは骨髄由来の細胞が血流を介して関節に流入した後にサイトカインのGM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor、顆粒球単球コロニー刺激因子)に反応して発生し、うち約10%の細胞が関節局所で「悪玉破骨細胞」へと分化していくことが明らかになりました。 また、正常な破骨細胞へ分化するために必要なサイトカインであるRANKL(receptor activator of NF-κB Ligand)に加え、炎症性サイトカインであるTNFを同時に投与すると、関節に流入した骨髄由来の細胞がAtoMへ分化する能力がさらに高まることが明らかになりました。
さらに網羅的な遺伝子発現を調べることで、AtoMがFoxM1と呼ばれる転写因子により部分的に制御されていることが示され、FoxM1の阻害薬がマウスにおいても、関節リウマチ患者の関節液から採取した細胞においても、破骨細胞への分化を阻害することが明らかとなりました。
今後、関節リウマチ患者の病的な「悪玉破骨細胞」を標的とした新たな治療薬開発が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌 Nature Immunology に、11月19日に公開されました。
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【2019.11.8】腸内微生物叢の全ゲノム解析により 関節リウマチ患者の腸内細菌の特徴が明らかに
大阪大学の大学院医学系研究科の岸川敏博大学院生(博士課程)、岡田随象教授(遺伝統計学)らの研究グループが、メタゲノム解析で関節リウマチ患者の腸内微生物叢の特徴を明らかにしたそうです。
腸内微生物叢とは、宿主であるヒトや動物とな腸の内部に生息している多種多様な微生物の集まりです。 腸内の微生物は食事の栄養分で増殖しつつ、食物繊維を消化して宿主が利用できるエネルギーに変えたり、外部から侵入した病気の原因になる微生物の増殖を防いだりと、宿主と共生関係にあります。 ヒトの腸内微生物叢は個人差が大きくて、それぞれ自分だけの腸内微生物叢を持っているそうです。 また、その組成はずっと変化しないわけではなく、生まれたときのゼロの状態から外との接触によって増えてゆき、食事、年齢、その他の色々な変化によって組成は変化します。
メタゲノム解析とは、微生物の種類や存在比率を、従来のように培養によって特定しようとするのではなく、試料中のDNAの塩基配列を解読して特定する方法です。 近頃では、解読で得られる膨大な情報は次世代シークエンス技術によって短時間で解規模で調べられるようになりました。 ※次世代シークエンス技術については、2018年3月7日の記事もご覧ください。
今回の研究では、日本人集団の関節リウマチ患者82名と健常者42名のサンプルに対して全ゲノムショットガンシーケンスが実施され、腸内微生物叢が持つゲノム情報(メタゲノム)から、菌種や遺伝子、パスウェイ(遺伝子やタンパク質の相互作用、細胞内の連鎖的な化学反応など、生体内における様々なネットワークを示す経路)などの情報を網羅的に解析するメタゲノムワイド関連解析が実施されました。 その結果、関節リウマチ患者由来のメタゲノムにはPrevotella(プレボテラ)属に属する複数の種の増加や、酸化還元反応に関連する遺伝子であるR6FCZ7の減少など、特異的な変動が生じていることを明らかにしました。
また、関節リウマチの大規模疾患ゲノム解析(ゲノムワイド関連解析)から得たパスウェイ解析結果を今回のメタゲノムによるパスウェイ解析結果と比較したところ、メタゲノムとヒトゲノムで関節リウマチに関与する多くのパスウェイがアジア人特異的に共有されていることを同定しました。
一方で、これまで多くの疾患で報告されてきた微生物叢における多様性の低下についても詳細な検討を行った結果、関節リウマチと健常群の間に多様性の有意な相違は認められませんでした。
ところで、プレボテラ属の細菌は特に悪い菌であるというわけではありません。 人の腸内細菌のエンテロタイプ(バクテロイデス属の細菌が多いB型・プレボテラ属の細菌が多いP型・ルミノコッカス属の細菌が多いR型・混合型)では、P型は食物繊維を多く食べているアフリカ人や東南アジア人に多いタイプです。 ちなみに日本人はR型が多いそうです。 今回の研究ではあくまでもそのような特徴があることがわかったというだけで、プレボテラ属の細菌が原因で関節リウマチを発病したとは言えず、逆に関節リウマチに罹患したことによって腸内微生物叢に変化が起きたのかもしれないとも言えます。
今回の研究によって、菌種組成を算出する系統解析、遺伝子解析、パスウェイ解析の3つを軸に網羅的な解析を行うメタゲノムワイド関連解析のパイプラインが構築されました。 この手法を日本人の関節リウマチ患者と健常者の腸内微生物叢に対して施行し、疾患の発症に関与している可能性のある菌種や遺伝子量の変動を明らかにしました。 この成果により、腸内微生物叢が関節リウマチの発症に関与する機序の解明に貢献することが期待されます。
研究成果は、英国科学誌英国の科学雑誌 Annals of the Rheumatic Diseasesに11月8日に公開されました。
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【2019.11.5】自然免疫応答を活性化する新たな自己RNA「U11snRNA」を同定
東京大学の生産技術研究所の谷口維紹名誉教授、根岸英雄特任助教、遠藤信康(研究当時 特任助教)らの研究グループが、自己の細胞に由来し、生体に不利益な自然免疫応答を活性化するRNAであるU11snRNAを同定したそうです。
いままで、さまざまな自己免疫疾患や炎症性疾患にRNA受容体のTLR7(Toll-like receptor 7)を介した自然免疫応答が関与することが知られていましたが、その原因となるRNAリガンドについてはよくわかっていませんでした。
今回の研究ではまず、低分子量化合物ライブラリーをスクリーニングして、RNAに直接結合しそのRNA受容体リガンドとしての活性を阻害する低分子化合物であるKN69を開発することに成功しました。 さらにKN69がいくつかの自己免疫モデルマウスで病態を抑制できることがわかったので、KN69に結合する内在性のRNAを網羅的に同定し、これらRNAの中から自己免疫疾患の病態と関連するRNAを探索しました。 その結果、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデス患者の血清中で、病気の程度と相関して増加するRNAとして、U11snRNAという低分子RNAを同定しました。 このような血清中での増加は、解析したRNAの中でU11snRNAに特異的に起こる現象でありU11snRNAの血中量は、IFNシグネチャーと呼ばれる自己免疫疾患に特徴的な遺伝子群の発現上昇とも相関することもわかりました。
さらに、このU11snRNAはこれまで知られている自己に由来するRNAと比較して、TLR7に対する強いリガンド活性を持つことがわかり、マウスへの投与で関節炎を誘導することもわかりました。
また、研究グループはU11snRNAの強いリガンド活性のメカニズムを解明し、その原理を元に、TLR7を強力に活性化するアゴニストであるSM-PSと、抑制するアンタゴニストであるSM-MePSの作成にも成功したとのことです。
この成果はTLR7が関与するさまざまな疾患の発症や増悪のメカニズム解明に繋がることが期待されます。 また、化合物やアンタゴニストは、TLR7の関与する疾患の治療薬として、アゴニストは感染症やがんに対するワクチンの効果を高めるアジュバントとしての開発がそれぞれ期待されます。
研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(11月6日付)に掲載されました。
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【2019.11.1】エタネルセプトのバイオ後続品が発売
帝人ファーマ株式会社がエタネルセプトのバイオ後続品を発売しました。 開発コード YLB113 だったものです。 販売名はエタネルセプトBS皮下注10mgシリンジ1.0mL「TY」、エタネルセプトBS皮下注25mgシリンジ0.5mL「TY」、エタネルセプトBS皮下注50mgシリンジ1.0mL「TY」、エタネルセプトBS皮下注50mgペン1.0mL「TY」です。 これは、2018年3月に承認申請、2019年3月に承認されたものです。 インドの医薬品メーカーであるルピンリミテッドが製造する原薬をもとに、株式会社陽進堂の100%子会社であるエイワイファーマ株式会社が日本国内の工場で製剤化しています。
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【2019.10.30】制御性T細胞(Treg)を誘導し、炎症を抑える化合物「AS2863619」を発見
京都大学のウイルス・再生医科学研究所の坂口志文 客員教授(京都大学名誉教授・大阪大学特別教授)、三上統久 招聘研究員(レグセル株式会社研究員)、大学院医学研究科の 成宮周 特任教授(京都大学名誉教授)、アステラス製薬の赤松政彦 研究員らの研究グループが、制御性T細胞(Treg)誘導化合物AS2863619を発見し、その作用とメカニズムを明らかにすることに成功したそうです。
免疫を抑える機能を持つT細胞であるTregを人工的に誘導することは、自己免疫疾患や炎症性疾患など免疫系の活性化を原因とする病気の治療にながると考えられており、世界的に興味を集めています。 でも、これがなかなかに難しく、活性化T細胞から誘導することや、炎症性サイトカインが存在している場合は特に難しいそうです。
今回の研究ではアステラス製薬が持つ約5000種類の化合物をスクリーニングし、Tregを効率よく誘導するAS2863619を発見しました。 さらに、AS2863619に結合するたんぱく質を解析し、AS2863619がシグナル伝達分子であるCDK8(サイクリン依存性キナーゼ8)およびCDK19(サイクリン依存性キナーゼ19)の機能を阻害することで、免疫疾患の原因となる抗原に特異的なT細胞を高効率でTregに変換するということが明らかとなりました。
実際に、皮膚炎症やI型糖尿病、脳脊髄炎のモデルマウスにAS2863619を投与することで、マウス中のTregが増加し、炎症病態が抑制されることも示されました。
病気を起こすT細胞をTregに変換して免疫を抑制する方法は、従来の免疫抑制薬とは異なり抗原特異的な働きをするので、副作用の少ない安全な免疫抑制治療が実現できます。 今回の発見はそのような治療法の実用化に向けた研究を加速することが期待されます。
この研究成果は10月26日に、米国の学術誌 Science Immunology のオンライン版に掲載されました。
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【2019.10.8】抗リウマチ薬のフィルゴチニブの承認が申請されました
ギリアド・サイエンシズ株式会社が、フィルゴチニブ(開発コード:GLPG0634/GS-6034)の製造販売承認申請を行いました。
フィルゴチニブは、JAK1阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)で、経口投与です。
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【2019.9.30】医療介護専用の完全非公開型SNSと連動した治療支援ツールの提供開始
中外製薬とエンブレースが、関節リウマチ患者さんへの治療支援ツールの提供を開始したそうです。
このツールは、エンブレースが医療介護専用に開発した完全非公開型SNSであるメディカルケアステーションと連動したウェブツールで、患者や医療介護者がツールに記録した症状や体調の変化を共有し、相互に確認することで、よりよい治療支援に繋げるのが目的です。
想定される利用シーンは、ひとり暮らしの患者の体調管理、頻回に来院できない遠隔地の患者のフォロー、電子版の患者手帳、地域医療連携のツールで、遠隔地にいても症状の確認やグラフなどを記録して自己管理でき、医療関係者と共有することが可能です。
ただし、このツールは医療介護者が申しこみ、患者を「招待」することが必要で、単独では使えないようです。
ちなみに、単独でも使える関節リウマチのアプリとしてはwelbyのリウマチダイアリーがあります。
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【2019.9.6】自己免疫疾患の新たな病態発症メカニズムを解明 −炎症性疾患におけるT細胞の新たな役割
京都大学の大学院医学研究科・医学部の佐々木克博講師、岩井一宏教授らと、理化学研究所と共同の研究グループが、T細胞が引き起こす炎症について、新たな発症メカニズムを解明したそうです。
ニュースの中身に触れる前に・・・ここで、まず理解しておきたい事柄として「自己炎症性疾患」という言葉があります。 わたしたちが罹患している関節リウマチは「自己免疫疾患」の一つです。 自己免疫疾患では自分のDNAやタンパク質に対する自己抗体が存在することから、獲得免疫系の異常と考えられています。 「自己炎症性疾患」は似たような名前ですが、全く別の概念です。 自己炎症性疾患では自己抗体は存在せず、先天的な遺伝子の変異によって自然免疫系が過剰応答し、感染してもいないのに発熱したり、皮膚の症状が出たり、リンパ節が腫れたりします。
さて、別々のものであるはずの、これら2つの種類の疾患ですが、今回の研究では、慢性増殖性皮膚炎のマウスによる実験によって、T細胞は複数の経路で炎症を生じさせることができ、場合によっては自然免疫系の異常な活性化によって生じるような炎症も起こし得ること、その機序の一つは皮膚組織に浸潤したわずかな活性化T細胞が、TNF-αを介して皮膚表皮細胞のアポトーシスおよびネクロプトーシスと呼ばれる複数の細胞死を引き起こすことであることを証明したとのことです。 加えて、獲得免疫系の細胞であるT細胞が過剰に活性化されるだけで、自然免疫系をも活性化させ、自己免疫疾患を起こせることも明確にしたとのことです。
これまで、T細胞が自己を傷害する炎症は、病巣にリンパ球が浸潤する自己免疫疾患と考えられてきました。 しかし今回の研究成果から、T細胞はリンパ球非依存性と考えられる自己炎症性疾患と診断されるような自己を傷害する炎症にも関与する可能性が明らかになりました。 さらに、病因が明らかに異なる疾患であっても、見かけ上類似した様相を示す疾患が存在することを、実験的に明確に証明しました。
ちなみに、抗TNF-α抗体は自己免疫疾患である関節リウマチを抑えますが、そのことは自己免疫疾患の病態形成に今回発見された経路が関与している可能性が高いことを示すのだそうです。
この研究成果は8月28日に、英国科学誌 Nature Communications のオンライン版に掲載されました。
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【2019.7.4】関節リウマチへの迷走神経刺激の有効性
6月12日〜15日にスペインのマドリード開かれた欧州リウマチ学会(EULAR2019)で、埋め込み型の迷走神経刺激(VNS)用小型装置(Micro Regulator;MR)の臨床試験の結果が発表されました。
2015年10月28日の記事で紹介した、迷走神経を制御して炎症を抑えようという話の発展かと思います。
今回はアメリカのスタンフォード大学医学部のMark Genovese氏の「新たに開発した小型の神経刺激装置(Micro Regulator:MR)についての発表だったそうで、『日経サイエンス』2015年6月号の「炎症を直すバイオエレクトロニック医薬」を執筆したKevin J. Tracey氏の研究との関連性は不明です。
MRは左頸部迷走神経に植え込み、炎症反射を活性化させる小さなワイヤレス充電式装置で、1日1回1分の刺激でDAS28-CRPが低下、症状の改善や炎症性サイトカインの産生抑制などが確認できたそうで、Genovese氏は「今回の検討から、MRによるVNSは忍容性が高く、相当数の薬剤耐性RA患者の症状を改善できることが分かった。この成果は、生物学的製剤やその他の経口薬で治療効果を十分に得られないRAおよび慢性炎症性疾患へのMRの実用化を目指した、より大規模な臨床試験の実施を促すことになるだろう」と述べたとのことです。
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【2019.8.27】関節リウマチの2つの自己抗体価(抗CCP抗体(ACPA)とリウマチ因子(RF))に対する喫煙の影響−遺伝的背景により異なる効果
理化学研究所の生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの石川優樹客員研究員、寺尾知可史チームリーダー、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター、京都大学医学部附属病院リウマチセンターの共同研究グループは、関節リウマチ患者の喫煙歴が2つの自己抗体価、抗CCP抗体(ACPA)とリウマチ因子(RF)に及ぼす影響が、遺伝的背景によって異なることを発見したそうです。
今までにも、喫煙や粉塵吸入などが関節リウマチを含む自己免疫疾患に関与しているようだという調査研究はありましたが、今回は発症時の喫煙が発症後のACPA・RF高値と強く関連しており、特にRFの影響がACPAよりも強く認められる、ということがわかったそうです。 また、ACPAについてはHLA-DRB1遺伝子型を持つ患者では、喫煙による高値への影響が認められ、RF高値への影響はHLA-DRB1遺伝子型をに関係なく認められたとのことです。
今回の調査はRAの詳細な喫煙の調査として、アジアで最大規模だそうで、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターと京都大学医学部附属病院リウマチセンターに通院する合計6,239人の関節リウマチの患者を対象としたものです。
この研究成果は8月19日付けで、英国の科学雑誌 Annals of the Rheumatic Diseases オンライン版に掲載されました。
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【2019.7.25】炎症が制御される新たなRNA分解メカニズムを解明−「UPF1」は「Regnase-1」による炎症性サイトカインmRNA分解を手伝う
京都大学が、RNAヘリカーゼであるUPF1という酵素によるRNAの構造変化(二次構造が解ける)をスイッチとするmRNA分解が、炎症反応の巧妙なブレーキとして機能することと、これがSMG1キナーゼという酵素により活性化されることを解明したと発表しました。 この研究は、京都大学の大学院医学研究科・医学部の竹内理教授らの研究グループと、宮崎大学、東京大学、大阪大学、理化学研究所、横浜市立大学との共同研究によるものです。
細菌やウイルスなどの病原体感染起こると、炎症性サイトカインが病原体を排除します。 でも、過剰な炎症はは自己免疫疾患を含むいろいろな病気の原因となります。 生体には、炎症を精緻にコントロールするしくみが備わっているのですが、その破綻が炎症性疾患の発症に関連すると考えられています。
今回の研究では、炎症性サイトカインが作られるプロセスで、DNA からmRNAが転写され、次に mRNA からタンパク質が翻訳されるとき、mRNAの量の調節に関わる酵素SMG1、UPF1、Regnase-1という制御因子が複雑に関わりながらRNAの構造変化というスイッチを巧妙に切り替えて免疫を制御しているという新しいメカニズムが発見されました。
以前から、RNA分解酵素であるRegnase-1が標的となるmRNA上に存在するステムループ構造を認識して、UPF1と協調的に作用して、タンパク質翻訳を行っている炎症性mRNAを分解することはわかっていました。 今回の研究では、UPF1がmRNA上に存在するステムループ構造をほどくことで、Regnase-1が炎症性サイトカインのmRNAの切断を開始して炎症のブレーキが活性化されること、また、UPF1がSMG1キナーゼによるリン酸化をきっかけとしてRNAの構造変化が誘導されることが解明されました。 さらに、SMG1キナーゼ活性を阻害剤で抑制すると、樹状細胞の成熟、免疫応答の活性化が起こることを見出しました。
今後、更にヒト自己免疫疾患や炎症性疾患におけるSMG1UPF1Regnase-1の機能を検討することで、これらの疾患の病態解明につながることが期待されます。
この研究成果は7月22日に英国の国際学術誌 Nucleic Acids Research にオンライン掲載されました。
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【2019.7.18】関節リウマチを誘発する濾胞性T細胞とそのメカニズム−「OX40」によるシアル化の制御
筑波大学の医学医療系 内科(膠原病・リウマチ・アレルギー)の松本功准教授、住田孝之教授、蔵田泉助教らの研究グループは関節リウマチ患者における自己抗体の炎症惹起能を制御する濾胞性T細胞群の同定、および病態悪化に関与する機序を明らかにしたそうです。
シトルリン化タンパク質に反応する自己抗体である、抗シトルリン化蛋白抗体(抗CCP抗体、ACPA)などは関節リウマチでの診断の指標になっており、それらの抗原と抗体の結び付いた免疫複合体の増加が骨破壊につながっています。 シトルリン化タンパク質は、ペプチド中の塩基性アミノ酸であるアルギニンが中性アミノ酸のシトルリンに置換されることによって生じたタンパク質の総称です。 ACPAのアイソタイプは今のところIgG、IgM、IgA,、IgEがあるとされていますが、その中でも診断の指標として測定さていれるのはIgG抗体です。
IgGのFc領域(Y字の脚の部分)の297番目のアスパラギンに結合する糖鎖の種類と付加の有無によってその構造に30種ほどの多様性が生じます。 このような糖鎖構造の差異がIgGの機能を修飾することが報告されており、関節リウマチ患者の血中のACPAの糖鎖では健常人の血中IgGと比べてシアル酸とガラクトースが減少していて、特にシアル酸の欠損が関節炎を憎悪させることがわかっています。 つまり、低シアル化自己抗体が炎症性サイトカインの産生を促しているということです。(2016年4月6日の記事を参照)
シトルリン化タンパク質の産生を促す細胞として濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)が重要であることが知られています。 この細胞はB細胞と協調して自己抗体の脱シアル化を介して、関節リウマチの炎症の悪化を促している可能性がありますが、今までどの濾胞性ヘルパーT細胞群がどのようにシアル化をコントロールするかは明らかではありませんでした。
今回の研究グループの関節炎動物モデルリンパ節では、関節炎病初期にIL-17(インターロイキン17)を産生する濾胞性T細胞のTfh17が多く存在し、その群は表面にOX40分子を高発現していました。 OX40はそのリガンドであるOX40Lが結合したOX40L-OX40複合体はT細胞の生存を助け、ヘルパーT細胞の分化を促す働きがあります。
濾胞性T細胞は自己抗体産生の増加、およびその炎症惹起性に変化をもたらしますが、糖鎖解析により、IgGの低シアル化が病態誘導期に進行していることが判明しました。 生体内でOX40経路を抑制することにより、Tfh17細胞が低下し、B細胞ではシアル化を誘導する酵素(St6gal1)が回復し、自己抗体のシアル化が改善、関節炎が減弱していました。 未治療のリウマチ患者末梢血の解析では、変形性関節症患者と比べて、OX40を発現するTfh17が増加し、Tf17数は抗シトルリン化蛋白抗体と正の相関をする一方、形質芽細胞のSt6gal1とは負の相関を示しました。 これらのことより、OX40を発現するTfh17が自己抗体のシアル化を負に制御し、RAの病態悪化に関わっていることが明らかになりました。
このOX40のメカニズムを解明することにより、サイトカインを直接制御する治療法とは異なる、感染症等を引き起こさない治療法の開発が期待されます。
この研究成果は2019年7月12日付 Annals of the Rheumatic Diseases でオンライン先行公開されました。
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【2019.7.10】スマイラフ(一般名:ペフィシチニブ臭化水素酸塩)が発売
抗リウマチ薬のスマイラフ錠50mg、同100mg(一般名:ペフィシチニブ臭化水素酸塩)が、アステラス製薬より7月10日に発売されました。
スマイラフはペフィシチニブは、JAK3阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)です。 剤型は50mg(黄色)と100mg(淡赤色)で経口投与の錠剤です。 通常、成人は150mgを1日1回食後に経口投与、状態に応じて100mgを1日1回投与です。
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【2019.7.8】免疫のブレーキ役である制御性T細胞(Treg)の分化メカニズムの一端を解明
東邦大学の医学部の生化学講座の片桐翔治大学院生、山ア創准教授、中野裕康教授らの研究グループは、転写因子のJunBが免疫応答を強めるサイトカインであるのIL-2(インターロイキン-2)のシグナルを活性化することにより、免疫のブレーキ役としてはたらく制御性T細胞(Treg)の生成を促進することを明らかにしたそうです。
他のT細胞の働きを抑えて免疫応答のブレーキ役となるTregは、様々な免疫応答を抑制することにより自己免疫疾患の発症や過剰な免疫応答を防ぐ役割を担っています。 この細胞の機能が低下しているマウスでは、様々な自己免疫疾患を発症しやすくなったり、炎症性疾患の症状が悪化することがわかっています。 しかし、体の中に十分な数のTregを準備する仕組みについては未解明な点が多く残されています。 今回、研究グループは、転写因子JunBに着目し、この因子がIL-2のはたらきを通じてTregの数を保つのに重要であることを明らかにしました。
ヒトの潰瘍性大腸炎の動物疾患モデルの一つに、デキストラン硫酸ナトリウムという化合物を投与して誘導する大腸炎モデルがあります。
今回の研究ではまず、JunB欠損マウスにこの大腸炎モデルを誘導したところ、野生型マウスと比較して症状が悪化することがわかりました。 JunB欠損マウスの組織を解析してみるとTregの数が減少していたので、このことが大腸炎の重篤化の原因だと考えられました。 次に研究グループは、Tregの分化にIL-2のシグナルが必要である点に着目して解析を進め、JunBを欠損するT細胞では、IL-2の受容体の発現が低いことに加え、自分自身が放出するIL-2の量も少ないためにTregへの分化効率が低い。 そのためJunB欠損マウスの組織ではTregの数が少なく、過剰な免疫応答を抑えることができないので、症状が悪化するということを突き止めました。
いくつかのヒト自己免疫疾患に対して、IL-2を投与する治療法の可能性が試みられていますが、IL-2シグナルが低下しているマウスを用いた今回の研究結果が、炎症性疾患に対する新たな治療方法の確立につながることが期待されるとのことです。
この研究成果は、雑誌 Mucosal Immunology に7月8日に発表されました。
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【2019.7.1、2019.7.12】「関節リウマチ Good DAY」のコミュニケーションブックの作成とグラフィックレコードを公開
2019年7月1日、日本イーライリリーは、兵庫医科大学および兵庫医療大学の神ア初美教授と京都大学大学院医学研究科の社会健康医学系専攻健康情報学分野の中山 健夫教授の監修のもと、理解されにくい関節リウマチ患者さんの主観的症状に関するアンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)と患者さんと医師と看護師のコミュニケーションについて理解を深める「関節リウマチ Good DAY 看護師と考えるコミュニケーション ブック」を作成しました。また「関節リウマチ 協働的意思決定について考えるムービー」も公開しました。 これらはこちらで見られます。
2019年7月12日には関節リウマチGood DAYデザインワークショップで作成された関節リウマチGood DAYグラフィックレコードが公開されました。 2018年4月12日には2017年11月20日開催の東京の分が公開されていましたが、その後に全国で順次開催している分も合わせての公開です。 2018年3月16日の静岡・2018年10月3日開催の新潟・2018年12月14日開催の広島・2019年3月5日開催の京都・2019年3月5日開催の名古屋
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理解されにくい関節リウマチ患者さんの主観的症状に関するアンメットニーズと患者さん、医師、看護師間のコミュニケーションの課題を“見える化”した『関節リウマチGood DAYグラフィックレコード』を公開[PDF](2019/7/1) by 日本イーライリリー
理解されにくい関節リウマチ患者さんの主観的症状に関するアンメットニーズと患者さんと医師と看護師のコミュニケーションの理解を深める「関節リウマチ Good DAY看護師と考えるコミュニケーションブック」(2019/7/1 17:30) by PR TIMES
関節リウマチ Good DAY 看護師と考えるコミュニケーション ブック by 日本イーライリリー
【2019.6.13】TYK2遺伝子のレアバリアントが関節リウマチ発症を抑制
理化学研究所の生命医科学研究センターの基盤技術開発研究チームの茂木朋貴リサーチアソシエイト(研究当時、現 東京大学大学院農学生命科学研究科 特任研究員)、桃沢幸秀チームリーダー、自己免疫疾患研究チームの高地雄太副チームリーダー、東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻クリニカルシークエンス分野の松田浩一教授らの共同研究グループが、日本人約6,000人分のDNAを解析し、アミノ酸変化を伴う低頻度の遺伝子バリアント(=レアバリアント)がTYK2遺伝子上の特定の領域に存在している場合に、それが関節リウマチの発症を抑制することを発見したそうです。
遺伝子バリアントとは、次世代シークエンス技術を用いて多くの遺伝子を解読したときに見つかる、集団内の個人間での塩基の違いです。 集団内に1%未満という低い頻度で存在するものを、特にレアバリアントと呼びます。
今回、共同研究グループは、バイオバンク・ジャパンで収集された関節リウマチ患者2,322人とリウマチ患者でない人(対照群)4,517人のDNAを使って、98遺伝子上にあるレアバリアントの解析を行いました。 その結果、TYK2遺伝子上にアミノ酸配列に影響を及ぼすレアバリアントを保有すると2.08倍関節リウマチを発症しにくいことが分かったそうです
TYK2は非受容体型チロシンキナーゼの1つで、ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーに属していて、多くのサイトカインシグナルの伝達に関わっています。
さらに、TYK2タンパク質を構成する四つの領域に着目した解析が行われ、そのうちFERM領域に遺伝子バリアントがあると1.52倍、偽リン酸化領域に遺伝子バリアントがあると1.92倍関節リウマチを発症しにくいことが明らかになりました。 その結果、FERM領域のR231Wでは特にIL-6、INF-γによるシグナル変化が抑制され、偽リン酸化領域のR703WではIL-12、IL-23、INF-αによるシグナル変化が抑制されることが分かったそうです。 これらのタンパク質は炎症に寄与するサイトカインとして知られており、TYK2遺伝子の変異によって関節リウマチの発症が抑制されるのは、これら炎症にかかわるサイトカインシグナルの抑制による可能性が示されました。
今回の研究により、TYK2遺伝子上に関節リウマチ発症を抑制するレアバリアントが存在することが明らかとなりました。 また、そのレアバリアントは、TYK2タンパク質の特定の領域に集積しており、これら領域の選択的調節による新たな関節リウマチの治療法の開発につながる可能性も示しているとのことです。
この研究成果は、英国の科学雑誌 Annals of the Rheumatic Diseases の掲載に先立ち、5月22日付けのオンライン版に掲載されました。
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【2019.5.29】シンポニーの新しい剤型の発売
5月29日に抗リウマチ薬のシンポニー(一般名:ゴリムマブ)のの新しい剤型であるシンポニー皮下注50mgオートインジェクターが発売されました。 従来のシリンジと使いやすい方を選べるようになりました。
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【2019.5.20】次世代シークエンス技術とバイオインフォマティクスで免疫細胞の大規模解析に成功、50万カ所のゲノム領域を同定
理化学研究所の生命医科学研究センターの免疫遺伝子発現研究YCIラボの吉田英行上級研究員らの国際共同研究グループが、マウスの免疫細胞の遺伝子発現パターンやクロマチン構造の大規模な解析を行い、遺伝子発現を制御すると考えられるゲノム領域を50万カ所以上同定したそうです。
今回の研究では、多くの転写因子を一度に調べるために、次世代シークエンス技術(DNA断片の配列を並列的に極めて短時間で解析する技術)を利用した網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)を行い、転写因子の転写制御領域への結合を網羅的に調べました。 これらは遺伝子転写の一面を示すデータとはなりますが、それぞれ単独では発現制御の解析には不十分なものです。 そこで、既知のデータベースを活用したバイオインフォマティクスで発現制御領域のDNA配列に基づいた転写因子を予測し、免疫細胞間の相違点や共通点といった解析も有効に行うことができたとのことです。
その結果、何らかの遺伝子発現制御に関わっていると考えられる50万カ所以上のゲノム領域、さらには約7,000の遺伝子の発現制御に関連する転写制御領域とそこへの結合が推定される200以上の転写因子を明らかにでき、これまでの研究手法では達成できなかったスケールで免疫細胞における転写制御機構に迫ることができたそうです。
この研究成果は、免疫システムを形成する多種多様な免疫細胞が、どのようにして異なる遺伝子発現のパターンを形成するのか、その全容解明の基盤となる知見であり、得られたデータは無償で公開され、世界中の研究者が、免疫細胞の研究のみならず、より広範囲な遺伝子発現制御といった分野にも利用することができ、さまざまな生物学的研究の基盤として活用されることが期待でき、さらには自己免疫疾患の病因やそれらの治療方法の開発への貢献も期待できるとのことです。
この研究成果は、2月7日に米国科学誌 Cell に掲載されました。
※バイオインフォマティクスと次世代シークエンス技術については、2018年3月7日の記事もご覧ください。
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【2019.5.14】免疫細胞の移動に関わる新たな免疫制御因子「COMMD3/8複合体」の発見
大阪大学の免疫応答ダイナミクス研究室の中井晶子助教、大学院生の藤本潤(博士課程)、鈴木一博教授(微生物病研究所兼任)らの研究グループが、免疫細胞の移動に関わる分子としてCOMMD3/8複合体を発見し、免疫応答の成立にきわめて重要な役割を果たしていることを解明したそうです。
生体内での免疫細胞の遊走(移動)は、免疫機能に必須であり、自己免疫疾患のメカニズムでも重要で、そのしくみの大部分はケモカインに代表される走化性因子(細胞の遊走を誘引する物質)とその受容体によって制御されています。 ケモカインはサイトカイン(免疫担当細胞が作るタンパク質、細胞相互の情報伝達をする役割を持つ)の一種で、これまでに50種類以上発見されています。 ケモカインによる遊走のしくみはたいへん複雑で、今までにも世界中でたくさんの研究・発見がされてきました。
今回の研究では、COMMD3/8複合体(コムディー・スリー・エイト複合体)という、COMMD3(copper metabolism MURR1 domain 3、コムディー・スリー)とCOMMD8(copper metabolism MURR1 domain 8、コムディー・エイト)というタンパクから構成される分子複合体が同定され、その役割について解明されたそうです。
研究グループはCOMMD3/8複合体を欠損するマウスでは活性化B細胞の移動が低下し、抗体の産生をはじめとする免疫応答が著しく低下することから、COMMD3/8複合体がケモカイン受容体のシグナル伝達を促進することを突き止めました。
さらに、研究グループCOMMD3/8複合体を構成するCOMMD3とCOMMD8が興味深い性質をもっていることを発見しました。 COMMD3あるいはCOMMD8のいずれか一方を欠損する細胞では、他方が分解されてしまうことがわかりました。 つまり、COMMD3とCOMMD8は複合体をつくることによってはじめて安定に存在し得ることもわかりました。
COMMD3/8複合体の機能を阻害し、免疫応答を抑制することによって、過剰な免疫応答により引き起こされる自己免疫疾患やその他の炎症性疾患の病態が改善される可能性が示唆され、COMMD3/8複合体はこれらの疾患の治療における新たな創薬ターゲットになると期待されるとのことです。
この研究成果は、5月14日に米国科学誌 The Journal of Experimental Medicine に掲載されました。
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【2019.4.19】抑制性免疫補助受容体PD-1が有益な免疫応答を抑制しないメカニズムを解明
徳島大学の先端酵素学研究所の杉浦大祐特任助教、岡崎拓教授らの研究グループは、抑制性免疫補助受容体(=免疫チェックポイント分子)であるPD-1(Programmed cell death 1)が、有益な免疫応答は抑制せずに、自己免疫疾患につながる免疫応答だけを抑制するメカニズムを解明したそうです。
PD-1は活性化T細胞の表面に発現する受容体です。 PD-L1は抗原提示細胞(マクロファージ、B細胞、樹状細胞等)の表面や血管内皮等に発現し、PD-1はPD-L1と結合することで抑制作用を発揮します。 PD-1は自己組織やがん細胞を攻撃するT細胞を強力に抑制するにもかかわらず、通常の免疫応答を抑制することはありませんが、その理由は不明でした。 T細胞に抗原を提示する抗原提示細胞の表面には副刺激分子のCD80が発現しています。 今回の研究ではマウスを使って、このCD80がPD-L1と隣り合わせに結合(シス結合)していて、そのためにPD-1はPD-L1に結合できなくなり、PD-1による抑制が起こらなくなることを明らかにしました。 自己免疫疾患の標的となる実質細胞やがん細胞は通常CD80を発現しないため、PD-L1はT細胞のPD-1と結合できて、T細胞の活性化は抑制されるため細胞は攻撃されません。 一方、T細胞は抗原提示細胞が提示する抗原を認識しますが、抗原提示細胞にはCD80が発現しているためPD-L1はT細胞のPD-1と結合できなくなり、提示された抗原に対してT細胞が適切に活性化されると考えられます。
CD80をPD-L1にシス結合できなくしたマウスでは、ワクチンに対する免疫応答が弱まり、自己免疫疾患の発症も軽減されたとのことです。
今回の研究で、PD-1が生体にとって必要な免疫応答は抑制しないが、自己免疫疾患につながる免疫応答や、がん免疫応答を選択的に抑制するメカニズムが解明され、新たな自己免疫疾患の治療法開発につながることが期待されるとのことです。
この研究成果は、2019年4月18日付で米国科学雑誌 Science に掲載されました。
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【2019.4.9】AI技術を活用してCT画像での間質性肺炎の診断支援技術を開発
関節リウマチと間質性肺炎は、深い関係があります。 関節リウマチの合併症としての間質性肺炎、それとは別にメトトレキサートをはじめとした抗リウマチ薬による薬剤性間質性肺炎です。 痰の出ないカラ咳が特徴なのですが、激しい症状がなくて気づきにくく、知らないうちに徐々に進行してしまうこともありますので、リウマチャーであるなら胸部の聴診や定期的なX線やCT、血液検査でのKL-6測定などでチェックが必要です。
そんな間質性肺炎の診断に、富士フイルムと京都大学の大学院の医学研究科呼吸器内科学が、AI(人工知能)技術を使って間質性肺炎の病変を高精度に自動で分類および定量化する技術を共同で開発することに成功したそうです。 AI技術を活用したソフトウェアが、CT画像から肺野内の気管支、血管、正常肺および、網状影やすりガラス影、蜂巣肺など肺の7種類の病変性状を識別し、自動で分類・測定することで間質性肺炎の病変を定量化、さらに肺野内における病変の分布と進行状態が詳細に確認できるよう肺野を12の領域分割し、その領域ごとに病変の容積および割合を表示するということです。
富士フイルムは、2020年度中に自社の医療機関向けシステム上で、この技術を使用できる画像診断支援機能の実用化を目指すとのことです。
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【2019.3.15】インテバンSP25 /37.5の製造販売中止
帝國製薬株式会社が、消炎鎮痛薬のインテバンSP25 /37.5の製造販売中止の案内を出しました。
インテバンは2014年7月1日付けで大日本住友製薬株式会社から帝國製薬へ販売移管されていましたが、2018年11月ごろに製造を委託していた工場の閉鎖により販売を中止せざる得ない状況であることが明らかになっており、このたび正式な時期等のリリースが出た次第です。
関節リウマチで使用できる NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)の飲み薬の選択の幅は広く、現在インテバンは主流ではないので、リウマチャー全員が困るということはないと思いますが、1974年からの伝統のある消炎鎮痛薬だけに使い慣れた薬だという人も少なくはないでしょう。 しばらくは在庫はあるようなので、全く入手できなくなるまではけっこうなタイムラグがあると思いますが、それが尽きた際には別の消炎鎮痛薬に変更せざるを得ないですね。
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【2019.2.26】抗リウマチ薬のウパダシチニブの承認が申請されました
アッヴィ合同会社が、ウパダシチニブ(開発コード:ABT-494)の製造販売承認申請を行いました。
ウパダシチニブは、JAK1阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)で、経口投与です。
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【2019.2.7】自己免疫疾患に関わるT細胞の制御分子を「Satb1」を同定
大阪大学の医学部附属病院、医学系研究科腎臓内科学の安田圭子医員、免疫学フロンティア研究センターの廣田圭司招へい准教授(兼京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授)、坂口志文特任教授らの研究グルーブが、自己免疫疾患を引き起こすヘルパーT細胞の自分の体を攻撃する機能を制御する仕組みを明らかにしたそうです。 遺伝子発現の制御分子であるSatb1(サットビーワン、special AT-rich sequence-binding protein-1)に着目し、IL-17サイトカインを産生するヘルパーT細胞であるTh17細胞が病気を引き起こす仕組みを、ヒトの自己免疫疾患であるEAEマウス(実験的自己免疫性脳脊髄炎のマウス、多発性硬化症のモデル)を用いて明らかにしました。
Satb1は核内に存在するタンパク質で、転写因子として他の遺伝子の発現を調節する働きを持ち、なんと1000以上の遺伝子の働きを変えることが知られています。 このSatb1がT細胞が分化するときにどの種類のT細胞になるかを決定する遺伝子を直接的に調節することが分かっており、制御性T細胞(Treg)が正常に分化するためにはのSatb1が必須であることは坂口志文特任教授らの研究グループからも報告されていました。 しかし、生体内でIL-17サイトカインを産生するTh17細胞でのSatb1の役割についてはこれまで不明でした。
今回の研究では、グループが作製に成功したIL-17を産生した細胞を蛍光色素で標識するリポーターマウスを使って、Satb1を欠損するTh17細胞を生きた状態で回収することに成功しました。 Th17細胞でSatb1が欠損すると、病気の発症に必須のサイトカインであるGM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor、顆粒球単球コロニー刺激因子)の産生が抑えられ、さらに抑制性免疫補助受容体(=免疫チェックポイント分子)であるPD-1の発現を上昇させることで病気を軽減させることが分かりました。
Bhlhe40という転写因子の発現を調節する遺伝子領域にSatb1が転写因子として直接作用してBhlhe40の発現を亢進させ、さらにBhlhe40の作用によって病気をおこすサイトカインであるGM-CSFの産生を増加させることが明らかとなりました。 加えて別の経路として、脳脊髄に浸潤しているTh17細胞において、Satb1の欠損はPD-1の発現を亢進する方向に働き、IL-17やIL-2といったサイトカインの産生を抑制し、結果としてEAEの病勢を抑えることが分かったとのことです。
以上の結果から、Th17細胞でのSatb1の発現を抑えることを治療の標的とすることで、多発性硬化症のような自己免疫疾患に対する新しい治療法の開発に結び付くことが期待されるとのことです。 文中には関節リウマチのことはありませんが、2018年5月23日のGM-CSFについての記事の延長線上にある研究で、自己免疫疾患の一つである関節リウマチの治療法の開発にも結び付くことが期待されると思います。
この研究成果は、2月1日に英国科学誌 Nature Communications のオンライン版に掲載されました。
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【2018.12.17】転写因子「JunB」による過剰な免疫反応を抑えるための制御性T細胞(Treg)の制御メカニズムの発見
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の免疫シグナルユニットの小泉真一研究員らは、転写因子「JunB」が、免疫反応のブレーキとして働く制御性T細胞(Treg)の免疫抑制機能を促進することを発見したそうです。
Tregが正常に機能するためには、リンパ節などリンパ系組織に存在するナイーブ型のTregが、様々な非リンパ系の臓器に移動し、強力な免疫抑制機能を示すエフェクター型のTregへと分化する必要があります。 研究チームは、エフェクター型のTregの分化および機能を制御するメカニズムを理解するために、転写因子JunBに注目しました。 同チームは昨年、2017年5月30日の記事にあるように、JunBがナイーブT細胞から自己免疫疾患を引き起こす悪性Th17細胞への分化に不可欠であることを報告しましたが、TregにおけるJunBの機能は分かっていませんでした。
まず、研究チームはJunBがTreg集団のなかでナイーブ型ではなくエフェクター型の細胞においてのみ発現することを見出しました。 次に、TregのJunBの機能を明らかにするために、この細胞集団においてJunBを欠損するマウスを作製しました。 作製したマウスは正常に生まれましたが、生後4週間には顕著な体重減少を示し、生後24週までに半数以上のマウスが死亡しました。 これらのマウスの肺と大腸においては激しい炎症が見られましたが、皮膚と肝臓ではそのような炎症は認められませんでした。
JunBの欠損がTregへ与える影響を調べたところ、JunBはエフェクター型のTregの分化には必要ありませんでしたが、その細胞数の維持、大腸への蓄積、および免疫抑制機能の亢進のために重要であることが明らかになりました。 さらに、JunBの欠損により発現が変動する遺伝子を網羅的に解析したところ、免疫チェックポイント分子CTLA4を含むいくつかの免疫抑制機能をもつ分子の発現がJunBによって制御されることが明らかになりました。 しかしながら、エフェクター型のTregで高く発現する多くの遺伝子はJunBに依存せずに発現することも確認されました。 これらの結果は、JunBはエフェクター型のTregの特定の機能を促進することで、肺および大腸の炎症を抑制することを示唆しています。
今回の研究成果は、転写因子JunBがエフェクター型のTregの機能を調節し、肺と大腸の炎症の抑制に重要な役割を果たすことを明らかにしました。 このような役割はこれまでに報告されているTregの分化および機能制御に関わる転写因子では見られていないユニークなものです。
小泉博士は「TregのJunBの活性を高めることは、自己免疫疾患やアレルギー疾患の新たな治療法となると期待されます。 逆に、TregのJunBの活性を抑えることで肺がんや大腸がんに対する免疫を特異的に促進し、他の組織への副作用の少ない新たながん免疫療法の開発につながる可能性もあります」と、述べています。
この研究成果は、12月17日発行の英科学誌 Nature Communications に掲載されました。
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【2018.11月、12月】新しい剤型やバイオシミラーの発売
11月28日にアステラス製薬がシムジアの新しい剤型であるシムジア(一般名:セルトリズマブ ペゴル)皮下注200mgオートクリックスを発売しました。 この自動注射器は、ユニバーサルデザインで有名なOXO(オクソー)との提携により、黒い滑り止め加工の太いグリップを採用ています。 また、注射開始時と完了時のにクリック音が鳴るのと、本体に窓があるので、きちんと注射できたか確認しやすい仕様です。
12月10日にファイザーがインフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」(一般名:インフリキシマブ(遺伝子組換え))を発売しました。
12月11日に旭化成ファーマがケブザラの新しい剤型であるケブザラ皮下注150mgオートインジェクター、同200mgオートインジェクター」(一般名:サリルマブ(遺伝子組換え))を発売しました。
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【2018.11.8】疾患ゲノム情報に基づくマイクロRNAスクリーニング手法「MIGWAS」による、関節リウマチのバイオマーカの同定
大阪大学の大学院医学系研究科の遺伝統計学の岡田随象教授らの研究グループが、大規模なGWAS(ゲノムワイド関連解析、genome-wide association study)の手法と、理化学研究所が主宰する哺乳類ゲノムの国際研究コンソーシアムであるFANTOM5コンソーシアムが構築したマイクロRNA組織特異的発現カタログデータを統合する、インシリコ・スクリーニング手法を開発し、マイクロRNAが組織特異的に作用することで数多くのヒト疾患の発症に関与していることを明らかにしたそうです。
インシリコ(in silico)とは、コンピュータ(つまりシリコンチップ)の中で、という意味で、in vivo(生体内で)や、in vitro(試験管内で)に対して作られた用語です。 インシリコ・スクリーニングは仮想スクリーニング(virtual screening)とも呼ばれ、あらかじめコンピュータに情報を入力しておいて、コンピュータ上で仮想実験を行って対象物質を選定することです。
これまでの研究で、マイクロRNAが数多くの疾患に関与していることが示唆されてきました。 しかし、疾患ゲノム情報を活用して網羅的にマイクロRNAの関与を示すことは困難でした。 岡田教授らのグループの研究は、このニュースのページでも何度も登場してきています。 以前から行っていた、GWASの結果とマイクロRNAネットワークをスーパーコンピューター上で統合するデータ解析手法を発展させ、さらに細胞組織特異的マイクロRNA発現情報と統合的解析を行う、このたび、インシリコ・スクリーニング手法MIGWASの開発に成功しました。 MIGWASの開発により、マイクロRNAが生体内のどの組織で機能して、どの疾患の発症に関与しているかを明らかにしました。
その結果の実証実験を関節リウマチの患者由来サンプルで行い、関節リウマチの発症に関わる複数のマイクロRNA(hsa-miR-93-5p、hsa-miR-106b-5p、hsa-miR-301b-3p、hsamiR-762)をバイオマーカーとして同定することに成功したそうです。
この究成果は、英国科学誌 Nucleic Acids Researchに、11月8日に公開されました。
ニュースソース↓
疾患ゲノム情報と組織特異的マイクロRNA発現情報の統合により、関節リウマチのバイオマーカーを同定(2018/11/8) by 大阪大学
疾患ゲノム情報と組織特異的マイクロRNA発現情報の統合により、関節リウマチのバイオマーカーを同定(2018/11/8) by 理化学研究所
Integration of genetics and miRNA-target gene network identified disease biology implicated in tissue specificity(2018/11/8) by Nucleic Acids Research
阪大など、関節リウマチの発症予測へ ゲノムを解析 (2018/11/8) by 日本経済新聞
【2018.9.19】関節リウマチの病態に関わる転写因子「Sox4」を同定
京都大学のウイルス・再生医科学研究所/iPS細胞研究所吉富啓之 准教授、戸口田淳也 同教授、京都大学大学院医学研究科AKプロジェクト 小林志緒 研究員(研究当時、現 ジョスリン糖尿病センター研究員)、宮川(林野)文 同特定准教授(研究当時、現 京都府立医科大学病理部講師)、京都大学医学部附属病院整形外科伊藤宣 准教授、松田秀一 同教授らの研究グループが、関節リウマチの炎症環境において、Sox4という転写因子が鍵となって、ヘルパーT細胞が発症の重要な因子CXCL13を作ることを明らかにしたそうです。
これまでに、患者の炎症のある関節の中にあるT細胞の機能を調べた結果、抑制性免疫補助受容体(=免疫チェックポイント分子)PD-1(Programmed Cell Death-1)を表面に発現するヘルパーT細胞が、リンパ球を集積させる因子であるCXCL13というケモカインを分泌し、炎症のあるところにリンパ濾胞とよばれるリンパ球の集まりを誘導することがわかっていました。 これは、2013年9月20日のニュースにあるとおりです。 しかし、このT細胞でどのような転写因子が鍵となってCXCL13が作られるのかはまだわかっていませんでした。
グループが研究したヘルパーT細胞は、細胞の表面にPD-1を強く発現しCXCR5受容体はほとんど発現しないPD-1(hi)CXCR5(-)という特徴を持つヘルパーT細胞です。 この細胞は血液の中ではCXCL13をほとんど作りませんが、炎症のある関節ではCXCL13を作ることから、炎症によって何かの転写因子が増加し、その結果CXCL13が作られると考えました。 そこで、まだ分化していない血液のヘルパーT細胞を様々な炎症条件で刺激することで、PD-1(hi)CXCR5(-)の特徴を持ちCXCL13を作るヘルパーT細胞胞が産生されるかどうかを調べました。すると、TGF-β(トランスフォーミングベータ型変異増殖因子)が存在してIL-2が抑えられている様な炎症条件でそのようなヘルパーT細胞が産生されることがわかりました。 次にこのヘルパーT細胞のすべての遺伝子の変化を調べたところ、転写因子の中ではSox4という遺伝子の発現だけが増えていることがわかりました。 そこでSox4を強制的にT細胞で発現させてみると、T細胞がCXCL13を作ることが確認できました。
さらに、実際の患者の炎症のある患部で、ヘルパーT細胞がSox4を発現しているのかを調べました。 その結果、予想通りSox4が増えており、また関節でのSox4の発現が強いとCXCL13により生じるリンパ濾胞が増加することがわかりました。 このことから、Sox4は関節リウマチなどの炎症を伴う免疫の病気で重要な役割を果たすことが示されました。
また、Sox4はマウスのヘルパーT細胞ではCXCL13を作りませんでした。 このことは、上記の結果はマウスの研究では見つけることができず、実際の患者で起きている現象を研究したからこそ発見できたといえ、非常に意義のある研究だと考えているとのことです。
この研究成果は、9月19日に英国科学誌 Nature Communications のオンライン版に掲載されました。
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【2018.6.26】免疫抑制剤、妊婦の禁忌解除へ‐添付文書の改訂を了承
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は6月26日の平成30年度第3回の会議で、免疫抑制剤3品目「タクロリムス」・「シクロスポリン」・「アザチオプリン」、それぞれ商品名はプログラフ・サンディミュン(ただし2018年6月以降在庫終了次第販売を終了)、ネオーラル・アザニン、の添付文書を改訂することを了承したそうです。
いままでは、胎児の先天奇形などを引き起こす恐れから、現在は妊婦と妊娠している可能性のある女性に対する投与を禁じていましたが、国立成育医療センターの妊娠と薬情報センターが中心となって3年前から海外の疫学研究では先天奇形の発生率が上昇した報告がないことなどを踏まえ、禁忌を解除するとのことです。 使用上の注意の「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項において、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとした注意喚起が記載されます。
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2018年6月26日 平成30年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録(2018/6/26) by 厚生労働省
平成30年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料(2018/6/26) by 厚生労働省
妊婦禁忌薬 厚労省が処方容認へ 3品目、難病に配慮(2018/6/18 7:30) by 毎日新聞
妊婦に朗報、三つの免疫抑制剤の使用OKに 厚労省(2018/6/27 6:30) by 朝日新聞
免疫抑制剤 妊婦も容認…2年で2万件 地道に分析(2018/7/4) by 読売新聞
妊娠と薬情報センターが取り組んだ添付文書改訂の成果が紹介されました by 国立成育医療センター
【2018.6.18】エンブレルの新しい剤型が発売
ファイザーと武田薬品が6月18日、両社のコ・プロモーションで販売しているエンブレル(一般名:エタネルセプト)の新しい剤型である「エンブレル皮下注25mgペン0.5mL」を発売しました。
いままでにも、シリンジには25mgがありましたが、ペン型にはまだありませんでした。 自己注射で25mgを使っている人にとって便利になることと思います。
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【2018.6.18】健康と病いの語り ディペックス・ジャパンに「慢性の痛みの語り」のページが開設
NPO法人健康と病いの語り ディペックス・ジャパンが、「慢性の痛みの語り」のページを開設しました。
DIPEx(Database of Individual Patient Experiences)は、英国のオックスフォード大学の健康体験研究グループ Health Experience Research Group(HERG)が開発した手法で、健康や病気の個人的経験を研究するためのデータベースです。 2001年に乳がんと診断された総合診療医と膝関節置換術を経験した臨床薬理学者の経験を経て設立されました。 ウェブサイトには、さまざまな健康状態での生活経験について話している患者のビデオクリップがあります。 現在では毎年数百万人のインタビューが行われ、100以上の健康状態に関する情報を共有し、患者や家族、医療従事者、医学生などのが病気について理解することを目的としています。 そして、世界各国で同様のプロジェクトが実施されており、NPO法人健康と病いの語り ディペックス・ジャパンは日本で唯一のDIPEx公式サイトです。
今回は新たに「慢性の痛みの語り」のページが開設され、関節リウマチの患者の語りも掲載されています。
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【2018.6.11、2018.6.21】ヒュミラの新しい剤型が発売
アッヴィ合同会社とエーザイおよびその消化器事業子会社であるEAファーマが、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)のオート・インジェクター製剤「ヒュミラ皮下注40mgペン0.4mL」、および「ヒュミラ皮下注80mgペン0.8mL」について、5月30日に薬価基準に収載されたことを受け、6月11に発売しました。
このペン型は、自己注射時の操作の手間と負担の軽減を目的に開発され、握力が弱い人の手にもフィットしやすいように膨らみをもたせたペン型ボディーで、投与前に針が出ないようにするロック機能を備えるとともに、針先を見ることなく投与できる設計となっているそうです。 注射部位に押し当てて作動ボタンを押すだけで、約10秒で全薬液が自動的に注入されるオート・インジェクト・システムに加えて、注射の開始と終了を音で知らせる機能と確認窓を搭載しています。
加えて、小児用製剤として「ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL」について、6月15日に薬価基準に収載されたことを受け、6月21日に発売しました。この小児用は大人が使っている「ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.4mL」と同じ有効成分量で、いくつかの添加物を除いた高濃度製剤です。
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ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」 オート・インジェクター製剤「ヒュミラ皮下注ペン」を新発売(2018/6/11) by アッヴィ合同会社
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」オート・インジェクター製剤「ヒュミラ皮下注ペン」を新発売(2018/6/11) by エーザイ
アッヴィとエーザイ、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」 新たな小児用製剤「ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL」を発売(2018/6/21) by アッヴィ合同会社
アッヴィとエーザイ、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」新たな小児用製剤「ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL」を発売(2018/6/21) by エーザイ
ヒュミラのオートインジェクター製剤発売 自己注しやすく(2018/6/12 3:50) by ミクスOnline
【2018.5.31】抗リウマチ薬のペフィシチニブの承認が申請されました
アステラス製薬が、ペフィシチニブ臭化水素酸塩(開発コード:ASP015K)の製造販売承認申請を行いました。
ペフィシチニブは、JAK3阻害薬(JAKはヤヌスキナーゼ)で、経口投与です。
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【2018.5.30】エタネルセプトのバイオ後続品が発売
持田製薬とあゆみ製薬が、エタネルセプトBS 皮下注用10mg「MA」、同皮下注用25mg「MA」、同皮下注25mg シリンジ0.5mL「MA」、同皮下注50mg シリンジ1.0mL「MA」、同皮下注50mg ペン1.0mL「MA」を発売しました。
国内初のエタネルセプトのバイオ後続品となります。 持田製薬があゆみ製薬に製品を供給し、あゆみ製薬が販売します。 持田製薬が韓国のLG Chem 社との提携契約のもとに国内開発したものです。
なお、25mgペンの剤型追加については現在開発中とのことです。
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【2018.5.23】自己免疫性関節炎の発症・慢性化の原因となる新たな細胞群と炎症ネットワークメカニズムの発見
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの廣田圭司招へい准教授(兼京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授)、坂口志文特任教授らの研究グルーブが、関節リウマチの関節炎の発症および慢性化維持に関わる新たな仕組みを明らかにしたそうです。 関節炎が起きた箇所に存在するGM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor、顆粒球単球コロニー刺激因子)を作る細胞は、Th17細胞、滑膜細胞であることを見いだしました。 加えて、これまで知られていなかった免疫細胞としてGM-CSFを産生する自然リンパ球を発見しました。
GM-CSFは、造血幹細胞(血球に分化する予定の幹細胞)に分化を促すサイトカインの一種です。 また、樹状細胞やマクロファージの活性化に重要な炎症性サイトカインでもあり、リウマチで関節炎が起きている箇所に存在しています。
自然リンパ球(Innate lymphoid cells)は、リンパ球系に属しますが、B細胞やT細胞のような抗原受容体を持っていません。 そのため、抗原抗体反応による獲得免疫ではなく、自然免疫で働くリンパ球です。 近年次々発見され、分類・研究が進められています。 恒常性維持や炎症反応に重要な役割を持っており、異常な場合にはアレルギーや自己免疫疾患のような免疫疾患を引き起こすします。
今回の研究では、坂口教授らの開発したSKGマウス(関節リウマチのモデルマウス)とGM-CSF欠損マウスを使って、炎症滑膜組織に集まる免疫細胞を解析しました。 また、取り分けた自然リンパ球および滑膜細胞の遺伝子の発現を解析し、GM-CSFが作られる条件とともに検討しました。 次に、関節リウマチ患者の末梢血および滑膜液サンプルに含まれるGM-CSFを作る自然リンパ球を解析し、ヒト関節リウマチの病因としての意義を検討しました。
関節炎の箇所のTh17細胞はGM-CSFを多く作ることが確認されましたが、SKGマウスではTh17細胞の作るGM-CSFは炎症の強さには関与するが発症にかかわらないことがわかりました。 この結果から、T細胞以外の細胞が作るGM-CSFが関節炎の発症により強く関与することが示唆されました。
炎症を起こした滑膜細胞はGM-CSFを作る細胞の候補と考えられ、SKGマウスの炎症を起こした関節から滑膜細胞を分離してIL-17により刺激したところ、GM-CSFをコードする遺伝子のmRNAについて発現の上昇が認められ、滑膜細胞はGM-CSFを産生する細胞のひとつであることが明らかにされました。
炎症を起こした関節に浸潤した免疫細胞を探索した結果、CD45陽性の血球系細胞のなかでGM-CSFを発現していたのはT細胞および自然リンパ球でした。 自然リンパ球は炎症を起こす前の正常な関節に常在しており、関節炎の発症により増殖することがわかりました。 滑膜の自然リンパ球はIL-13およびGM-CSFを作り、GM-CSFの発現を誘導する転写因子をコードする遺伝子の発現も認められました。 関節炎が起きる際の自然リンパ球の役割について調べるため、自然リンパ球を特異的に除去したところ、関節炎の重症度が有意に抑制されました。
以上のことから、関節炎が起きた箇所でGM-CSFを作る細胞は、Th17細胞と滑膜細胞に加えて、これまで知られていなかったGM-CSFをつくる自然リンパ球であることが発見されました。 関節炎の発症期にはTh17細胞の作るIL-17が重要であり、特に滑膜細胞のGM-CSFの産生が関節炎発症に重要であることがわかりました。 慢性炎症期においては、Th17細胞、滑膜細胞、自然リンパ球による細胞間および、炎症性サイトカインによる「炎症ネットワーク」が形成されて、それぞれの細胞から産生されたGM-CSFが単球細胞に作用することにより関節破壊に向かうことがわかりました。
この研究で見出した「炎症ネットワーク」形成に関わる細胞群や、炎症性サイトカインを標的とすることによって、関節リウマチに対する新しい免疫療法の開発に結びつくことが期待されるとのことです。
この研究成果は、国際科学雑誌 Immunity のオンライン版(日本時間5月23日 午前1時)に掲載されました。
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【2018.5.8】内在性レトロウイルスを抑え込む普遍的な仕組み、抑制性ヒストンH3K9me3修飾の体細胞での機能を解明
京都大学のウイルス・再生医科学研究所の免疫制御分野のウイルス・再生医科学研究所の竹本経緯子助教、理化学研究所の開拓研究本部の眞貝細胞記憶研究室の加藤雅紀協力研究員(研究当時)、眞貝洋一主任研究員らの研究グループが、哺乳動物の体細胞で内在性レトロウイルス(ERV、Endogenous retrovirus)の発現を抑制する普遍的な仕組みを明らかにしたそうです。
内在性レトロウイルスは、ゲノム内に存在する内在性ウイルス様配列のうち、レトロウイルス(RNAウイルス類の中で逆転写酵素を持つ種類)由来であろうと推定されるものを指します。 これは太古に感染したレトロウイルスが感染先の生物の生殖細胞に入り込み、ゲノムの一部と化したものです。 ヒトゲノムの場合では5〜10%と言われています。 ERVの発現はふだん、エピジェネティック修飾と呼ばれるDNAのメチル化やヒストン修飾によって抑制されています。 ERVの異常発現は、近傍遺伝子の発現への影響やゲノムの不安定性、ERV由来RNAに対する免疫応答反応を引き起こすことが知られています。
ヒストンは染色体を構成する主要なタンパク質で、 DNAはヒストンに巻きついてヌクレオソームという複合体になっています。 そのヒストンがメチル化やアセチル化、リン酸化などの修飾を受けることにより、染色体の構造に変化をもたらし、遺伝子発現の抑制や活性化を調節しています。 これがヒストン修飾です。
今回の研究では、ヒストンの9番目のリジンのトリメチル化(H3K9me3)修飾を担うヒストンメチル化酵素Setdb1遺伝子について、マウスの細胞を用いて詳しく調べられました。 その結果、Setdb1ノックアウト体細胞ではERV領域のH3K9me3修飾が一様に低下しますが、それぞれの細胞に特徴的なERVの種類が脱抑制することが明らかになりました。 また、DNAのメチル化はERVの抑制には限定的であること、組織特異的な転写因子がERVの発現に重要であることが分かりました。 本研究により、H3K9me3は従来の見解と異なり、どの細胞種においても普遍的な抑制エピゲノムとしてERVの抑制に寄与する可能性を提示しました。
内在性レトロウイルスは強力な転写活性をもち、発現するとインターフェロン反応を引き起こすことから、ガンや自己免疫疾患との関連も示唆されており、それら原因解明に役立つと期待できるということです。
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内在性レトロウイルスを抑え込む普遍的な仕組み -抑制性ヒストン修飾の体細胞での機能を解明-(2018/5/9) by 京都大学
内在性レトロウイルスを抑え込む普遍的な仕組み −抑制性ヒストン修飾の体細胞での機能を解明− (2018/5/14) by 京都大学
内在性レトロウイルスを抑え込む普遍的な仕組み−抑制性ヒストン修飾の体細胞での機能を解明−(2018/5/8) by 理化学研究所
A somatic role for the histone methyltransferase Setdb1 in endogenous retrovirus silencing(2018/4/27) by Nature Communications
【2018.4.19】AI(人工知能)でリウマチなどを早期発見、難病診断支援技術の体系化
東京医科歯科大学と日立製作所は、4月19日付けで「TMDUオープンイノベーション制度」(TMDU=Tokyo Medical and Dental University)に基づく連携協定を締結し、難病診断支援を中心に、医療・健康分野における研究開発や事業および人材の教育や育成等に関する取組みを、戦略的かつ柔軟に実施していくこととなったそうです。
「TMDUオープンイノベーション制度」は、東京医科歯科大学が、大学の研究開発能力等を活用するオープンイノベーション型の産学連携において、産業界から大学への積極的な投資、組織的・戦略的な関与を進める制度として2017年度に発足させたものです。
今回の連携は、この制度に基づく最初のものです。 目標は「難病診断支援技術の体系化により、医療の高度化・効率化をめざす」ことです。 その背景として、医療費の増大で治療の費用対効果が見直されている中、診断や治療が困難な疾患(潰瘍性大腸炎やリウマチ、パーキンソン病などの難病)の一定数が、いわゆる「一般的な疾患」の中に紛れ込み、必要以上の検査を受けている、あるいは効果が期待できない(患者のQOL向上につながらない)投薬や治療を受けているという現状があります。 こうした難病のうち一定数以上の患者が存在する疾患を早期に的確に診断することができれば、医療経済上の効果が大きいと考えられるとのことです。
東京医科歯科大学は、臨床機関とのネットワークの下、難病等に関する最新・最先端の知見を数多く有し、日立は、画像診断装置や放射線治療システム等の医療機器、医療情報システム、ITを活用した医療サービス等に関する数多くの強みを有しており、今回の連携では、両者のこうした強みを活かし、臨床と開発が一体となった体制の構築につながるものと考えているとのことです。
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【2018.4.17】関節リウマチの診断と治療経過の把握を可能にし得るバイオマーカー「cit-ITIH4」を発見
筑波大学の医学医療系 内科(膠原病・リウマチ・アレルギー)の松本功准教授、住田孝之教授らの研究グループは関節リウマチ患者における特異的な新規バイオマーカーとして、cit-ITIH4タンパク(シトルリン化 inter-α-trypsin inhibitor heavy chain 4タンパク)を発見したそうです。
みなさんも、関節リウマチの診断や、その活動性の検査の数値では、結局ははっきりせずに歯がゆい思いをされたことがあると思います。 たとえば、ACPA(抗CCP抗体、抗シトルリン化タンパク抗体)の検査は関節リウマチであることを診断には有効でしたが、活動性の指標にはならず、また陰性であっても罹患している場合もあります。 また、活動性指標となる炎症マーカーのCRP(C反応性蛋白)は感染症などでも上昇するうえ、痛みがCRPに反映されない人がいたりします。 そんなわけで、診断と活動性の両方をの判定できるような特異的バイオマーカーの探索が重要となっています。
今回の研究では、ACPAのの抗原であるシトルリン化タンパクがリウマチの病状にどのように関与しているかが調べられました。 その結果、このシトルリン化タンパクがITIH4(cit-ITIH4)であること、438番目のアルギニンがシトルリン化していることを、マウスとヒトで見出しました。 ヒトのリウマチ患者では82%で存在したそうです。 さらに、臨床データての検討の結果、cit-ITIH4陽性の患者群では陰性群と比べてCRP、リウマトイド因子、DAS28が高く、有効な生物学的製剤などの治療によって活動性減少とともにcit-ITIH4も比例して減弱しました。
今後、診断と活動性の両方がわかるバイオマーカーになる可能性とともに、Cit-ITIH4反応性T細胞の検索、さらに血中にcit-ITIH4が特異的に出現する理由が解明されれば、リウマチそのもののメカニズムの一端が明らかになると研究グループは述べています。
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【2018.4.12】関節リウマチGood DAYコミュニケーションブック」が完成
2018年4月12日、日本イーライリリーは、慶應義塾大学の医学部のリウマチ・膠原病内科金子祐子講師の監修、日本リウマチ友の会の協力のもと、関節リウマチ患者さんの痛みや倦怠感やこわばりといった主観的症状に関するアンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)と医師と患者さんのコミュニケーションの課題を絵や言葉で分かりやすく描き起こすことで見える化した「関節リウマチGood DAYコミュニケーションブック」を作成しました。
これは、2017年7月7日〜8月9日に実施の「関節リウマチの主観的症状と医師と患者さんのコミュニケーションに関する患者調査」と、2017年11月20日に東京で開催された「関節リウマチGood DAYデザインワークショップ」の内容を見える化』を基にしています。 調査とワークショップについては、2017年11月21日の記事をご覧ください。
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理解されにくい関節リウマチ患者さんの主観的症状に関するアンメットニーズと医師と患者さんのコミュニケーションの課題を『見える化』した小冊子「関節リウマチ Good DAY コミュニケーション ブック」が完成[PDF](2017/4/12) by 日本イーライリリー
理解されにくい関節リウマチ患者さんの主観的症状に関するアンメットニーズと医師と患者さんのコミュニケーションの課題を『見える化』した小冊子「関節リウマチGood DAYコミュニケーションブック」が完成 (2017/4/12 14:15) by PR TIMES
関節リウマチGood DAYコミュニケーションブック by 日本イーライリリー
【2018.3.26、2018.11.7】厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会
3月26日、厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会の初会合が開かれました。 改訂は7年ぶりで、関節リウマチの総合的な対応を盛り込んだ新たな報告書を、7月上旬をめどにとりまとめるという日程です。 寛解が期待できる生物学的製剤が普及したことを受け、医療提供体制や、患者への情報提供の在り方などを議論する方針とのことです。
3月26日・4月25日・6月8日・7月6日の4回の開合を経て、報告書がまとめられ、11月7日に公開されました。
新たな課題として「生物学的製剤の減量・休薬中止に関する検討が不十分である」「生活の場でのリウマチの知識不足により、周囲からの理解や支援が得られない等の指摘がある」「各年代での生活やライフイベントに対する診療・支援に関する指針や人材育成が不十分である」それに対して、「リウマチ患者の疾患活動性を適切な治療によりコントロールし、長期的なQOL(生活の質)を最大限まで改善し、職場や学校での生活や妊娠・出産等のライフイベントに対応したきめ細やかな支援を行う。」という目標が結論付けられています。
報告書はこちら公開されており、ページ数も多くはありませんので、ぜひ読んでみてください。
厚生科学審議会 (疾病対策部会リウマチ等対策委員会)
厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会報告書について
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【2018.4】4月より関節リウマチ治療におけるシンポニーの在宅自己注射が保険適用
抗リウマチ薬のシンポニー(一般名:ゴリムマブ)の在宅自己注射が4月より保険適用されます。
また、3月28日にはオートインジェクターの剤型追加の製造販売の承認が申請され、在宅自己注射の利便性が高まります。
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【2018.3.7】単核貪食細胞分化過程におけるエンハンサーの詳細なしくみ、バイオインフォマティクスで転写因子IRF8による制御を解明
横浜市立大学の大学院の医学研究科の免疫学教室の黒滝大翼講師や田村智彦教授らの研究グループは東北大学、東京大学、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)と共同で、感染防御やがん免疫に関わる貪食細胞の産生における遺伝子発現制御の分子メカニズムを解明したそうです。
単核貪食細胞とは、単球・マクロファージ・樹状細胞を指し、獲得免疫細胞に情報を伝える抗原提示細胞として重要な役割を担っています。 (食作用・サイトカイン産生も行っています)
単球は骨髄で造血幹細胞から分化してできます。 樹状細胞やマクロファージは単球からさらに分化してできます。 この過程では、その細胞に特徴的な遺伝子発現パターン(DNAに存在する遺伝子が転写因子により制御されRNAが転写される)が形成されることが重要です。 そのためには、まず転写因子がDNA上のエンハンサー(enhancer)と呼ばれる遺伝子発現を制御する領域に結合する必要があります。 これによりエンハンサーは多くの転写因子の結合を受け入れられる準備状態となり、さらに活性化されることで、遺伝子の発現が起きます。 しかし今までは、単球や樹状細胞が生体内で分化する過程において、エンハンサーがどのような転写因子によってどのように準備・活性化されるのか、細胞のもつDNA 全体(全ゲノム)規模での理解は十分ではありませんでした。
近年の次世代シークエンス技術(DNA断片の配列を並列的に極めて短時間で解析する技術)の発展により、細胞のエンハンサーの状態を全ゲノム規模で調べられるようになりました。 今回の研究では、単球や樹状細胞ならびに複数の段階の前駆細胞をマウスから単離して、全ゲノム規模で詳細にエンハンサーの分布状態を解析しました。 その結果、単核貪食細胞の前駆細胞では、単球と樹状細胞で発現すべき遺伝子のエンハンサーが準備・活性化されていることがわかりました。 次に単核貪食細胞のエンハンサーを前駆細胞段階で制御する転写因子を同定するためにバイオインフォマティクス解析を行ったところ、単核貪食細胞の前駆細胞では、IRF8(interferon regulatory factor-8) が単核貪食細胞のエンハンサーに結合してこれを準備状態にすることで、その細胞が将来単球と樹状細胞に分化する能力を賦与していることが明らかとなりました。
今回の解析結果から、造血前駆細胞が将来どのような細胞に分化するのかは、その時点での遺伝子発現よりもむしろエンハンサーの状態を知ることによってこそ、正確に把握できるとわかりました。 この知見を応用することで、例えば白血病細胞など病的な前駆細胞のエンハンサーを解析することや、単球や樹状細胞の過剰あるいは異常な活性化が引き起こす自己免疫疾患やがんの増悪などについての研究が進み、新たな診断・治療法開発につなげられる可能性があるとのことです。
研究成果は3月6日付けでCell Reportsに掲載されました。
※バイオインフォマティクス(bioinformatics)とは・・・生物学(biology)と情報科学(informatics)の融合分野のひとつで、生命が持っている情報を情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いて分析することで生命について解明しようとする学問のことです。 近年の技術の進歩によって、次世代シークエンス技術によるゲノム解析やタンパク質構造予測など、生物から得られるデータ量が膨大になっており、この大量データの処理をコンピュータによって行い、情報を解析してたりデータベース化したりします。 例えば、このページに掲載したニュースでもよく出てくる全ゲノム解析のようなデータが得られたとしても、それだけでは単なるデータの羅列であって意味はわかりません。 その意味をコンピュータの力で探っていこうとするのがバイオインフォマティクスというわけです。
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【2018.2.6】炎症過程におけるRNA安定分子「Arid5a」の局所制御メカニズムを解明
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三特任教授らの研究グループが、関節リウマチを含む多くの自己免疫疾患の炎症を促進するArid5a(=AT rich interactive domain 5A アリド ファイブエー)と、炎症を抑制するRegnase-1(レグネース ワン)の細胞内での詳しい作用メカニズム解明したそうです。
これは、2013年5月14日のArid5aのニュース延長線上にある研究で、2013年5月24日のニュースのRegnase-1の振る舞いとも関係しています。
関節リウマチをはじめとする多くの自己免疫疾患では炎症性サイトカインのひとつであるIL-6が増加していますが、タンパク質Arid5aは細胞内でIL-6を作るのに必要なメッセンジャーRNAと結合して安定化(メッセンジャーRNAが分解酵素に分解されないようにする)することによって炎症反応を促進します。 いっぽうRegnase-1は炎症反応を引き起こすタンパク質を転写後に切断する酵素であり、炎症反応を抑制します。
Arid5aは主に核に局在し、Regnase-1は細胞質に局在していることはわかっていましたが、その作用の詳しいメカニズムには不明な点がありました。 今回の研究では、細菌の外膜の成分でもあるLPS(=Lipopolysaccharide、リポ多糖、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分で)が炎症を引き起こすと、Arid5aはメッセンジャーRNAと結合して核外輸送分子CRM1(chromosome region maintenance 1、核から細胞質へ物質を輸送するタンパク質の1つ)経路を介して細胞質に移行して炎症が促進するということがわかりました。
そこへCRM1阻害剤であるレプトマイシンBを加えると、Arid5aがの核外へ移行するのが阻害され、IL-6の産生は減少することも明らかになりました。
この研究は、過剰な炎症で起こる病気を解明する手掛かりになりArid5aの核外移行を阻害することで、IL-6を減少させ、敗血症性ショックや自己免疫疾患を抑えるという新しい治療法の開発につながると期待されます。
研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(2月6日付)に掲載されました。
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炎症はアクセルとブレーキのバランスを変化させる 炎症過程におけるRNA安定化分子の局在制御メカニズムを解明(2018/2/6) by 大阪大学
Regulation of inflammatory responses by dynamic subcellular localization of RNA-binding protein Arid5a(2018/2/6) by Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)
炎症によってRNA安定化分子Arid5aは核から細胞質に移行する(岸本グループがPNASに発表)(2018/1/29) by 大阪大学免疫学フロンティア研究センター
炎症を促進するタンパク質の作用を解明、自己免疫疾患などの新しい治療法へ by MONOist
【2018.2.5】ケブザラ(一般名:サリルマブ)が発売
抗リウマチ薬のケブザラ皮下注(一般名:サリルマブ)が、2月5日より発売されました。
ケブザラはインターロイキン6(IL-6)受容体に対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、IL-6の作用を抑制する薬剤です。IL-6受容体抗体はトシリズマブの承認から約10年ぶりになります。今回のサリルマブはよりヒト抗体に近い、完全ヒト化抗体です。2週間隔で200mgシリンジを皮下投与、状態によっては150mgシリンジに減量することができるそうです。
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【2018.1.29】テストステロンは、男性を自己免疫疾患から守っている?
関節リウマチを含む自己免疫疾患には女性のほうが発生率が高いものが多いです。おおよそのところで、全身性エリテマトーデス 1:9、関節リウマチ 1:4、シェーグレン症候群 1:14、多発性硬化症 1:8、橋本病 1:20 などです。 しかし、その理由ははっきりとは判明しておらず、エストロゲンなどの女性ホルモンの働きによるもの、妊娠中に胎児の細胞を異物とみなさないための免疫システムの働きによるもの、などいろいろと言われてはいます。
その発生率の違いのメカニズムについて、米国のノースウェスタン大学のファインバーグ医科院微生物学および免疫学学科の Abigail E. Russia、Mark E. Ebela、Yuchen Yanga、Melissa A. Brownaの研究チームが、新たな発見をしたそうです。
この研究の実験では、多発性硬化症のマウスが使われました。 多発性硬化症は免疫細胞が神経細胞の周囲を保護するミエリン鞘を攻撃してしまう病気です。 雄のマウスでは、肥満細胞(=マスト細胞、IgEを介した1型アレルギー反応引き起こす免疫細胞)が男性ホルモンの一つであるテストステロンに近づくと、肥満細胞がサイトカインのIL-33(インターロイキン33)を分泌し、その作用によりILC2(=NH細胞、ナチュラルヘルパー細胞)がTh2型サイトカインを大量に分泌、ミエリン鞘の攻撃に関わる免疫細胞であるTh17細胞が活性化するのを抑えることがわかりました。 テストステロンがそれほど多くない雌のマウスでは、この作用が起きないため、ミエリン鞘を攻撃してしまいます。 しかし、IL-33を作用させることでこの神経の破壊が回復することも発見されました。
以上のことから、IL-33を活性化することでミエリン鞘への攻撃を防ぐことができ、テストステロンは肥満細胞によるIL-33の分泌を活性化することができることがわかりました。 今回の発見はが多発性硬化症の新たな効果的治療法の開発につながると期待されます。 また、たの自己免疫疾患における炎症を抑える治療法にもつながるのではないでしょうか。
この研究成果は、2018年1月29日に、米国科学誌米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、略称:PNAS) にオンライン掲載されました。
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Male-specific IL-33 expression regulates sex-dimorphic EAE susceptibility(2018/1/29) by 米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)
Multiple sclerosis: 'Guardian molecule' may lead to new treatment(2018/1/06) by Medical NEWS Today
自己免疫疾患が女性に多いのは「男性ホルモン」で説明可能(2018/2/6 20:30) by Gigazine
【2018.1.24】ステロイドが免疫力を高める、免疫の新たな昼夜サイクルを解明
京都大学のウイルス・再生医科学研究所の免疫制御分野の生田宏一教授、榛葉旭恒研究員らの研究グループは、大阪大学、九州大学、ドイツがん研究センターと共同で、ステロイドホルモンの一つであるグルココルチコイド(glucocorticoid)が、免疫を担うTリンパ球の体内循環と免疫応答能の日内変動を制御し、免疫力を高めていることを明らかにしました。
関節リウマチやその他の自己免疫疾患の治療では「ステロイド」が大きな役割りを果たしていますね。 ここで言う「ステロイド」とは、ヒトの副腎皮質で作られるステロイドホルモンの一つであるグルココルチコイド(糖質コルチコイド)を指しています。 グルココルチコイドは肝臓でタンパク質を糖に変換して血糖値を上昇させる働きをしています。 また、炎症反応を抑える抗炎症作用や免疫抑制作用があり、わたしたちは合成されたグルココルチコイドを医薬品として治療に使っています。
ヒトの血中のグルココルチコイドの濃度は日内変動していて、早朝にピークになり、昼間は高く、夜間は低値となり日内変動しています。(マウスでは逆転しています) また、ストレスにより分泌が誘導されるという性質も持っています。 生活リズムが昼と夜のサイクルを軸にするように、免疫力も日内変動することが近年明らかにされてきました。 しかし、なぜ昼と夜で免疫機能に違いが生まれるのか、その詳細なメカニズムは今まで不明でした。
研究グループは、マウスを使って、一日の各時間帯におけるTリンパ球の変化を解析しました。 その結果、グルココルチコイドが、Tリンパ球のサイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体CXCR4の発現量を夜間に高め昼間に下げていること、その日内変動が、昼間に血中に留まり夜間にリンパ組織に集まるTリンパ球の体内分布の日内変動を引き起こしていることがわかりました。 さらに、Tリンパ球が夜間にリンパ組織に集まることにより、リンパ球がより効率的に活性化され、強い免疫応答が引き起こされることがわかりました。
ヒトでは昼間、マウスでは夜間という、活動期の時間帯に免疫系の反応性が高まることになり、外界からの感染リスクに対応していると考えられます。 免疫抑制作用で有名なグルココルチコイドが、生体内においてはTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、逆に免疫機能を高める働きをしているとも言えます。
また、規則的な生活リズムによるグルココルチコイドの周期的な分泌が効率的な免疫応答を引き起こし、逆に不規則な生活による分泌の乱れが免疫力の低下をもたらし、細菌やウイルスの感染リスクが上昇する可能性を示唆します。
みなさんも、夜にステロイドを服用して眠れなくなったという体験をされたり、朝の服用を勧められていたりするかと思います。 これは本来の日内変動に沿って考えればうなづけるものではあります。 今後は疾患そのものと日内変動の関係性について研究が発展して、免疫のリズムをうまくコントロールすることで治療に役立つことが出てくるかもしれません。
この研究成果は、米国の学術誌Immunityの電子版(米国東海岸標準時2018年1月23日正午12時)に掲載されました。
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【2018.1.14】寄生虫で難病を治療、18年から安全性試験開始
関節リウマチは自己免疫疾患のひとつです。 自己免疫疾患では、異物(抗原)を排除する免疫の働きがなんらかの原因で過剰になってしまい、自分自身を攻撃してしまいます。 これらの自己免疫疾患で、寄生虫に感染したことで起こる特定の免疫応答の活性化が治療に役立つということ研究は、以前からありました。 例えば、このページに掲載した2016年5月16日のニュースでも話題に上がっていました。 近年ではアメリカやイギリス、デンマークなどの海外では、ヒトの臨床試験も行われてきました。 ドイツでは連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)が2017年6月に豚鞭虫(ぶたべんちゅう、Trichuris suis)の卵について、欧州議会及び理事会規則(97/258/EC)に基づくノベルフード(新規食品)としての申請を受理し、審査手続を開始しており、この申請が正式に承認されれば、栄養補助食品(サプリメント)として合法的に販売できるようになるそうです。→TanawisaのTSOというサイトがあり、Shopが存在するので、販売開始になったようです。
日本でもいよいよ2018年から、東京慈恵会医科大学で患者の腸に寄生虫の卵を入れる最初の臨床研究が開始されることとなったそうです。
東京慈恵会医科大学の熱帯医学講座の嘉糠洋陸教授は人への影響がないと考えられている豚鞭虫(ぶたべんちゅう、Trichuris suis)という寄生虫を使い、まず体内に鞭虫が短期間生息しても寄生された人に健康面で悪影響が出ないことを確認し、その上で同様の短期間の寄生で自己免疫疾患の症状が改善することを確かめていきたいとして、同大付属病院での患者数が多いクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患と乾癬を対象に、消化器・肝臓内科や皮膚科の協力を得て臨床研究に向けた準備が進行中とのことです。
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【2017.11.29、2017.12.13】インフリキシマブのバイオ後続品が発売
日医工株式会社が、11月29日に抗リウマチ薬のインフリキシマブ(商品名:レミケード)の後続品であるインフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」を発売しました。 また、日医工100%子会社のヤクハン製薬が承認を取得し、あゆみ製薬が単独販売するインフリキシマブBS点滴静注用「あゆみ」も29日から販売を始めました。
12月13日には、14年に承認されたものの販売体制が整っていないことを理由に発売を先送りされていたセルトリオン・ジャパンのインフリキシマブBS点滴静注用100mg「CTH」も販売を開始しました。
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【2017.11.22】からだの死細胞を取り除く仕組みの解明
筑波大学の医学医療系 生命科学動物資源センターの濱田理人助教、Tran Thi Nhu Mai 博士、白石莉紗子 修士、全孝静 修士、高橋智 教授らは、白血球の一種であるマクロファージが死細胞の除去機能を発揮し、難病に指定される全身性の自己免疫疾患を抑制するにあたっては、遺伝子発現を調節するタンパク質MafB(V-maf musculoaponeurotic fibrosarcoma oncogene homolog B)が必須であることを明らかにしました。
生体内で不要になった細胞は、アポトーシスと呼ばれるプログラムされた細胞死を起こし、マクロファージなどの食細胞によって速やかに処理されます。 初期のアポトーシス細胞は「イートミー(私を食べて)」シグナルを細胞表面に提示し、これがマクロファージに認識されることによって除去されます。 このマクロファージによる死細胞の認識に異常があると死細胞が蓄積し、死細胞の成分が抗原となることで炎症が誘導されてしまい、自己免疫疾患に至ることが知られていますが、詳しい分子メカニズムはよくわかっていませんでした。
本研究グループは、マクロファージ内でMafBが死細胞や死細胞成分に活性化されたタンパク質のシグナルを受け取り、補体C1q遺伝子の発現を制御することで、マクロファージが死細胞を認識することを明らかとしました。 マウスの実験でMafBのはたらきを抑えると、マクロファージが死細胞を食べることができず、このマウスは自己免疫疾患になることを突き止めました。これらの結果は新しい自己免疫疾患治療法開発の基盤につながるものと期待されます。
この研究成果は、2017年11月22日付で英国科学誌 Nature Communications に公開されました。
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【2017.11.21】関節リウマチの主観的症状と医師と患者さんのコミュニケーションに関する調査結果
日本イーライリリーは、2017年7月7日〜8月9日、医療機関で関節リウマチと診断され、現在リウマチ専門医に通院している公益社団法人 日本リウマチ友の会に登録されている関節リウマチ患者さんを対象に、関節リウマチの主観的症状と医師と患者さんのコミュニケーションに関する調査を実施、900名へ郵送調査を配布(総回収数は565名、有効回収数は461名)しました。
今回の調査の目的は、患者の主観的症状の改善に対するアンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)、および医師と患者のコミュニケーションの現状と課題を把握し、解決策を検討することでした。
その結果、多くの患者が「痛み」や「倦怠感」、「こわばり」などの主観的症状を感じていること、その主観的症状が、患者の「社会生活全般」や「心理状態」へ影響を及ぼしていることも分かりました。 また、主観的症状に関する医師と患者さんの間でのコミュニケーションや理解に課題があることが示されました。
結果を見ると・・・専門医でもこんな感じ、そうでない場合のコミュニケーションはもっと不足していそうです。
この結果の発表を機に11月20日には「関節リウマチGood DAYデザインワークショップ」が開催され、調査結果に基づき、主観的症状が生活や心理へ与える影響、症状に関する医師と患者さんのコミュニケーションの現状や課題を患者さん同士で話し合い、その内容をグラフィックレコーディングにより絵に描き起こすことで『見える化』しました。
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【2017.11.7】樹状細胞がリンパ組織を作る仕組みを発見
神戸大学大学院医学研究科のシグナル統合学分野の齊藤泰之講師と的崎尚教授らの研究グループは、免疫反応の司令塔と言われている樹状細胞が、SIRPα(サープアルファ)とCD47という特殊な2つのタンパク質を介して、免疫反応の場として大切とされる脾臓やリンパ節の形成や維持にも重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
これまでに研究グループは、樹状細胞の細胞膜に存在するSIRPαと呼ばれるタンパク質を発見、解析する中で、このSIRPαがCD47というタンパク質と結合することで、樹状細胞の生存を維持する重要な働きを有することを見出していました。 さらに、関節リウマチの動物モデルを用いて検討したところ、SIRPαを人為的に欠損させたマウスでは関節の炎症がほとんど見られないことを明らかにしました。 このことから、SIRPαが樹状細胞の機能を介して関節リウマチなどの自己免疫病の発症に重要であると考えられましたが、その詳しい機序は不明でした。
今回研究グループは、免疫反応の場である二次リンパ組織である脾臓を中心に解析を行いました。 二次リンパ組織には免疫細胞以外にストローマ細胞と呼ばれる間質細胞が存在し、二次リンパ組織全体の構造を支えています。 なかでもTリンパ球が集まるTリンパ球領域には細網線維芽細胞と呼ばれるストローマ細胞が存在します。 このストローマ細胞は樹状細胞やTリンパ球を呼び寄せる働きをもっており、この働きによって、樹状細胞からTリンパ球へ情報を効率よく伝えることが可能となります。 このようにストローマ細胞は二次リンパ組織における獲得免疫反応の裏方として非常に重要です。 しかし、免疫細胞に比べてストローマ細胞についての研究は遅れており、ストローマ細胞がどのように作られ、そして維持されるのか詳しく解明はされていませんでした。
そこで研究グループは、樹状細胞のみにSIRPα欠損させた遺伝子改変マウスを作製しました。 このマウスの脾臓中の樹状細胞の数は著しく減っており、SIRPαは樹状細胞の生存の維持に重要であることがわかりました。 続いて、このマウスの脾臓のストローマ細胞を詳しく調べてみると、Tリンパ球領域のストローマ細胞である細網線維芽細胞の数が少なくなっていることがわかりました。 これらの結果から、樹状細胞に存在するSIRPαは樹状細胞自身、ならびにストローマ細胞の生存の維持に重要であることが考えられました。
続いて研究グループは、どのような因子の作用によって樹状細胞がストローマ細胞の生存の維持に重要であるのか調べました。 ストローマ細胞の増殖にはTNF-αが重要である可能性が以前より示唆されていました。 そこで正常マウスの脾臓より樹状細胞とストローマ細胞を取り出して培養液中で共培養を行い、その培養液中にTNF-αの働きを抑えるTNF阻害剤を加えたところ、ストローマ細胞の増殖が抑えられることを明らかにしました。 さらに研究グループは、正常マウスの樹状細胞に比べ、にSIRPα欠損マウスの樹状細胞はTNF-αの産生が著しく減少していることを見出しました。 これらの結果より、生体内においてもTNF-αの産生がストローマ細胞の維持に重要あると考えられたため、TNF阻害剤を正常マウスに投与したところ、ストローマ細胞の生存が保たれなくなり、その数が速やかに少なくなることを見出しました。 一方で、SIRPαの結合相手であるCD47の樹状細胞やストローマ細胞に及ぼす役割にも注目しました。 樹状細胞のみにCD47を欠損させたマウスを新たに作製し、解析を行なったところ、このマウスではにSIRPα欠損マウスと全く同じように脾臓における樹状細胞ならびにストローマ細胞(細網線維芽細胞)の減少を認めました。
以上により、SIRPαは樹状細胞からのTNF-αの産生の制御に重要であり、これによりストローマ細胞の増殖や生存の維持が行われることが分かりました。 関節リウマチや潰瘍性大腸炎・クローン病などの自己免疫病では、すでにTNF-αを標的としたTNF阻害薬が実用されています。 この研究の結果から、TNF阻害薬の新たな作用機序として樹状細胞を介したストローマ細胞の制御が関与している可能性が考えられました。
現在、研究グループはCD47とSIRPαがどのように樹状細胞からのTNF-αを制御しているかについてさらに研究を進めているそうです。 今後さらにこれらの機序を正確に解明することで、樹状細胞の新たな機能の解明が期待されます。 さらに今回の結果を利用して、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫病に対して樹状細胞を標的とした新たな免疫抑制療法の開発が期待され、特にこの研究グループではSIRPαを標的とした薬剤(抗体など)を用いることで、全く新しい治療法になる可能性を考えており、現在研究を進めているとのことです。
この研究成果は、2017年11月7日に、米国科学誌米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、略称:PNAS) にオンライン掲載されました。
※二次リンパ組織とは・・・リンパ球(T細胞・B細胞)を作る組織、を一次リンパ組織、リンパ球が成熟する組織を二次リンパ組織と呼ぶ。 一次リンパ組織には骨髄、胸腺があり、二次リンパ組織にはリンパ節、脾臓、粘膜関連リンパ組織がある。 二次リンパ組織には、様々な種類の免疫細胞が集まっており、その中で体外から侵入してきた病原体に対して効率よく免疫反応が起こる。
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樹状細胞がリンパ組織を作る仕組みを発見-新しいリウマチ治療薬への応用-(2017/11/7) by 神戸大学
SIRPα+ dendritic cells regulate homeostasis of fibroblastic reticular cells via TNF receptor ligands in the adult spleen(2017/11/6) by 米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)
免疫反応に重要な分子確認 「自己免疫疾患」の新治療法期待 by 神戸新聞
樹状細胞が二次リンパ組織の形成や維持に重要な役割−神戸大 by QLife Pro
【2017.9.12】肥満に影響する遺伝マーカーを解明、痩せ型の人は遺伝的に関節リウマチを発病するリスクが高い
理化学研究所の統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイトらの共同研究グループは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長ら、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構の清水厚志部門長代理ら、国立がん研究センター社会と健康研究センターらと共同で日本人約16万人の遺伝情報を用いた大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)と日本人約1.5万人による再現性の検証、ならびに欧米人約32万人との民族横断的解析を行い、体重調節に関わるヒトゲノム上の193の遺伝的変異(感受性領域)を同定しました。
過去に報告されていた脳の細胞に加えて、免疫細胞のリンパ球が体重調節において主要な役割を果たすことを示す複数の遺伝学的な証拠を見いだしました。 さらに、GWASの結果を用いて、33の病気と体重の遺伝的な関わりを評価し、生まれ持った太りやすさ痩せやすさが発症に影響する病気を検索したところ、9つの病気が体重と遺伝的な相関があるこ分かったそうです。
痩せ型の人は遺伝的に関節リウマチ、思春期特発性側弯症、統合失調症を発症するリスクが高く、肥満の人は2型糖尿病や心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)だけでなく、気管支喘息や後縦靭帯骨化症の発症リスクが高いことが示唆されるとのこと。 これまで体重と病気の関係は、疫学研究や臨床研究からも、本研究が示したものと類似の関係性が示唆されていましたが、関節リウマチや統合失調症における体重と病気の関係は不明でした。 これらの知見は、将来的に病気の発症予防の対策に役立つ可能性があると考えられます。
このページに掲載している過去のニュースでも、BMIが高い男性は関節リウマチになりにくいかもしれないという記事(2015年9月29日)がありました。
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肥満に影響する遺伝マーカーを解明 ‐日本人17万人の解析により肥満に関わる病気や細胞を同定(2017/9/12 9:00) by 東北大学
肥満に影響する遺伝マーカーを解明−日本人17万人の解析により肥満に関わる病気や細胞を同定−(2017/9/12) by 理化学研究所
肥満に影響する遺伝マーカーを解明しました(2017/9/12) by 岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構
BMI:日本人集団のゲノムワイド関連解析によるBMIに関わる112の新規座位の同定(2017/9/11) by Nature Genetics(日本語)
Genome-wide association study identifies 112 new loci for body mass index in the Japanese population(2017/9/111) by Nature Genetics
日本人の肥満・痩せ型の遺伝要因が明らかに(2017/9/13) by ニュースイッチ(日刊工業新聞)
【2017.9.1】JAK阻害薬 オルミエント錠(一般名:バリシチニブ)が発売
抗リウマチ薬のオルミエント錠(一般名:バリシチニブ)が、9月1日より発売されました。
バリシチニブは選択的JAK1及びJAK2阻害薬で、関節リウマチで使うJAK阻害薬としては、選択的JAK3阻害剤のゼルヤンツ錠(一般名:トファシチニブ)に続いて二つ目となります。 一日4mg、状態に応じて2mgに減量することができるそうです。
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【2017.8.17】アメリカで関節リウマチの診断薬キット「タリンテスト」を発売
日本医療機器開発機構がアメリカでの診断薬事業の第1号案件として、関節リウマチの診断薬キットのタリンテストを、研究用試薬として9月より販売開始する予定だそうです。
タリン(talin)は細胞表面の原形質膜にある細胞膜裏打ちタンパク質と呼ばれるタンパク質で、同じ細胞膜裏打ちタンパク質のインテグリン(integrin)やビンキュリン(vinculin)と結合してネットワークを形成しています。 タリンテストは、リンパ球内の細胞接着領域に発現されるタンパク質であるタリンが、関節リウマチ患者の血液中では短いフォーム(ショートタリン)で発現している点を利用した新しい関節リウマチ診断方法だということです。
タリンテストはこれまでの関節リウマチ診断法に比べて、感度・特異度が向上している可能性があり。 さらに、初期診断だけでなく、MMP-3と比較してショートタリンの方が病態をより正確に反映するため、関節リウマチの治療経過のモニタリングに使用できる可能性もあるのだそうです。
わたしたちが関節リウマチの活動性を確かめる目的で受ける血液検査にはすでにいろいろな指標がありますが、正確性の点で唯一と言えるものはまだありませんね。 このタリンテストは、まずはアメリカでの研究用ということですが、有用性がはっきりすれば診断・経過の検査として登場するかもしれません。
【2017.8.1】歯周病と関節リウマチの関連メカニズムを解明
新潟大学の医歯学総合研究科の山崎和久教授、佐藤圭祐大学院生らの研究グループは、理化学研究所との共同研究により、マウスを用いた実験で、歯周病原細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(ポルフィロモナス菌、Porphyromonas gingivalis)が腸内細菌叢を変化させて、腸管免疫をTh17(ヘルパーT細胞のサブセットの一つ)が優勢な状態に傾けて関節炎を悪化させるメカニズムを明らかにしたそうです。
歯周病と関節リウマチの関連性についての疫学調査の記事が2015年4月21日にありましたが、今回のニュースはさらに詳しい研究です。
関節リウマチのマウスに、歯周病原細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌とプレボテラインターメディア菌(Prevotella intermedia)の2種類と細菌の懸濁に用いた基材のみをそれぞれ口の中に投与したのち、II型コラーゲンに感作させて関節炎を発症させました。 その結果、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌を投与した場合にのみ、関節炎が重症化し、炎症性サイトカインIL-17の血中レベルが有意に上昇していました。 腸内細菌叢を解析した結果、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌を投与した場合でのみ変動が認められ、その変化は細菌投与を中止した6週間後でも継続していました。 この細菌叢の変化に伴って腸間膜リンパ節におけるTh17細胞の比率が上昇し、炎症を誘導するサイトカインIL-17産生能も亢進していました。
人口胃液を用いた実験の結果、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌はプレボテラインターメディア菌と比較して高い耐酸性を示すことがわかりました。 この性質が胃酸による傷害に耐えて腸内細菌に影響を及ぼす理由のひとつと考えられるとのことです。
ところで、関節炎の重症度は感作させたコラーゲンに対する抗体価と相関することが知られていますが、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌投与群の抗II型コラーゲンの抗体価は他の2群と違いは認められませんでした。
また、関節リウマチで特異的に見られる自己抗体の抗CCP抗体は、ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ(=Peptidylarginine deiminase=PAD)という酵素による修飾により生成されたシトルリン化タンパクを自己抗原とする抗体で、2015年4月21日の記事にもあったように、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌もこのPADを持っているため、シトルリン化タンパクの生成に関与していると思われ、歯周病と関節リウマチ発症の結びつきが考えられてきました。 しかし、今回の実験では抗CCP抗体レベルに違いは認められませんでした。 他でもこれに否定的なデータも出ています。
今回の研究結果から、歯周病原細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌が腸内細菌叢を介して関節炎を悪化させるという新たな病原メカニズムが明らかになりました。 これは、歯周病と関節リウマチの関連だけでなく、歯周病とその他の疾患の関連メカニズム解明にも大きな示唆を与えると考えられるとのことです。
今後は、これらの現象が実際に人間の歯周病の患者においても生じているか確認するとともに、歯周病治療が腸内細菌叢を改善することを明らかにすることが必要となります。 口腔内にはポルフィロモナス・ジンジバリス菌以外にも全身の健康に悪影響をおよぼす細菌が口の中に存在している可能性があるため、そうした細菌を最先端の網羅的解析技術を用いて明らかにし、口腔細菌叢の健康度から腸内細菌叢の健康度、ひいては全身の健康度を簡便に評価する方法の開発につなげたい意向だそうです。
この研究成果は、英国のオンライン科学雑誌 Scientific Reports に7月31日付けで掲載されました。
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歯周病と関節リウマチの関連メカニズムを解明―全身に及ぼす影響が明らかにー[PDF](2017/8/1) by 新潟大学
Aggravation of collagen-induced arthritis by orally administered Porphyromonas gingivalis through modulation of the gut microbiota and gut immune system(2017/7/31) by Scientific Reports
新潟大、歯周病が関節リウマチなどを引き起こす関連メカニズムを解明(2017/08/03 12:43) by マイナビニュース
【2017.7月】抗リウマチ薬が3つ、承認あるいは承認が了承されました
今月は、抗リウマチ薬が3つ、承認あるいは承認が了承されました。
一般名:バリシチニブ(JAK阻害薬) 製品名:オルミエント 経口。 骨病変の薬として承認済み、7月3日に承認を取得。
一般名:デノスマブ(ヒト型抗RANKL抗体) 製品名:プラリア・ランマーク 皮下注射。 他の病気の薬として承認済み、7月3日に「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」関節リウマチに係る承認を取得。
一般名:サリルマブ(完全ヒトIL-6 受容体抗体) 製品名:ケブザラ 皮下注射。 7月27日の薬食審・医薬品第二部会にて承認を了承。
オルミエントはゼルヤンツに次ぐ2つ目のJAK阻害薬となります。 プラリア・ランマークは元々骨粗鬆症や癌などによる骨病変の薬として使われていたもので、抗リウマチ薬というよりも、骨のびらんを抑える薬になるかと思います。 ケブザラはアクテムラに次ぐ2つ目のIL-6受容体抗体となります。
それぞれ薬価収載の後、発売されます。
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【2017.7.14】関節リウマチの痛み発生に関与するタンパク質「ナルディライジン」の働きを解明
京都大学の医学研究科の伊藤宣准教授、藤井貴之研究生、滋賀医科大学の薬理学講座の西英一郎教授を中心とする研究グループは、ナルディライジン(Nardilysin)というタンパク質が関節リウマチ患者の関節液中で増加しており、それを欠損させたマウスでは関節リウマチに似た症状を持つ関節炎が軽くなることを発見したと発表した。 また、ナルディライジンの働きを妨げる薬剤を関節に注射すると、炎症を引き起こすTNF-αの分泌が抑えられ、症状が軽くなることも分かったそうです。
滋賀医科大学のグループが研究を続けているナルディライジンは、これまでの研究でTNF-αの分泌に関与することが分かっていました。しかし、TNF-αが関与する病気の一つである関節リウマチにおける役割はまだ明らかではありませんでした。
この研究で、京都大学医学部附属病院で関節手術を行った変形性関節症の患者17名と関節リウマチの患者20名、計37名の関節液を解析したところ、関節リウマチ患者の関節液には非常に多くのナルディライジンが含まれていることが分かりました。 一方、変形性関節症患者の関節液にはほとんど含まれていないことも明らかとなりました。
加えて、ナルディライジンがないマウスに関節リウマチ様関節炎を発症させたところ、関節炎が弱くなり、その細胞からはTNF-αの分泌が少なくなることが分かりました。 さらに、ナルディライジンを阻害する薬を関節内に注射すると、関節炎が弱くなることが分かりました。
このことは、ナルディライジンが関節リウマチの病因において重要な役割を果たていることを示しており、治療の新たなターゲットとなり得る可能性があるということです。
研究成果は、2017年7月13日付で英国の学術誌 RMD Open に掲載されました。
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【2017.6.26】「アクテムラ皮下注」(トシリズマブ)の1週間隔投与が承認されました
厚生労働省が、アクテムラの皮下注製剤に関して、2週間隔投与で効果不十分な関節リウマチ患者に対して、1週間まで投与間隔の短縮を可能にする用法・用量追加を承認しました。
今まで点滴の場合は4週間ごと、注射では2週間ごとでした。 2週間ごとの注射でも、やはり次の注射までの間に辛くなってしまう、特に体重のある人ではそういったお話を聞くことがあります。 そういう場合に毎週注射することができるようになりました。
【2017.6】第18回欧州リウマチ学会(EULAR2017)が開催されました
6月14日〜17日にスペインのマドリードで、第18回欧州リウマチ学会(EULAR2017)が開催されました。
【2017.6.14】nsNSAIDsからCOX2阻害薬に変更は利点がないかも?
イギリスを中心とする研究ユニットが、心血管疾患や脳血管疾患の既往のない60歳以上の変形性関節症患者または関節リウマチ患者への処方薬を、非選択的非ステロイド性抗炎症薬(=nsNSAIDs)からCOX2阻害薬であるセレコキシブに変更しても、心血管リスクはnsNSAIDsを継続した場合と同等だったが、効果そのものが劣るという理由でセレコキシブの離脱率が有意に高かったという調査結果を発表したそうです。
nsNSAIDsには上部消化管潰瘍によるリスクがあるので、そのリスクが比較的低いCOX2阻害薬が発売されると人気が高まってよく使用されるようになりました。 でも、COX2阻害薬がnsNSAIDsよりも心血管リスクを大幅に増大させるとして、米国食品医薬品局(FDA)は全てのNSAIDsに関する警告を厳格化し、欧州医薬品庁(EMA)は心血管疾患患者への選択的COX2阻害薬投与を禁忌に指定しました。
今回の研究では、英国、デンマーク、オランダの9施設で90日以上にわたりnsNSAIDsを長期服用していた60歳以上の患者で、心血管疾患/脳血管疾患の既往者、すでにCOX2阻害薬を服用していた者、命を脅かす併存疾患を有する者を除く7297名を対象に、平均3.2年の追跡が行われました。
主要評価項目である心血管イベント発生率は、セレコキシブ群で100人・年当たり0.95例、nsNSAIDs群で100人・年当たり0.86例と群間差はありませんでした。 副次評価項目である消化管合併症は15例しか発生せず、セレコキシブ群で100人・年当たり0.078例、nsNSAIDs群nsNSAIDs群で100人・年当たり0.053例でした。
重篤な消化管/血液学的有害反応については、nsNSAIDs群の方がセレコキシブ群より多かったのですが、服薬中止率についてはセレコキシブ群で50.9%の方がnsNSAIDs群で30.2%と、セレコキシブ群が有意に高かったとのことです。
セレコキシブ群の患者が挙げた服薬中止の理由は、効果がない(23.3%)、有害事象(17.3%)などだったということで、nsNSAIDsからセレコキシブに処方を変更するという戦略に利点はない、と論文は結ばれています。
つまり、心血管系リスクに注目して考えた場合、セレコキシブは心配されたほどには心血管系リスクを高めないけれど、効き目の点で不満が出て服用が中止される場合が多いということですね。 ただし、セレコキシブの心血管系リスクについては意見が分かれていて、研究によってさまざまな結果が出されていますので、念のため気をつけたほうがよいかとは思います。
この研究結果は英国のオックスフォード大学出版の European Heart Journal に2017年6月14日付けで掲載されました。
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【2017.6月】関節リウマチ患者の心血管疾患による死亡率が低下の傾向
アメリカのミネソタ州のメイヨークリニック医科大学の医学部リウマチ学科、ヘルスサイエンス研究部バイオメディカル統計情報学科、ヘルスサイエンス研究部疫学部、ニュージャージー州のラトガースロバートウッドジョンソン医科大学の研究班が、関節リウマチの患者の心血管疾患死亡率を、患者でない人と比較解析したところ、近年その死亡率、特に冠動脈心疾患による死亡率が大幅に改善されたということがわかったそうです。
研究班は、ミネソタ州オルムステッド郡の統計データで、A.1990年から1999年に関節リウマチと診断された人、、B.2000年から2007年に関節リウマチと診断された人、C.関節リウマチではない人を選びました。(A+Bで813名、C 813名、平均年齢55.9歳、両群とも女性は68%)
ここ10年間の心血管疾患死亡率を統計解析したところ、A群の全心血管死亡率は7.1%・冠動脈疾患死亡率は4.5%、B群の全心血管死亡率は2.7%・冠動脈疾患死亡率は1.1%でした。 そして、B群とC群の死亡率には有意差はありませんでした。
つまり、近年、関節リウマチの患者の心血管疾患による死亡率、特に冠動脈心疾患死亡率が大幅に改善されたことを示唆しているという結論に至ったとのことです。
今回はこの改善の理由までは調査されておらず、理由の特定についてはさらなる研究が必要とのことです。 この10年間に関節リウマチの治療が進歩したこと、あるいは同じ時期に心筋梗塞や脳卒中の治療が進歩して救命されやすくなっている可能性など、さまざまな理由が考えられるようです。
この調査はアメリカでの統計ですので、日本での事情がそのままあてはまるとは言えませんが、やはり近年は抗リウマチ薬の進歩や医療全体の進歩はありましたので、同じように良い傾向にありそうに思えますね。
この研究結果は米国の専門誌 The Journal of Rheumatology の2017年6月号に掲載されました。
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【2017.5.31】IL-6受容体抗体に抗うつ効果?
千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授(神経科学)、張継春特任助教(現:中国)らの研究グループが、うつ病の新しい治療法として、炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン6(IL-6)受容体の阻害が有効であることを明らかにしたそうです。
うつ病は、病因は未だ明らかでなく、抗うつ薬の効果がない治療抵抗性うつ病患者が約30%存在します。 これまでの多くの研究から、うつ病患者では血液中のIL-6 濃度が健常者と比較して有意に高いことが報告されているそうです。
今回はうつ病のマウスを使った実験が行われました。 IL-6受容体抗体をマウスに静脈投与すると、即効性の抗うつ効果を示したとのことです。 これは近年提唱されているうつ病の炎症仮説を支持する成果だそうです。
現在日本国内で発売済みのIL-6受容体抗体といえば、トシリズマブ(製品名:アクテムラ)ですが、他にも世界で使用されていたり治験中・承認申請中の薬が複数ありますね。 今回は人間での実験ではありませんが、研究が進めば抗うつ薬としても使われるようになるかもしれません。
この研究成果は、2017年05月30日にオープンアクセス雑誌 Translational Psychiatry に掲載されました。
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関節リウマチ治療薬に即効性抗うつ効果?〜末梢におけるインターロイキン6受容体の阻害が重要〜
[PDF](2017/5/30) by 千葉大学
Blockade of interleukin-6 receptor in the periphery promotes rapid and sustained antidepressant actions: a possible role of gut-microbiota-brain axis(2017/5/30) by Translational Psychiatry
抗うつ効果を既存のリウマチ治療薬で確認 - 千葉大(2017/5/31) by マイナビニュース
【2017.5.30】自己免疫疾患を引き起こす悪性Th17細胞の分化には転写因子「JunB」が必要不可欠であることを発見
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の免疫シグナルユニットの石川裕規准教授らが、自己免疫疾患の発症に深くかかわる分子メカニズムを発見したそうです。
ヘルパーT細胞のサブセットの一つであるTh17細胞は、比較的最近発見され、炎症を誘導するサイトカインIL-17を産生することが知られています。 しかし、全てのTh17細胞が炎症を誘導する能力が強いわけではなく、2015年6月23日の記事にあったように強い炎症を起こす鍵となるのはexFoxp3Th17細胞であり、それほどでもないTh17細胞も存在するのだそうです。
今回の報道では、前者が悪性Th17細胞、後者が良性Th17細胞と呼ばれています。
Th17細胞はナイーブT細胞(まだ抗原刺激を受けていない成熟T細胞)が分化したものです。 この分化は2010年4月12日の記事にあったように、TGF-βやIL-23などなど複数のサイトカインの刺激が組み合わさることで誘導されるのですが、関わったサイトカインのタイプによってTh17細胞の悪性度が決定されます。 TGF-βとIL-6存在下では良性Th17細胞に、IL-23、IL-6およびIL-1βの存在下では悪性Th17細胞になります。 また、IL-23は良性のTh17細胞を悪性のものに変換する活性も持っています。
研究チームは、悪性のTh17細胞の分化に特異的に関与する分子を探し、Th17細胞に発現する283個の転写因子のなかから、その発現を抑制した際に悪性Th17細胞の分化がおこらなくなるものを一つひとつ確認していったところ、転写因子JunBの発現を抑制した細胞では、悪性Th17細胞の分化が強く抑えられることがわかったとのことです。
石川准教授によると、今回の発見は関節リウマチを含む自己免疫疾患の治療において、標的を悪性Th17細胞に特化した副作用の少ない方法の開発のために重要であり、Th17細胞の機能的多様性を生みだすメカニズムの一端を解明するものであるということです。
この研究成果は、英国科学雑誌 Nature Communications に5月30日付けで掲載されました。
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【2017.5.30】免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログを作成
理化学研究所の統合生命医科学研究センターの統計解析研究チームの石垣和慶特別研究員、自己免疫疾患研究チームの高地雄太副チームリーダー、山本一彦チームリーダー、東京大学医学部附属病院のアレルギー・リウマチ内科の藤尾圭志講師らの共同研究チームが、免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログ(eQTLカタログ)を作成し、免疫疾患の遺伝的メカニズムの新しい解析手法を開発したそうです。
2013年12月26日の記事では、全GWASデータの統合・解析により、関節リウマチの発症に関わる101個の感受性遺伝子領域が同定されたといこうとでした。 しかし、これまでの先行研究の多くは血液の白血球をまとめて解析していました。
今回の解析は105人の健常人から回収した末梢血を、5種類の主要な免疫細胞(CD4陽性T細胞(=ヘルパーT細胞)、CD8陽性T細胞(=細胞傷害性T細胞)、B細胞、NK細胞、単球)に分けて行われました。 複数の免疫細胞を対象とした研究はアジア初の試みだそうです。
各細胞種の遺伝子発現量を定量し、DNA多型との関連を網羅的に解析し、eQTL(=Expression quantitative trait locus 発現定量的形質遺伝子座)カタログを作成しました。 今回得られたカタログでは、どのDNA多型が、どの免疫細胞において、どの遺伝子の発現量に、どのように影響しているかが要約されています。 発現量の調整メカニズムは細胞種ごとに異なるため、細胞種を分けることでリスク多型がどの細胞で発現量の個人差に影響しているかが分かるというわけです。
具体的な例として、関節リウマチでは、CD4陽性T細胞において176個の遺伝子がTNFパスウェイ(遺伝子やタンパク質の相互作用の経路)の活性化は関節リウマチの病態で重要な役割を持つことが確認できたそうです。
この研究成果は、米国の科学雑誌 Nature Genetics オンライン版に5月29日付けで掲載されました。
※形質(=trait)とは、生物のもつ性質や特徴。 生物学的には特に遺伝形質(遺伝によって子孫に伝えられる形質)のことを指す。
質的形質(=qualitative character)とは、不連続で質的な違いとして示される形質。 複数染色体上の少数あるいは単一の遺伝子座の影響を受けることが多い。 例としてはABO式血液型、エンドウマメの丸orシワなど。
量的形質(=quantitative character)とは、連続した実数で示される形質。 複数染色体上の多数の遺伝子座の影響を受けることが多い。 例としては、身長、植物の葉の長さなど。
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【2017.4.24】リン脂質による破骨細胞融合機構の発見
公益財団法人 東京都医学総合研究所の脂質代謝プロジェクトの入江敦主任研究員、村上誠参事研究員らが、骨の新陳代謝に関わる細胞である破骨細胞が出来上がる過程で、細胞膜の主要構成成分であるリン脂質が量的・質的に大きく変化することにより、破骨細胞融合を制御していることを初めて明らかにしたそうです。
破骨細胞は骨を壊す細胞です。 健康な人でも、常に破骨細胞が古い骨を溶かし、骨芽細胞が作る新しい骨に置き換わっています。 また、溶け出したカルシウムは血液中に放出されてバランスを保ったり、再び骨の材料になったりしています。 しかし、関節リウマチでは炎症性サイトカインが活性化して破骨細胞の働きが強くなり過ぎ、骨吸収が進みすぎ、骨の破壊が進行してしまいます。
破骨細胞は、骨の血管に存在する骨髄細胞という種類の細胞が、未成熟な前駆細胞を経て、成熟した破骨細胞に姿を変えることにより生まれます。 前駆細胞が細胞融合をくり返して巨大な成熟破骨細胞となり、効率よく骨を溶かすことができるようになります。 今まで、この破骨細胞融合の仕組みはほとんどわかっていませんでしたが、今回の研究では細胞膜を構成するリン脂質が破骨細胞の分化融合を制御していることが明らかになりました。
研究の結果、破骨細胞が分化融合する際にリン脂質の一種であるホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)の合成が特に増え、細胞膜の外層に多く出く露出していることがわかりました。 このホスファチジルエタノールアミンに特異的に結合する試薬を用いて機能できないようにすると、細胞融合が阻害されたことから、細胞膜外層に露出したホスファチジルエタノールアミンは破骨細胞融合に重要であることがわかりました。
次に、破骨細胞融合過程においてホスファチジルエタノールアミンの合成や局在変化を引き起こす分子を探したところ、生合成酵素の一種であるLPEAT2、ならびにリン脂質を細胞膜内層から外層へ輸送するABCタンパク質のABCB4とABCG1が関わっており、これらの3つの分子の発現を人為的に低下させると、破骨細胞の融合が妨げられることがわかりました。
これは長年解明されていなかった破骨細胞の分化融合のメカニズムに、脂質分子が関与していることを世界で初めて示した研究成果です。 将来的にLPEAT2、ABCB4やABCG1の機能を制御する薬物を開発できれば、骨粗鬆症や関節リウマチの新しい予防・治療法につながるかもしれません。
この研究成果は、英国のオンライン科学雑誌 Scientific Reports に4月24日付けで掲載されました。
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【2017.4.20】第61回日本リウマチ学会(JCR2017)が開催されました。
2017年4月20日〜22日に福岡県の福岡国際会議場ほかにて日本リウマチ学会の第61回日本リウマチ学会(JCR2017)が開催されました。
【2017.4.5】炎症反応を制御する新たな分子「MKRN2」を発見
理化学研究所の統合生命医科学研究センターの炎症制御研究チームのシン・チャンヨン国際プログラム・アソシエイト(東京工業大学生命理工学院博士課程、所属は共に研究当時)と田中貴志チームリーダー、東京工業大学生命理工学院の十川久美子准教授、徳永万喜洋教授らの共同研究チームは、炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見したということです。
この研究は2007年のPDLIM2の働きの解明の研究の続きです。
樹状細胞(免疫担当細胞の一種)は体内に侵入した病原体を認識して炎症反応を開始します。 このとき、核内の転写因子NF-κBが活性化して炎症反応に関わる一連の遺伝子発現を促進することにより、炎症反応を誘導します。 これまで研究チームは、タンパク質PDLIM2が転写因子であるNF-κBにユビキチンという小さなタンパク質を付加し、NF-κBが分解されることで炎症反応が抑制される分子メカニズムを研究してきました。
今回、研究チームは酵母を用いた酵母ツーハイブリッド法で、PDLIM2と結合するタンパク質を網羅的に探しました。 その結果MKRN2というタンパク質がPDLIM2と共同で、NF-κBにユビチキンを付加し、タンパク質分解酵素複合体プロテアソームによって分解・不活性化することで、炎症反応が収束に向かうことが分かりました。 つまり、MKRN2とPDLIM2は、互いに協調し合って炎症反応を抑制していると考えられます。
これらのタンパク質による炎症反応の抑制機構は、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療治療法の開発に役立つと期待できるとのことです。
この研究成果は、英国のオンライン科学雑誌 Scientific Reports に4月5日付けで掲載されました。
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炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見−過剰な炎症反応を防ぐ仕組みの一端を解明−(2017/4/5) by 理化学研究所
炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見−過剰な炎症反応を防ぐ仕組みの一端を解明−(2017/4/5) by 東京工業大学
MKRN2 is a novel ubiquitin E3 ligase for the p65 subunit of NF-κB and negatively regulates inflammatory responses(2017/4/5) by Scientific Reports
レルギーなど過剰な炎症反応を制御する新しい仕組みを発見(2017/4/19 7:32) by exiteニュース
10月26日、帝人ナカシマメディカルが、国産初の全人工手関節であるDARTS人工手関節の製造販売承認を取得しました。 来春には北海道大病院にて実用化の予定だそうです。
今回承認を得たDARTS人工手関節は、北海道大学の大学院医学研究科の三浪明男前教授を主任研究者とする厚生労働科学研究費補助金/免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業「関節リウマチ上肢人工関節研究に関する研究」の成果として開発されたものです。
手関節とは、いわゆる手首のところです。 関節リウマチでは特に初期のころから破壊しやすい箇所ですが、今までは人工関節への置換ができず、痛みをに耐えながらひたすら我慢して、壊れきって固まるのを待つしかありませんでしたし、固まらない場合は手術で固定が必要でしたよね。 ですから、これはたいへん画期的なことです!
このDARTS人工手関節は、掌側と腕側を完全に固定せず、前後に滑らかに動かすことが可能な、日本で初めて臨床使用することができる全人工手関節だそうです。
手関節は本来、前後だけでなくとても複雑な動きをする関節ですから、「手関節の機能不全に対する十分な知識・経験を有する医師が、関連学会との協力により作成された適正使用指針を遵守するとともに、講習の受講により本製品を用いた治療に関する技術を得るなど、適切な使用のために必要な措置を講じる」ということが承認条件とされました。 ですから他の病院へ広まるには時間がかかると思いますし、かなり壊れていても置換できるのか、どのくらい便利になるのかなどは、これから明らかになってくると思いますので、期待して待ちたいですね。
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【2016.9.27】ヘルパーT細胞の分化に必須の酵素を発見−自己免疫疾患治療の新たなターゲットとして期待
九州大学生体防御医学研究所の山ア晶教授、石川絵里助教らと徳島大学、理化学研究所、大阪大学などの共同研究グループは、プロテインキナーゼD(PKD)という酵素が、ヘルパーT細胞の分化に必須の分子であることを初めて発見したそうです。
ヘルパーT細胞の異常活性化や暴走は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の要因の一つです。 PKDは、タンパク質にリン酸を付加する酵素であるプロテインキナーゼの一種ですが、T細胞への働きかけの詳細は不明で、あまり重要ではないと考えられてきました。 しかし今回の研究では、PKDが胸腺で成熟してヘルパーT細胞に分化するときに必須の分子であることがわかりました。
研究グループらは、PKD欠損マウス(PKDを全く持たないマウス)の樹立に初めて成功しました。 このマウスでは、将来ヘルパーT細胞になるCD4陽性細胞が激減していたことにより、ヘルパーT細胞の分化にはPKDが必要なことがわかりました。
そして、蛍光二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)という技術を用いて、PKDがリン酸化する基質がSHP-1であることを見つけました。 さらに、SHP-1をリン酸化されない変異型に置き換えたノックインマウス(SHP-1S557A/S557Aマウス)でも、ヘルパーT細胞の分化が障害されることを見出しました。
SHP-1はタンパク質ホスファターゼ(キナーゼとは逆に、タンパク質からリン酸を外す酵素)で、通常は受容体シグナルを負に制御する酵素として知られており、この一連のPKD-SHP-1経路は負のシグナルをリン酸化によってキャンセルする、ブレーキ解除による活性化機構であると考えられます。 ただし、SHP-1がリン酸化されるとなぜT細胞受容体シグナルが増強されるのかは未だ不明です。
PKDの阻害薬によって、ヘルパーT細胞の供給を制限することが可能となり、自己免疫疾患に対する新たな治療薬となることが期待されます。
この研究成果は2016年9月27日に、英国科学雑誌 Nature Communications の電子版で公開されました。
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【2016.9.16】概日リズム(サーカディアンリズム)による炎症性関節炎の統制
関節リウマチでは、一日のうちでも痛みや腫れなどに大きな変化があり、たとえば「朝のこわばり」は誰しも経験することかと思います。 そこで今までにも、関節リウマチと概日リズム(サーカディアンリズム、生物の生理現象の約24時間の周期)との関係はいろいろと研究されてきていて、リズムの崩れが炎症性疾患の悪化の要因になることがわかっています。
今回は、イギリスのマンチェスター大学の生物・医学・保健学部とマンチェスター学術健康科学センターの研究チームが、マウスを使って実験しました。
あらかじめ炎症性関節炎を起こさせたマウスは、夜の暗闇では炎症が抑制されます。 しかし、ずっと光を当て続けるて概日リズムが損なわれて、夜にも炎症が抑えられなくなってしまいました。
研究チームは最終的に、細胞内の体内時計タンパク質であるタンパク質クリプトクロム1とクリプトクロム2が炎症を抑制していることを解明しました。
この発見から、クリプトクロムの抗炎症作用の応用や概日リズムそのものの治療への応用が期待されるのではないかと思います。
※日本語のニュースソースであるCIRCLの文には「夜間、クリプトクロムというタンパク質が作られて」とありますが、元の論文の要約からはそういった意味は読み取れませんでした。 クリプトクロムは常に存在しており、光を受けることで概日リズムをリセットしているものだと思いますが、元の論文の全文が見られないので、どうしてそういう解釈になったのかわかりません。
この研究成果は、2016年8月3日付の米科学誌The FASEB Journalに掲載されました。
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【2016.9.7】サリドマイドの抗炎症作用の解明
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三教授らの研究グループが、サリドマイドの抗炎症作用メカニズムを解明することに成功したそうです。
サリドマイドは睡眠薬として日本では1958〜1962年まで販売れていましたが、妊婦さんの服用で催奇形性の薬害が起き、販売停止となりました。 その後、らい性結節性紅斑(ハンセン病の急性症状)や多発性骨髄腫の治療薬として効果があることがわかり、日本でも2009年には保険適応の治療薬の製造販売が再承認されています。
この薬には血管新生を抑制する作用があり、関節リウマチの炎症を抑えるということも知られていました。 これはインターフェロンやIL-6、TNFなどの炎症性サイトカインの産生が抑えられることによるものであり、サリドマイドが標的とするタンパク質であるセレブロンと結合するということまではわかっていましたが、今回の研究ではもっと詳しいメカニズムが解明されたそうです。
今回の研究では、サリドマイドよりさらに効果を高め、副作用を少なくする目的で開発されたサリドマイド誘導体
であるレナリドミドが使われたようです。レナリドミドの標的であるセレブロンにはRabex-5というタンパク質が結合しているのですが、レナリドミドがセレブロンに結合すると、このRabex-5が遊離してインターフェロン遺伝子の阻害剤として働いて結果的に炎症の抑制効果を発揮するということが解明されました。
そろそろサリドマイドに代表される免疫調整薬(IMiDs)が関節リウマチの薬としても使えるようになるのではないかと思いますが、安全管理をどうするかというハードルがありますね。 また、サリドマイドは元々は安価な薬ですが、は過去の薬害禍を鑑みて、現在販売されいる免疫調整薬(IMiDs)はどれも薬価を高く設定してあります。 それを今後どうしていくかという問題もありますね、高すぎては使えませんから。
この研究成果は、2016年9月6日付の米科学誌米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオンライン掲載されました。
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【2016.8.5】非古典的HLA遺伝子の関節リウマチ発症への関与が明らかに
理化学研究所の統合生命医科学研究センターの自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーと、統計解析研究チームの岡田随象客員研究員らの国際共同研究グループが、非古典的HLA遺伝子の一つである HLA-DOA が、関節リウマチの発症に関わることを明らかにしたそうです。
関節リウマチの発症リスクを高める遺伝子配列がHLA-DOA遺伝子の発現量を低下させていることがわかったとのことです。
関節リウマチの発症には個人の遺伝的背景が関与していて、特にHLA遺伝子と関連性が高いことが知られていますが、HLA遺伝子の中でも主要な古典的HLA遺伝子に関する研究や解析が中心でした。 しかし今回は、非古典的HLA遺伝子の一つである HLA-DOA の関与がわかったという点が画期的です。
また、HLA-DOA遺伝子型における関節リウマチの発症リスクを人種間で比較したところ、日本人集団で最も高いリスクが観測されたそうです。
なお今回の研究は、HLA遺伝子配列をスーパーコンピュータ上で網羅的に解析するHLA imputation法を活用することにより、日本人集団、アジア人集団、欧米人集団から集められた約6万人分の関節リウマチのゲノムデータに対するビッグデータ解析によるものだそうです。 以前にビッグデータ解析のニュースをとりあげた際や、他の疾患のニュースでも、使用されたデータはGWAS(genome-wide association study)でした。 今回の報道にはその文言は出てきませんが、やはり使用されたのだろうと思います。 ビッグデータ解析の恩恵が個人の医療へつながりつつありますね。
ところで、今回のニュースでわかりにくいと感じたのが「非古典的HLA」という言葉です。 HLA(Human Leukocyte Antigen ヒト白血球型抗原)には教科書的な抗原提示機能を持つA、B、C、DR、DQ、DPしかない・・・というわけではないのですね。 多様な機能を持つ非古典的クラスI分子はたくさん知られていて、ニュースでも非古典的クラスI分子のHLA-Gが出てきたことがありました。 でも、今回のHLA-DOAはクラスIIで初めて聞く名称です。 論文本文が読めていないので、あまり詳しいことがわからず申し訳ありません。
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【2016.7.20】生物学的製剤の効果を予測する診断支援サービス「リウマチェック3」が登場
インフリキシマブ(製品名:レミケード等)、トシリズマブ(製品名:アクテムラ)、アバタセプト(製品名:オレンシア)の3剤について、投与半年後の治療の効果を予測する血液検査です。 マイクロアレイによる遺伝子発現解析を用いて予測する診断支援サービスが開始されました。
この「リウマチェック3」は慶應義塾大学の医学部のリウマチ内科、埼玉医科大学の総合医療センターのリウマチ膠原病内科、DNAチップ研究所の研究グループによって共同で実施されました。
MTX効果不十分例の関節リウマチ患者209名に対して、生物学的製剤の投与前に採血を行い、遺伝子発現解析を実施して、CDAIで寛解および低疾患活動性を指標に半年後の効果を判定する遺伝子群を抽出し、それらの発現プロファイルから効果有群と効果無群を分けることに成功したそうです。
生物学的製剤は高価ですし、もし効果が出なかった場合にはその分治療が遅れてしまいます。 事前に予測できれば助かりますね。 ただし適用になるのは、MTX(メトトレキサート)では十分な治療効果が認められなかったこと、これまでに生物学的製剤の投与を受けていないこと、これら3つの生物学的製剤の投与を検討していること、が条件です。
この検査を行っている医療機関はまだそんなに多くはありません。 料金は税別で70,000円、自由診療(保険適用外)扱いです。 主治医にご相談の上、よく考えてお受けくださいね。
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【2016.6】第17回欧州リウマチ学会(EULAR2016)が開催されました
6月8日〜11日にイギリスのロンドンで、第17回欧州リウマチ学会(EULAR2016)が開催されました。
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【2016.5.16】寄生虫で炎症を抑える?!−Th2および好酸球応答は、炎症性関節炎を抑制する
まずは・・・みなさん早まらないでください。 寄生虫そのものではなく、感染したことによってTh2免疫応答が抑制されるからだそうです。 ので、感染しようとはお考えになりませんように(笑)
正常な抗原抗体反応の過程では、ヘルパーT細胞はTh1、Th2、Th17に分化したり、サイトカインを産生してB細胞に抗体を作らせたりして抗原(異物と見なしたもの)を排除します。 でも、何らかの理由でヘルパーT細胞のバランスが崩れて、Th2が過剰になるとアレルギー疾患、Th1やTh17が過剰になると自己免疫疾患が起こるとされています。 片方が優勢になれば片方が抑えられるというバランスです。 寄生虫感染はヘルパーT細胞をTh2に分化させる刺激のうちのひとつで、寄生虫感染による関節リウマチの抑制がとりざたされることはありましたが、これまでには関連性は実証されていませんでした。
今回、ドイツのエアランゲンの大学病院の Medizinische Klinik 3のZhu Chen氏とDarja Andreev氏らが、マウスの研究で、寄生虫に感染したことで起こる特定の免疫応答の活性化が関節リウマチの治療に役立つということを明らかにしたそうです。
ヒトの関節リウマチの病態に近い自然発症関節炎を起こしたマウス(K/BxN)とヒトのTNF遺伝子を導入したマウス(hTNFtg)との2種類のマウスで、一部のマウスにブラジル鉤虫を感染させて、その免疫応答を調べたところ、感染したグループでは関節炎の防御効果が認められました。 関節炎の関節で好酸球および抗炎症マクロファージ数が増えていたそうです。
さらに、今回の研究では、炎症性の関節炎の人の膝関節組織からTh2応答の好酸球細胞成分が見つかり、比較した変形性関節症の人からは見つからなかったということです。 このことからは、人間の場合でも、寄生虫に感染しなくても、Th2免疫応答が関節炎の抑制にすでに関与していることを示しています。 炎症性の関節炎が起こると免疫恒常性のバランスが再調整されるということです。
これは、Th2免疫応答の抑制と好酸球が活性化が関節炎の新たな治療方になる可能性を示しています。
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【2016.4.23】第60回日本リウマチ学会(JCR2016)が開催されました。
2016年4月23日〜25日に神奈川県のパシフィコ横浜にて日本リウマチ学会の第60回日本リウマチ学会(JCR2016)が開催されました。
【2016.4.21】MTX+スルファサラジン+ヒドロキシクロロキンの3剤併用の有効性
カナダのカルガリー大学のGlen S Hazlewood氏らは、今までのたくさんのデータを系統的に分析し、関節リウマチの治療でMTX(Methotrexate メトトレキサート 製品名:リウマトレックス等)+スルファサラジン(製品名:アザルフィジン等)+ヒドロキシクロロキン(製品名:プラケニル)の3剤併用が選択肢として非常に有望であることを示しました。
データソースは、オンラインデータベースである MEDLINE、EMBASE、コクランセントラルに2016年1月19日までに登録された研究や、2009〜2015年に、2つの大規模なリウマチ学会で報告された研究の抄録などの中から条件を満たす158件の臨床試験(3万7000人以上)選出したものです。 これまで日本国内を含めて併用の試みがなされてきましたが、統計学の手法を用いて統合したメタ解析による信頼性の高い結果にまとめられたことに意義があると思います。
いろいろな薬のさまざまな併用のし方を分析した結果、MTX使用歴がない患者でも、MTXに十分に反応しなかった患者でも、この3剤併用またはMTX+生物学的製剤を使用した場合のほとんどで、MTX単剤より有効だったとのことです。
論文でも述べられていますが、生物学的製剤は高価なので、この3剤併用で同様の効果が得られるなら、かなり安価で済むという利点がありますね。 ただし、ヒドロキシクロロキンは日本では、関節リウマチについての使用はまだ承認されていませんから、このハードルを超えなければ実現できません。(2015.9月に皮膚エリテマトーデスと全身性エリテマトーデスについては発売済み)
詳細はイギリスの医師会雑誌BMJの電子版に2016年4月21日に報告されました。
ニュースソース↓
Methotrexate monotherapy and methotrexate combination therapy with traditional and biologic disease modifying antirheumatic drugs for rheumatoid arthritis: abridged Cochrane systematic review and network meta-analysis(2016/04/21) by BMJ
MTXを含む3剤併用はRA治療に非常に有用 スルファサラジンとヒドロキシクロロキンは生物学的製剤より安価(2016/05/23) by 日経メディカル
【2016.4.6】関節炎惹起性IgG のシアル酸修飾は、コラーゲン誘発性関節炎の抑制機能を付与する−自己抗体のIgG上の糖鎖にシアル酸を付加すると炎症が抑えられる
名古屋大学大学院の大海雄介特任助教は、名古屋大学医学部附属病院の高橋伸典病院講師、国立感染症研究所の高橋宜聖室長、大阪大学の黒崎知博教授、横浜市立大学の川崎ナナ教授、東京大学大学院の山本一彦教授・センター長、大阪大学大学院の熊ノ郷淳教授、中部大学の古川鋼一教授等との共同研究による発表です。
IgG(Immunoglobulin G)はすべての人が持つ免疫グロブリンで免疫グロブリンの約75〜85%を占めています。 免疫グロブリンは糖タンパク質から成る2つずつの鎖がくっついたY字型をしています。
関節リウマチでは一般的ではない(保険での使用が認められていません)のですが、自己免疫疾患の治療法としてこのIgGを投与する免疫グロブリン大量静注療法があります。 この際に投与するIgGにシアル酸を過剰に結合させて(Y字の脚の部分であるFc部のN-結合型グリカンにくっつける)用いると効果が高まることが知られています。 また、関節リウマチの人のIgGではシアル酸とガラクトースが減少することもわかっていますが、今まではその役割は不明でした。
今回の研究では、IgGのシアル酸を欠損したマウスを作成し、そのマウスに関節炎を誘発した結果、IgG上のシアル酸を欠損したマウスは正常なマウスに比べ、リウマチ症状がより重篤となることがわかったそうです。 つまり、IgG上の糖鎖(シアル酸)の減少がリウマチ症状の増悪に働くことを示し、さらに、IgGの糖鎖にシアル酸を付加すると、リウマチの症状を緩和できることがわかったとのことです。
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【2016.3.4】銀コーティングの抗菌人工股関節
関節リウマチでは人工関節置換術が広く行われるので、みなさんの中にも「入ってますよ」という人が少なくないかと思います。 壊れた関節を人工関節に置き換える手術によって痛みが和らぎ動きが改善されるのがメリットですが、苦労される点のひとつに、術後の細菌感染という合併症がありますよね。 その感染症の撲滅を目指して、抗菌性能がある人工関節(股関節用)が開発され、販売が決定したそうです。
この、世界初の銀コーティングの抗菌人工股関節であるAG-PROTEX(エージープロテクス)は佐賀大学と京セラメディカル株式会社との産学連携によって開発されました。 生体毒性が低く耐性菌の発生しにくい銀をハイドロアパタイトに含有させて高熱でインプラントの表面に吹き付けるという加工技術だそうです。
この人工関節が実際に感染症を減らすことが検証されれば、将来的には他の箇所の人工関節、されには骨接合財、人工歯根と応用が広がることも期待されます。
なお、AG-PROTEXは第30回「独創性を拓く 先端技術大賞 特別賞」を受賞しました。(6月10日発表、7月28表彰式)
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【2016.2.15】繊維粉塵暴露は関節リウマチのリスクを増加させる
マレーシアでの疫学調査で、繊維の粉塵にさらされる職業の女性は、関節リウマチに罹患する率が高かったという結果が出たそうです。 早期関節リウマチの女性910名と健康な女性910名での統計解析で、 繊維粉塵暴露が関節リウマチのリスク増加と関連していることを示した初めての研究です。
全体では2.8倍リスクが高く、その中でもHLA-DRB1のSE対立遺伝子(関節リウマチのリスクがある特定のパターンの遺伝子)を持つ人では、抗CCP抗体(抗シトルリン化タンパク抗体)陽性になる人の割合は39.1倍になったとのことです。 つまり、繊維粉塵暴露と遺伝子の相互作用で、抗CCP抗体が陽性であるタイプの関節リウマチのリスクが高まったということです。
今までに、喫煙や歯周病とSE対立遺伝子の相互作用が関節リウマチのリスクを増加することは報告されていましたが、今回の調査では繊維の粉塵も同様であることがわかりました。
なお、繊維の粉塵の成分についての詳しい分析(羊毛や綿などの天然繊維なのかポリエステルやナイロンなどの合成繊維なのか、加工に使われた合成染色機や難燃剤や潤滑剤や撥水剤などの化学物質について)はなされていませんが、それらは関節リウマチだけでなく他の病気の潜在的リスクになる可能性もあり、公衆衛生の観点から、繊維粉塵への職業暴露を減らすことで関節リウマチの発生率を減らすという努力が必要であるということです。
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【2016.1.18】イーグルスのグレン・フライさんが逝去。 関節リウマチ、性潰瘍性大腸炎、肺炎による合併症。
アメリカのロックバンド「イーグルス」の創立メンバーであるグレン・フライさんが、1月18日にニューヨークで67歳で逝去したそうです。
バンドの公式ウェブサイトによると、死因は関節リウマチ、急性潰瘍性大腸炎、肺炎による合併症とのことです。 「イーグルス」については、ここど改めて語るまでもない素晴らしいバンドで、青春の思い出がある方も多いと思います。 1994年には再結成してまたツアーが行われ、グレン・フライさんも参加していました。 関節リウマチでは15年以上闘病していたそうで、潰瘍性大腸炎と肺炎はリウマチの治療薬による副作用であるとの話が出ていますが、服用していた薬が何であったかは開かされていません。
[2007.8.20 追加]
2018年1月16日には、遺族である妻のシンディーさんが、病院と胃腸科専門医のスティーブン・イツコウィッツ氏をフライの潰瘍性結腸炎を適切に治療せず、感染症の診断と治療もせず、治療の危険性や副作用について助言しなかったとして告訴しています。
グレン・フライさんが関節リウマチに苦しんでいたこと、副作用で亡くなってしまった可能性があったこと、遺族の告訴に至ったこと、いずれもたいへん残念なことだて思います。
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初めてこのニュースを目にしたのは、2015年4月25日の日経サイエンスでした。 体内に埋め込んだ電気刺激装置で神経を制御して関節リウマチの症状を緩和する、とあり、あまり期待できないものであると感じました。 しかし、その後に本誌を読んでみたところ、思っていたこととは違い、画期的でとても興味深いということがわかりました。
神経による反射と聞くと、膝をたたくと足がひょこんと跳ね上がるといったような骨髄反射を思い浮かべますが、この記事ではそうではなくて「炎症反射」についての記事でした。 米国のキャビン・トレイシー博士は過剰な免疫反応や組織損傷を防ぐ神経回路を「炎症反射」と名づけ、炎症性サイトカインが不必要に増えてしまわないような働きを持っていると仮定、それを実証したということです。
反射による免疫のコントロールの経路は、感染や損傷が起きるとその情報が脳の運動ニューロンに伝えられ、運動ニューロンは患部にシグナルを返し、その組織や血液への、TNFやIL-1などの炎症性サイトカインの産生を調整いる流れです。 関節リウマチなどの自己免疫疾患では、炎症性サイトカインが過剰に産生されていることから、神経への電気刺激でこの調整機能を保管して、炎症性サイトカインの過剰な産生を止めようという話です。
実際にすで臨床試験が実施されていて、8人の患者のうち6人が迷走神経刺激装置の埋め込みでかなり改善したそうです。 これで完治できるというわけではありませんが、抗TNF-α薬の代わりになる方法という位置づけです。
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【2015.9.29】BMIが高い男性は関節リウマチになりにくい?
スウェーデンの研究チームが2つの健康調査から計74,138人の医療記録を用いて、BMI(体重÷身長の2乗)と関節リウマチの有無を調査し、それらの関連性について検証しました。 そのうち462人が後に関節リウマチであると診断されました。 男性では、BMIが25より大きい人は、25より小さい人よりも発症した人の割合が小さいという結果、女性ではそれらの関連は見られませんでした。 つまり「肥満の男性は関節リウマチを発症しにくい」という結果でした。
ただし、あくまでもこれは統計的な数字であって、BMIと関節リウマチの因果関係・メカニズムについて何もわわかっていません。 偶然その他に関連する要因があり、結果として関連があるように見えているだけかもしれませんし、肥満は他の病気の原因となることもありますので、くれぐれもご用心ください。
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【2015.9.7】プラケニル(一般名:ヒドロキシクロロキン)が全身性エリテマトーデスと皮膚エリテマトーデスの治療薬として承認・発売
7月3日、ヒドロキシクロロキン(サノフィの「プラケニル」)が全身性エリテマトーデスと皮膚エリテマトーデスの治療薬として承認され、9月7日に発売されました。
ヒドロキシクロロキンはクロロキンの代謝産物で、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、関節リウマチの治療薬として、日本以外の世界各国では広く使用されています。 日本では過去にクロロキンの副作用による網膜症という問題が起きたため(いわゆる、クロロキン薬害訴訟)、それよりも網膜毒性の低いヒドロキシクロロキンについても慎重な検討がなされてました。
関節リウマチについての使用はまだ承認されていませんが、将来的には用法の追加になるのではないでしょうか。
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【2015.8.3】あゆみ製薬がスタート
8月3日、参天製薬の抗リウマチ薬事業を承継したあゆみ製薬が事業を開始しました。 参天製薬が抗リウマチ薬事業を昭和薬品化工へ売却して、ヒュペリオンファーマとして新会社を設立し、6月にあゆみ製薬へと商号を変更したものです。
つまり、参天製薬が製造するリマチル・アザルフィジン・メトレート・タクロリムスの販売、昭和薬品化工が製造するカロナールの販売でスタートということですね。 リウマチ・整形領域におけるスペシャリティファーマということですが、今のところ、販売できる生物学的製剤を持ってはいません。 将来的には視野に入れるとのことですが、従業員数がMR50人と研究開発職10人と独自開発できる規模ではないので、他社製品を販売していくことになるのだと思います。
なお、参天製薬が提供していたリウマチの情報ポータルとして、あゆみ製薬のサイトに移管されています。
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【2015.6.23】新たな関節炎発症メカニズムの発見 難病治療法に期待 〜IL-17産生性γδ T細胞とCD4+ T細胞が協同して関節リウマチ様の関節炎を引き起こす〜
東京理科大学の生命医科学研究所の岩倉洋一郎 教授、秋津葵 ポストドクトラル研究員と東京大学の医科学研究所の疾患モデル研究センター、琉球大学の熱帯生物圏研究センター、九州大学の生体防御医学研究所の感染防御研究センター等の研究グループは、関節炎が引き起こされる新たなメカニズムを明らかにしました。
今回の研究では、関節リウマチで重要な役割を果たしているインターロイキン-17(IL-17)がどの細胞からどのように作られるのかが調べられました。 その結果、主なIL-17産生細胞がγδ T細胞であり、その活動にケモカインの一つのCCL2が関与しており、IL-17産生にはIL-1βやIL-23が重要であることが分かったとのことです。
IL-1Ra欠損マウス(IL-1の作用を阻害する機能のないマウスで、関節リウマチのモデルとして使われる)の関節炎が起こっている所では、T細胞のうち自然免疫を担当すると考えられているγδ T細胞という細胞がIL-17産生のほぼ全てを担っているおり、γδ T細胞にIL-1βとIL-23を作用させると、IL-17が発現することがわかりました。
さらに、γδ T細胞がどのように関節特異的に炎症を起こすのかをマウスを使って調べたところ、CD4+T細胞(CD4陽性T細胞)がCCL2を発現させてγδ T細胞を呼び寄せ、そのγδ T細胞が産生したIL-17が炎症をひき起こすという、新たな関節炎発症メカニズムが明らかになったそうです。
IL-17産生性γδ T細胞は関節リウマチだけでなく、乾癬や多発性硬化症などの他の疾患でも重要だと言われてきましたが、これまでどのようにしてγδ T細胞が炎症局所にたどり着くのかよくわかっていませんでした。 今回の研究成果は、これらのメカニズムの重要な手がかりになるものです。 また今回、γδ T細胞の活動ににCCL2-CCR2系が関与しており、IL-17産生にはIL-1βやIL-23が重要であることが分かったことから、新たな治療法開発に役立つものと考えられます。
この研究成果は 英国科学誌 Nature Communications に2015年5月25日付で発表されました。
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新たな関節炎発症メカニズムの発見〜IL-17産生性γδ T細胞とCD4+ T細胞が協同して関節リウマチ様の関節炎を引き起こす〜[PDF](2015/6/23) by 東京理科大学
IL-1 receptor antagonist-deficient mice develop autoimmune arthritis due to intrinsic activation of IL-17-producing CCR2+Vγ6+γδ T cells(2015/6/25) by Nature Communications
岩倉研究室 秋津先生の論文が、6月25日発表の Nature Communicationsに掲載されました by 東京理科大学 生命医科学研究所/大学院 生命科学研究科
岩倉氏、野口医学賞 リウマチ悪化の要因解明(2015/09/19 08:33) by 福島民報
【2015.6】第16回欧州リウマチ学会(EULAR2015)が開催されました
6月10日〜13日にイタリアのローマで、第16回欧州リウマチ学会(EULAR2015)が開催されました。
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【2015.5.6】関節リウマチ患者を対象にした調査
米国ファイザー社が実施した、世界13カ国の成人の関節リウマチ患者3,600名以上を対象に行った調査の結果を発表しました。 患者と医療従事者の関係、そして関節リウマチとその治療に対する患者の認識が疾患管理に影響する可能性が示唆されたとのことです。 今回の調査に日本人も354人含まれてます。
調査データによると、
1.患者の関節リウマチ治療に対する満足度、そして医療従事者との良好な関係が、疾患管理にプラスに影響する可能性がある。
2.78%の患者が「治療法に満足している」と回答しているものの、「自身の疾患がコントロールできている」と答えたのはわずか30%で、医療従事者によって病状が中等度から重度、または重度であると判断された患者さんの場合、そのずれがより顕著だった。
3.患者は治療目標や不安、特に疾患管理や治療法について、医療従事者とよく話し合っていない可能性がある。
4.現在さまざまな治療薬や治療法があるにもかかわらず、一部の患者では最適な疾患管理が行われていない可能性がある。
5.患者のうち47%が、日常生活の中で何らかの活動をあきらめたと回答、治療薬に関しては、全回答者の42%が、関節リウマチの治療は関節リウマチとともに生きるのと同じくらい困難であると考えている。
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【2015.5.6】T細胞のビンキュリンと微生物に対する交差反応性について
オランダのライデン大学のRene Toes氏らによると、関節リウマチ患者の関節内には、シトルリン化タンパク質のひとつであるビンキュリン(vinculin)があり、CD4陽性T細胞や抗CCP抗体の標的になっていること、特定の遺伝子配列を持つ人では自己免疫応答が起こらないことを明らかにし、今回わかったこととこれまでの他の研究からみて、微生物感染が関節リウマチの発症に関係していると考えられるとのことです。
CD4陽性T細胞はアミノ酸がDERAAという配列を持つ抗原決定基を識別しますが、その配列は多くの微生物や軽症化の要因とされているのHLA-DRB1*13分子にも存在します。 そして、このT細胞はビンキュリン由来と微生物由来の両方と交差反応します。 DERAA指向性T細胞は、HLA-DRB1*13を持つ人では検出されておらず、HLA-DRB1*13に関連した保護効果を説明するものです。
論文の要約とニュースの日本語訳しか読めていないため、いまひとつはっきりしませんが、MHCクラス2分子であるHLA-DRB1*13を持っている人は関節リウマチを発病しにくい、微生物感染が関節リウマチの発症に関係しているらしい、ということでしょうか。 しっかりとご紹介できず申し訳ありません。
この研究成果は 英国科学誌 Nature Communications に2015年5月5日付で発表されました。
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【2015.4.25】第59回日本リウマチ学会(JCR2015)が開催されました。
2015年4月23日〜25日に愛知の名古屋国際会議場にて日本リウマチ学会の<第59回日本リウマチ学会(JCR2015)が開催されました。 残念ながら、日経Medical ONLINEには今年度は学会ダイジェストがないようです。
【2015.4.21】歯周病の罹患が関節リウマチの発症に影響を与える可能性がある
歯周病と関節リウマチの関連性、なんとなく体感している人も多いかと思いますが、このことに関しての疫学調査の結果が発表されました。
京都大学の医学部附属病院リウマチセンターの橋本求特定助教と医学部附属病院の別所和久教授を中心とする共同研究グループが、歯周病の罹患が関節リウマチの発症に影響を与える可能性があるという研究結果を発表しました。
研究成果は2つあり、[1] 約1万人の健常人を対象とした疫学調査で、CCP抗体(抗シトルリン化タンパク抗体)の産生とその力価に歯周病罹患が相関することを示しました。 [2] 京大病院リウマチセンターを受診した未治療・未診断の関節痛患者72名の追跡調査により、歯周病をもつ関節痛患者は、歯周病のない患者に比較して、その後関節リウマチと診断され抗リウマチ治療を開始されるリスクが約2.7倍高くなることを示しました。
関節リウマチの診断時に測定する抗CCP抗体は、関節の炎症で起きる滑膜の自己抗原のシトルリン化を示す指標です。 いっぽう、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(ポルフィロモナス菌、Porphyromonas gingivalis)は、現在知られている中で唯一シトルリン化を起こす酵素を産生する細菌だそうです。 そのため、歯周病の罹患が、この歯周病菌の持つシトルリン化酵素による過剰なシトルリン化を介して、関節リウマチの発症に先立って検出される抗CCP抗体の産生を引き起こし、ひいては関節リウマチの発症につながっているのではないかと考えられるようになったのです。 そこで、この調査が行われたというわけです。
今回の研究は、歯周病が関節リウマチの発症に関与する可能性をより強く示すものと言えますが、歯周病が関節リウマチの発症に影響を及ぼすメカニズムが抗CCP抗体の誘導だけなのか、あるいはポルフィロモナス菌が特に関係しているのか等の点については、今後さらなる研究が必要です。
発病後に影響はあるのでしょうか? 発病の予防や治療に役立つといいですね。
研究成果[1]は Journal of Autoimmunity の電子版にて2015年3月26日付で、研究成果[2]は PLOS ONE の電子版にて2015年4月7日付で発表されました。
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歯周病と関節リウマチ発症との相関を示す(2015/4/21) by 京都大学
Significant association of periodontal disease with anti-citrullinated peptide antibody in a Japanese healthy population - The Nagahama study[Abstract](2015/5) by Journal of Autoimmunity
Periodontitis and Porphyromonas gingivalis in Preclinical Stage of Arthritis Patients(2015/4/7) by PLOS ONE
歯周病と関節リウマチ発症が相関示す、歯周病をもつ関節痛患者はリスクが2.7倍−京大(2015/4/23 16:45) by QLifeProby
歯周病は、関節リウマチの発症に関わっている可能性―京大(2015/4/24 16:40) by 財経新聞
【2015.4.9】TNF阻害薬、リウマチ活動性を指標に減量可能
オランダのSint Maartenskliniek, Nijmegen(ナイメーヘンのシント・マールテン病院)のNoortje van Herwaarden氏らが、活動性コントロールの維持において、疾患活動性を指標にTNF阻害薬を減量しても、通常の使用法に劣らないことを検証したとのことです。
調査は2011年12月から2014年5月にかけて、オランダの関節リウマチ外来2施設の患者で行われました。 アダリムマブ(ヒュミラ)またはエタネルセプト(エンブレル)を6カ月以上使用している、DAS28-CRPで低疾患活動性と判断(スコア幅は0.9から9の範囲)された180人を、疾患活動性を指標とする減量戦略を行う群 [減量戦略群] 121人とTNF阻害薬の減量指導をせず目標達成に向けた治療(treat-to-target)を実施する59人 [通常使用群] に割り付けての調査でした。
18カ月時点で、[減量戦略群]の20%がTNF阻害薬を中止しており、43%が投与間隔を延長できていた。 37%は減量できていませんでしした。
あらゆる再燃を経験した人は、[減量戦略群]で73%に対して [通常使用群] は27%と大きな差があります。 機能、QOL、X線画像上の臨床的に意義がある進行(modified Sharp-van der Heijde scoreが8点以上上昇)見られる主要な再燃では、[減量戦略群]で12%に対して[通常使用群]が10%と有意差はなく、使用薬による違いもなかったとのことです。
3カ月ごとの評価で再燃が見られなければ使用間隔を延ばすという戦略で、患者の3分の2がTNF阻害薬を減量あるいは中止できたということなのですが・・・「あらゆる再燃」のとこらへんを読むと、ちょっと躊躇してしまいますね。 副作用や価格がとても高いことを考えると、うまく減量・中止できるようになればうれしいのですが。
この研究成果は British Medical Journal にて2015年4月9日付で掲載されました。
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【2015.3.31】自己免疫疾患に伴う骨粗しょう症のしくみの一端を解明
東京大学の大学院医学系研究科の病因・病理学専攻 免疫学講座高柳研究室の高柳広教授と古賀貴子特任助教らの研究グループが、IgG抗体とその受容体であるFcγ受容体の破骨細胞の分化における役割を明らかにしたそうです。
マウスを使った研究で、関節リウマチや骨粗しょう症では、IgG抗体が抗原と結合してできるIgG免疫複合体が破骨細胞の分化を促進させて骨破壊が起こるということがわかりました。 炎症や炎症性サイトカインがなく抗体の量だけが増加している状態のマウスでも骨粗しょう症を発症したそうです。 つまり、IgG免疫複合体は免疫細胞が関与しなくても直接破骨細胞を増やして骨破壊を起こしているということです。
炎症などの病的状況では、IgG免疫複合体の増加とFcγ受容体の発現バランスが変化して破骨細胞前駆細胞がIgG抗体による分化促進効果を受けやすい細胞になっていることの2点が骨粗しょう症の一因となるということです。
今まで、関節リウマチを含む自己免疫疾患に伴って発生する骨粗しょう症の主な原因は治療に使われるステロイドの副作用と考えられてきましたが、免疫複合体による直接作用も重要であることがわかりました。
今後、血清中の免疫複合体の値は、診断に役立つバイオマーカーとなる可能性があります。 そして、免疫複合体除去療法や抗体の活性を制御する薬が治療に役立つことが期待されます。
この研究成果は、英国科学誌 Nature Communications に2015年3月31日付で発表されました。
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【2015.3.13】関節リウマチ以外では、メトトレキサートで肺疾患リスクは上昇しない
アイルランドのゴールウェイ大学病院のRichard Conway氏らの解析により、関節リウマチ以外の患者ではメトトレキサート(リウマトレックス)の使用による肺疾患リスクの上昇は認められないことが明らかになったそうです。
関節リウマチ患者では、メトトレキサートを服用するにあたっては間質性肺炎の発症が心配ですね。 過去の10の調査では、メトトレキサート関連の間質性肺疾患の有病率が11.6%と報告した研究もあるそうです。
ところが、メトトレキサートを服用する他の疾患では、肺疾患が現れないのだそうです。 今回の調査では、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患の患者では、メトトレキサートの使用では有意なリスク上昇は認められませんでした。
解析の元になったのは、PubMed、Cochrane Library)(コクラン・ライブラリ)、Embase(エンベース)に登録されたデータで、「2014年1月9日までに登録された二重盲検のランダム化試験の中から、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患の成人患者を登録→メトトレキサートとプラセボもしくは対照薬に割り付け→50人以上を12週間以上追跡→呼吸器系の有害事象について報告」という条件を満たす7試験です。 その結果、呼吸器有害事象は1630人中504人で報告されていましたが、統計的には有意なリスク上昇は見られないことが判明。 感染性と非感染性に分けての検討でも、やはり有意なリスク上昇はないことが明らかになったとのことです。
>関節リウマチでは、メトトレキサートは肺疾患のリスク増加と関連していますが、関節リウマチ自体が呼吸器に症状を引き起こす可能性もあるため、その原因を区別することは難しいです。 でも、今回の解析結果は、間質性肺炎を起こさないで済むヒントになるかもしれません。
この研究成果は British Medical Journal にて2015年3月13日付で掲載されました。
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Methotrexate use and risk of lung disease in psoriasis, psoriatic arthritis, and inflammatory bowel disease: systematic literature review and meta-analysis of randomised controlled trials(2015/3/13) by British Medical Journal
メトトレキサートで肺疾患リスクは上昇しない 関節リウマチ以外を対象とするランダム化比較試験のメタアナリシスで示唆(2015/4/6) by 日経メディカル
【2015.2.17】最近の感染症が関節リウマチのリスクを低下させるかも?
スウェーデンのスコーネ大学病院、カロリンスカ医科大学などからなる研究グループから、過去2年間にかかった感染症と、関節リウマチの発症リスクの関連性についての論文が八表されたそうです。
統計学的な調査によると、関節リウマチのリスクを有意に低下させたのが胃腸炎と泌尿器、生殖器の感染で、胃腸炎は約3割のリスク減少、泌尿器と生殖器の感染症は約2割のリスク減少となったそうです。 副鼻腔炎、扁桃腺炎、肺炎などの呼吸器感染症では影響はないとのこと。
消化管内の腸内細菌のパターン「微生物群ゲノム(マイクロバイオーム)」の変化に関連する特定の感染症は、関節リウマチのリスクを下げる可能性があると見られたとのことです。
Abstractを読んでも「decreased risk of rheumatoid arthritis(リスクを減少させる)」という記述が、具体的に何をどれほどということがわからないので、発病率を抑えるのか、すでに罹患している場合でも症状が軽減するのか、ということについてはわかりません。
※マイクロバイオームとは、ヒトの身体に存在しているたくさんの微生物(マイクロバイオータ)のDNAを総称したものです。 マイクロバイオームはヒトが生きていくためには無くてはならない存在で、ひとそれぞれで少しずつ異なっています。 近年、解析・研究が世界的に活発になっています。
この研究成果は Annals of the Rheumatic Diseases(annrheumdis)オンライン版にて2015年2月5日付で発表されました。
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Recent infections are associated with decreased risk of rheumatoid arthritis: a population-based case-control study.[Abstract](2015/2/5) by NCBI PubMed
Recent infections are associated with decreased risk of rheumatoid arthritis: a population-based case-control study[Abstract](2015/2/5) by Annals of the Rheumatic Diseases(annrheumdis)
関節リウマチ、感染症にかかるとリスクが減る可能性、スウェーデンの研究グループが報告(2014/2/17 21:30) by Medエッジ
【2014.12.17】インターロイキン18の立体構造を世界で初めて解明
岐阜大学の大学院医学系研究科小児病態学と大学院連合創薬医療情報研究科が、京都大学の大学院理学研究科生物物理学教室構造生理学分科、大学院工学研究科分子工学専攻生体分子機能化学講座などとの共同研究によって、インターロイキン18(IL-18)が受容体に結合した複合体の3次元立体構造を解明したことを発表しました。
関節リウマチを含む自己免疫疾患では炎症性サイトカインが増加していますが、IL-18はその一つです。 炎症性サイトカインの働きを阻害する薬としては、IL-6に対するトシリズマブ(アクテムラ)がすでに実用され、他にもIL-1、15、17などに対する薬も開発中または申請中ですが、IL-18に関してはまだです。 今までは薬剤開発の重要な基礎となるIL-18とレセプターの複合体構造とその活性化メカニズムが解明できなかったからです。
研究グループでは、遺伝子組み換え技術を用いてIL-18タンパクとIL-18レセプタータンパクを合成し、エックス線結晶構造解析の技術を用いて、複合体の3次元立体構造を原子解像度で明らかにしたそうです。 これからの創薬の役に立って行くことと思います。
この研究成果は英国科学誌 Nature Communications に2014年12月15日付で発表されました。
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The structural basis for receptor recognition of human i interleukin-18[Abstract](2014/12/15) by Nature Communications
リウマチやアレルギーなどの新薬開発に大きな一歩! インターロイキン 18 の立体構造を世界で初めて解明 by 岐阜大学
免疫・神経難治疾患の治療薬開発を促進するインターロイキン18複合体立体構造を解明(2014/12/16) by 京都大学
関節リウマチなど免疫・神経難病の原因物質となる立体構造を解明 ‐ 岐阜大(2014/12/18) by マイナビニュース
IL-18複合体立体構造を解明、免疫・神経難治疾患の治療薬開発に期待-京大(2014/12/18 16:00) by QLifeProby
【2014.11.28】インフリキシマブのバイオ後続品の「インフリキシマブBS点滴静注用100mg『NK』」が発売
韓国のバイオ企業、セルトリオンが、11月28日に抗リウマチ薬のインフリキシマブ(商品名:レミケード)の後続品であるインフリキシマブBS点滴静注用100mg『NK』を日本で販売を開始しました。
この薬は韓国ではRemsima(レムシマ)という商品名で、すでにに韓国、ヨーロッパを含む29か国で販売されていました。 日本では日本化薬が販売します。
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【2014.11.17】サイクリン依存性キナーゼ[CDK]4/6阻害薬と既存の抗リウマチ薬との併用で、関節炎治療効果が大きく高まる
2008年1月に「抗がん剤として開発された薬が、関節リウマチ治療に効果」という記事がありましたね。 もともと抗がん剤として開発されたであるサイクリン依存性キナーゼ[CDK]4/6阻害薬(p16INK4a)が滑膜細胞の増殖を抑制するという話でした。 今回の研究はその発展です。
東京医科歯科大学の膠原病・リウマチ内科の上阪等教授と細矢匡助教の研究グループは、関節リウマチの滑膜細胞の増殖を抑制する薬剤であるサイクリン依存性キナーゼ[CDK]4/6阻害薬)による治療法と既存の抗リウマチ薬とを併用すると、副作用を増すことなく、関節炎治療効果が大きく高まることを、関節リウマチ動物モデルで明らかにしたということです。
この動物モデルの研究成果は、国際科学誌Annals of the Rheumatic Diseasesに2014年8月27日にオンライン版で発表されました。 また、さらに詳細な解析の結果と、産学連携の創薬成果が2014年11月14〜19日に開催されるアメリカリウマチ学会にて11月18日に発表されました
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【2014.11】第78回米国リウマチ学会(ACR2014)が開催されました
11月13日〜18日にマサチューセッツ州のボストンで、第78回米国リウマチ学会(ACR2014)が開催されました。
昨年までは、日経Medical ONLINEでダイジェストが日本語で読めたのですが、残念ながら今年は掲載されていません。
【2014.11.4】関節リウマチの進行抑える受容体「CRTH2」を発見
東京大学の大学院の農学生命科学研究科の村田幸准教授、中村達朗特任助教、大学院生の壷阪義記の研究グループが、関節リウマチで炎症を抑えて病気の進行を抑える受容体を発見したそうです。 そして、この受容体を刺激すると関節の炎症を慢性化させるマクロファージの活性を抑えることを確かめたとのことです。
関節リウマチでは、炎症を起こした関節に浸潤マクロファージが炎症の悪化や持続に強く関与することが示唆されていましたが、それを効率よく抑えて関節の炎症を鎮める方法がありませんでした。
今回の研究ではマウスを使って、プロスタグランジンD2(PGD2)と呼ばれる生理活性物質が結合する受容体CRTH2が欠損すると関節へのマクロファージの浸潤が増加して関節リウマチの症状が劇的に悪化することや、CRTH2の刺激がマクロファージの活性を抑えて炎症を抑える作用をもつことを発見しました。
本研究がさらに進めば、CRTH2受容体を標的とした治療への応用が期待されます。
この研究成果は、2014年10月30日付の米科学誌Journal
of Immunologyオンライン版に発表されました。
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【2014.10.17】T細胞が体内のどのタンパク質を標的として関節リウマチを起こすかを特定
京都大学の再生医科学研究所の生体機能調節学分野の伊藤能永助教と坂口志文員教授京都大学附属病院リウマチセンターを中心とする研究グループが、関節炎の原因となる免疫細胞であるT細胞が認識する自己のタンパク質を同定し、その自己抗原に対する反応性がヒトの関節リウマチ患者の約17%に認められることを明らかにしたそうです。
関節リウマチ等の自己免疫疾患では、通常胸腺で除去されるべき自己反応性T細胞が存在し、自己抗原を認識して活性化することが、病気の発症原因となるとされています。 しかし、その自己抗原が何なのかを同定することは技術的に難しく、長らく不明とされてきました。
今回の研究では、まず特定のT細胞受容体を持つマウスを使って自己免疫性関節炎を自然に起こさせて、そのT細胞が関節炎の原因となることを確かめ、続いてこのマウスの血液中に産生される自己抗体を利用して、そのT細胞が認識する自己抗原、RPL23A(60S ribosomal protein L23a)分子を同定したとのことです。
そして、京都大学附属病院リウマチセンターのKURAMAコホートでは、通院中の関節リウマチ患者の血清を調べたところ、16.8%(374名中64名)がRPL23A分子に対する抗体を持つことがわかりました。 また、患者の関節液中に存在するT細胞が、実際RPL23A分子によって免疫反応を引き起こすことも確かめました。 これらの結果は、ヒト関節リウマチ患者さんにおいても、RPL23A分子が病気の原因となる自己抗原の一つとして働いていることを示しています。
本研究では、関節リウマチのモデルマウスを用いて、関節炎を引き起こす自己反応性T細胞が認識する自己抗原を同定しました。 そして、その自己抗原が、一部の関節リウマチ患者さんでも、実際に病気にかかわっていることを明らかにしました。本研究で確立した方法は、いまだ原因のわかっていないほかの様々な自己免疫疾患の原因抗原の同定にも応用可能であると考えられます。
この研究成果は、2014年10月17日付の米科学誌Scienceにオンライン掲載されました。
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Detection of T cell responses to a ubiquitous cellular protein in autoimmune disease[Abstract](2014/10/17) by Science
T細胞が体内のどのタンパク質を標的として関節リウマチを起こすかを特定 (2014/10/17) by 京都大学
京大など、関節リウマチの原因となりT細胞が認識する抗原となるたんぱく質を特定(2014/10/17) by 日刊工業新聞
関節リウマチに関係するたんぱく質を発見 阪大と京大 by 日本経済新聞
「関節リウマチ」白血球暴走の引き金タンパク質特定…新治療法の可能性、京大(2014/10/17) by 産経新聞
京大、関節リウマチの原因となる自己抗原を同定(2014/10/17) by マイナビニュース
関節リウマチの原因特定=免疫T細胞が異常攻撃―京大(2014/10/17) by MSNニュース
関節リウマチに関わるたんぱく質特定…京大助教(2014/10/17) by 読売新聞
【2014.6】第15回欧州リウマチ学会(EULAR2014)が開催されました
6月11日〜14日にフランスのパリで、第15回欧州リウマチ学会(EULAR2014)が開催されました。
昨年までは、日経Medical ONLINEでダイジェストが日本語で読めたのですが、残念ながら今年は掲載されていません。 本家EULARで英語で読むしかなさそうです。
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【2014.5.13】人工関節、耐久性30年以上に
経済産業省の「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」に平成24(2012)年度に採択された、界面制御CNTコンポジット材料を用いた高機能人工関節の安全性の開発についての報道がありました。
岡山市の人工関節メーカーのナカシマメディカルが、信州大学の医学部保健学科の齋藤直人教授、岡山大学などと協力して、人工関節の耐久性を従来の1.5倍の30年以上に延ばす素材を開発したそうです。 人工関節の受け皿部分の樹脂にナノテクノロジー素材のカーボンナノチューブを混ぜ、摩耗や割れ等の劣化を起こりにくくするとのことです。
カーボンナノチューブは生体に対し毒性があると指摘されているため、安全性を詳しく確認している段階だそうで、マウスなどで安全性を確かめ、2年後をめどに臨床試験(治験)を始めたいとのことです。
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【2014.5.9】日本リウマチ財団のリウマチ登録薬剤師制度が10月に発足
公益財団法人日本リウマチ財団の登録薬剤師制度が発足したそうです。
制度の目的は「リウマチ性疾患の薬物療法に精通した薬剤師を育成し、リウマチ財団登録医、リウマチケア看護師等と連携・協働して、リウマチ性疾患にかかる医療技術の進歩、医療水準の向上を図り、よりよい医療を提供するため」で、医療機関、調剤薬局において、リウマチ性疾患の薬学的管理指導に従事している薬剤師、および薬剤師の資格をもつ薬学・医学系教育機関の教員を対象に、所定の要件を満たして登録申請すると委員会で審査されたのち登録されるそうです。
2014年10月より、リウマチ財団登録薬剤師が誕生します。
なお財団では、すでに2010年に登録リウマチケア看護師の制度も発足しています。
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【2014.4.26】第58回日本リウマチ学会(JCR2014)が開催されました。
2014年4月24日〜26日に東京のグランドプリンスホテル新高輪で開催された、日本リウマチ学会の第58回日本リウマチ学会(JCR2014)の情報ですが、日経Medical ONLINEの今年度の学会ダイジェストの全文閲覧は、残念ながら登録会員のみとなってしまいました。
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【2014.2.25】関節リウマチ等の自己免疫疾患の新たな発症機構を発見
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの免疫化学研究室/微生物病研究所 免疫化学分野の荒瀬 尚教授らの研究グループが、自己免疫疾患で産生される自己抗体が、異常な分子複合体(ミスフォールドタンパク質/MHCクラス2分子複合体=変性タンパク質と主要組織適合抗原との分子複合体)を認識することを発見し、それが自己免疫疾患の発症に関与していることを突き止めたそうです。
関節リウマチは自己抗体が誤って自己組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つですが、その自己抗体がなぜ産生されるかはまだわかっていません。 T細胞にペプチド抗原を提示するMHC(主要組織適合抗原)が発症に関わる分子であることが知られていますが、なぜ特定のMHC(人間の場合はHLAと呼ばれる)を持っていると自己免疫疾患に罹りやすいのかは不明でした。
今回の研究では、通常は速やかに分解されてしまう細胞内の変性タンパク質が、MHCクラス2分子によって細胞外へ誤って輸送されてしまい、その変性タンパク質が異物として認識されて自己抗体の標的になって自己免疫疾患の発症に関与していることが世界で初めて明らかにされました。
実際に、関節リウマチ患者の血液を解析すると、MHCクラス2分子によって細胞外へ運ばれた変性タンパク質に対する特異的な自己抗体が認められることが判明しました。 変性タンパク質と結合しやすい型のMHCクラス2分子であるHLA-DR4を持っている人は自己抗体の標的抗原が産生されやすいため、HLA-DR3を持っている人に比べて10倍以上も関節リウマチに罹りやすく、MHCクラス2分子によって細胞外へ輸送されてしまった細胞内の変性タンパク質が、自己免疫疾患の発症に関与していることが判明しました。
今回の研究によって、今まで考えられてきた自己免疫疾患の発症機序(T細胞の異常が原因)とは全く異なる新たな発症機序(変性蛋白質がMHCクラス2分子と結合して細胞外に輸送された変性抗体が自己抗体に認識される)が明らかになったことは、長年の自己免疫疾患の謎を解明する上で非常に重要な発見です。 この成果は、今後多くの自己免疫疾患の治療薬や診断薬の開発に貢献することが期待されます。
この研究成果は、2014年2月24日付の米科学誌米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオンライン掲載されました。
ニュースソース↓
Autoantibodies to IgG/HLA class II complexes are associated with rheumatoid arthritis susceptibility[Abstract](2014/2/24) by Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)
関節リウマチ等の自己免疫疾患の新たな発症機構を発見〜自己免疫疾患の診断薬・治療薬開発へ繋がる新たな分子機構〜(2014/2/24) by 科学技術振興機構(JST)
研究プロジェクト by 大阪大学微生物病研究所免疫化学分野
関節リウマチ「主犯」を特定 大阪大、根治薬開発に期待(2014/2/26) by 朝日新聞
大阪大、関節リウマチ発症の原因の一端発見 (2014/3/10) by 日本経済新聞
阪大、自己免疫疾患の発症機構を解明−関節リウマチ治療に道(2014/2/25) by 日刊工業新聞
【2014.1.15】関節リウマチの症状は気圧と関連する
このニュースのタイトルを見てのみなさんの感想はいかがでしょう、おそらくは「何を当たり前のことを」と思われる方が多いのではないでしょうか。 でも、今までは単なる個人的な感覚として捉えられてきていて、統計学的な相関がみられることを示したのはこれが世界で初めてなのだそうです。
京都大学、医学研究科附属ゲノム医学センター特定助教、および橋本求医学部附属病院リウマチセンター特定助教を中心とする研究グループが、京都大学附属病院リウマチセンターのKURAMAコホートにて、通院しているリウマチ患者さんのデータベースと気象庁がホームページにて公開している気象統計情報(気圧、気温、湿度)との相関を統計学的に解析したところ、リウマチ患者の関節の腫れや痛みの指標と気象データのうちの「気圧」との間に負の相関がみられる、すなわち気圧が低いほど、関節の腫れや痛みの指標が悪化することがわかったそうです。
1.リウマチ患者さんの関節の腫れや痛みの指標と、気象データのうちの「気圧」とが、統計学的に負に相関する(気圧が低いほど、関節リウマチの腫れや痛みの指標が悪化する)。
2.「湿度」も相関するが、「気圧」は「湿度」「気温」の影響を加味しても相関する。「気温」との間には相関がみられない。
3.リウマチの評価日からみて、3日前の「気圧」が最もよく相関する。
4.血液検査の炎症を表す数値との間には、相関がみられない。
ただし、その原因についてはわかっておらず、血液の炎症を表す数値との相関はみられませんでした。 とりあえずは、患者が実感として感じることに、統計学的な意味があることを示したユニークな研究ということですが・・・数値的にはっきりしなくて釈然としないでしょうか? それとも患者側の訴えが受け入れられたことに歓迎でしょうか?
研究成果は、英文誌PLOS ONEのオンライン版(1月15日付)に掲載されました。
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関節リウマチの症状は気圧と関連する(2014/01/16) by 京都大学
天気が悪い日はリウマチが痛む!?(京大リウマチ通信 第11号 2014/01/14)[PDF] by 京都大学医学部附属病院リウマチセンター
Inverse Association between Air Pressure and Rheumatoid Arthritis Synovitis (2014/01/14) by PLOS ONE
天気が悪くなるとリウマチが痛むのには科学的な根拠があった - 京大(2014/01/25) by マイナビニュース
低気圧でリウマチ痛み増 京大・統計的に俗説を裏付け(2014/01/16 15:30) by 京都新聞
気圧が低いとリウマチ悪化 通説は湿気が原因ですが…(2014/01/16 07:35) by 朝日新聞
【2013.12.26】全GWASデータの統合・解析により、関節リウマチの発症に関わる101個の感受性遺伝子領域が同定、新たなゲノム創薬手法により新規治療薬候補を同定。
理化学研究所の理化学研究所統合生命医科学研究センター(IMS)の自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーと、統計解析研究チームの岡田随象客員研究員、および東京大学、京都大学、東京女子医科大学を中心に構成されたGARNETコンソーシアム、およびハーバード大学を中心とする欧米研究グループとの国際共同研究グループは、これまで実施された世界中の全ての関節リウマチのGWAS(genome-wide association study)ゲノムワイド関連解析データを統合し、ビッグデータ解析を実施しました。
アジア人および欧米人集団を含む10万人以上のサンプルと、約1,000万の一塩基多型(SNP)で構成されたビッグデータを対象とした解析の結果、101個の遺伝子領域に含まれる一塩基多型が関節リウマチの発症に関与していることが明らかになったそうで、このうち42領域は新規の発見です。
また、これらの遺伝子領域に含まれる一塩基多型のうち、発症しやすい遺伝子変異を持つ人は、それら遺伝子変異を持たない人に比べ、1.1〜1.5倍程度、関節リウマチにかかりやすいことが分かったとのことです。
次に、関節リウマチの感受性遺伝子領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行ったところ、関節リウマチの感受性遺伝子の一部が、原発性免疫不全症候群や白血病の感受性遺伝子と共通していることを明らかになったそうです。 また、制御性T細胞(Treg)のDNAにおいて遺伝子発現機構を制御している領域と、関節リウマチの感受性遺伝子領域に重複が認められることや、多様なサイトカインシグナル(インターロイキン10、インターフェロン、顆粒球単球コロニー刺激因子など)が関節リウマチの発症に関与していることが明らかになったそうです。
さらに、国際共同研究グループは、創薬データベースに登録されたさまざまな疾患の治療薬のターゲット遺伝子の情報を整理し、GWASで得られた疾患の感受性遺伝子とのつながりを検討するという、新しいゲノム創薬手法を考案しました。
その結果、関節リウマチの各感受性遺伝子が、タンパク質間相互作用ネットワークを介して、関節リウマチの治療薬における治療ターゲット遺伝子とネットワークを形成していることが明らかになったそうです。 既存の他の病気に対する治療薬の中にも関節リウマチの感受性遺伝子をターゲットとしているものがあり、それらを関節リウマチの治療に適応拡大できる可能性を示し、有力な治療薬候補を同定しました。
これまでに、この「リウマチャー的話題」のページに掲載したニュースにも、何度かGWASによる研究の記事がありましたが、今回出た結果を見て関節リウマチのような多因子疾患に関しての威力を感じました。 GWASという巨大な視点が、最終的には個々の患者に恩恵をもたらす(特に今回は効果的で副作用の少ない新たな治療薬の選定と開発)ようになることを期待したいと思います。
研究成果は英国の科学雑誌Natureのオンライン版(12月25日付)に掲載されました。
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【2013.12.23】東大、関節リウマチの発症・悪化の鍵となるT細胞(exFoxp3Th17細胞)を発見
東京大学の大学院医学系研究科の病因・病理学専攻 免疫学講座高柳研究室の高柳広教授、小松紀子客員研究員らの研究グループが、マウスを使った実験により自己免疫疾患の発症の鍵となるT細胞(exFoxp3Th17細胞)を新たに発見し、この細胞が免疫を抑制する制御性T細胞(Treg)からの分化転換により発生することを見いだしたそうです。
ヘルパーT細胞の1つであるTh17細胞とTregの働きの不均衡が自己免疫疾患を引き起こす原因となることはすでに知られていますが、発症の過程におけるTh17細胞の分化のメカニズムについて不明な点が多いです。
一方で、Tregは転写因子であるFoxp3(※2007.3.22の記事を参照)を発現することで免疫抑制機能を発揮することが知られています。 また、自己反応性の高い細胞であるTregが免疫抑制機能を担うFoxp3の発現を消失した場合に、自己免疫疾患を引き起こす細胞へ転換してしまう可能性が考えられるが、この可能性はこれまで証明されていなかったそうです。
今回研究チームは、自己免疫疾患を促進するTh17細胞はTregが免疫抑制機能を担う因子Foxp3の発現を消失することで生じるという仮説を立て、関節リウマチのモデルであるコラーゲン誘導性関節炎を発症させたマウスを使ってこの検証に取り組み、関節の炎症と骨破壊を強力に誘導するTh17細胞(exFoxp3 Th17細胞)が新しく同定され、この細胞が免疫を抑制する細胞から分化転換することやユニークな遺伝子発現パターンを持つことが明らかになったということです。
この研究は、健康な状態では状況に応じて柔軟に免疫応答をコントロールして自己寛容の維持にしているTregが、炎症を起こした関節の局所などの炎症性サイトカインの濃度がいちじるしく高い環境では自己免疫疾患をひき起こすTh17細胞へと分化して、自己を攻撃するという非常事態が起こってしまうのかもしれないという可能性を示したものです。
病原性のTh17細胞であるexFoxp3 Th17細胞は,関節リウマチだけでなく多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなど、さまざまな自己免疫疾患の治療の標的となる可能性をもち、exFoxp3 Th17細胞の病原性をつかさどる分子基盤の解明が自己免疫疾患の新しい治療薬や診断マーカーの確立に貢献することが期待されるとのことです。
研究成果は、2013年12月22日に米科学雑誌Nature Medicineに公開されました。
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関節リウマチの発症の鍵となるT 細胞を発見〜免疫反応を抑制するT 細胞が関節の炎症と骨破壊を促進するT 細胞へ変身〜[PDF] by 東京大学プレスリリース
Pathogenic conversion of Foxp3(+) T cells into TH17 cells in autoimmune arthritis.[Abstract](2013/12/22) by NCBI PubMed
Foxp3陽性T細胞から分化した病原性を示すTh17細胞の自己免疫性の関節炎における重要性(2014/01/15) by ライフサイエンス 新着論文レビュー
善玉から悪玉へ:Foxp3を発現しなくなったT reg 細胞は自己免疫性関節炎を助長する(2014/01/07) by Nature Medicine
Tipping the balance: conversion of Foxp3+ T cells to TH17 cells is crucial in autoimmune arthritis(2014/01/07) by Nature Review Rheumatology
東大、関節リウマチの炎症など促進する病原性の高いT細胞発見(2013/12/26) by 日刊工業新聞
東大とJST、関節リウマチの発症の"カギ"となるT細胞を発見(2013/12/27) by マイナビニュース
関節リウマチを強力に悪化=新細胞発見、薬開発に期待−東大(2013/12/28 17:26) by 時事通信
【2013.11】第77回米国リウマチ学会(ACR2013)のレポート
10/26〜30日にカリフォルニア州のサンディエゴ開催された、第77回米国リウマチ学会(ACR2013)の情報です。
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【2013.9.20】関節リウマチの関節炎にかかわる新たなヘルパーT細胞「iTh13」(炎症性CXCL13産生ヘルパーT細胞)を同定
京都大学の吉富啓之 医学研究科准教授(次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)と小林志緒 同研究員らの研究グループは、松田秀一 同教授(整形外科学講座)と伊藤壽一 同教授(耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)と協力して、関節リウマチの関節炎に存在する新たな種類のヘルパーT細胞を同定したそうです。この細胞はiTh13と名づけられ、炎症の存在する場所に他のリンパ球を集めることで炎症の持続にかかわっていると考えられるということです。
これまでT細胞が関節リウマチに関係していることは知られていましたが、どのようにかかわっているのか十分には分かっていませんでした。本研究では関節炎組織中に、これまで知られていたT細胞と異なった種類のヘルパーT細胞であるiTh13が存在してCXCL13というタンパク質を作ることで他のリンパ球を集めて濾胞を作り、炎症の持続にかかわっていると考えられるとのことです。
今回の発見はヒトのヘルパーT細胞に新たな種類のものが存在することを示した重要な発見であり、関節リウマチだけでなく他の慢性炎症疾患や癌などにおいてもiTh13細胞が重要な役割をはたすと考えています。iTh13細胞がどのように働くのかを明らかにすることで、免疫学の進歩だけでなくさまざまな疾患の新たな治療につながると考えられます。
研究成果は、2013年9月10日に米リウマチ学会誌Arthritis & Rheumatismオンライン速報版に公開されました。
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【2013.9.17】免疫のブレーキPD-1が、自然免疫反応の調節によって免疫難病の発症を抑制することを解明
京都大学の本庶佑 医学研究科客員教授、竹馬俊介 助教、RUI YUXIANG 大学院生の研究グループが、免疫のブレーキとして働く分子PD-1(Programmed Cell Death-1)が自己免疫疾患を抑制する新たな機構を明らかにしたそうです。
抑制性免疫補助受容体(=免疫チェックポイント分子)の1つであるPD-1は、活性化T細胞の表面にに発現する受容体で、T細胞の過剰な活性化を抑制することが知られています。 T細胞の活性化は生体防御に必要ですが、過剰な活性化は関節リウマチを含む自己免疫疾患を引き起こします。 研究グループでは2009年に、PD-1欠損マウスではT細胞から過剰なサイトカインが産生されて、自己免疫疾患の発症の第一のステップが突破されることを見出していました。 しかし、発症にはT細胞がTh17(IL-17産生ヘルパーT細胞)に分化することが関わっており、これには微生物などの環境因子に対して初期の炎症反応を起こす自然免疫細胞が産生するサイトカインが必要です。 つまり発症につながるTh17のへ分化には、T細胞の活性化と自然免疫系が起こす炎症が両方必要なのです。 ただし、PD-1が自己免疫を抑制する一つの原因として自然免疫反応の調節を行うのかどうかについては検討されていませんでした。
今回の研究では、体内で同時に起こるため別々に評価するのが困難だった、T細胞の過剰な活性化を抑制と自然免疫反応の調節という2つの反応を、ヒトの自己免疫疾患であるEAEマウス(実験的自己免疫性脳脊髄炎のマウス、多発性硬化症のモデル)を使って別々に調べることに成功し、PD-1がT細胞の過剰な活性化を抑制と自然免疫反応の調節の両方を行っていることが解明されたそうです。
今後、PD-1の分子機構を明らかにしていくことが、自己免疫疾患のメカニズムをより深く理解するために重要だとのことです。
研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(8月22日付)に掲載されました。
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【2013.9.11】インフリキシマブのバイオ後続品の承認が申請されました
日本化薬が9月11日付で抗リウマチ薬のインフリキシマブ(商品名:レミケード)の後続品の製造販売承認の申請を行いました。 開発コードはCT-P13、審査が進めば2014年度中の承認が見込まれるそうです。
今まで関節リウマチに対する生物学的製剤は先発医薬品しかありませんでしたので、この薬が承認・発売されれば初の後発品の登場ということになりますね。 70%(10%を上限とした上乗せもアリ)の薬価になるとしてもまだまだ高価ですが、少しでも患者の負担が減ることが期待されます。
なお、生物学的製剤の後発品はジェネリック医薬品とは呼ばず、バイオ後続品(=バイオシミラー)と呼びます。 申請にあたって新薬に準ずる申請資料の提出が要求される等ハードルが高く、販売後も安全性調査を行う必要があります。
2014年11月28日に発売されました。
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【2013.8.27】オレンシア(アバタセプト)の皮下注製剤が発売
抗リウマチ薬のオレンシア錠(一般名:アバタセプト)の皮下注製剤が、6月28日付で薬価基準に収載され、8月27日より新発売されました。
今までオレンシアは点滴静注用のみでしたが、皮下注製剤も使用できるようになりました。
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【2013.7.30】ゼルヤンツ錠(トファシチニブ)発売
抗リウマチ薬のゼルヤンツ錠(一般名:トファシチニブ)が、5月24日付で薬価基準に収載され、7月30日より新発売されました。
ゼルヤンツ錠は関節リウマチの治療に用いる国内初のJAK阻害薬です。 経口投与、つまり飲み薬です。
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【2013.7.19】関節リウマチに特異的な血漿中マイクロRNAの同定
京都大学の吉富啓之 医学研究科准教授(次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)、村田浩一 同大学院生(整形外科学講座)らの研究グループは、伊藤宣 医学研究科(リウマチ性疾患制御学講座)特定准教授と布留守敏 同特定助教と協力して、マイクロRNAのうちmiR-24とmiR-125a-5pが関節リウマチ患者さんの血液で増加している事を発見したそうです。
マイクロRNA(=miRNA)とは、ノンコーディングRNA(=ncRNA)の一種で、細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどのRNAです。 他の遺伝子の発現を調節して最終的に細胞機能の発現に関わっていると考えられており、細胞の発生、分化、増殖、がん化およびアポトーシスなどの細胞機能の根幹に関わっているそうです。
今回の研究では、768種類のマイクロRNAの発現を関節リウマチ患者と健常人の血漿で解析し、miR-24とmiR-125a-5pが患者の血漿で増加していることが明らかになりました。 さらに抗CCP抗体が陰性の場合でも同様に、miR-24、miR-125a-5pおよびmiR-30a-5pとの複合値は関節リウマチ患者を区別することができました。 このことから、血漿中マイクロRNAは、抗CCP抗体が陰性の患者さんに対しても診断に有用ではないかと考えられるそうです。
関節リウマチの早期診断、新しい治療法の開発へとつながる研究ですが、今後は発症前または早期の患者さんではどうなのか、また治療によってどのように変化していくのかを調べていく必要があるとのことです。
研究成果は、2013年7月18日に公共科学図書館(=Public Library of Science=PLOS)の刊行する科学雑誌PLOS ONEに公開されました。
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【2013.6.14】第14回欧州リウマチ学会(EULAR2013)のレポート
6月12日〜15日にスペインのマドリッドで開催されている、第14回欧州リウマチ学会(EULAR2013)の情報です
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【2013.6.11】ペン型のエンブレルが新発売
抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)の新しい剤形である「エンブレル皮下注50mgペン1.0mL」が6月11日に発売されました。
従来の「エンブレル皮下注50mgシリンジ1.0mL」と同じ中身があらかじめ充填されているペン型の注射剤で、最上部にあるボタンをワンクリックするだけで簡単に投与できるそうです。 注射針がペンの中に隠れているので、注射時に針を見ずに投与できるため、針が怖いと感じる人にもうれしいですね。 さらに、投与後の針刺し防止機能もついていて、感染症等のリスクの軽減も。見込まれるそうです。
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【2013.5.30】非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による小腸傷害とTNF-αの関係
大阪市立大学大学院医学研究科の消化器内科学の渡邉俊雄准教授らのグループが、関節リウマチだけでなく解熱や痛み止めなどに広く使われている、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による小腸傷害が炎症性サイトカインのひとつであるTNF-αにより引き起こされることを、NSAIDを長期服用中の関節リウマチ患者を対象としたカプセル内視鏡による研究で明らかにしたそうです。
最近の研究により、NSAIDが胃や十二指腸の他に小腸にも潰瘍を発生させることが分かってきましたが、有効な治療法は未だ確立されていません。
TNF-αといえば、抗リウマチ薬であるレミケード(インフリキシマブ)、ヒュミラ(アダリムマブ)、シンポニー(ゴリムマブ)、シムジア(セルトリズマブ ペゴル)などのTNF-α阻害薬が抑える対象そのもの、つまりこれらの薬を使っていれば小腸傷害が起こりにくいのでしょうか?
このたびの研究では、実際にNSAIDを長期間服用している関節リウマチ患者にカプセル内視鏡にて小腸の観察を行い、重症小腸傷害の発生頻度をTNF-α阻害薬の投与を受けている群と投与をうけていない群とで比較したそうで、その結果TNF-αの投与を受けている群のほうがリスクが約1/4に低下していたそうです。
しかし、TNF阻害薬は非常に高価な薬剤で、仮に有効性が確認されたとしてもすべてのNSAID内服者に使用することが難しいのが難点です。 とりあえずは、たまたまTNF阻害薬を使っている患者さんはラッキーということになるでしょうか。 やはりいずれにしても将来的には、TNF阻害薬がより安価になることが望まれますね。
研究成果は、2013年5月22日に英国の消化器専門誌Gutのオンライン版に公開されました。
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【2013.5.24】細胞内のRegnase-1がT細胞の活性化をコントロールすることを発見
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの植畑拓也研究員、同・拠点長の審良静男教授らの研究グループが、関節リウマチを含む自己免疫疾患の発症抑制に、細胞内のRegnase-1という酵素が重要であることを明らかにしたそうです。
自己免疫疾患では炎症性サイトカインが増加していますが、Regnase-1は細胞内でIL-6やIL-12p40をはじめとしたサイトカインを作るのに必要なメッセンジャーRNAの分解に関わる酵素だということです。
T細胞特異的Regnase-1を欠損させたマウスでは自己免疫疾患を発症しました。 さらにT細胞においてRegnase-1がどのように制御されているのかを検討した結果、リンパ腫関連タンパク質であるMalt1(=Mucosa Associated Lymphoid Tissue Lymphoma Translocation Gene-1)がヘルパーT細胞の中のRegnase-1の分解によって、免疫活性化をコントロールしているということがわかりました。
まだマウスでの話ではありますが、ヒトT細胞で発現するRegnase-1も炎症抑制などの免疫応答に重要な役割を果たしていると考えられ、T細胞におけるRegnase-1を標的とした治療が免疫疾患に対する有力手段になる可能性があり、さらに病原体やガンに対して機能するT細胞においてRegnase-1をコントロールすることで、治療効果の増大を期待することができだろうとのことです。
この研究成果は、2013年5月23日付の米科学誌Cellに発表されました。
ニュースソース↓
Malt1-Induced Cleavage of Regnase-1 in CD4+ Helper T Cells Regulates Immune Activation[summary](2013/5/23) by Cell
自己免疫疾患の発症メカニズムの一因が明らかに (審良 拠点長が Cell に掲載) (2013/05/24) by 大阪大学免疫学フロンティア研究センター
阪大、免疫機能抑制するたんぱく質特定(2013/05/24 11:44) by 日本経済新聞
阪大、タンパク質「Regnase-1」はT細胞の活性化の調節に重要な因子と証明(2013/05/31) by マイナビニュース
【2013.5.20】コルベット、ケアラム(イグラチモド)は、ワルファリンとの併用は禁忌
抗リウマチ薬のコルベット25mg錠・ケアラム25mg錠(一般名:イグラチモド)について、厚生労働省は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から、安全性速報(ブルーレター)を出しました。
2012年9月12日の販売開始から2013年5月17日までの間に使用した患者数は2660人で、本剤とワルファリンとの相互作用が疑われる出血又は血液凝固能検査値の異常変動が9例〔うち、重篤3例(死亡例を含む)〕報告されているそうです。 そのうち、専門家の評価により本剤とワルファリンの相互作用の可能性が否定できないとされた症例は6例〔うち、重篤3例(死亡例を含む)〕とされています。
このような状況を考慮し、本剤とワルファリンとの併用は「禁忌」になりました。
コルベット、ケアラム(イグラチモド)の使用にあたっては、
1.現在ワルファリンを併用している患者については、本剤の服用中止を検討してください。
2.ワルファリンの治療を必要とする患者には、本剤を投与しないでください。
この件だけでなく、普段から受診するときには、他の科や病院で処方されている薬を把握して、伝えるようにしましょう。 お薬手帳を活用すると便利です。
ニュースソース↓
リウマチ治療薬「ケアラム錠25mg/コルベット錠25mg」についてワルファリンとの併用は行わないよう注意喚起を要請(安全性速報 2013年5月13−01号) by 厚生労働省
抗リウマチ剤 ケアラム錠 25mg/コルベット錠 25mg(イグラチモド)とワルファリンとの相互作用が疑われる重篤な出血について(安全性速報 2013/05/17) by 厚生労働省
抗リウマチ剤「ケアラム錠25mg/コルベット錠25mg(イグラチモド)」に関する重要なお知らせ(2013/05/17) by エーザイ株式会社
抗リウマチ剤「コルベット錠25mg/ケアラム錠25mg(イグラチモド)」に関する重要なお知らせ(2013/05/17) by 大正富山医薬品株式会社
【安全性速報】リウマチ治療薬ケアラム錠/コルベット錠についてワルファリンとの併用を禁忌に指定(2012/05/17 05:05) by QLifePro医療ニュース
ケアラム錠/コルベット錠とワルファリンとの相互作用でブルーレター 肺胞出血で死亡例も(2012/05/20 05:03) by ミクスOnline
【厚労省】イグラチモドにブルーレター‐ワルファリン併用で1人死亡(2013/05/22) by 薬事日報
【2013.5.14】細胞内のArid5aが自己免疫疾患の発症に関与することを発見
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの増田和哉研究員、同・岸本忠三教授や京都大学のウイルス研究所生体応答学研究部門感染防御研究分野竹内理らの研究グループが、関節リウマチを含む多くの自己免疫疾患の発症に、細胞内のArid5a(=AT rich interactive domain 5A)というタンパク質が関与することを発見したそうです。
自己免疫疾患では炎症性サイトカインのひとつであるIL-6が増加していますが、タンパク質Arid5aは細胞内でIL-6を作るのに必要なメッセンジャーRNAと結合してメッセンジャーRNAが分解酵素に分解されないようにしていることを突き止めたそうです。
Arid5aを欠損させたマウスでの実験ではIL-6の生産を促す毒素であるエンドトキシン(グラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖)の投与を行ってもIL-6の異常産生とエンドトキシンショックが起こらないこと、また多発性硬化症のマウスモデルにおいてはその発症が抑えられることが判明したとのことです。
Arid5aの産生を抑える化合物、あるいはArid5aがメッセンジャーRNAに結合することを防ぐ化合物の開発が、IL-6異常産生に起因する炎症性自己免疫疾患の新たなる治療薬の開発につながるだろうとのことです。
研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(5月13日付)に掲載されました。
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Arid5a controls IL-6 mRNA stability, which contributes to elevation of IL-6 level in vivo (2013/5/13) by Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)
リウマチ発症のタンパク質発見 阪大など、治療薬に期待(2013/05/14 04:00) by 日本経済新聞
「Arid5a」は自己免疫疾患を引き起こすカギ分子の可能性大 - 阪大 by マイナビニュース
【2013.4.22】第57回日本リウマチ学会(JCR2013)のレポート
2013年4月18日〜20日に京都の京都国際会館で開催された、日本リウマチ学会の第57回日本リウマチ学会(JCR2013)の情報です。
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【2013.3.25、4.10】ゼルヤンツ錠とアクテムラ皮下注が製造販売承認。
抗リウマチ薬のゼルヤンツ錠(一般名:トファシチニブ)が、3月13日付で厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過、3月25日付けで製造販売承認されました。
ファイザーのゼルヤンツ錠は関節リウマチの治療に用いる国内初のJAK阻害薬です。 JAK阻害薬は炎症性サイトカインが生物活性を発揮するために必要なシグナル伝達系であるチロシンキナーゼのJAKを特異的に阻害し、有効性は生物学的製剤と同様だそうです。 しかも経口投与、つまり飲み薬です。 新クラスの抗リウマチ薬ということになりますね。
なお、日本リウマチ学会理事会が、安全性に懸念を表明する文書を作成し、ファイザー社と厚生労働省に提出していたことを同学会ホームページで公表しました。 それに対して、ファイザー社より回答が寄せられ、適正使用の徹底に向けて取り組む姿勢を表明しました。 日本リウマチ学会は、発売後も適正使用について厳しくモニタリングしていく意向だそうです。
また、中外製薬のアクテムラ皮下注(一般名:トシリズマブ)も、3月13日付で厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過、3月25日付けで製造販売承認されました。
また、ファイザーのエンブレル(の新剤形のエンブレル皮下注50mgペン1.0mL(一般名:エタネルセプト)も、3月25日付けで製造販売承認されました。 ワンクリックで簡単に投与できて、利便性が向上するようてす。
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【2013.3.8】シムジア(セルトリズマブ ペゴル)発売。
アステラス製薬の抗リウマチ薬のシムジア皮下注200mgシリンジ(一般名:セルトリズマブ ペゴル)が、2月22日付で薬価基準に収載され、3月8日より新発売されました。
ヒト化抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体です。
これで、日本国内で使用できる(承認されている)生物学的製剤は、7種類になりました。
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【2013.1.22】対の胎盤タンパク質 HLA-G による関節リウマチ抑制技術の開発
北海道大学の大学院の薬学研究院の生体分子機能学研究室の前仲勝実教授・黒木喜美子助教授らの研究グループが、ヒトの胎盤に主に発現し、母体免疫から胎児を守ること(免疫寛容)に貢献するHLA-Gタンパク質を、自己免疫疾患の1つである関節リウマチモデルマウスに投与したところ、長期間症状の進行を抑えることができ、明らかな副作用も認められないことを確認したそうです。
HLA-Gは胎盤(ほかには胸腺、腫瘍細胞)に特異的に発現するタンパク質です。 妊娠時の胎盤では、このタンパク質が母体免疫反応を広く抑制して、胎児が異物と見なされないようにして妊娠を成立させています。 このHLA-Gは生体内で単量体として存在するだけではなく、自然酸化により生成された対の形態(ホモ二量体)を形成することが知られていました。 そして今までに、この研究室では対のHLA-Gが母体の免疫系細胞上の抑制型受容体Leukocyte Ig-like receptor(LILR)B1、LILRB2と強く結合することにより、単量体に比べより強力なシグナル伝達を行うことを明らかにしてきたそうです。
今回の研究では、対のHLA-Gタンパク質をII型コラーゲン誘導型関節リウマチモデルマウスに投与して、四肢の関節の腫れを抑制する効果が確かめられたとのこと。 しかも、マウスの体重減少や致死のような明らかな副作用は認められなかったとそうです。 また、左足局所へ1回のみ投与することで、関節炎抑制効果は2か月以上持続したそうです。
妊娠中に関節リウマチの症状が和らいだという経験をお持ちの方は少なくありませんが、この研究結果はそれを裏づけるものだと思います。
今回の研究により、生体内に実際に存在する対のHLA-Gタンパク質が強い免疫抑制効果を示すことが明らかとなったことから、より副作用が少なく効果持続期間が長いバイオ医薬品の実現が期待できるようになると研究グループでは説明しています。
研究成果は、2012年12月29日に米国免疫学雑誌のHuman Immunologyに掲載されました。
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The long-term immunosuppressive effects of disulfide-linked HLA-G dimer in mice with collagen-induced arthritis(2012/12/29) by Human Immunology
[PDF]対の胎盤蛋白質による関節リウマチ抑制技術の開発(プレスリリース 2013/1/22) by 北海道大学
対の胎盤タンパク質により関節リウマチの炎症は抑制できる - 北大が確認 by マイナビニュース
母体免疫から胎児を守るHLA-Gタンパク質 関節リウマチの炎症を抑制(2013/01/27 09:13) by QLifePro
【2013.1.21】免疫反応を抑える細胞制御性T細胞(Treg)が作られる新たな仕組みを発見
慶應義塾大学の医学部の関谷高史助教や吉村昭彦教授らがらの研究グループが核内受容体注の一種Nr4aというタンパク質が、免疫反応を抑制する細胞制御性T細胞(Treg)の生産に必須であることを発見したとのことです。 今までTregが作られる仕組みは謎だったそうです。 さらにNr4aを適度に活性化することで通常はTregにならない細胞もTregにすることができることをマウスの実験で示しました。
免疫システムの司令塔であるヘルパーT細胞は胸腺で生まれ、胸腺の外に出て身体を循環し、身体に侵入した病原体の種類に応じて免疫を活性化する役割のエフェクターT細胞であるTh1、Th2、Th17の3種類のいずれかのに分化します。 また、ヘルパーT細胞のなかにはエフェクターT細胞を抑制し免疫反応を適切に制御するTregが存在しますが、これがどのように発生するのかは長らく不明でした。
ヘルパーT細胞が分化するときに、抗原を感知するT細胞受容体(TCR=T cell receptor)がランダムに数千万種類も形成されますが、この中から自分自身の細胞が持つたんぱく質を抗原と認識して強く反応するTCRを持つT細胞には強いTCR刺激が入り、アポトーシス(細胞死)で除去されます。 それより少し弱いけれど自己抗原をある程度強く認識するTCRを持つT細胞が死なずにTregになるのだろうと考えられています。 それよりもさらに弱く自己抗原を認識するT細胞がナイーブT細胞(病原体排除に機能する一般的なT細胞)として胸腺の外に出て末梢を循環します。 このナイーブT細胞が末梢で抗原に出会うとエフェクターT細胞になります。 また、自己抗原を全く認識できない細胞も、アポトーシスで除去されます。 このように、胸腺でヘルパーT細胞は、主に自己抗原に対する親和性(反応性)によりその運命を決定づけられます。
今回の研究では、Nr4aファミリー(Nr4a1、Nr4a2、Nr4a3)すべてを欠損させたマウスを作り、このマウスでは胸腺・末梢ともにTregがほぼ完全に存在しないことが明らかにしました。
次に、Nr4aがヘルパーT細胞の運命決定を担う因子であると考え、OT-IIと呼ばれるTCRを持つT細胞に遺伝子操作によって任意の強さで人工的に活性化させたNr4aを作用させ、ヘルパーT細胞の運命がどのように決定されるかを解析しました。 その結果、Nr4aを強力に活性化させるとOT-II TCRを持つT細胞はアポトーシスで除去され、中程度に活性化させるとを起こすとTregになることを見いだしました。 このことから、TCRと自己抗原との親和性が強い時はNr4aも強く活性化されてアポトーシスで除去、TCRと自己抗原との親和性が中程度の時は、TregへとヘルパーT細胞の運命が決定づけられていることが分かりました。
このタンパク質Nr4aを人為的に活性化させ、Tregの量を調節できれば、自己免疫疾患の関節リウマチや炎症性腸疾患、アレルギー疾患のぜんそくや花粉症などの新たな治療法につながる可能性があるということです。
研究成果は、1月20日付けの英国科学雑誌 Nature Immunology のオンライン版に掲載されました。
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【2013.1.17】破骨細胞が骨を壊す様子のライブイメージングに成功
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの石井 優 教授らの研究グループが、世界で始めて生きたままで骨の内部を観察することに成功し、破骨細胞が実際に骨を壊していく様子を、リアルタイムで可視化することに成功したそうです。
骨を破壊・吸収する破骨細胞の動きを鮮明に捉え、「骨の表面で実際に骨を壊している破骨細胞(R型)」と、「骨の表面にいるが骨を壊していない破骨細胞(N型)」の2種類の細胞が存在することが分かったとのこと。 これは今後、骨粗鬆症や関節リウマチ、がんの骨転移などの病気の治療薬の開発に貢献することになるでしょう。
関節リウマチの骨破壊に関与する炎症性T細胞の一つであるTh17が骨の破壊を引き起こすしくみも実際のライブイメージングで解明できたとのことです。
研究成果は、1月16日に米国臨床医学雑誌The Journal of Clinical Investigationのオンライン版に掲載されました。
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Dynamic visualization of RANKL and Th17-mediated osteoclast function(2013/1/16) by The Journal of Clinical Investigation
世界初 破骨細胞が骨を壊す様子のライブイメージングに成功−関節リウマチや骨粗鬆症、がんの骨転移に対する理想的治療法開発に光− by 科学技術振興機構 (JST)
阪大とJST、破骨細胞が実際に骨を壊していく様子も撮影可能な顕微鏡を開発 by マイナビニュース
骨の破壊見えた=骨粗しょう症治療に期待−大阪大(2013/01/17 02:54) by 時事通信
骨に張り付き破壊する細胞を観察 阪大、骨粗しょう症薬期待 by 河北新報
【2012.11.29】シムジアが薬事・食品衛生審議会第二部会を通過
抗リウマチ薬のシムジア皮下注200mgシリンジ(一般名:セルトリズマブペゴル)が、11月29日付で厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過しました。 順調にいけば春前の薬価収載になる予定とのことです。
シムジアはユーシービージャパンが開発しアステラス製薬が販売する予定の生物学定期製剤です。ヒト化抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体で、PEG化(ポリエチレングリコールを結合すること、pegylation)して細胞傷害を起こすFc領域を除去されているため、長時間効き目が持続し免疫反応を引き起こさないという特徴があるそうです。
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【2012.11.29】関節リウマチの関節炎を制御する因子であるタンパク質分子TIARPを発見
筑波大学の医学医療系、大学院、人間総合科学研究科先端応用医学専攻臨床免疫学の准教授の松本功、助手の井上明日香、教授の住田孝之らの研究グループの研究で、腫瘍壊死因子(TNF-α)が誘導する新規分子としてTIARP/TNFAIP9(TIARP)を同定したそうです。
研究グループでは、これまでヒトの関節リウマチの病態に近い自然発症関節炎モデルマウス(K/BxN)を使った実験で、TIARP欠損マウスを関節炎に起こさせたところ、野生型マウスと比べて関節炎の病態および発症率が有意に悪化すること、抗IL-6抗体を与えることでTIARP欠損マウスで関節の病態が抑制されることから、TIARPはIL-6などの炎症性サイトカインの産生を抑制することによって関節炎を制御する因子であることが示唆されたとのことです。。
今後は更にTIARPの関節炎抑制メカニズムを明らかとし関節炎との関与を解明していくということです。
研究成果はアメリカリウマチ協会(ACR)のArthritis & Rheumatismの12月号に掲載されました。
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筑波大、関節リウマチの発症と治療効果に関わるタンパク質分子を発見(2012/11/29) by マイナビニュース
Murine tumor necrosis factor α-induced adipose-related protein (tumor necrosis factor α-induced protein 9) deficiency leads to arthritis via interleukin-6 overproduction with enhanced NF-κB, STAT-3 signaling, and dysregulated apoptosis of macrophages by Arthritis & Rheumatism
【2012.11】第76回米国リウマチ学会(ACR2012)のレポート
11/10〜14日にワシントンD.C.で開催された、第76回米国リウマチ学会(ACR2012)の情報です。
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【2012.9.12】コルベット、ケアラム(イグラチモド)発売。
抗リウマチ薬のコルベット25mg錠・ケアラム25mg錠(一般名:イグラチモド)が、8月28日付で薬価基準に収載され、9月12日より新発売されました。
この薬は抗リウマチ薬(DMARDs)、生物学的製剤ではなく、免疫調整剤です。
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【2012.4.19、6.29】コルベットが承認
抗リウマチ薬のコルベット25mg錠・ケアラム25mg錠(一般名:イグラチモド)が、6月29日付で承認されたそうです。 4月19日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過していた分です。
最初の承認申請は2003年でしたが、2009年に追加試験実施のため、いったん申請を取り下げられ、2011年8月に再申請していたものです。
薬価基準収載後、大正富山医薬品株式会社より「コルベット」、エーザイ株式会社より「ケアラム」の商品名で、それぞれ発売されます。
この薬は抗リウマチ薬(DMARDs)、生物学的製剤ではなく、免疫調整剤です。
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【2012.6.6】第13回欧州リウマチ学会(EULAR2012)のレポート
6月6日〜9日にドイツのベルリンで開催された、第13回欧州リウマチ学会(EULAR2012)の情報です
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【2012.5.28】補助刺激受容体「PD-1」の集合体がT細胞の過剰な活性化を抑制することを発見
理化学研究所のアレルギー科学総合研究センターの免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクター、横須賀忠上級研究員と、大阪大学の免疫学フロンティア研究センター、東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科との共同研究によって、免疫応答の核となるT細胞の活性化や増殖を抑制する補助刺激受容体(=免疫チェックポイント分子)PD-1(Programmed Cell Death-1)が、集合体(ミクロクラスター)を形成し、T細胞の過剰な活性化を抑制していることを明らかにしました。
抗PD-1抗体や抗PD-1リガンド抗体が臨床応用され始めており、すでに臨床応用されている抗CTLA-4抗体よりも効果が顕著であると報告されています。 今回の成果はPD-1の動態を制御するなど新しい観点からの創薬とともに、より選択的な免疫抑制剤や免疫活性剤の開発への可能性を示しており、慢性ウイルス感染やがんに対する免疫応答の強化だけでなく、移植拒絶、アトピー性皮膚炎、リウマチといった自己免疫疾患の過剰な免疫応答の緩和など、免疫治療のさらなる進歩が期待できるということです。
研究成果は米国科学雑誌The Journal of Experimental Medicine(5月28日付)に掲載されました。
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免疫応答を抑える新たな分子メカニズムを解明−補助刺激受容体PD-1がミクロクラスターを形成することを発見−(2012/5/28) by 理化学研究所
免疫応答を抑える新たな分子メカニズムを解明(2012/5/28) by 大阪大学免疫学フロンティア研究センター
Programmed cell death 1 forms negative costimulatory microclusters that directly inhibit T cell receptor signaling by recruiting phosphatase SHP2 [Abstract] (2012/05/28) by The Journal of Experimental Medicine
【2012.4.30】TRIM28がT細胞性自己免疫疾患を抑制していることを確認
京都大学の医学研究科免疫ゲノム医学講座特定教授の竹馬俊介らの研究で、クロマチン制御因子のTRIM28(Tripartite motif protein 28)が、T細胞の恒常性維持、および自己反応性T細胞の分化抑制に重要な分子であることがわかったそうです。
マウスの実験で、TRIM28欠損マウス由来のT細胞が、Th17(自己組織に対して炎症性サイトカインであるIL-17を放出する炎症細胞)へと自然に分化し、結果として全身性の自己免疫病を起こすことがわかったとのことです。
実際の自己免疫疾患ではTRIM28による遺伝子調節機構が破たんしていると考えられ、有害なT細胞を同定することを目指しているそうです。 これが成功すれば、患者の体内で特定のT細胞を除去することによって炎症の軽快を図るという治療法の開発につながる可能性があります。
研究成果は米国科学雑誌Nature Immunology(4月29日付)に掲載されました。
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【2012.4.26】第56回日本リウマチ学会(JCR2012)のレポート
2012年月26日〜29日に東京のグランドプリンスホテル新高輪で開催された、日本リウマチ学会の第56回日本リウマチ学会(JCR2012)の情報です。
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【2012.3.30】自己免疫疾患の原因となるTh17免疫細胞が増える新たな仕組みを発見
慶應義塾大学医学部の永井重徳助教らの研究グループが、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の課題達成型基礎研究の一環として、脂質リン酸化酵素の一種であるPI3K(phosphoinositide 3-kinase)という酵素が自己免疫疾患の原因となるヘルパーT細胞のひとつであるTh17を増やす仕組みを発見したそうです。
さらにその仕組みを阻害する薬剤を自己免疫性腸炎のモデルマウスに投与して、症状を改善することに成功したということで、さらに研究を進めることによって、さまざまな自己免疫疾患に対する、副作用の少ない治療法の開発につながるものと期待されます。
研究成果は米国オンライン科学雑誌Cell Reports(3月29日付)に掲載されました。
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【2012.3.26】関節リウマチ発症に関わる9つの新規遺伝子領域を発見
理化学研究所の理研ゲノム医科学研究センター自己免疫疾患研究チームと、東京大学、京都大学、東京女子医科大学を中心に構成されたGARNETコンソーシアム、およびハーバード大学を中心とする欧米研究グループとの国際共同研究グループは、日本人の関節リウマチに関するゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)の大規模なメタ解析を行い、疾患発症に関わる9つの新たな遺伝子領域(B3GNT2,ANXA3,CSF2,CD83,NFKBIE,ARID5B,PDE2A-ARAP1,PLD4,PTPN2)を発見しました。
これらの遺伝子領域に存在する遺伝子の多くは、リンパ球などの免疫系の細胞で発現しており、免疫系を過剰に活性化することによって、疾患発症に関わっていることが考えられます。 いずれの遺伝子でも、発症しやすいタイプとしにくいタイプがあり、これらの遺伝子のタイプの組み合わせによって、個人の発症の可能性が決まると考えられるそうです。
新規に明らかとなった9つの遺伝子領域について、他の自己免疫疾患の発症にも関与していないか検討したところ、ANXA3遺伝子領域が全身性エリテマトーデスと、B3GNT2およびARID5B遺伝子領域がバセドウ病発症にも関わっていることが明らかになったそうで、他の自己免疫疾患の原因となる遺伝子領域が一部共有されていることが分かったとのことです。
また、既に報告されていた36の遺伝子領域についても再評価を行ったところ、新規の9領域と合わせて23の遺伝子領域が日本人の関節リウマチ発症に関与しており、そのうち15の遺伝子領域が欧米人と共通であることが明らかにしたそうです。 残りの8領域については、欧米人での関連がはっきりせず、関節リウマチの遺伝因子には少なからず人種差があることが考えられるそうです。
研究成果はNature Geneticsのオンライン版(3月25日付)に掲載されました。
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関節リウマチ発症に関わる9つの新規遺伝子領域を発見−日本人関節リウマチ発症の関連遺伝因子をほぼ同定− by 理化学研究所
Meta-analysis identifies nine new loci associated with rheumatoid arthritis in the Japanese population by Nature Genetics
Meta-analysis identifies nine new loci associated with rheumatoid arthritis in the Japanese population. by NCBI PubMed
【2012.1.27】スマートフォンを使った、リウマチ患者の疾患活動性情報共有システムの開発・実験
京都大学医学部附属病院のリウマチセンターと、日本電信電話株式会社(NTT)が、関節リウマチ患者の病気の進行度や症状・機能障害の程度をスマートフォンで計測し、かつ医療従事者がリアルタイムに計測情報にアクセスできるシステムを開発したそうです。 2月1日より20人〜30人にスマートフォンを貸与し、病院外でのフィールド実験を2ヶ月程度実施するそうです。
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【2011.11】第75回米国リウマチ学会(ACR2011)のレポート
11/5〜9日にイリノイ州シカゴで開催された、第75回米国リウマチ学会(ACR2011)の情報です。
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【2011.9.15】「シンポニー」(ゴリムマブ)発売。
抗リウマチ薬のシンポニー(一般名:ゴリムマブ)が、9月12日付で薬価基準に収載され、9月16日より新発売されました。
これで、日本国内で使用できる(承認されている)生物学的製剤は、6種類になりました。
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【2011.8.28】細胞内のAhrが関節リウマチの発症に関与することを発見
大阪大学や慶應義塾大学、国立環境研究所などのチームが、関節リウマチの発症に、細胞内のAhr(=aryl hydrocarbon receptor)というタンパク質が関与することを発見したそうです。
Ahrはほ乳類や爬虫類の細胞に存在するタンパク質ですが、いままで詳しい機能はわかっていませんでした。
関節リウマチではヘルパーT細胞のひとつであるTh17が骨破壊に関与していると言われています。 Ahrを働かなくしたマウスでの実験ではIL-1βやIL-6のような炎症性サイトカインが減少、ヘルパーT細胞の全体の数は不変ななかでTh1が増えてTh17が減少していたそうです。 特にT細胞の中のAhrrの欠乏は自己免疫による関節炎の進行を抑制しましたが、マクロファージではそうではなかったそうです。 この調査結果は関節炎の進行は、T細胞の中のAhrの存在に依存していて、この過程には、Th1とTh17のバランスが特に重要である可能性を示しています。
大阪大学の岸本忠三教授は、「AhrTRIM28の働きを抑える薬剤をつくれれば、関節リウマチの治療薬となるかもしれない」としているとのことです。
研究成果は米科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(8月8日付)に掲載されました。
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【2011.7.22】第55回日本リウマチ学会(JCR2011)のレポート
2011年7月17日〜20日に神戸のポートピアホテルで開催された、日本リウマチ学会の第55回日本リウマチ学会(JCR2011)の情報です。
今年の学会は4月に東京で開催の予定でしたが、地震の被害や、救援活動やその支援を優先するということで、延期されて7月に神戸で開催されました。
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【2011.7.1】「シンポニー」(ゴリムマブ)が製造販売承認を取得
抗リウマチ薬のシンポニー(一般名:ゴリムマブ)が、7月1日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で製造販売承認を取得しました。 薬価収載を経てから、発売となります。
シンポニーは米国では2009年4月、欧州では2009年10月に承認され、2011年6月現在、世界40以上の国と地域で承認されている生物学的製剤(完全ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体)です。
なお、この審議会ではヒュミラ(アダリムマブ)の皮下注40mg・0.8mlシリンジの若年性特発性関節炎の追加適応と、新製剤の20mgシリンジ0.4ml(体重の少ない人向け)も、承認も取得しました。
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【2011.6.3】薬の適応や効能・効果の追加の情報2件
イムラン錠およびアザニン錠(一般名:アザチオプリン)が、5月20日付で「治療抵抗性の下記リウマチ性疾患:全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎、ヴェゲナ肉芽腫症、結節性多発動脈炎、Churg- Strauss症候群、大動脈炎症候群等)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、及び難治性リウマチ性疾患」の効能・効果の追加に係る承認事項一部変更承認を取得しました。
ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)の効能・効果に、既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(旧名称:若年性関節リウマチ)の追加が、5月30日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で承認されました。
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【2011.6.1】第12回欧州リウマチ学会(EULAR2011)のレポート
5月25日〜28日にイギリスのロンドンで開催された、第12回欧州リウマチ学会(EULAR2011)の情報です
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【2011.2.23】「リウマトレックスカプセル」(メトトレキサート)およびそのジェネリックの成人用量増量が承認されて週16mgまでの使用が承認されました
2月23日に関節リウマチに対するメトトレキサートの成人用量増量が承認されました。
必要に応じて週16mgまで使用することができることと、抗リウマチ薬の第一選択薬剤として用いることができること、の2点が実現しました。
増量は日本リウマチ学会から出されている「関節リウマチ診療におけるメトトレキサート診療ガイドライン」に準拠して慎重に行うことが求められ、市販後調査が行われる予定ですのでだそうです。
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【2011.2.23】リウマチの炎症にオステオポンチンの重合体が関与することを発見?
※タイトルに「?」を付けたのは、報道記事にはリウマチについて言及されていますが、The Journal of biological chemistryの要約には、リウマチについての記述が出てこないからです。(全文は読んでいません)
広島大学の保健管理センターの横崎恭之准教授らの研究グループが、マウスを使った実験などで、オステオポンチン(OPN)の重合体がインテグリンα9β1と結合して好中球(白血球の一種)を集めることを発見し、研究成果は英国の科学雑誌The Journal of biological chemistryの会誌に掲載されました。
横崎恭之准教授のインテグリン治療開発フロンティア研究室のサイトでは、確かに「重合オステオポンチンはリウマチ関節炎で悪者?」と書かれていますし、炎症では好中球が増えるので、その延長線上にリウマチの話があるのだろうと思います。
炎症の元を断つ新しいタイプの薬の開発研究を進めたいとのことですが・・・実は、このオステオポンチンについて、過去にも抗ヒトオステオポンチン抗体による新薬の開発(第1相試験まで)が行われたことがありましたが、残念ながら2009年に中止になっていましす。→参考資料
今回報道されたのがどういう理由かはわかりませんが、再びオステオポンチンとリウマチの関係が注目され、新薬開発という話につながるのかもしれせんね。
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【2011.1.11】IL6遺伝子がC反応性タンパク(CRP)測定値に関与することを発見
理化学研究所の理研ゲノム医科学研究センターの統計解析研究チームの高橋篤チームリーダー、岡田随象研修生、東京大学大学院医学系研究科の内科学専攻アレルギー・リウマチ学教室による共同研究で、IL6での遺伝子多型(SNP)がC反応性タンパク(CRP)測定値が、関与することがわかったそうです。
CRP(C-reactive protein)は関節リウマチではおなじみの検査値ですね。 リウマチの活動によって炎症反応が強くなると、血中にこのタンパク質が多くなって高い値になります。(他の理由による炎症や組織の破壊でもが起きているときにも高値になります) 古くからリウマチの病状を知る目安にされてきましたし、今でも目安にされていますが、とても痛むのに低値だったり、痛みが少ないのに高値だったり、ということがあり、どうも個人差があるのではないかということを経験的に感じられている方も多いのではないでしょうか。
今回の研究では、炎症反応を制御するサイトカインの一つであるIL-6(インターロイキン6)遺伝子のプロモーター領域に位置する遺伝子多(rs2097677)が、CRPの測定値と有意に関連していることが分かったそうです。 具体的にはこのSNPにおける塩基がA(アデニン)型の場合、G(グアニン)型よりもCRP測定値が約1.2倍高くなるということです。
また、IL6遺伝子のSNPが、白血球数、血小板数、貧血関連指標(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球ヘモグロビン量:MCH、平均赤血球ヘモグロビン濃度:MCHC、血清鉄)、血清タンパク質、血清グロブリン、といった複数の検査項目とも関連していることも明らかにされました。
今回の研究は文部科学省委託事業のオーダーメイド医療実現化プロジェクトで実施したゲノムワイド関連解析(genome-wide association study ; GWAS)という方法で行われました。 ヒトゲノム全体に分布する約220万個のSNP2について、日本人集団10,112人から得たCRP測定値との関連を調べ、さらに30,466人から得た血液学的検査値、生化学的検査値との関連を調べたとのだそうです。
IL6遺伝子の機能に関する研究は多く、炎症反応の制御で中心的な役割を果たしていることは分かっていましたが、実際に炎症反応の個人差を説明する遺伝子多型を同定したのは、この研究が初めてとなりました。 この研究の成果を生かせば、検査値について、個々人に見合った正確な評価を行うことができるようになるでしょう。 さらに、IL-6は、関節リウマチをはじめとする炎症性疾患の有力な治療標的分子として臨床研究が進められているため、これらの治療におけるオーダーメイド医療への応用が注目されるということです。
研究成果は英国の科学雑誌Human Molecular Geneticsの会誌のオンライン版(1月10日付)に掲載されました。
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【2010.11】第74回米国リウマチ学会(ACR2010)のレポート
11/7〜11日にジョージア州アトランタで開催された、第74回米国リウマチ学会(ACR2010)の情報です。
ニュースソース↓
【2010.10.30】炎症抑える分子の人工合成に成功、=リウマチ、多発性硬化症治療に期待−東大
東京大学 医科学研究所の中村義一教授らの研究グループが、炎症反応にかかわるタンパク質の働きを抑える分子を、人工的につくり出すことに成功したそうです。
研究成果は米国リウマチ学会の会誌のオンライン版に発表されたそうなのですが、まだ該当のページを見つけられていません、ごめんなさい。
とりあえず、ニュースにには、「炎症を促進するインターロイキン17(IL-17)というたんぱく質が発症に関与していると考えられている」と書かれていますので、その働きを抑える物質についての発表だと思われます。
関節リウマチで起こる炎症反応にはいくつものインターロイキンが関わっていることが知られ、すでにそれらを抑える生物学的製剤も実際に開発・使用されていますが、IL-17に関する具体的な一般報道は珍しいかなと思います。 しかも、今回はどうも生物学的製剤ではなく、化学合成できる低分子の選択的阻害薬のようです。 とすると、これを元に創薬すれば、比較的安価な治療薬ができる可能性があるということではないでしょうか。
【2010.10.26】若年性特発性関節炎(旧名称:若年性関節リウマチ)や成人スティル病でも、DNAの分解の異常が関節リウマチに関係?
京都大学の大学院医学研究科の分子生体統御学講座の長田重一教授らのマウスによる動物実験の結果が、米科学アカデミー紀要(電子版)=PNASに掲載されました。
このニュースは2006.10.26に発表されたニュースの続編といった内容のようです。 そちらも合わせてご覧ください。 今回もDNase II(IIは正しくはローマ数字の2)ノックアウトマウス(DNase IIを作る遺伝子を欠損させたマウス)での実験のニュースです。
長田教授らはすでに、アポトーシス(不要となった細胞が自ら死ぬ)の仕組み)で死んだ細胞を、マクロファージが分解・除去するときにDNA分解酵素であるDNase IIが働くこと、そしてDNase IIノックアウトマウスでは人間の関節リウマチと似た多発性関節炎が起こることを確認、人間同様にTNF-α、IL-6、IL-1などのサイトカインが増加、メトトレキサートの効果も確かめられていました。
今回のニュースからは、特にその後に新しいことが発見されたということが読み取れないのですが、DNase IIノックアウトマウスで、人間の若年性特発性関節炎や成人スティル病に類似した関節炎が見られると書かれていて、このへんが新しい話題かと思います。
若年性特発性関節炎は、以前は若年性関節リウマチと呼ばれていましたが、関節リウマチと全く同じものとは言えないとして、特発性という名称になっています。 でも、やはり全然違う病気というわけではなく、関節リウマチと同じ薬が有効であり、その研究が進めば若年性の治療にも役立つと思われます。
なお、日本経済新聞の記事では「安価でよく効く治療薬を開発する手掛かりになる」と書かれているのですが・・・PNASのAbstracts(要約)では、特にそのような文は見られません。 Full text(全文)にはあるのかもしれませんが、いずれにしても、まだ動物実験の段階ですから、人間用の新薬が開発されて使えるようになるまでにはだいぶんかかりそうですね。
いまだに「高齢者に多い」という記述が添えられているのも、がっかりしますが。
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【2010.10.19】生物学的製剤の自己負担額の軽減を要望する署名(終了)
10月25日に、72,837筆(当初締め切りの20日までの分)が厚生労働大臣ならびに民主党幹事長に提出されたそうです。 20日以降に届いた署名は追加数として生かされるそうです。 詳しくは社団法人 日本リウマチ友の会の最新情報のページから大会決議実現に向けて要望書提出 7万2,837筆の署名を添えてをご覧ください。 |
ちょうどRA CITYができた頃から登場した生物学的製剤も、現在では5種類が国内で健康保険で使用できるようになりました。 その効果と必要性は患者のみなさんにはいまさら語る必要はないくらいですね。
でも、値段がとても高いということも、いまさら語らずとも・・・どの薬でも年間の自己負担額が40〜60万円(一般で高額療養費の給付後)は半端な額ではないですね。 具合が良くなっても維持するために使い続ける必要があるので経済的にはかなりたいへん。 使用を躊躇されている方、せっかく効いたのに中止せざるをえなかった方もいらっしゃいると思います。
今回の署名は、治療が長期になるということが特に論点になっていて、長期高額疾病として高額療養費の特定疾病制度で助成してほしいという要望です。 現在、特定疾病になっているのは人工透析・血友病・後天性免疫不全症候群での抗ウイルス剤を投与の3種のみです。 関節リウマチのほかにも長期に高額な負担が必要になる病気があり、見直しが議論されつつあり、署名活動も行われているようです。
助成されることになっても自己負担がゼロということにはなりませんが、少しでも現実的な費用になるように、使う必要があるときにちゃんと使えるようになってほしいと思います。
社団法人 日本リウマチ友の会では、この署名と、会員を対象にしたアンケート8月にの実態調査回答と、『2010年リウマチ白書』(5年ごとに実施している会員の実態調査)のデータを背景資料として働きかけていくそうです。 しかし・・・日本国内で70万人と(100万人とも)言われているリウマチ患者に比して会員数は約2万人、1/50〜1/35くらいとはまだまだ少なすぎる気がします。 友の会は特別な会ではなく、症状が軽くても、発病して間がなくても入会できる会ですので、まだ入会していない方はこの機会に入会して今後のリウマチ白書を現実の姿に近づけるというのはいかがでしょう?
なお、RA CITYは社団法人 日本リウマチ友の会と特別な関係はありません、総合管理人はただの一会員です。 締め切りの延長等については、個人として問い合わせした内容です。
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【2010.9.21】オレンシアが発売
新しい抗リウマチ薬のオレンシア(一般名:アバタセプト)が、9月21日に発売になりました。
※Orencia(オレンシア)=薬剤名はabatacept(アバタセプト)は、ブリストル・マイヤーズ スクイブが販売します。
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【2010.6.23】第11回欧州リウマチ学会(EULAR2010)のレポート
6月16日〜19日にイタリアのローマで開催された、第11回欧州リウマチ学会(EULAR2010)の情報です
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【2010.5.31】免疫反応の情報伝達をする細胞の働きを解明
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの熊ノ郷淳教授と高松漂太助教らは、病原体の体内侵入を攻撃担当のリンパ球に知らせるために、情報伝達をする細胞の働きと、それに不可欠なタンパク質であるセマフォリン分子Sema3Aの関係を解明したそうです。
体内の免疫システムでは、病原体の侵入を認識すると、リンパ球の一種である樹状細胞が、皮膚の表面近くからリンパ管内を移動してリンパ節にたどり着いて、そこでリンパ攻撃担当のT細胞に伝えます。 いままで、なぜ樹状細胞が迷わずにリンパ節へ移動できるのかがわかっていませんでした。
研究チームは二光子顕微鏡などを使ってマウスの樹状細胞の動き方を詳しく調べ、樹状細胞が管を構成する細胞を通過する際、リンパ管から分泌されるタンパク質であるセマフォリン分子Sema3Aと結合して細長く形を変え、リンパ管の細胞のすき間をすり抜けて中に入り込んでいたとうことです。
研究チームは人でも同様の仕組みがあるとみており、関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などの治療薬の開発に役立つ可能性があり、リンパ管を通じて転移するがん細胞もセマフォリンとのかかわりも指摘されています。
研究成果は、米国の科学雑誌Nature Immunology(ネイチャー・イミュノロジー)電子版(30日付け)に掲載されました。
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Semaphorins guide the entry of dendritic cells into the lymphatics by activating myosin II [Abstract] (2010/5/30) by Nature Immunology
病原体の侵入伝える必須たんぱく質、阪大が解明(2010/5/31 2:00) by 日本経済新聞
病原体情報の“伝達法”解明…阪大グループ(2010/5/31) by 読売新聞
免疫反応の「案内役」解明 阪大グループ(2010/5/31) by 朝日新聞
たんぱく質が「伝令」補助=リンパ管に押し込む働き−がん抑制の可能性も・大阪大(2010/5/31 2:03) by 時事通信
病原体の侵入知らせる鍵物質発見 阪大(2010/5/31 2:02) by 47News(共同通信)
【2010.5.13】レミケードで寛解した人の、約半数が投与中止後一年後も寛解を維持できているという調査もアリ
このニュースは、今発表されという話ではないようなのですが、メディアに出ているので取り上げています。
産業医科大医学部の第1内科学講座の田中良哉教授らの研究チームが、レミケード(一般名:インフリキシマブ)で寛解した後、投与をやめて1年後も寛解を維持できているという調査結果を発表し、2009年6月の第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR 2009)でEULAR awardを受賞したという話が、最近のニュースに出ていました。
昨年のことなので、もうインターネットのEULARのサイトにも詳細は残っていないのですが・・・2006年3〜10月に全国26施設でレミケードを複数回投与した後に寛解し、投与の中止に同意が得られた療養5〜10年ほどの患者102人を追跡調査したところ、一年後には56人が症状が緩和された状態が続き、44人は症状がほぼ消失した状態になった。102人にその後の投与をやめても1年後も55%で効果が続いたということです。 「症状がほぼ消失した状態」というのは寛解なのかな?と思いますが。
100人の方での結果なので、誰でもあてはまると考えるのは難しいと思いますが、そういうこともけっこうある、と考えていいのかなと思います。 生物学的製剤の効果の大きさをすでに実感されていらっしゃる方は多いと思いますが、費用が高いことも実感されていらっしゃいますよね。 もしも・・・ですが、薬を休める期間があるなら、経済的な負担が軽減される朗報ということになりますね。
しかし、必ず全員がそうはいかなさそうなのがもどかしいところです。 投与中のみなさんは、くれぐれも自己判断で治療を中止してしまったりすることのないようにお願いします。
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【2010.5.10】関節リウマチの発症にかかわる遺伝子を特定
理化学研究所のゲノム医科学研究センターの自己免疫疾患研究チームと、東京大学院医学系研究科、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター、京都大学大学院医学研究科ゲノム医学センター、京都大学大学院医学研究科臨床免疫学との共同研究で、CCR6が関節リウマチの発症に関与することを発見したそうです。
CCR6遺伝子の遺伝子多型には3種類のタイプが存在し、それぞれのタイプによってCCR6遺伝子の発現量が異なり、発現量の多いタイプを持つ人が、関節リウマチにかかりやすいこと、ほかの難治性自己免疫疾患であるクローン病やバセドウ病についても関与しているということがわかったそうです。
今回の研究は、文部科学省委託事業のオーダーメイド医療実現化プロジェクトから配布を受けた試料(DNA)をもとに、ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study ; GWAS)という方法で行われました。
ヒトゲノム全体に分布する約55万個の一塩基多型(SNP)を、関節リウマチ患者の集団2,303人と患者でない人の集団3,380人についてタイプ別頻度を統計学的に比較検討し、RA発症と関連しているSNPを探索、この解析によって発見したSNPについて追認解析を行うため、別に集めた関節リウマチ患者の集団4,768人と患者でない人の17,358人で比較して、結果の再現性を確認。 さらに、同定したSNPが必ずしも疾患の直接的原因になっているとは限らないため、同定したSNP周辺のDNA配列を調査し、遺伝子の機能に影響を与える原因遺伝子多型の探索を行うといった、これまでにない大規模で包括的な解析だそうです
疾患モデルマウスでは、CCR6タンパク質の機能をブロックする抗体を投与すると、CCR6タンパク質を発現するTh17細胞が関節内へ移動することを抑制し、関節炎を改善するメカニズムがすでに証明されています。 特に、発現量の多いタイプ(TG/TG)のCCR6遺伝子を持ち、Th17細胞の活動性が高い患者には、 CCR6タンパク質を標的とした治療が有効であることが考えられるとのことです。
CCR6タンパク質は、リンパ球の細胞の表面に存在することから、細胞の中のタンパク質と違って治療の標的としやすく、さらに、クローン病やバセドウ病など、Th17細胞の異常な働きによって発症する、ほかの自己免疫疾患に共通の治療法へとつながることも期待されています。
研究成果は、米国の科学雑誌Nature Geneticsに掲載されるに先立ち、オンライン版(9日付け)に掲載されました。
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A regulatory variant in CCR6 is associated with rheumatoid arthritis susceptibility [First Paragraph] (2010/5/9) by Nature Genetics
CCR6遺伝子が関節リウマチの発症に関与することを発見 by 理化学研究所
CCR6遺伝子が関節リウマチの発症に関与することを発見[プレスリリース ハイライト] by 理化学研究所
関節リウマチ関与の遺伝子発見 理研と東大など(2010/5/10 2:03) by 日本経済新聞
理化学研究所、CCR6遺伝子の関節リウマチ発症への関与を発見(2010/5/10) by 日本経済新聞(プレスリリース)
理研など、関節リウマチの発症にかかわる遺伝子特定((2010/5/10) by 日刊工業新聞
【2010.4.23】「オレンシア」(アバタセプト)、薬食審・医薬品第一部会で承認を了承
ブリストル・マイヤーズ スクイブが、オレンシア(一般名:アバタセプト)の、承認の了承を取得しまました。
オレンシアは米国では2006年から使用されている生物学的製剤です。 日本では2008年9月に申請され、このたびの承認了承に至りました。 次は6月の薬事分科会に報告されて承認され、薬価収載され(薬価が決まって保険適応)、その後に発売となります。
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【2010.4.12】関節リウマチ原因遺伝子、新たに1つ発見
東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科の分子情報伝達学の高柳研究室の高柳広教授らの研究チームが、自己免疫疾を引き起こすT細胞の運命を決定する遺伝子を発見したことを発表しました。
関節リウマチを含む自己免疫疾患の原因となる自己免疫型T細胞「Th17細胞」(TH17)の分化が、転写制御因子IカッパーBゼータ(IκBζ)というタンパクによって決定されることをつきとめ、そのタンパク質をつくる遺伝子を破壊したマウスでは、実験的に多発性硬化症を誘発させても、全く発症しないことが分かったそうです。
抗原抗体反応の過程でT細胞はTh1、Th2、Th17などに分化しますが、Th17は過剰になってインターロイキン17(IL-17)と呼ばれるサイトカインをはじめ、様々な特異的サイトカインやタンパク質を産生することで、他の免疫担当細胞を動員させたり、組織の炎症を引き起こす能力を持っています。 また同チームの以前の研究成果より、関節リウマチにおいて、Th17細胞は破骨細胞を異常に活性化させて骨を破壊することが分かっていました。
今までにT細胞がTh17細胞へと分化するには、自己抗原を認識し、IL-6とTGF-βと呼ばれるサイトカインの刺激を受けることが必要だということはわかっていましたが、こうした刺激によって細胞内でどういう分子メカニズムが働いて、Th17細胞への運命が決定されているのか、不明な点が多く残されていました。 今回の研究では、DNAに結合して遺伝子の発現調節を行う転写制御因子の一つ、IカッパーBゼータと呼ばれるタンパク質がTh17細胞内で高く発現していることが発見されました。
IカッパーBゼータ遺伝子を破壊したマウス由来のT細胞で、Th17細胞への分化が障害されたことから、IカッパーBゼータ遺伝子はTh17細胞の運命を決定する必須遺伝子であることが分かり、さらにIカッパーBゼータ遺伝子を破壊したマウスに、実験的に多発性硬化症を誘発させても全く発症しなかったということです。
今後の、IカッパーBゼータの機能を特異的に阻害できる治療薬やIカッパーBゼータの発現量を抑えるような治療技術の開発が、新たな治療法につながる可能性があります。
この研究成果は、2010年4月11日付英科学誌ネイチャー電子版に発表されました。
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「自己免疫疾患を引き起こすT細胞の運命を決定する遺伝子を同定」−免疫難病の新規治療法へ道− by 東京医科歯科大学プレスリリース
IκBζ regulates TH17 development by cooperating with ROR nuclear receptors(2010/4/11) by Nature
免疫細胞の自己攻撃、仕組み解明 リウマチ新薬開発に期待も(2009/8/5 02:02) by 47News(共同通信)
免疫細胞の制御遺伝子特定=難病の治療法に道−東京医歯大など(2010/4/12 02:03) by 時事通信
東京医科歯科大、リウマチ起こす遺伝子を発見(2010/4/12 13:36) by 日本経済新聞
関節リウマチの原因遺伝子発見…新薬開発に期待(2010/4/12 19:52) by 読売新聞
【2010.3.29】消炎鎮痛剤の副作用 「チオレドキシン」投与で防ぐ
関西医科大学の岡崎和一教授と京都大学の淀井淳司教授らが、インドメタシンなどの消炎鎮痛剤の副作用である消化器の潰瘍を防ぐ方法を発見したそうです。
動物実験で、チオレドキシン(thioredoxin)と呼ばれる炎症を抑えるタンパク質を摂取すると、副作用である胃潰瘍などが起きないことを確認、具体的にはチオオレドキシンを混ぜたエサをマウスに与えた後に、インドメタシンを注射したところ、潰瘍は起きずに、正常な胃粘膜に近い状態を保ったということです。
チオレドキシンは人間だけでなく、生物全般が持つタンパク質で、細胞内でいろいろな働きをしています。 近年、いろいろな目的での実用化を目指した研究が盛んです。 昨年は、新型インフルエンザに対する解熱作用についての記事も目にしました。 今回の発見も、製薬企業などと協力して、新薬や健康食品として実用化を目指すそうです。
消炎鎮痛剤は関節リウマチでも痛み止めに使いますし、リウマチ以外でもお世話になることのある薬ですが、消化器への影響がやっかいです。 副作用を抑えることができるようになればうれしいですね。 できれば健康食品ではなく、きちんと保険で処方されるといいと思いますが。
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消炎鎮痛剤の副作用 たんぱく質投与で防ぐ(2010/3/29 紙面) by 日本経済新聞
【2009.11.24】事業仕分けで、漢方薬が保険給付除外になるかも!?
政府の行政刷新会議が行っている事業仕分け、新聞でもそのニュースを目にしない日はないですね。 そうだそうだ、いらないものは削っちゃえっ!と感じていらっしゃる方も多いでしょうか、それとも我が家には直接関係なさそうという感じでしょうか。
医療関係の仕分けは関節リウマチの患者にも、いろいろ影響がありそうです。 その中で、気になる一例をとりあげたいと思います。
11月11日の事業仕分け作業の結果によりますと、医療機関で処方されている医療用漢方薬の大部分が、OTC類似医療用医薬品として、健康保険の適用がはずされるかもしれないということです。 つまり、全額自己負担になるかもしれないということです。
「漢方」いうと、民間療法というイメージがあるかもしれませんね。 でも、実は漢方薬は西洋薬と同じようにいろいろな病気の治療に使われていて、大学病院などの処方箋にもごく普通に登場し、治療の現場に欠かせないものとなっています。 西洋医学に相反するものというわけではありません。 そして、関節リウマチでも、体力を補う、痛みを抑えるなどの目的で、西洋薬と併用したり、アレルギーや体質によって西洋薬を使えない場合にも役立っています。 つまり、決してオマケやインチキではなく、必要なものです。 漢方薬が保険給付除外になることの問題点の一つはここにあると思います。
また、漢方薬は同じ症状でも体質によって使うべき薬が違いますし、西洋薬と同様に副作用も起こりますので血液検査なども欠かせません。 そういった意味でも本来は医師の診察がとても重要な薬のはずです。 薬店で気軽に買って自分で管理すればいいという考え方は危険だと思います。 これがもう一つの問題点だと思います。
なお、OTCとはOver The Counter Drugの略で、医師の処方箋がなしで薬局・薬店で購入できる一般用医薬品のことです。 OTC類似医療用医薬品の保険給付除外とは、そうして販売されている薬と似た成分の薬は、処方箋がある場合でも保険が利かないことにしよう、という考え方です。 そうなると、診察は保険対象になる内容でも、結果として混合診療となってしまうため、診療全体が保険適用外となってしまいます。 それを回避するために本来必要な薬が処方できなかったり、診療自体が成り立たないということになってしまいます。
OTC類似医療用医薬品として保険給付除外が検討されていものには、漢方薬のほかに、うがい薬、パップ薬、ビタミン・・・えっ、もしかしてリウマチャーに欠かせない湿布薬も? 抗リウマチ薬の副作用を防ぐためのビタミンBや葉酸も?
11月19日には、市販品類似薬の範囲を定めることは事業仕分けになじまないということで、この議論は厚生労働省に移ったようです。 厚生労働省にには中医協がありますから、急に保険適用から外されることはないと思います。 でも今の段階では、まだどうなるのかは確定していません。 しかし、総合管理人が通院先で個人的に聞いたところでは、今回はこのままでは現実になる可能性がかなり高いとのことでした。
本当に不要な事業や予算を削るのは歓迎ですが、必要なものまで削られては堪りません。 でも、何が必要で何が不要か、決めるのはとても難しいと思います。 誰かにとって必要なものが他の誰かには不要である場合もあります。 でも、一生の間にいちども病気に罹ったり体調を崩したりしない人なんていませんよね。 難しいから大雑把でいいや〜、では困りますね。
社団法人日本東洋医学会・日本臨床漢方医会・NPO健康医療開発機構・医療志民の会によって、この件に反対する署名が集められ 第一回締め切りは11月30日でした。 273,636名分が厚生労働相あてに提出されたそうです。
「漢方を健康保険で使えるように署名のお願い」入口
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【2009.10】第73回米国リウマチ学会(ACR2009/ARHP09)のレポート
10/17〜21日にペンシルベニア州フィラデルフィアで開催された、第73回米国リウマチ学会(ACR2009/ARHP09)の情報です。
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【2009.8.5】FDA、腫瘍壊死因子阻害薬によるがんリスクを、注意書きでの警告を指示
FDA(米食品医薬品局)は4日、日本でも使われている腫瘍壊死因子阻害薬(抗TNF-α抗体薬)のについて、小児、青少年が使用した場合にがんの発症リスクが上昇するとして、prescribing information(処方情報)の注意書きで強く警告するよう製薬会社に指示しました。
対象は、日本でもすでに使用されているレミケード(一般名:インフリキシマブ)、エンブレル(一般名:エタネルセプト)、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)、日本ではまだ使用人されていなくて治験中のシムジア(一般名:セルトリズマブ・ペゴル)とシンポニ(一般名:ゴリムマブ)の計5種類。
FDAの調査によると、腫瘍壊死因子阻害薬による治療を受けた小児、青少年のうち48人が、平均30ヶ月(2年半)の投与後にがんを発症、うち11名が死亡したそうです。 がんの種類はリンパ腫が中心で、他には白血病、黒色腫、および固形臓器のがんなどだそうです。 また、48人の患者の大部分(88%)がアザチオプリンやメトトレキサートなどの他の免疫抑制性の薬物療法を使用していて(現在、メトトレキサートにはリンパ腫の増加するリスクに関する警告があります)、それも有力な要因と考えても、子供と若者のがんにおける腫瘍壊死因子阻害薬の役割を除外することはできなかったそうです。
FDAからは患者向けの情報で「腫瘍壊死因子阻害薬の投与がリンパ腫、白血病、および他のがんを発症するという危険が増加するかもしれないことに注意してください」「腫瘍壊死因子阻害薬の投与が既存の乾癬を悪化させるかもしれないことに注意してください」「腫瘍壊死因子阻害薬のMedication Guide(FDAによる患者向け医薬品ガイド)をチェックしてください」「専門医と話さずに定められた処方を中止したり量の変更をしないでください」「原因不明の体重減少や疲労、首、腋や鼠蹊部のリンパ節の腫れ、軽度の打ち身によるなどの兆候がに注意を払い、医師と話し合ってください」「新しい始まった乾癬または悪化している乾癬、例えば膿で満たされる皮膚の赤い鱗状の部分または隆起した腫れなどの徴候に注意を払いってください」等を呼びかけています。
なお、今回の警告はについては、小児と青少年ということですが、年齢の幅がはっはりとは読み取れませんでした。(by総合管理人、もし詳細を読まれた方はお知らせください)
副作用についての話題は、治療を受けている立場としては不安なものですが、隠されてしまって何も知らされないよりは評価できるかと思います。 以前からのくり返しになりますが、むやみに中止してしまったり、治療をあきらめてしまうようなことのないようにしましょう。 この件に限らず、薬であれば副作用のないものは1つもありません。 副作用に早く気づくには、日ごろから医師との話し合いを欠かさず、自らも慎重になるようにしましょう。 何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
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【2009.6.10】第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2009)のレポート
6月10日〜13日にデンマークのコペンハーゲンで開催された第10回欧州リウマチ学会2009の情報です。
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【2009.4.30】第53回日本リウマチ学会(JCR2009)のレポート
4月23日〜26日に東京のグランドプリンスホテル新高輪で開催された、第53回日本リウマチ学会(JCR2009)の情報です。
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【2009.3.26】炎症関連物質の量を調節するタンパク質「Zc3h12a」の働きを解明
大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの審良静男教授の自然免疫学研究室が、病原体が体内に侵入し自然免疫のシステムが働く際、炎症関連物質の量を調節するタンパク質であるZc3h12aの働きを明らかにしたそうです。
Zc3h12a欠損(遺伝子操作でZc3h12aをできなくした)マウスを用いた実験では自己免疫症状が現れ、このタンパク質は自己免疫疾患の発症を防いでいると考えられるそうです。
関節リウマチは自己免疫疾患の一つである膠原病の一種とされています。 なんらかの理由で過剰な炎症反応が起きているわけですが、今回の研究はそれを抑える将来の治療法を見つける手がかりになるかもしれません。
論文は、25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表されました。
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【2009.3.17】「アクテムラ」との因果関係が否定できない副作用例15人
中外製薬が、抗リウマチ薬のアクテムラ(一般名:トシリズマブ)を投与した約5千症例の患者のうち、薬との因果関係が否定できない死亡が15症例あることを明らかにしたという報道が一部の新聞などでありました。
2008年4月から2009年2月までの10カ月間に投与を受けた4915人の患者さんのうち、221症例で重篤な副作用があり、死亡の15症例は因果関係が否定できないという内容です。 しかし、どのような副作用なのかについては記事からは不明です。 中外製薬広報によると「他の治療薬の副作用と際だった違いは認められないと指摘されているが、厚生労働省に事実関係を報告した」ということだそうです。 厚生労働省では、臨床試験で分からない副作用などを確認するため、すべての患者の調査を義務づけています。
なお、ブルームバーグの記事によると、今回の発表での表面的な死亡率は 0.3%で、他の生物学的製剤では、レミケードでは0.2%(5000人中8人)、エンブレルでは0.04%(7091人中2人)、ヒュミラでは0.1%(2731人中3人)と書かれています。
副作用についての話題は、治療を受けている立場としては不安なものですが、隠されてしまって何も知らされないよりは評価できるかと思います。 以前からのくり返しになりますが、むやみに中止してしまったり、治療をあきらめてしまうようなことのないようにしましょう。 この件に限らず、薬であれば副作用のないものは1つもありません。 副作用に早く気づくには、日ごろから医師との話し合いを欠かさず、自らも慎重になるようにしましょう。 何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
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【2008.12.16】関節リウマチに対する新規の診断マーカー(糖鎖バイオマーカー)候補を発見
北海道大学の大学院の先端生命科学研究院の生命情報分子科学コース 先端生体制御科学研究室の西村紳一郎教授の研究グループと塩野義製薬が、独自の大規模糖鎖解析技術により新規の糖鎖バイオマーカー候補を相次いで発見したことを発表しました。 関節リウマチの患者の血清を分析したところ、特定の種類の糖鎖であるLA54が倍以上に増えていた増えていたそうです。
近年は早期発見が大切と言われている関節リウマチの診断に役立つマーカーとして、今使われている抗CCP抗体と同程度かそれ以上の感度・特異度を有していることが期待されているということです。
糖鎖は糖がつながった状態で細胞表面にあり、さまざまな病気に関係しているといわれますが、分析に時間がかかるのが欠点でした。 このたびの開発された大規模糖鎖解析技術の装置では、従来より約1000倍早いという96検体が1日で分析できるそうです。 1滴にも満たない血液で診断が可能で、今後は分析例を増やすなどして確実性を高めて実用化を急ぐ方針ということです。
なお、今回、肺がんとすい臓がんのマーカーについても発表されました。
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【2008.12.6】シェーグレン症候群と女性ホルモンの関連性
徳島大学の大学院のヘルスバイオサイエンス研究部の口腔分子病態学分野の林良夫教授らのチームが、関節リウマチと併発することも少なくない病気である「シェーグレン症候群」が、女性ホルモン低下に伴う特定のタンパク質の活性化によって引き起こされることを解明したそうです。
チームは、網膜のがんに関係するRbApというタンパク質の一種に着目し、マウスを使った実験で、女性ホルモン濃度が低下するとRbApをつくる遺伝子が活性化し、過剰に働くとシェーグレン症候群に似た症状が出るのを確かめたということです。 RbApは涙腺などに細胞死を引き起こし、それが炎症反応をさらに暴走させる悪循環を生むとのことです。
林教授は「更年期の女性が発症しやすいメカニズムがようやく分かった」とし、「このタンパク質を薬などで抑えることができれば、新たな治療法につながる可能性がある」としているそうです。
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【2008.10】第72回米国リウマチ学会(ACR2008)のレポート
10/24〜29日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催された、米国リウマチ学会(ACR2008)の情報です。
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【2008.9】第13回アジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)のレポート
9/23〜27日に第13回神奈川県横浜市で開催された、第13回アジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)の情報です。
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【2008.9.16】関節リウマチ原因遺伝子、新たに1つ発見
理化学研究所のゲノム医科学研究センターの自己免疫疾患研究チームと、東京大学院医学系研究科のアレルギー・リウマチ内科との共同研究で、関節リウマチの原因の1つがCD244遺伝子のSNP(=一塩基多型、遺伝子の塩基配列が一つだけ異なる)であることを突き止めたそうです。
CD244遺伝子は、1番染色体にある多数のSLAM(signaling lymphocyte activation molecule)遺伝子が存在する領域にあります。 関節リウマチの患者とそうでない人の集団を対象に相関解析を行って、これらのSNPと関節リウマチの強い相関を観察したということです。 いずれのSNPの場合も、発症のリスクが約1.3倍、2つとも持つ場合は約1.5倍とのことです。 また、全身性エリテマトーデスについても同様の相関があることが発見されたそうです。
CD244遺伝子は、主にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)で発現しており、さまざまな免疫反応において、重要な役割を持つと考えられています。 今回の発見をもとに、CD244遺伝子が自己免疫疾患の発症にどのようにかかわっているのか、また、NK細胞におけるCD244遺伝子の機能や、CD244遺伝子による自己免疫疾患への関与を明らかにすることで、自己免疫疾患の新規治療法、画期的な治療薬の開発につながることが期待されます。
ただし、今までにも書きましたが、これだけが関節リウマチに関連する唯一の遺伝子というわけではありませんし、原因遺伝子は数10種類〜百種類もあると予測されています。 発症には環境などの複雑な条件が関わっていて、遺伝が全てというわけではありません、念のため。 もちろん、原因遺伝子(のSNP)を発見することは病気の解明に役立ち、治療に役立つことにはなると思います。
研究成果は、米国の科学雑誌Nature Geneticsに掲載されるに先立ち、オンライン版(14日付け)に掲載されました。
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Functional SNPs in CD244 increase the risk of rheumatoid arthritis in a Japanese population [First Paragraph] (2008/9/14) by Nature Genetics
関節リウマチの新たな原因遺伝子「CD244」を発見[プレスリリース 本文] by 理化学研究所
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関節リウマチの新たな原因遺伝子「CD244」を発見[プレスリリース ハイライト] by 理化学研究所
関節リウマチの新たな原因遺伝子を発見(2008/9/15 17:20) by キャリアブレインニュース
関節リウマチの新たな原因遺伝子を発見(2008/9/16 17:22) by Exiteニュース
【2008.9.13】アーチェリーの神谷千恵子さん、北京パラリンピックで銀メダル!
北京パラリンピック大会第8日の13日、アーチェリー女子個人コンパウンドで神谷千恵子選手が銀メダルを獲得されました、おめでとうございます!
神谷さんは関節リウマチの患者さんであり、このRA CITYのリウマチャーのサイトリンク集にも参加してくださっている方です。
ご存知でない方のためにおことわりいたしますが、リウマチャー全員がスポーツにチャレンジできるとは限りません。 またリウマチャーご本人であれば、アーチェリーをプレイするのがどんなに困難なことかは想像できると思います。 弓矢を持つこと自体が難しいし、弦を引く動作なんて想像できないですよね。 そして北京へ行くということだけでもたいへんです。 その困難がありながらのアーチェリーを続けてこられたこと、パラリンピックへの出場、そして銀メダルの獲得、ほんとにすごいことです!
わたしたちは、みな同じ状況ではありませんし、思い通りになることよりもならないことのほうがの多いですね。 でも、みなさんそれぞれが、それぞれの分野でできる限り活躍できますように。
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【2008.9.8】組織のダメージを感知して炎症を引き起こす受容体を発見
理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫シグナル研究グループが、細胞にストレスを加えると発現するC型レクチンMincle(Macrophage inducible C-type lectin)が自己組織の損傷を感知し、炎症を誘起する受容体であることを発見したそうです。 Mincleは、細胞膜に存在するC型レクチンと呼ばれるファミリーに属するタンパク質の1つで、主にマクロファージに発現し、刺激やストレスで発現が誘導されることが知られていましたが、その結合物質や機能は未知のままでした。
この研究では、炎症反応が起こるときにマクロファージが死細胞を認識するしくみの解明が進められました。 感染、梗塞、腫瘍などによって大量の細胞死が起こった場合、マクロファージが炎症性サイトカインを放出し、好中球が集められて、局所的な炎症反応が起こると知られていましたが、マクロファージがどのようにして死細胞を認識して炎症性サイトカインを放出するのかは解明されていませんでした。 研究チームは死細胞から放出されるSAP130(Spliceosome associated protein 130)と呼ばれるタンパク質がMincleに結合し、Mincleがタンパク質FcRγと結合して複合体を作りって活性化シグナルを伝え、マクロファージからの炎症性サイトカインの産生を促すことを明らかにしました。 さらに研究グループは、Mincleの働きを止める抗体をマウスに投与しておくと、大量の細胞死が起こっても、その部位に好中球がほとんど呼び集められない、つまり炎症が抑制されることを見いだしました。 これらの結果から、Mincleは、大量の細胞死を感知して炎症性サイトカイン産生を促す活性化受容体であることが明らかとなりました。 死細胞を認識して活性化シグナルを誘導するC型レクチンの発見は、世界で初めてだそうです。 今回のMincleの機能の発見から、「炎症的」な大規模な死細胞の除去や組織の再構築が、組織修復に重要となることが考えられ、組織再生、再生医療の分野にも新しい観点を与える重要な発見だそうです。
さて、関節リウマチなどの自己免疫疾患と関わることとしては・・・SAP130が、snRNP(small nuclear ribonucleoprotein)と呼ばれる、自己免疫疾患における主要な自己抗原の構成成分であることから、Mincleのシグナル伝達が自己免疫疾患に関与している可能性があるそうです。 通常は抑えられているMincleの発現制御が破綻した場合や、慢性ストレスでMincleの発現が上昇した場合には、自己抗原を認識してしまい、異常な活性化シグナルを伝達し、炎症を増悪させてしまうことが考えられ、実際に、関節炎自然発症ラットの責任遺伝子領域に、Mincle遺伝子が含まれていることや、ヒトリウマチ患者でMincleが高発現していることも報告されていることから、Mincleが自己免疫疾患の増悪因子である可能性があるということです。 このためMincleの働きを人為的に抑えることが、自己免疫疾患治療へのアプローチにつながる可能性も考えられるそうです。
研究成果は、7日付の米国の科学雑誌Natur Immunology(ネイチャー・イムノロジー)に掲載されました。
ニュースソース↓
Mincle is an ITAM-coupled activating receptor that senses damaged cells[Abstract] (2008/9/7) by nature immunology
組織のダメージを感知して炎症を引き起こす受容体を発見[プレスリリース ハイライト] by 理化学研究所
組織のダメージを感知して炎症を引き起こす受容体を発見[プレスリリース 本文] by 理化学研究所
損傷を察知、炎症起こすたんぱく=理研チームが特定(2008/9/7) by 時事通信
また、理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターでは、同日、免疫転写制御研究チームからも「胸腺内で免疫司令塔のヘルパーT細胞が分化する仕組みを解明」という研究成果が発表されました。 胸腺で前駆細胞からヘルパーT細胞への分化の誘導を促進するマスター転写因子のTh-POKタンパク質が、遺伝子の発現を抑制するDNA配列)であるサイレンサーに直接結合してその働きを抑制することでTh-POK遺伝子の発現を増幅する増幅されるしくみが明らかにされたそうです。 こちらもがん、臓器移植における拒絶反応、アレルギーや自己免疫疾患などを人為的に制御する上でも大変重要な研究です。
この研究成果も、7日付の米国の科学雑誌Nature Immunology(ネイチャー・イムノロジー)に掲載されました。
ニュースソース↓
ThPOK
acts late in specification of the helper T cell lineage and suppresses
Runx-mediated commitment to the cytotoxic T cell lineage[Abstract] (2008/9/7) by
nature immunology
胸腺内で免疫司令塔のヘルパーT細胞が分化する仕組みを解明[プレスリリース ハイライト] by 理化学研究所
胸腺内で免疫司令塔のヘルパーT細胞が分化する仕組みを解明[プレスリリース 本文] by
理化学研究所
免疫T細胞の作り分けを解明=エイズやがんの新治療法期待−理研(2008/9/7) by
時事通信
【2008.6.30】注射器に入っているエンブレルが新発売
抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)の新しい剤形である「エンブレル皮下注25mgシリンジ0.5mL」が6月30日に発売されました。
エンブレルは自己注射も可能な抗リウマチ薬ですが、これまでは粉状の薬の入った瓶に溶媒液の入った注射器を刺し、混ぜて溶かしてからそれを吸い上げ、注射する、という手順でした。 しかし、この操作は不便で、特に手の不自由な人にはこの細かい作業を自分ですることは無理な場合も少なくありませんでした。 今回のシリンジ製剤瓶では、薬剤があらかじめ溶かされて注射器に充填されているので、操作は注射するだけになりました。 なお、中身は従来の「エンブレル 皮下注用25mg」と同じです。
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【2008.6.18】ヒュミラが発売、アクテムラも薬価収載→リウマチ向けの販売開始
新しい抗リウマチ薬のヒュミラ(一般名:アダリムマブ)が、6月18日に発売になりました。 ヒュミラ情報ネットも開設されました。
アクテムラ(一般名:トシリズマブ)のほうは元々他の病気の治療には使用されていたので、薬価収載(6月13日)付けで正式の販売開始となっています。 同様にアクテムラ安全性情報もすでに開設されています。
※HUMIRA(ヒュミラ)=薬剤名はalimumab(アダリムマブ)は、アメリカのAbbot(アボット)の関節リウマチのための生物学的製剤です。 日本では、製造販売承認はアボット ジャパンが取得し、販売はエーザイが担当します。
※Actemra(アクテムラ)=薬剤名はtocilizumab(トシリズマブ)は、日本の中外製薬が製造販売します。
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【2008.6.14】第9回欧州リウマチ学会(EULAR2008)のレポート
6月11日〜14日にフランスのパリで開催された、第9回欧州リウマチ学会(EULAR2008)の情報です。
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【2008.4.28】第52回日本リウマチ学会(JCR2008)のレポート
4月20日〜23日に北海道札幌市ロイトン札幌他で開催された、第52回日本リウマチ学会(JCR2008)の情報です。
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【2008.3.25】ヒュミラとアクテムラが承認を取得
抗リウマチ薬のヒュミラ(一般名:アダリムマブ)と、アクテムラ(一般名:トシリズマブ)が、3月25日に承認を取得しました。 薬価収載を経てから、発売となります。
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【2008.3.7】抗体を作る酵素BtkとTecが、破骨細胞を作る酵素であることを発見
東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科の分子情報伝達学の高柳研究室の高柳広教授らの研究チームが、免疫細胞でB細胞(リンパ球の一種)による抗体作りに必須の酵素であるBtkとTecが、破骨細胞を作るために必須の酵素であることを発見し、破骨細胞が形成されるメカニズムを解明しました。
今までに、骨を吸収する細胞である破骨細胞が形成されるためには、破骨細胞を作り出す刺激を伝達するタンパクであるRANKL(receptor activator of NF-κB Ligand)の働きの他に、免疫受容体からの指令も必要であることがわかっていましたが、RANKLとこの免疫受容体からの細胞内の信号が、どのように協調して破骨細胞を作り出すのかわかっていませんでした。 今回の研究では破骨細胞の中に発現している遺伝子を調べてBtkとTecに注目し、BtkとTecの遺伝子の両方を欠損したマウスでは破骨細胞が作らないことを発見、さらに、これらの酵素による破骨細胞作りの信号伝達メカニズムについて解析し、BtkとTecが、RANKLと免疫受容体の二つの刺激を統合して破骨細胞を作り出す鍵となる酵素として働いていることを明らかにできたそうです。
また、これらの酵素の働きを抑える阻害薬を骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに投与したところ顕著に骨破壊が抑えられて極めて有効な治療効果が見られたことから、破骨細胞が原因となる骨破壊疾患の治療にBtkとTecの酵素阻害薬が効果的であり、新たな治療法につながる可能性があります。
特にBtkの遺伝子変異はB細胞で抗体が作られないために起る先天性の免疫不全症(ブルトン型X連鎖無γグロブリン血症)の原因であり、今回の研究は免疫不全と骨代謝の関係を明らかにし、骨と免疫の相互作用を研究する骨免疫学の新たな側面を開拓しました。
この研究成果は、2008年3月7日付の米科学誌Cellに発表されました。
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【2008.2.1】リウマチ治療薬の候補物質を試作、米国で臨床試験を開始の予定
東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科の分子情報伝達学の高柳研究室の高柳広教授、朝霧成挙講師、日本ケミファなどの研究チームが、カテプシンK(Cathepsin K)を抑える新薬候補物質であるCathepsin K-Dependent Toll-Like Receptor 9(カテプシンK依存的なToll様受容体9)を試作、今年中には米国ベンチャー企業と協力して臨床試験を始める計画だそうです。
カテプシンは、細胞のリソゾームにあるタンパク質加水分解酵素の一種で、細胞内のあらゆるタンパク質の代謝に関与していて、様々な疾患への関与が指摘されてきています。 その一つであるカテプシンKは破骨細胞による骨吸収を促進することが知られています。 今回の研究では、マウスでそのカテプシンKをCathepsin K-Dependent Toll-Like Receptor 9で阻害すると、破骨細胞による骨吸収だけでなく、関節の自己免疫性の炎症が強力に抑制されることが明らかになったそうです。
この薬は関節リウマチや多発性硬化症に有効と考えられていますが、まずは多発性骨髄腫(血液細胞のがんの一種、症状の一つとして骨の破壊が起る)の治療薬としての臨床試験を計画中とのことです。
この研究成果は、2008年2月1日付の米科学誌Scienceに発表されました。
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【2008.1.26】抗がん剤として開発された薬が、関節リウマチ治療に効果
東京医科歯科大学の膠原病・リウマチ内科の上阪等准教授らのチームが、もともと抗がん剤として開発された薬(サイクリン依存性キナーゼインヒビター(p16INK4aやp21Cip1)と同等のものが、関節リウマチにおける関節炎や細胞の異常増殖の抑制にも効果があることを、確認したそうです。
この薬は、同じく抗がん剤であるメトトレキサート(リウマトレックス)等とは違って、免疫抑制系ではないとのことで、免疫を抑えることによって起る副作用を避けられる可能性があるそうです。 ただし、ここまではマウスでの実験であり、ヒトでの効果の確認や、関節リウマチ用としての調整が必要とのことです。
この研究成果は、2008年2月1日付の米科学誌Journal of Immunologyに発表されました。
ちなみに、この薬はがんにあまり効果がないと判明し、現在は治療にはほとんど使われていないというお話です。
ニュースソース↓
関節リウマチの細胞周期制御法の開発[1]〜[3] by 東京医科歯科大学の膠原病・リウマチ内科、研究室案の研究内容
「関節リウマチ制圧に向けた新しい抗リウマチ薬の発見」−従来薬と異なる作用メカニズムをもつ新種類の抗リウマチ薬− by 東京医科歯科大学プレスリリース
Successful Treatment of Animal Models of Rheumatoid Arthritis with Small-Molecule Cyclin-Dependent Kinase Inhibitors [Abstract](2008/2/1) by Journal of Immunology
抗がん剤がリウマチに効果 医科歯科大チームが確認(2008/4/26 3:08) by msn産経ニュース
抗がん剤がリウマチに効果 医科歯科大チームが確認(2008/1/26 12:49) by 東京新聞
落第抗がん剤、関節リウマチに効果確認 東京医歯大など(2008/1/28 22:31) by 朝日新聞
抗がん剤使って関節リウマチ治療、東京医歯大チームが開発(2008/1/28 22:02) by 読売新聞
抗がん剤使ってリウマチ治療(2008/1/29) by 読売新聞ほか
【2007.12.6】「エンブレル」の投与後の死亡で、薬との因果関係が否定できないケースが79人
ワイス社の抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)の投与後に死亡し、薬との因果関係が否定できないと判断された患者が、2005年(平成17年)3月の販売開始後から11月末までに79人に上ることが、6日、製造元のワイス社の集計で分かったそうです。
エンブレルは約2万人の方々が使用していて、ワイス社には全部で約840件の副作用報告が寄せられているそうですが、死亡した79人について副作用の疑いがあると報告され、うち60人の症例について独立行政法人医薬品医療機器総合機構が検討したところ、16人が副作用との因果関係を否定できなかったそうで、このうち15人は敗血症など感染症、1人は間質性肺炎だそうです。
ワイス社は「副作用は予想された範囲内で、薬に問題はないと考えているが、新たな注意喚起も検討中」「死亡する恐れのある感染症が副作用として添付文書にも記してあるが、医療機関には今後も適切な使用をお願いする」と話し、厚生労働省安全対策課は「引き続き情報を集め、必要に応じて対応したい」と話しているそうです。
なお、過去の関連記事として、5月にまとめられたエンブレルの全例調査の詳細解析で、重篤な副作用の発現率は5.68%であるという報告がありました。(ニュースソース→【抗リウマチ薬「エンブレル」】重篤な副作用の発現率は5.68%‐全例調査の詳細解析まとまる(2007.5.21) by 薬事日報)
この件に限らず、薬であれば副作用のないものは1つもありませんが、生物学的製剤の場合は効果が大きいだけに副作用も重大であると考えて、特に注意が必要だと思います。 他の薬同様に日ごろから医師との話し合いを欠かさず、自らも慎重になるようにしましょう。 以前からのくり返しになりますが、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
このニュースに驚かれた方も多いと思いますが、むやみに中止してしまったり、治療をあきらめてしまうようなことのないようにしましょう。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
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【2007.11.16】ガレクチン-9の新しい機能として、自己免疫反応などを抑制する可能性
香川大学の医学部の免疫病理学の平島光臣教授とアメリカのハーバード大学および株式会社ガルファーマなどの研究チームが、ガレクチン-9がTim-3陽性細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することによって自己免疫反応などを抑制する可能性があるということを、16日付の米科学誌Scienceに発表したそうです。
ガレクチン-9とはヒトの体内にあるβガラクトシドを認識する動物レクチンの1つで、好酸球遊走活性や癌細胞にアポトーシスを引き起こすなどの活性をもつことが明らかになってます。(ニュースソース→関節炎の根治的治療薬開発に期待(2006/4/25) by 日経MedWave) 話せば長くなってしまいますので、かいつまんで言えば、リウマチに関係する局面では関節で炎症性サイトカインの産生が抑制できることがわかっているということです。
今回は、このガレクチン-9が、Tim-3生理的なリガンドであり、Tim-3陽性細胞のアポトーシスを誘導する作用があるということが発表されました。
Tim-3とはT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子3、のことで、Th1(免疫応答を抑制するヘルパーT細胞)の機能を促進または終結させる両方の働きをしていると考えられています。
ガレクチン-9が関与する疾患は幅広く、炎症が関係するリウマチや膠原病などの自己免疫疾患、感染症、などの新たな治療薬として期待される、ということです。
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【2007.11.6】第71回米国リウマチ学会(ACR2007)のレポート
11月6日〜11日にマサチューセッツ州ボストンで開催された、第71回米国リウマチ学会(ACR2007)の情報です。
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【2007.9.3】アレルギー反応を制御する分子「Dock2」についての解明
九州大生体防御医学研究所の個体機能制御学研究部門、免疫遺伝学分野の福井宣規教授らの研究グループが、アレルギー反応を制御する分子メカニズムを、世界で初めて解明したそうです。
正常な抗原抗体反応の過程では、ヘルパーT細胞はTh1、Th2、Th17などに分化したり、抗体を使ったりして抗体(異物と見なしたもの)を排除します。 でも、何らかの理由でヘルパーT細胞のバランスが崩れて、Th2が過剰になるとアレルギー疾患、Th1やTh17が過剰になると自己免疫疾患が起こるとされています。
今までに、T細胞はIL-4(インターロイキン4)がT細胞に結合してへのTh2分化を促すことは分かっていたのですが、抗原の刺激がIL-4の生産につながる仕組みはわかっていませんでした。 今回の研究では、リンパ球を活性化させる分子であるDock2が、抗原を認識するT細胞受容体からIL-4受容体への信号伝達を制御していることが突き止められたそうです。
実験では、マウスの遺伝子操作でDock2を欠損させたところ、アレルギー疾患を自然発症したとのことで、Dock2に作用する医薬品、あるいは該当する遺伝子の働きを抑えることができれば、自己免疫疾患の治療や移植後の拒絶反応の予防などつながるかもしれません。
この研究成果は米科学誌Nature Immunology(ネイチャー・イムノロジー)電子版に2日発表されました。
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【2007.8.20】骨破壊する細胞の制御分子「RGS18」を発見
国立病院機構大阪南医療センターのリウマチ科の石井優医師らが、骨を破壊する細胞の内部で働きを制御しているRGS18と呼ばれる分子を発見したそうです。
骨は、骨を破壊する破骨細胞と、骨を作る骨が細胞のバランスがうまくとりて新陳代謝されています。 RGS18は破骨細胞が若いときには多く含まれて骨を壊す機能を抑え、細胞が成熟すると減少して骨を破壊する機能が強くなるということで、このRGS18の量や働きの調整ができれば骨粗しょう症や関節リウマチの新しい治療法につながりそうだと期待されているそうです。
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【2007.8.20】厚生労働省が、基本診療科名の削減案について事実上白紙撤回
くわしくは5月14日分をご覧ください。
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【2007.8.17】人工関節の写真入りカード
帰省や旅行などで飛行機を利用された方も多いこの頃だったと思いますが、その際に搭乗ゲートでのセキュリティチェックが、人工関節に反応してしまうこともありますよね。(同じ方でも、機械によってならなかったりと、必ずでないところがナゾなんですが)
見えないところだけに説明するのもたいへんだったりするということで、松江市玉湯町の玉造厚生年金病院が、2007年1月から始めた人工関節の写真の入ったカードが好評だそうです。 このカードはラミネート加工されたパスホートサイズで、人工関節の前後面と側面のエックス線写真のほか、名前・手術日・病院名を記入で、価格は1枚1,000円だそうです。
これまでに150人以上の方が作成しており、同病院の人工関節センター長は「退院時に約半数の患者さんがカードを購入するとは」と予想以上の利用に驚いているとか。 英語版や中国版についても検討中だそうです。
まあ、カードがない場合でも、自分の主治医に人工関節について、ついでに薬のことも書いてもらって(国際線利用なら英語で)、金属チェックのみならずいざという時の備えとして持って行けばいいかなと思います。 航空会社に事前に相談しておくのもいいでしょう。(航空会社には、空港〜機内で、身体の状態に合わせた様々なサービスが受けられるサービスがありますよ→詳しくは出かける、道具を探すのリンクを参照) どうせなら、航空会社が無料で人工関節の登録をしてくれてもいいのになぁと思ったりもしますが、まあプライバシーの問題もありますしね。
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【2007.7.5】制御性T細胞(Treg)の分離に成功
京都大学の再生医科学研究所の生体機能調節学分野の山口智之助教と坂口志文教授らが、制御性T細胞(Treg)を他のリンパ球から分離することにマウスの実験で成功したそうです。
Tregは他のT細胞の働きを抑え、免疫応答のブレーキ役となるリンパ球で、T細胞の約1割を占めています。 これまではこのTregをうまく見分ける手段がありませんでした。 このたびのマウスでの研究では、T細胞の表面には活性化T細胞より平均で約1000倍多くあるタンパク質FR4(4型葉酸受容体)に注目し、FR4を目印にして分離したとのことです。
Tregの働きが弱いと自分の細胞が免疫細胞の攻撃にさらされ、アレルギーや、若年性糖尿病、リウマチなどさまざまな自己免疫疾患になると考えられています。 逆に働きが強いと腫瘍に対する有益な免疫反応も抑制してしまうことも知られています。 このことから、Tregの機能を操作する方法の開発は、免疫疾患やがんに対する新しい治療法につながると期待されています。
研究成果は米科学誌イミュニティーの電子版に6日発表されました。
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【2007.7.3】京都大学とアステラス製薬が融合研究施設「次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点」設置へ
京都大学とアステラス製薬が、文部科学省の研究助成事業の一環として「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラムの採択を受けて、共同の免疫学研究や新薬開発の拠点である「創薬医学融合ラボ」を京都大学医学部構内に開設すると発表しました。 京都大学とアステラス製薬、国際公募の研究者による約50人で約17の研究グループを設置し、10年かけて共同研究を進め、日本発の新薬の臨床応用を目指す計画で、大学と企業が1対1で創薬の大型拠点を作るのは日本では初めてだそうです。
免疫・アレルギー分野が得意な京都大学と、免疫抑制剤で実績のあるアステラス製薬とのマッチングで、アトピーやぜんそく、花粉症などのアレルギー疾患、リウマチなどの自己免疫疾患、がんや肝炎治療のための免疫活性化、臓器移植や再生医療のための免疫抑制などを研究し薬を開発、2017年度までに治験段階に達する有望な候補品を3品目以上作るのが目標とのことです。
当初の3年間は文部科学省の科学技術振興調整費から年間約3億円、アステラス社も同額の研究費を拠出し、年間計6億円の費用をかけて、「世界売り上げトップテン」の新薬開発を目指すのだということで、病気を治すというよりなんだかお金の話が先立ちますが、患者にとって本当に役に立つ研究結果が得られることを期待したいものです。
ニュースソース↓
京大とアステラス製薬の連携による我が国初の長期・大型創薬医学融合拠点(2007/7/4) by 京都大学医学部
京都大学とアステラス製薬 次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点での協働研究実施のお知らせ(2007/7/3)[PDF] by アステラス製薬
京都大とアステラス製薬が融合研究施設設置へ(2007/7/3) by 朝日新聞
免疫学研究や新薬開発の大型拠点 京大とアステラス製薬(2007/7/3) by 京都新聞
アステラス製薬と京大、免疫分野の新薬を共同開発(2007/7/3 00:20) by 日本経済新聞
京大、民間と創薬研究施設…10月オープン(2007/7/4) by 読売新聞
【2007.6.16】第8回欧州リウマチ学会(EULAR2007)のレポート
6月13日〜16日にスペインのバルセロナで開催された、第8回欧州リウマチ学会(EULAR2007)の情報です。
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【2007.5.14】「リウマチ科」が廃止!?←医療機関の診療科名を4割強廃止の方針
厚生労働省は医療機関の診療科名を4割強廃止し、20程度に絞り込む方針を固めたそうです。 内容としては、専門性が高く分かりにくい科名をなくし一般の患者がイメージしやすい科名に名称変更させる一方で救急科などを新設する、開業医が一人の診療所では原則として医師一人につきつの診療科までしか表記できないようにする、軽度であればどのような病気でも基本的に対応できる医師については新たに総合科を新設する、などです。 医道審議会では、すでに5月21日のの診療科名標榜部会から検討が始まっており、2007年内にも医療法の関連政省令を改正し、早ければ2008年に実施するとのことですが・・・
朝日新聞の記事によりますと、
存続が有力→内科、小児科、皮膚科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉(いんこう)科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、形成外科、リハビリテーション科、精神科、麻酔科、歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔(こうくう)外科
廃止を検討→心療内科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、胃腸科、循環器科、アレルギー科、リウマチ科、美容外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚泌尿器科、性病科、肛門(こうもん)科、産科、婦人科、気管食道科
新設を検討→総合科、救急科、病理科、臨床検査科
気がつかれたかと思いますが、廃止を検討中の科名のなかにはリウマチ科も入っています! リウマチ科の標榜は長年の要望がかなって1996年にやっと実現したのに、10年ほどでもう廃止とはどういうことでしょうか。 総合的な疾患である関節リウマチは、内科だけあるいは整形外科だけでの治療では不十分です。 リウマチ科がなかった頃には、リウマチかもしれないと思ってもいったい何科へ行ったらいいのかわからなかったり内科と整形で迷っているうちに悪化てしまっしたり、どちらかに決めて受診していても他の科での治療も必要なための各科の間を行ったり来たり、ということが起っていました。 もし、リウマチ科がなくなってしまったら、またそんな状態に逆戻りということになってしまいます。
リウマチ科にかぎらず、本当に必要のない科名なんてあるのでしょうか? リウマチのことだけを声高に言うつもりはありません、どの科も重要なはずですが、とりあえず一番身近なリウマチ科のことを中心にお伝えしています。 リウマチ科標榜の必要性については、リウマチ情報センターの「リウマチ科標榜の案内」をご覧ください。
社団法人 日本リウマチ友の会でのリウマチ科の存続を求める署名は、9万5千筆を越えたそうです。 下記8月20日付けのニュースにもありますように、厚生労働省は診療科名削減案を事実上撤回したということですが、この発表までの間に追加で集まった署名も厚生労働大臣に届けられるそうです。→詳細はこちら |
新聞記事の中には患者などから「多すぎてわかりにくい」との指摘が出ていた、とありますが、そんなこと言ったおぼえはないですよね。 では患者から要望があれば存続するのでしょうか? 患者のせいにして官僚が廃止する、そんな図式が垣間見えます。 たしかに最近は専門化が進みすぎて、専門医が他の疾患に無関心なんて弊害を感じることもありますが、科名をあいまいにしたところで解決する問題でもないと思います。
総合科の新設については、軽症患者がいきなり大病院に行くことが減り、大病院の混雑解消や、多忙のあまり医師が大病院を辞める医師不足の改善につながると期待するというのですが、そもそもどこかで医師が余っているわけではなく医師の総人数自体が不足していることの根本的な解消にはならないと思います。
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[2007.8.20 追加]
毎日新聞によるmsnニュースに、厚生労働省が、基本診療科名の削減案について事実上白紙撤回していたことが分かった、というニュースが20日付けで掲載されました。
診療科から外された学会や患者団体から見直しを求める要望が続出したためとのことです。 きっと、みなさんの署名が大活躍したことと思います、ご署名をお送りいただいてありがとうございました。
リウマチ科を始めとして、必要な科名が護られたことは喜ばしいと思いますが・・・この案の提示と撤回のいい加減さを見るにつけ、やはり厚生労働省は深い考えなしに医療制度の変更・削減をやっていると感じます。 医療の現場という言葉もよく出てきますが、現場とは学会でも病院でもなく、患者のひとりひとりが現場であることに気づいてほしいと願っています。
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※診療科とは・・・病院や診療所などにおける医療においての診療の専門分野区分のこと。 分類方法は各病院ごとの方針で多種多様。
※標榜科とは・・・病院や診療所が外部に広告できる診療科名のこと。 医療法第六条の五では、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関しては、文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならないと定めている。 具体的な診療科名は医療法施行令第三条の二に広告することができる診療科名として規定されている。(医業については、内科、心療内科、精神科、神経科、呼吸器科、消化器科、循環器科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚泌尿器科、性病科、こう門科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、気管食道科、リハビリテーション科及び放射線科 二 歯科医業については、歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔外科) この規定は「広告」に関する規定であるため、病院内部における掲示やインターネットのHP等は規定に含まれていない。
ニュースソース↓
医療機関の診療科名を4割強廃止・08年にも厚労省(2007/5/14) by 日本経済新聞
診療科を半分近くに再編 医師不足解消の思惑も 厚労省(2007/5/16) by 朝日新聞
診療科名整理に患者ら反発、「専門科医見つけにくく」(2007/6/23) by 日本経済新聞
総合科をめぐる攻防(上)(2007/7/2) by 産経デジタル
総合科をめぐる攻防(中)(2007/7/3) by 産経デジタル
総合科をめぐる攻防(下)(2007/7/4) by 産経デジタル
厚労省が医療法改正のポイントや今後の地域医療のあり方など説明(2007/7/5) by 日医ニュース(日本医師会)
診療科名削減:厚労省が見直し案を白紙撤回 学会が猛反発(2007/8/20 3:00) by 毎日新聞
【2007.5.1】第51回日本リウマチ学会(JCR2007)のレポート
4月26〜29日に神奈川県横浜市パシフィコ横浜で開催された、第51回日本リウマチ学会(JCR2007)の情報です。
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【2007.4.30】過度の炎症反応を防ぐタンパク質「PDLIM2」の働きを解明
理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターの生体防御研究チームが、核内タンパク質のPDLIM2が、炎症反応の抑制に必須の役割を担っていることを明らかにしたそうです。
先天性免疫反応では、病原体が侵入すると、樹状細胞(免疫担当細胞の一種)がそれを認識して、炎症性サイトカインなどの炎症反応に必要な種々のタンパク質を産生します。 これらのタンパク質の産生を誘導するためには、核内の転写因子であるNF-κBとの活性化がきわめて重要であることが知られていました。 研究チームはPDLIM2が、NF-κBのp65サブユニットをポリユビチキン化して、NF-κBを分解に導くことにより、炎症反応を終息させるように働くことを発見しました。 さらに、PDLIM2の作用で、ポリユビチキン化されたNF-κBが核の中で隔離された特定の場所へ運ばれて、ここでタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームによって分解されるという新たな不活性化経路が存在することも明らかにしました。
PDLIM2を欠損させたマウスにの樹状細胞での実験は、NF-κBの分解が妨げられ、炎症性サイトカインの産生量2〜3倍に増えていることもわかりました。
今回解明したPDLIM2による炎症反応の抑制機構はが、アレルギー疾患や自己免疫疾患(関節リウマチも含まれます)の治療を目的とした人為的な免疫制御法の開発に役立つことが期待できるということです。
研究成果は、29日付の米国の科学雑誌Nature Immunology(ネイチャー・イムノロジー)オンライン版に掲載されました。
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PDLIM2-mediated termination of transcription factor NF-B activation by intranuclear sequestration and degradation of the p65 subunit[Abstract] (2007/4/29) by nature immunology
炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明[プレスリリース本文] by 理化学研究所
炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明[プレスリリース ハイライト] by 理化学研究所
アレルギー治療に手がかり 理研チーム仕組み解明(2007/4/30) by 読売新聞
炎症反応止める酵素発見 理化学研究所(2007/4/30) by 河北新報ほか
【2007.4.19】海外新薬を1年半で承認へ計画
厚生労働省はこの4月中に「医薬品の質の向上に関する5カ年計画」をまとめる方針で、海外で先行発売された薬を国内で承認するまでの期間を、2001年度までの5年間で1年半程度に短縮し、アメリカ奈美とする目標を盛り込むとのことです。 具体的には、国際共同治験をしやすくすること(条件も明確化)、治験を終えた新薬の審査を迅速化すること(審査担当員の倍増)、だそうです。
海外で開発された薬などの承認までの期間は約4年といわれていますが、実際にはそれ以上かかることも珍しくはありませんでした。 関節リウマチに関しても、海外ではすでに使用されていても、日本ではまだ承認されていない抗リウマチ薬がたくさんあります。 より高い効果を求めて、あるいは選択の幅を増やすという点で、承認が迅速になることが必要です。
治験の効率化による開発負担の軽減による国内製薬会社の競争力強化、新薬開発の後押し、も目的としているということですが・・・無論、患者の安全をきちんと確保した上での迅速化を願いたいものです。
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【2007.4.14】災害時リウマチ患者支援事業、医療機関のネットワークを9月に発足
日本リウマチ財団は災害時リウマチ患者支援事業として、地震や台風などの災害時にリウマチ患者が継続的に治療を受けることができるように、医療機関のネットワークを9月に発足させることを決めたそうです。 厚生労働省と協力し、災害時には都道府県とも連携した対応を取る計画です。
財団の登録医が勤務する協力病院が事前に患者受け入れ能力を登録、希望する患者に住所や服用している薬などの情報を登録してもらい、必要な支援を判断する基礎資料とする。 ということて、基本はまず「登録」にあるようです。 都道府県に一つずつ、情報集約と連絡調整をする幹事病院を置き、協力病院は約3000、患者は2万人以上を想定とのことです。
災害時には患者から連絡を受け、連絡がない場合はかかりつけの医師が患者の居場所を捜したり、登録医が避難所で診療・治療するなど、かなり具体的な構想のようです。
被災地の様子を目にするとき、色々と気になることがありますね。 避難所の床のシートがでは寝起きもできないだろうし、洋式のお手洗いはあるのか、冷えていないか・・・などなど。 また、実際に薬が足りなくなって困った、日ごろから持ち出しに備えておきたいけれど余分には処方してくれない、などのお話聞きます。 薬が不足するだけでなく、非常時の環境で悪化することはかなり予想されることなので、そんなときに診察してもらえたら、どんなに心強いかと思います。
でも、問題は「登録」かもしれません。 日本に70〜100万人と言われている患者数のうち、2万人程度の登録しか望めないのでは、また取り残されてしまう人が出てくるのではないでしょうか。
それと、記事の中での「リウマチは、中高年の女性に多く」という記述もちょっと気になります。 災害時に限らず、若い患者のも見落としのないようにしていただきたいものです。
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【2007.3.22】免疫反応を調節する制御性T細胞(Treg)の働きの鍵となるタンパク質「Foxp3」「AML1」を特定
京都大学の再生医科学研究所の生体機能調節学分野の坂口志文教授、小野昌弘講師らのグループが、制御性T細胞(Treg)の働きの鍵となる2つのタンパク質であるFoxp3とAML1を特定したそうです。
この研究室では、慢性関節リウマチとよく似た自己免疫性関節炎を自然発症するマウスモデルを用いて、慢性関節リウマチの原因・発症機構を研究しています。
Tregは他のT細胞の働きを抑え、免疫応答のブレーキ役となるリンパ球です。 Tregの働きが弱いと自分の細胞が免疫細胞の攻撃にさらされ、アレルギーや、若年性糖尿病、リウマチなどさまざまな自己免疫疾患になると考えられています。 逆に働きが強いと腫瘍に対する有益な免疫反応も抑制してしまうことも知られています。 このことから、Tregの機能を操作する方法の開発は、免疫疾患やがんに対する新しい治療法につながると期待されていますが、Tregによる免疫反応抑制のメカニズムについてはほとんど分かっていませんでした。
坂口教授らは、Tregの中で特異的に作られるタンパク質であるFoxp3がT細胞で作られるタンパク質AML1に結合すること、その結合によって免疫応答を強めるサイトカインであるIL-2(インターロイキン2)が作られる量が減ることを突き止めたそうです。
このFoxp3とAML1の相互作用を調整し、結合を促進できれば自己免疫疾患やアレルギーの治療、臓器移植の拒絶反応を抑えること、逆に2つの結合を阻害できればがんの治療につながることが期待されています。
論文は、3月22日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表されました。
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【2006.11.27】破骨細胞がの生成に酵素「カルモジュリンキナーゼ」が重要な役割を果たすことを発見
骨免疫学を研究している東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科の分子情報伝達学の高柳研究室の高柳広教授らの研究チームが、破骨細胞が作られるときにカルモジュリンキナーゼ(CaMK=calmodulin-dependent protein kinase)という酵素が重要な役割を果たすということを発見したそうです。
骨は常に新陳代謝しています。 これは血液中のカルシウムを取り込む骨芽細胞と、逆に血液中へカルシウムを放出する破骨細胞の両方が働きによるものです。 破骨細胞だけが活発に働くとバランスが崩れてしまい、骨量が減ったり骨の破壊が起こります。
研究では、マウスでこのカルモジュリンキナーゼを合成する遺伝子を働かなくすると破骨細胞が減り骨量が2倍に、さらに人の骨粗しょう症と似た症状のマウスの比較実験で酵素の働きを抑える薬の投与では骨量が全く減らなかったそうです。 また、関節リウマチに似た症状のマウスでも骨が壊れなくなる効果が認められたそうです。
高柳教授は「この酵素は脳の神経伝達にも関与してしまうため、実用化には破骨細胞だけに効く薬をつくる必要がある」と話しているということで、すぐに治療に応用するのは難しそうですが、将来は骨粗しょう症や関節リウマチなどの治療につながる可能性もありそうです。
論文は、11月26日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表されました。
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【2006.11.20】生物製剤と同等の効き目の飲み薬の候補物質?
三菱ウェルファーマ、東京医科歯科大学はそれぞれ、生物学的製剤(生物製剤)と同等の効き目が期待できる飲み薬の候補物質を開発、動物実験で効果を確認したそうです。
三菱ウェルファーマが開発した治療薬の候補物質はY-320、関節の炎症の原因となるタンパク質ができないようにするということですが、これ以上の詳しい情報はまだ不明です。
従来の生物学的製剤は有効成分がタンパク質で、飲み薬では消化分解されてしまって有効な形で吸収できないため、注射や点滴だったわけなのですが、今回候補になっている物質は違うのでしょうか。 「同等」ということは、正確には生物学的製剤ではないということでしょうか。
もし実用化されれば、注射が苦手だったり操作が難しかったり、点滴のための時間をさくことができなかったり、という問題点が解決できそうですね。
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【2006.11.15】第70回米国リウマチ学会(ACR2006)のレポート
11月10日〜15日にWashington D.Cで開催された、米国リウマチ学会(ACR2006)の情報です。
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【2006.10.26】DNAの分解の異常が関節リウマチに関係?
大阪大学の生命機能研究科の遺伝学研究室の長田重一教授らのマウスによる動物実験の結果が、英科学誌ネイチャーに発表されました。
長田教授らは、アポトーシス(不要となった細胞が自ら死ぬ)の仕組みを研究しており、死んだ細胞は、白血球の一種であるマクロファージが分解・除去していることが分かっているが、このときに働くDNA分解酵素であるDNase2(2は正しくはローマ数字の2)を作る遺伝子を欠損させたマウスでは、関節炎を発症し滑膜が増殖して滑破壊がこるなどの人間の関節リウマチと似た症状が見られたそうです。 酵素がなくてDNAを消化できなくなったマクロファージはTNF-α(腫瘍壊死因子)を放出、そのためにこのような症状が発生したと考えられるそうです。 そして、このマウスに抗TNF-αを投与したところ、症状の改善・予防効果が確認されたそうです。
このことはまだ動物実験の段階で、今後人間の関節リウマチでも同じようなことが言えるのかを調べる必要があります。
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DNA消化不良でリウマチ 免疫細胞の機能異常解明(2006/10/26) by 河北新報ほか
不要DNA処理できないと…関節リウマチ症状 阪大グループ解明(2006/10/26) by 読売新聞
DNAの分解異常による慢性関節リウマチ発症に関する知見(2006/10/26) by 科学技術振興機構(JST)
Chronic polyarthritis caused by mammalian DNA that escapes from degradation in macrophages[Supplementary information](2006/10/26) by nature
リウマチの原因はDNAの「ごみ」? 阪大教授ら発表(2006/10/27 01:09) by 朝日新聞
関節リウマチ:不要細胞の「掃除」不十分 原因解明に期待−−阪大研究(2006/10/30) by 毎日新聞
【2006.10.20】関節リウマチの炎症抑える免疫療法
帝京大学で、関節リウマチの炎症がひどくなるのを抑える免疫療法を開発、動物実験で効果を確認したそうで、バイオベンチャーのメビオファームを通じて、実用化を目指すとのことです。
記事には「リウマチでは関節に滑膜という組織が増えて症状が悪化するが、この組織に栄養を送り込む血管をできにくくし滑膜が増えるのを防ぐ」とあります。 どのへんが免疫なのかというと「この組織」というのは関節の破壊が起こる時に生じる新生血管の内皮細胞の一部で、これが抗原であり、この抗原を微小なカプセルに包んで投与するという方法で、患者自身の免疫に抗体を生産させて新生血管の発生を抑えるということで、DDS技術で新生血管だけを標的にするため副作用が少ないことも期待されます。 また癌で試みられている樹状細胞を使った方法も試されたようですが、残念ながら今のところこのへんを詳しくご覧いただけるニュースソースがありません。
免疫療法という言葉はあいまいで色々な意味を持つので、詳細なしにこういう言葉だけを掲載する報道はいかがなものかと思いますが・・・とにかくここでいう免疫療法はどこやらを揉んだり、なにやらを飲んだり、という方法でないことは確かですので、無関係な情報には踊らされないようご注意ください。
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【2006.9.22】関節リウマチに関する一塩基多型、また1つ発見
徳島大学のゲノム機能研究センターの遺伝情報分野のの板倉光夫教授らが、関節リウマチに関係があると思われていなかった遺伝子が発症に関係し、わずかな構造の違いで発症の確率が4倍以上違うとの研究結果を22日までにまとめたそうです。 構造の違いは、14番染色体におけるSNP(=一塩基多型、遺伝子の塩基配列が1つだけ異なる)で、さらに周辺の3カ所のSNPの組み合わせで、最もリウマチになりやすい場合は最もなりにくい場合の4倍以上発症しやすいことが分かったそうです。
板倉教授は、これを調べればリウマチになりやすいかどうかを診断でき、治療薬開発につながるのでこの遺伝子の機能解明を目指したい」と話しているそうです。
ただし、今までにも書きましたが、これだけが関節リウマチの唯一のSNPというわけではありませんし、遺伝が全てというわけではありませんので、念のため。
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【2006.9.3】IL-7(インターロイキン7)と関節リウマチの関係
大阪大学の医学系研究科の平野俊夫教授らによる理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターのサイトカイン制御研究グループが、マウスによる動物実験では、IL-7(インターロイキン7)の刺激でヘルパーT細胞が過剰に作られるようになり慢性的な関節の炎症を起こすことを突き止めたそうです。 これはIL-7が体内で大量に放出されるマウスでの実験で、逆にIL-7の働きを抑えるとヘルパーT細胞の増殖が抑えられて炎症が軽くなったことも確かめられたそうです。
関節リウマチは原因自体に様々なタイプがある可能性があり、グループでは今回のマウスも少なくともその一種だと考えて発症にかかわるタンパク質などを解明したいとしています。
千葉大学の大学院医学研究院の免疫アレルギー学講座分化制御学の徳久剛史教授も「すぐに臨床応用は難しいが、従来の薬が効かないケースにIL-7の制御が有効な可能性がある」と話しています。
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【2006.8.22】ボルタレンローションが新発売
今までボルタレン(ジクロフェナクナトリウム))の塗り薬といえばチューブに入ったゲルだけでしたが、新たにローションが出ました。 ゲルも乾くとすぐサラサラにはなりますが、汗をかいたり水分が付くとぬるぬるがよみがえってちょっと不快でしたよね。 ローションではそれがないので使いやすいのではないかと思います。 ボトルにラバーキャップがついている一般的な形ですが、首の形状は市販の商品なあるような斜め向きではなくて、まっすぐなので、自分では届きにくいところもあるかも。
※9月5日には、より大きな貼るボルタレン「ボルタレンテープL」も発売されました。
なお、これは市販薬(一般用医薬品)ではなく、処方薬(医療用医薬品)です。
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【2006.8.17】レミケードの副作用抑制についての症例
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターが、レミケード(一般名:インフリキシマブ)を、結核発病後も継続して使用する治療に成功したそうです。 同センターでは、レミケードを投与後、2004年に結核になった60歳代の女性に、結核治療を続けながら約1年後にレミケードを再投与し、リウマチと結核の両方の症状を約1年半にわたって抑えたということです。
17日の米医学誌The New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に発表されました。
効果が高い抗リウマチ薬であるレミケードですが、結核を発病している人には使えないという問題があります。 今回の発表ではまだ一例ということだと思いますので、すぐに応用とはいかないかもしれませんが、今後、結核の心配をせず使える道が開けるかもしれません。
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【2006.8.14】NSAIDsによる胃粘膜障害にご注意
関節リウマチでは、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使っている人がとても多いことは言うまでもありませんね。 そして、個人差はありますがNSAIDsの副作用による胃の不調を経験されている方は多いと思います。
奈良県立医科大学の整形外科の矢島弘嗣助教授、島根大学医学部の消化器肝臓内科の木下芳一教授らによると、NSAIDsの副作用による胃かいようや胃粘膜傷害を起こす割合が、これまで考えられてきたよりも高く、長期服用者の6割以上になっていることが分かったそうです。
NSAIDsを4週間以上飲み続けているリウマチや腰痛などの患者約260人を対象に調べたところ、10%に胃かいよう、52%に胃炎が見つかったそうです。 薬の種類によって胃粘膜傷害の比率は異なっていた、服用1〜3カ月の患者と3カ月以上の患者の比較ではあまり差がなかった、ピロリ菌陽性の患者ではかいようになる比率が高かった、自覚症状のない患者でも58%が胃炎や胃かいようを抱えていた、ということです。
今回、代表的な薬で比較したところ、胃粘膜傷害に対しては、胃酸の分泌抑制剤(H2ブロッカーなど効果の方が高かったそうです。
つまり、わたしたちは・・・効果の出やすさとともに副作用の出にくさも考えた薬選びが必要で、服用の早期から胃の具合が悪くなっていないか注意し、自覚症状がなくても定期的な検査が必要で、必要ならピロリ菌がいないかの検査もしたほうがいい、ということですね。 リウマチの主治医には胃の障害に関心の薄い先生もあり、他の副作用ほど重要視されていないような気がしますが、わたしたち自身が胃の不快感にはふだんから注意し、だまって我慢せず、必要なら胃薬を処方してもらいましょう。
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【2006.6.28】第7回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2006)のレポート
6月21日〜24日にオランダのアムステルダムで開催された、第7回欧州リウマチ学会(EULAR2006)の情報です。
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【2006.5.18】日本リウマチ学会が生物学的製剤の長期の安全性を調査する方針
日本リウマチ学会は生物学的製剤について、がんについての長期の安全性調査に取り組むことを決めたそうです。
TNF-α(腫瘍壊死因子)の働きを抑制する生物学的製剤については、添付文書にも警告が記載されているように悪性リンパ腫などがんのリスクを高める可能性が指摘されており、5月17日には米医師会雑誌The Journal of the American Medical Association(JAMA)にメイヨークリニックのEric Matteson博士らによる、がんのリスクが約3倍高まるという米英グループの新たな報告が掲載されました。 メイヨークリニックの研究では、インフリキシマブ(レミケード)とアダリムマブ(ヒュミラ)の2つの薬剤による治療を受けた患者約3,500例とプラセボ治療を受けた対照群約1,500例のデータを解析し、2種の薬剤のいずれかを使用する患者のうち154人に1人が6〜12カ月以内に癌を発症し、49人に1人が3〜12カ月以内に重篤な感染症を発症したということです。 また、低用量で使用した患者に比べ高用量を用いた患者で悪影響が有意に多くみられたということです。
ただし、がんの発症につながる理由は未だ明らかではなく、このリスク増大が薬剤によるものか関節リウマチそのものによるものなのかの区別は難しいという意見もあり、結論は出ていません。
「リウマチの人はがんにならない」というガセビア?があるようですが、珍しい病気ではないがんのことてすから、抗TNF-α製剤の使用・不使用に関わらずがんには気をつけるに越したことはありませんね。
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【2006.5.5】W9ペプチドが骨吸収を防ぐ作用を確認
東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科の硬組織薬理学分野の青木和広助手、大谷啓一教授らのグループが米国のYale大学のグループと共同して、TNF-α(腫瘍壊死因子)のペプチドアンタゴニスト(拮抗剤)であるW9ペプチド(WP9QYペプチド)が骨吸収抑制効果も示すことを発見したそうです。
もともとW9ペプチドがTNF-αの炎症作用を抑制することが知られていましたが、このたびマウスを使った実験で、さらに骨を吸収する細胞である破骨細胞が形成される際に必須の分子であるRANKL(receptor activator of NF-κB Ligand)の働きを抑制して骨吸収能を阻害することが確かめられたそうです。 すなわち、W9ペプチドは炎症と骨吸収の両方を抑制する機能を持つということです。
このことは、骨粗しょう症・関節リウマチ・歯周病などで起こる炎症性の骨吸収の治療を目的とした治療薬の開発への可能性を示すものです。 現在でも抗TNF-αの生物学的製剤は存在していますが、これらはタンパク質なので抗原抗体反応による副作用の心配があり、遺伝子組み替えで作られるため高価です。 その点、少数のアミノ酸で構成された小分子のペプチド製剤であれば、これらの問題を解決できるということです。
この成果は米国の医学雑誌のJournal of Clinical Investigation(JCI)の6月号におよび同誌の電子ジャーナルの5月4日分に掲載されます。
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【2006.5.3】血中鉄分量制御のホルモン「ヘプシジン」を初確認、貧血発症解明に期待
金沢医科大学の総合医学研究所・腎機能治療学の友杉直久助教授らの研究グループが、血液中の鉄分量を制御するホルモンであるヘプシジンを初めて確認したそうです。 ヘプシジンは血中の鉄分が過剰になると肝臓から分泌されるホルモンで、十二指腸の上皮に作用して鉄の吸収を抑制して、血液中の鉄分量が一定に保たれると考えられていましたが、これまでは実際にその存在を確認する方法がなかったそうです。
さて、関節リウマチでは大なり小なり貧血に悩まされている人は多いですね。 それに関しても、炎症があるとき(関節リウマチのみに限らず)に細胞から放出されるIL-6(インターロイキン-6)がヘプシジンを増加させることも実証されたそうです。
この確認を可能にしたのはプロテオミクス技術の活用ということですが、そもそもプロテオミクスとは?
プロテオミクスとはゲノミクスに対する言葉だそうです。 ゲノミクスとはゲノム解読をはじめとするゲノムを研究することから疾病などの問題を解決することですが、それに対してプロテオミクスは細胞内の全タンパク質であるプロテオームのデータを系統的・網羅的に収集し解析する技術です。 遺伝子が全部読めれば何でもわかる!全て解決!というわけではないということですね。
研究成果は、米国の血液専門誌Bloodに掲載されました。
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【2006.4.28】「アクテムラ」(トシリズマブ)、関節リウマチの適応追加申請
中外製薬が、アクテムラ(一般名:トシリズマブ、ヒト化抗ヒトIL−6受容体モノクローナル抗体)の、関節リウマチおよび全身型若年性特発性関節炎(従来の「若年性関節リウマチ」の全身型)の追加適応症の申請を行いました。→5月2日に国内承認審査に入りました
アクテムラは2005年6月にキャッスルマン病治療薬としてすでに発売されていましたが、このたび追加申請となりました。 海外ではまだ関節リウマチに関する臨床試験中、つまり日本では世界に先駆けての申請です。
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【2006.4.28】第50回日本リウマチ学会(JCR2006)のレポート
4月23〜26日に長崎県長崎市長崎ブリックホール他で開催された、第50回日本リウマチ学会(JCR2006)の情報です。
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【2006.4.25】リウマチ患者の寿命、平均より低く、感染症多く
東京女子医大膠原病リウマチ痛風センターによる、2000〜2004年に同センターを受診しその後に死亡した関節リウマチ患者134人と、全国の病院で死亡した関節リウマチ患者1225人のデータを分析した調査によりますと、日本人の関節リウマチ患者の平均死亡年齢は、男性70歳、女性69歳であるとの結果が出たそうです。 死因の上位は、感染症33%、間質性肺炎などの呼吸器疾患20%、アミロイドーシス11%でした。
ちなみに日本人の平均寿命は男性78歳、女性85歳で、三大死因は悪性新生物、心疾患、脳血管疾患ですから、だいぶん違っていると言えますね。
記事の中では
「死因で感染症が多いのは、関節リウマチの重症者ほど抵抗力が落ちるのが大きな要因で、間質性肺炎やアミロイドーシスは、薬でコントロールできずに慢性化した炎症が、発病に関与したとも考えられる。 関節リウマチは発病から1年以内に薬で症状をコントロールできるかが、病気の進行や、その後の日常生活を左右する。 しかし、副作用が強い薬も多く、医師が慎重になるあまり、初期に十分な量が投与されないケースも多い。」
・・・ということなのですが、抵抗力の低下と間質性肺炎に関しては、薬の副作用もかなり関係しているのではないかと思います。(総合管理人私見)
「発症の早い段階で薬の効果や副作用を調べ、患者一人ひとりにあった薬と量を選んで治療することが大事」と言われても、もう早い段階でない人口のほうが多いですよね。 でも発症の早い段階ではなくても、感染に気をつけたり、間質性肺炎が疑われる症状(カラ咳や息切れなど)があったり、なんだかおかしいと感じたらすぐ受診すること!は常に大切です。 平均寿命を下回ってしまうという調査結果は残念ですが、わたしたちが気をつけるべき事がはっきり示された点では有用な結果だと思います。 もちろん日本人の三大死因にも気をつけるべきなのは言うまでもありませんが。
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【2006.4.3】横浜市大、関節リウマチの原因酵素「PAD」のメカニズムを解明
横浜市立大学の国際総合科学研究科の構造化学研究室の佐藤衛教授の研究チームが、関節リウマチの原因とされる酵素であるペプチジルアルギニン・デイミナーゼ(PAD4 peptidyl arginine deiminase 4)が他のタンパク質と結合する仕組みを、原子レベルで詳細に解明したそうです。
PADはカルシウムイオン存在下でタンパク質中のアルギニン残基をシトルリン残基に変換する酵素で、5つのタイプ(PAD1・PAD2・PAD3・PAD4・PAD6)が広く体内の組織中に分布しています。 この5つのPAD中で、PAD4だけが核移行シグナルをもち、真核生物の遺伝子の発現を調節していることがわかっています。
今回の成果を基に結合を阻止する化合物(阻害剤)を発見できれば、関節リウマチの新治療薬となる可能性があるということですが、実用につながるのはかなり先の話になりそうですね。
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関節リウマチの原因たんぱく質 結合の仕組み解明(2006/4/3 紙面) by 日刊工業新聞
関節リウマチ原因タンパク質のリガンド認識機構の解明に成功(2006/4/3 プレスリリース) by 高輝度光科学研究センター
横浜市大、関節リウマチの原因酵素を解明(2006/4/5 日経産業新聞) by 日本経済新聞
Structural basis for histone N-terminal recognition by human peptidylarginine deiminase 4 [Abstract](2006/3/27) by PNAS(米科学アカデミー紀要Proc Natl Acad Sci U S A)
【2006.3.29】医薬品医療機器総合機構「患者向医薬品ガイド」に抗リウマチ薬を追加
医薬品医療機器総合機構が提供している医薬品医療機器情報提供ホームページの患者向け医薬品ガイドに抗リウマチ薬が追加されました。
医薬品医療機器情報提供ホームページでは今までにも医療用医薬品の添付文書情報で医薬品の添付文書検索して見ることができましたが、医療機関向けの文書がそのまま電子化されているため平易ではありませんでした。 2006年1月31日からは新たに患者等を対象に患者向け医薬品ガイドの提供が開始されていましたが、このたび抗リウマチ薬のほか血液凝固阻止剤、喘息治療薬の13成分63品目を追加公表されました。
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【2006.3.23】東京女子医科大学・膠原病リウマチ痛風センターが「オーダーメード医療」の試験運用を開始
東京女子医科大学・膠原病リウマチ痛風センターが、患者の体質に合わせて薬の処方を変更するオーダーメード医療の試験運用を4月にも始めると発表しました。
同センターの患者の中から希望者を募って、遺伝子の個人差である一塩基多型(SNP)やハプロタイプを調べ、副作用の起こりやすさなどを判定して処方に反映させるという方法です。 情報はICカードに入力し、カードを所持していれば薬の処方を受けるときに自分の体質に合った種類や分量の薬を受け取れる仕組みだそうです。 こんなしくみが全国、そして全世界の病院で実用化されれば副作用をはじめとする薬の危険度が下がるかもしれませんね。
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【2006.3.14】リウマチやアトピーなどの免疫過剰炎症、抑制物質「プロスタグランジンD2」を発見
大阪バイオサイエンス研究所元副部長で現早稲田大学の先端バイオ研究所教授の江口直美博士と、米ハーバード大学、英ロンドン大学の国際チームはリウマチやアトピー性湿疹のような自己免疫疾患の過剰な炎症を抑える働きがある物質を発見したそうです。
その物質は免疫の調節にかかわる物質であるプロスタグランジンD2が造血器官で作られる時にできる代謝産物で、リウマチなどの炎症を抑える働きがあり、新たな治療法の開発につながる成果だということです。
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【2006.2.17】厚生労働省が「抗リウマチ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」を作成
「抗リウマチ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」については、厚生労働省の科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会により、2005年3月から8月にかけて開かれたリウマチ対策検討会およびアレルギー対策検討会で案が検討されていました。 医薬品の承認申請の目的で実施される抗リウマチ薬の臨床試験の評価方法として、その標準的方法を取りまとめたものです。(学問上の進歩等を反映した合理的基準に基づいたものであれば、これに示した方法を必ずしも固守するように求めるものではない、と添え書きされています)
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【2006.1.27】「関節リウマチ患者と社会の関わり『日米比較』」調査結果の発表
昨年2〜3月にみなさんにご回答いただいた「関節リウマチ患者と社会とのかかわりに関する調査」第2回について、昨年8月に実施されたメディア向けのセミナーの様子及び調査結果のサマリーが、リウマチeネットに掲載されました。
【2006.1.10】英国の消費者団体が、新しい関節リウマチ治療薬4種類について限定的な使用を勧告
英国の消費者団体のWhich?が1月9日、レフルノミド(アラバ)・エタネルセプト(エンフセレル)・インフリキシマブ(レミケード)・アダリムマブ(ヒュミラ)について、従来の治療や薬に好ましい反応を示さない深刻な症状を示す患者にのみ使用するべきだと勧告、Which?の発行する医薬品情報誌DTB(Drug and Therapeutics Bulletin)に掲載しました。
理由は・・・これら4種類の薬は症状の軽減が認められ、レフルノミドを除いては進行を遅らせることができるが、深刻な副作用を引き起こす可能性があり、従来の比較的安価な療法との比較や4種類の薬同士の比較がなされていないこと、長期にわたる効果と安全性がまだ充分に調査されてはいないこと・・・だそうです。
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【2006.1.6】関節リウマチの原因菌を発見
バイオベンチャーのエムバイオテック(東京・江東、佐藤征二社長)が関節リウマチの原因と考えられる菌、マイコプラズマ・ファーメンタンス(=Mycoplasma fermentans)を発見したそうです。協和発酵の子会社の協和メデックスと炎症物質の検出試薬を共同開発中で、2月にも試作品が完成予定、臨床診断薬として3年内の承認申請を目指すそうです。
以前から、関節リウマチの治療にある種の抗生物質が効果があるという話題は出ていましたが、このようなニュースとしては初めてのことではないでしょうか。 ただし、関節から菌が見つかった患者は4割弱だそうで、全員に当てはまるのかどうかはまだわかりません。
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【2005.12.26】「ヒュミラ」(アダリムマブ、D2E7)、国内で製造販売承認を申請
エーザイとアボット・ジャパンが共同開発している関節リウマチ治療薬のヒュミラ(一般名:アダリムマブ、開発品コード:D2E7)の、関節リウマチの効能・効果で製造販売承認の申請を行いました。
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【2005.11.11】第69米国リウマチ学会(ACR2005)のレポート
11月12〜17日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された、第69米国リウマチ学会(ACR2005)の情報です。
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【2005.11.1】リウマチ・アレルギー対策委員会の報告書が公開されました
厚生労働省の科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会により、2005年3月から8月にかけて開かれたリウマチ対策検討会およびアレルギー対策検討会の報告書をまとめ、11月1日にwebでも公開しました。 報告書は、厚生労働省ホームページのリウマチ・アレルギー情報で、PDFファイル(下記ニュースソースのリンクより)で提供されていて、どなたでも読めるようになっています。
全体としては本文47ページと資料8ページからなる文書で、リウマチ対策については2〜15ページまでです。
現状の問題点としては、根治的な治療法が確立されておらずQOLの低下が避けられないこと、都道府県間での専門医療の差と全体での不足、有効で安価なMTX(=メトトレキサート)の投与量が日本では8mg/週のままである問題、患者の実態の把握が不十分、などがとりあげられ、今後はそれら改善と研究の推進について優先目標を定めて効果的な対策を講じる必要があるとしています。
なお、研究目標しては、当面(平成22年度までに)成果を達成すべき研究分野としては重症化の防止が、長期目費用を持って達成すべき研究分野としては予防法と根治的な治療法の確立を目指す、といったことがあげられています。
残念なのは、関節リウマチがいまだ高齢化と結びつけられていること、医薬品の開発促進や優れた医薬品が早く患者のもとに届くようという点はについては出ていますが、現在問題になっている価格面については言及されていません。 また、資料にある各都道府県における現在のリウマチ施策についてでは、都道府県によってバラバラで、相談窓口を設けているところはあるものの、事業・普及啓発・連携施策はほとんど実施されておらず、計画にいたってはゼロというありさまでした。
報告書にもあるように、現段階では、リウマチの予防・治療法を確立するという目標をすぐに実現するのは難しく、施策の目標を絞って取り組まなければならないという状況で、わたしたちの要望全てを一気に実現するのは難しいと思いますが、絞り込んで定めた目標についてはきちんと改善されていってほしいものです。
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【2005.8.29】「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」第2回調査に関する記事
2005年2月にみなさんにご回答いただいた「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」第2回調査に関連する記事を見つけましたので、お知らせします。
日本では無知や誤解に基づく偏見が米国よりも強いことがわかったという内容の記事です。
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【2005.8.25】骨セメント使用時における重篤な健康被害について、厚労省が安全性情報で注意を再喚起
この件については、全くの新しい情報というわけではありませんが、厚生労働省は医薬品・医療機器等安全性情報第216号にて、骨セメント(アクリル樹脂)の使用時における重篤な健康被害についての注意を喚起しました。
骨セメントの使用については、医薬品・医療機器等安全性情報第165号(2001年3月)、147号(1998年3月)、116号(1992年9月)と、過去にも何度も重篤症例や添付文書の使用上の注意の改訂内容の紹介を行うなど,注意を喚起されてきましたが、その後もについては,リスクの高い患者への使用,麻酔医の監視がない状況での使用等により,血圧低下,ショック,肺塞栓症などを発症し,死亡した症例が報告されていることから、今回改めて医療関係者へ使用に当たっての注意喚起となったそうです。
人工関節の固着に骨セメントは欠かせないもので、使わないというわけにはいきません。 医療現場の方々には、使用する際には万全の態勢で注意を怠らないように徹底していただきたいものです。
ところで、同文書中で、携帯電話端末やRFID(電子タグ)機器による植込み型心臓ペースメーカおよび除細動器への影響についても注意が喚起されています。 「心臓ペースメーカ等の植え込み部分から、22cm以上離せば影響が避けられる」とのこと、けっこう微妙な距離ですね。 携帯電話が使用禁止の場所や優先席付近ではこまめな電源OFFを心がけましょう。
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【2005.8.25】関節リウマチ原因遺伝子、新たに5種発見
製薬会社など約90社で構成するバイオ産業情報化コンソーシアムと産業技術総合研究所の共同研究グループが、関節リウマチの原因遺伝子のうち、新たに5種類を発見したそうです。 他に40種類の原因遺伝子の手掛かりもつかんでいるということです。
共同研究グループは関節リウマチの患者と健康な人の計2000人の血液を分析して、ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)のわずかな個人差を手掛かりに、原因遺伝子が存在すると考えられる47カ所を突き止めたとのことです。
関節リウマチの発症は1つの遺伝子だけで決まるのではなく、原因遺伝子は数10種類〜百種類もあると予測されています。 発症には環境などの複雑な条件が関わっていて、遺伝が全てというわけではありませんが、原因遺伝子を発見することは病気の解明に役立ち、治療に役立つことにはなると思います。
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【2005.7.4】おっきぃさんの「鹿児島のトイレ情報」が紹介されました
RA CITYのリウマチャーのサイトリンク集には「★み・ね・ら・る★」で参加されているおっきぃさんの、「鹿児島のトイレ情報」が、毎日新聞で紹介されました。
このサイトでは鹿児島市街地を中心とした鹿児島県内の利用しやすいトイレ(特に「身障者(車椅子・オストメイト)用」「子ども連れでも入りやすいトイレ」「きれいなトイレ」)についてマップやリスト、写真付きの詳細情報などで紹介されてます。 リンク集に参加中の「★み・ね・ら・る★」と同じように、おっきぃさんが個人で解説・運営されています。 どちらへも訪れてくださいね。
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【2005.7.4】炎症悪化物質「FROUNT」を発見
東京大学院医学系研究科の社会医学専攻の社会予防医学講座の分子予防医学の松島綱治教授らの研究チームが、免疫機能全般を制御するFROUNT(フロント)というタンパク質を発見し、米科学誌Nature Immunology(ネイチャー・イムノロジー)電子版に発表しました。
FROUNTはケモカイン受容体であるCCR2が媒介する単球走化における機能調節分子で、炎症が起きるときに免疫担当細胞である単球やマクロファージが集まってくるしくみで重要な働きをします。 FROUNTが働かないと体内反応が続かないことを実験で確かめられたそうです。
研究チームの一員で、ベンチャー企業エフェクター細胞研究所社長を務める金ヶ崎史朗・東大名誉教授はによると、現在FROUNTの働きを阻害する物質を探しており、将来は製薬会社と共同して新薬を開発したいと話しているそうです。
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【2005.6.22】難病患者にヘルパー派遣 大津市が条例制定
滋賀県大津市は、介護保険法や身体障害者福祉法などの対象になっていなくて福祉サービスを受けられない難病患者の在宅療養を支援する「市難病患者等居宅生活支援条例」を制定しました。 これは在宅で療養する患者にヘルパーを派遣したり、福祉用具を給付する事業です。 具国が指定する121の難病とともに、関節リウマチの患者も対象となるそうです。(所得に応じて、一定の自己負担)
実は、すでに全国の多くの多くの自治体でこうした難病患者等居宅生活支援事業が制度化されています。 また、これからも実施する自治体が増えると思います。 介護保険の年齢に当てはまらなかったり障害者手帳を取得していなくても、福祉は全く受けられないというわけではありません。 あきめずに、役所に問い合わせをしてみてください。
※RA CITY用語集の難病患者等居宅生活支援事業や役所の使い方関連の用語の一覧も合わせてご覧ください。
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【2005.5.17】アルツが膝関節にも適用
アルツとアルツディスポ(一般名:ヒアルロン酸ナトリウム)が、膝関節にも使えるようになりました。 科研製薬株式会社は厚生労働省からの5月12日付「慢性関節リウマチにおける膝関節痛」を適応とした効能・効果追加についての承認書を5月16日に受領いたそうです。・・・おや?病名にまだ慢性がついていますね。
今まではアルツの適応は肩関節のみでした。 ちなみに、同様にヒアルロン酸ナトリウムの関節機能改善剤であるスベニールは膝関節に適応しています。
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【2005.5月】関節リウマチ関連の記事2本
目新しいニュースではありませんが、注目したい記事を2本。
1本目は今国会で審議されている「障害者自立支援法案」について。 話題限定掲示板の2005年4月の「役所の使い方」でも、クローズアップされた話題です。 この法案には重度心身障害者医療や更正医療などの公費負担医療が大幅に削られて有料になり(有料化は2005年10月から実施されることがほぽ決定)、都道府県知事が指定する自立支援医療機関以外では受診できなくなるなど、福祉の大幅な減退が盛り込まれてます。 なお、ソースとしてリンクした記事は「リウマチ」という言葉が記載された記事で、この法案については他にもたくさんの記事がありますし、各団体が行動を起こしています。
もう1本は関節リウマチの基本的な情報と、病気への正しい理解と家族の協力を呼びかける記事です。 わたしたちには当たり前のことばかりではありますが、なかなかよくまとまっている記事で、患者の口から直接聞くよりもメディアから知らされたほうがインパクトがあると感じる周囲の人たちや、もしやリウマチ?と思っている人たちにも、こういう新聞記事は役立つものだと思います。
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病気になって知るこの国に暮す不幸? ひとごとではない障害者自立支援法(2005/5/11) by JANJAN応益負担中止への署名HTML形式、同WORD形式(国会宛て、7月末 第一次〆切)この署名活動をしているのは、障全協(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会です、署名用紙の使い方等はこちらへどうぞ
治療の鍵は理解と協力(2005/5/13) by 東京新聞
【2005.5.4】伝説のロックバンドCreamが37年ぶりに再結成
あの伝説のイギリスのロックバンドCreamが再結成! 1968年解散公演の舞台となったロイヤル・アルバート・ホールで4日間ライブを行い、華麗なパフォーマンスに3世代の観客を総立ちにさせたそうです。 メンバーはギターのエリック・クラプトンが60歳、ベースのジャック・ブルースが61歳、ドラムのジンジャー・ベイカーが65歳、もうそんな歳になってたんですね。
なぜこのニュースなのかと言いますと・・・実はジンジャー・ベイカーはリウマチ性疾患で闘病中だそうで、関節リウマチであるかどうかはわかりませんが、何らかの関節炎に悩まされていることは間違いないようです。 ジャック・ブルースも肝臓移植手術を受けたとのこと、みなさんおだいじにされつつがんばってほしいものです。
なおこの公演の模様を収めたDVDが10月ごろに発売される予定とか。 最近めっきりシブくなっちゃったエリック・クラプトンですが、熱狂的に弾きまくる姿を久しぶりで見られるかも。
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【2005.5.3】厚生労働省の代謝系疾患調査研究班の班長に金大病院の山田教授が就任(アミロイドーシスの研究)
アミロイドーシスはアミロイドタンパクと呼ばれる物質が臓器に沈着し、機能障害を起こす病気です。 関節リウマチでは、合併症として続発性アミロイドーシスが起こることがあります。
厚生労働省が特定疾患に指定しているアミロイドーシスには、続発性アミロイドーシスは含まれていませんが、先駆的な研究を進めている山田正仁教授が班長に就任したことにより、全病型に共通するアミロイド沈着のメカニズムの解明が期待されています。
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【2005.4.20】アラバの副作用の間質性肺炎、日本人の発症率は60倍
日本リウマチ学会2005の情報の一部として、日本リウマチ学会調査研究委員会に設けられた「レフルノミドによる肺障害検討グループ」の研究成果で、2日目のワークショップ3「レフルノミドの肺障害」で公表されたところによると、間質性肺炎の多発が問題となっていた抗リウマチ薬のレフルノミド(商品名:アラバ)について、海外では40万人に対する投与でわずか0.02%と低かった間質性肺炎の発症率が、日本人では60倍の1.2%と高率に発生していたことが判明したことが報告されました。 その後、朝日新聞などにも同様の掲載されています。
なぜ発症率が高いのか理由はまだ不明とのことですが、アラバだけでなく他の薬でも副作用による間質性肺炎を起こす頻度が高い現象もあるそうです。
2005年4月4日現在、アラバを使った5320人のうち、間質性肺炎の発現あるいは悪化は73人、うち死亡された方は25人になりました。 アラバによる間質性肺炎は他の抗リウマチ薬の副作用による場合よりも治りにくく、特に注意が必要だそうです。
何度も繰り返しになりますが、間質性質性肺炎・肺線維症にかかっている人や過去にかかったことのある人は、服用を開始する前に必ず医師に伝えるようにしてください。 服用の開始にあたっては、胸部のX線撮影やコンピューター断層撮影(CT)をしたうえ、症状がないことが前提です。 服用中に発熱、せき、息切れなどの呼吸器の症状が現れた場合、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
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【2005.4.19】第49回日本リウマチ学会(JCR2005)のレポート
4月17日〜20日に神奈川県横浜市パシフィコ横浜で開催された、第49回日本リウマチ学会(JCR2005)の情報です。
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【2005.4.18】関節リウマチ原因、新たな遺伝子「FCRL3」発見
関節リウマチなど自己免疫疾患の原因遺伝子の1つを、理化学研究所の遺伝子多型研究センターの山田亮・上級研究員たちのグループが見つけ、17日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクスの電子版で発表されました。
今回の研究では、RA患者830人とRAでない被験者658人の遺伝子の違いを比べ、B細胞(リンパ球の一種)に発現するFCRL3遺伝子(Fc receptor-like 3)が、関節リウマチおよび、他の自己免疫性疾患の発症に関連する遺伝子であることを同定したそうです。 自己免疫疾患にかかりやすいタイプの遺伝子多型を持つ人は、細胞でFCRL3遺伝子の発現量が約3倍増加しているという結果だったそうです。
ただし、これだけが関節リウマチの唯一の遺伝子というわけではありません、念のため。 今までにも特定された主な自己免疫疾患の原因遺伝子はあり、今回のを含めると約10個となったそうです。 発症は1つの遺伝子だけで決まるのではなく、発症しやすさの遺伝子を複数持つことに加えて、環境などの複雑な条件が関わっています。 遺伝が全てというわけではありませんが、原因遺伝子がまた1つ発見されたことが病気の解明に役立ち、治療に役立つことにはなると思います。
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【2005.4.14】第1回リウマチ対策検討会が開催されました
12日に厚生労働省のリウマチ対策検討会の第1回が開かれました。 今後は3回程度会合を開くそうです。
会合では、国立病院機構相模原病院長が越智隆弘氏が座長に選出され、事務局から論点として以下の8つのが示されました。
[1]リウマチ対策の基本的方向性
[2]研究の推進
[3]医薬品の開発促進等
[4]医療提供体制の整備
[5]患者QOLの向上と自立
[6]情報提供・相談体制
[7]関係機関との連携
[8]その他(対策は何年後に見直しが必要か)
そして、この日は論点のうち[1][2][3]について議論され、[1]では、早期診療に加え重症化を防ぐこと、第1次・第2次・第3次予防が重要との指摘がなされ、特に日本では欧米の標準的治療が受けられないことから、重症化予防を2010年までの目標にすべきとの意見も出されたそうです。
厚生労働省ホームページにも傍聴の申込み(30名程度)などについてのお知らせが出ていましたが、掲載されたのがかなり直前だったので、いっぱいにはにらなかったそうです。 次回から傍聴をしたい人は厚生労働省のリウマチ・アレルギー情報をチェックしておきましょう。 または、審議会、研究会等のその他(検討会、研究会等)のページの健康局のからも開催予定がわかります。
厚生労働省の会議等の傍聴のお知らせを厚生労働省 新着情報配信サービスで受け取ることができるそうです。 登録しておくと、毎日ホームページの更新情報などをメールで配信してくれるそうです。
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【2005.4.11】プログラフが関節リウマチの効能・効果を取得
アステラス製薬株式会社は、4月11日付けで免疫抑制剤プログラフRカプセル0.5mg、同1mg(一般名:タクロリムス水和物)について、関節リウマチを適応とした効能・効果の追加承認取得したそうです。 (去る2月25日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会が承認して差し支えないと結論しました。) ただし、使用は既存治療で効果不十分な場合に限るそうです。
ニュースソース↓
【2005.4.1】特別障害給付金が始まります
4月1日より、特別障害給付金の受付が始まります。
これは、今まで年金の受給資格がないとされてきた、学生無年金障害者と主婦無年金障害者を対象に、障害基礎年金にかえて約半額程度が支給されるものです。 したがって、障害基礎年金の受給資格のある人は、間違ってこちらを申請しないようにご注意ください。 また、障害手当金とも間違えないように。(いったん受給してしまうと障害基礎年金の受給資格がなくなってしまいます)
くわしくは住所地の区市町村役場の国民年金担当課などの窓口におたずねください、もちろん電話でもOKなはずです。 特別障害給付金は申請をした翌月から支給されますが、障害基礎年金同様に色々と書類が必要になりますので、当てはまる人はまずは行動を起こして、とりあえず最初の申請をお早めにどうぞ。(足りないと言われた書類はあとからの付け足しができます)
今までに、初診日が未加入期間にあるから年金は出ない、と言われてあきらめたおぼえのある人は、ぜひ確認してみてください。
参考になるページ↓
無年金障害者の会
特定障害者のための特別給付金のページ(fromふしぎの森 by ぽぽんたさん)
特定障害者に対する特別障害給付金の支給について by 厚生労働省
特別障害給付金制度について by 社会保険庁
ニュースソース↓
【2005.3.30】エンブレルが本日発売
みなさんお待ちかねの新しい抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)が、いよいよ3月30日に発売になりました。
※Enbrel(エンブレル)=薬剤名はEtanercept(エタネルセプト)は、アメリカのAmgen(アムジェン社)の関節リウマチのための生物製剤(バイオ製剤)のです。 日本では、ワイス株式会社と武田薬品工業株式会社がコ・プロモーション(1つの商標を2社共同で販促する)で販売します。
ニュースソース↓
関節リウマチ治療薬「エンブレル皮下注用25mg」の新発売について by 武田薬品工業株式会社
ワイスと武田薬品、関節リウマチ患者の症状を改善する治療薬「エンブレル」を発売(2005/2/29) by 日本経済新聞
なお、在宅自己注射については現時点では保険適用の対象外ですが、同30日に中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会が、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤として追加することを了承しましたので、4月6日の総会で了承を得た後、4月中には通知される予定だそうです。
【2005.3.25】エンブレルがの発売時期に遅れ
抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)は25日に予定されていましたが、海外で2例、使用した人がクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を発症した例が報告されたことから、発売が遅れることになったそうです。
厚生労働省が検討し、エンブレルとクロイツフェルト・ヤコブ病との関連性はほぼ否定できると結論付けたことから、近く発売になる予定とのことです。 詳しいことは、1つ下のニュースをご覧ください。
薬価掲載後に販売が遅れるのは珍しいそうです。
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【2005.3.24】エンブレル使用者にヤコブ病=米仏で2例、厚労省は関連性を否定
18日に薬価収載となった新しい抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)ですが、海外で2例、使用した人がクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を発症した例が報告されたとして、24日に厚生労働省の伝達性海綿状脳症対策調査会がこれらの症例について検討し、その結果、エンブレルとクロイツフェルト・ヤコブ病との関連性はほぼ否定できると結論付けたそうです。
エンブレルは、製造工程の一部に子牛の血清を使っているそうです。
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【2005.3.24】免疫反応を安定させるタンパク質発見
体内の免疫反応を安定した状態に保つタンパク質を大阪大学の微生物病研究所の分子免疫制御分野の菊谷仁教授らが見つけ、米科学誌イミュニティーの3月22日号に発表しました。
免疫に関係するヘルパーT細胞にはTh1とTh2の2種類がありますが、Th1が優位になりすぎると関節リウマチを含む膠原病などの自己免疫疾患に、Th2が優位になりすぎると花粉症などのアレルギー疾患になることが知られています。 菊谷教授らはタンパク質であるセマフォリン分子Sema4Aを発見しました。 Sema4Aを作ることができないようにしたマウスでは、Th1が働かずアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎を発症したそうです。
菊谷教授はSema4Aの状況の観察、制御が病気の治療にもつながるのではないかと話しているそうです。
Research--リンパ球セマフォリンに関する研究 by微生物病研究所
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【2005.3.9】エンブレルが18日に薬価収載
抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)が、3月18日に薬価収載になります。 9日の中央社会保険医療協議会総会で、薬価算定組織からの報告が了承されたのを受けてのことです。
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【2005.3.2】薬事・食品衛生審議会が2月25日、プログラフに関節リウマチの効能・効果を追加を承認して差し支えないと結論
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は2月25日に免疫抑制剤プログラフ0.5mg、同1mg(一般名:タクロリムス水和物)を関節リウマチの治療に使用することを承認して差し支えないと結論したそうです。
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【2005.3.2】関節リウマチの早期診断に道を開く専用の小型磁気共鳴画像装置(MRI)年内に製品化へ
筑波大学の巨瀬勝美教授らは1日、関節リウマチの早期診断に道を開く専用の小型磁気共鳴画像装置(MRI)を開発したと発表しました。 リウマチによる関節の変形が最も早く現れる手の画像を低コストで撮影できるので早期診断に役立つとのことです。
筑波大学付属病院と米国のハーバード大学放射線科の協力を得て、早期リウマチが疑われる9人の患者の手を撮影、診断したところ、3人が早期リウマチと診断できたとか。 今後さらに臨床例を積み重ねて、筑波大発ベンチャーのエム・アール・テクノロジーが年内に製品化の予定だそうです。
今までのMRIでは手の部分に絞って画像を得るのは難しかったのですが、新開発の小型MRIは手の部分だけがうまく一度に撮影できるそうです。 撮影に要する時間も短くなるのでしょうか、もしだったら部分の撮影ならうるさい巨大ちくわ(笑)の中で長時間身動きできない検査から開放されるのでは? 製造コストは従来型MRIの約5分の1だそうですが、それでも2000万円・・・今までの装置は1億円だったというわけですね!(実際は1〜4億円らしいです)
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【2005.2.24】リウマチ薬「アラバ」服用の死者16人に
アベンティスファーマの抗リウマチ薬のアラバ(一般名:レフルノミド)による副作用の疑いで、2003年9月の発売から2004年11月までに41人が間質性肺炎になり、うち16人が死亡したことが、アベンティスファーマから厚生労働省への報告でわかりました。同社は昨年の3月と1月のにも、注意喚起していました。 前回の報道以降、新たに4名の方が亡くなられたということになります。
副作用自体には特に新しい情報はありませんが、先だってリウマトレックスのニュースも出たため、念のための注意喚起だと思われます。
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リウマチ薬「アラバ」副作用か、16人死亡 厚労省注意(2005/2/24) by 朝日新聞
リウマチ治療薬副作用か、肺炎で16人死亡(2005/2/24 21:24) by 読売新聞
リウマチ治療薬:アラバ錠で副作用41人、うち16人死亡(2005/2/24 20:04) by 毎日新聞
リウマチ治療薬「アラバ」の副作用疑いで16人死亡(2005/2/24) by 日本経済新聞
レフルノミドによる間質性肺炎について(2005/2/24 厚生労働省医薬食品局(医薬品・医療用具等安全性情報) by 医薬品医療機器総合機構
以下は昨年3月・1月に書いたことの繰り返しです。 服用中の方は充分に注意してください。
間質性肺炎・肺線維症にかかっている人や過去にかかったことのある人は、服用を開始する前に必ず医師に伝えるようにしてください。 服用の開始にあたっては、胸部のX線撮影やコンピューター断層撮影(CT)をしたうえ、症状がないことが前提です。 服用中に発熱、せき、息切れなどの呼吸器の症状が現れた場合、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
【2005.2.12】「リウマトレックス」の副作用による昨年11月までに134人
ワイス社の抗リウマチ薬のリウマトレックス(一般名:メトトレキサート=MTX)の服用後に死亡し、薬との因果関係が否定できない重い副作用と判断された患者が、1999年(平成11年)3月の承認から昨年2004年の11月までに134人に達したことが11日、製造元のワイス社の集計で分かったそうです。
内訳は骨髄抑制などの血液障害(50人)と間質性肺炎(49人)が中心で、死亡した人の中には、リウマトレックスを服用してはいけない禁忌となっている腎障害や慢性肝疾患のある人や、定期的に必要な血液などの検査を行っていなかった人もいるとのことです。
厚生労働省およびワイス社は、今までもずっと注意を喚起してきたということですが、きちんと伝わっていなかったり受け取る側も軽視していたりという現実があったことはは否めないと思います。 そういう情報提供のあり方も問題だと思いますが、服用するわたしたちとしてもより注意していく必要があるかもしれません。
大切なのは、漠然と恐怖感を抱いたり怖いから使わないというようなことではなく、腎障害や慢性肝疾患を無視して服用いないか、定期的に血液検査をでチェックしてもらっているか、発熱・せき・息切れなどの呼吸器の症状が起こっていないかなどに注意することです。 何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
今や関節リウマチの治療に欠かせない薬となったリウマトレックス、現在使用している人は推定で10万人がだそうです。
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リウマチ薬副作用で134人死亡 製造元が厚労省に報告(2005/2/12 13:05) by 朝日新聞
リウマチ治療薬の副作用、昨秋までに134人死亡 (2005/2/12 13:37) by 読売新聞
リウマチ治療薬:副作用で134人死亡 製造元が注意喚起(2005/2/12 12:00) by 毎日新聞
リウマチ治療薬、「重い副作用」で134人死亡(2005/2/12 07:00) by 日経新聞
なお、このニュースとは直接関係ありませんが、ワイス社では、ワイスくすりの情報室を設け、医療関係者や患者様からワイス製品に関するお問い合わせを電話で受け付けているそうです。→2010年6月1日に合併により、ファイザー株式会社となり、相談窓口が変わりました。
医療用医薬品(病院・医院・クリニックで処方箋が発行されたお薬について)に関するお問い合わせ 専用電話番号:0120-664-467 03-3561-8720 受付時間:平日の午前9時〜午後5時30分(平日9時〜17時30分 土日祝祭日除く)
この件に限らず、薬であれば副作用のないものは1つもありません。 日ごろから医師との話し合いを欠かさず、自らも薬についての正しい知識を得るようにしましょう。 このニュースに驚かれた方も多いと思いますが、むやみに中止してしまったり、治療をあきらめてしまうようなことのないようにしましょう。
くり返しになりますが、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
【2005.1.25】エンブレルが承認を取得
抗リウマチ薬のエンブレル(一般名:エタネルセプト)が、1月19日に承認を取得しました。 薬価収載を経てから、発売となります。
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【2005.1.24】炎症の鍵握るタンパク質「IRF-5」を発見
東京大学医学部の病因・病理学専攻、免疫学講座の谷口維紹教授らの研究チームの大学院生柳井秀元さんと高岡晃教講師らのグループが、マウスの遺伝子操作の実験によって、関節リウマチなどの自己免疫疾患を引き起こす物質がつくられる仕組みの鍵を握るサイトカインIRF-5(Interferon Regulatory Factor5)を見つけたそうです。 IRF-5が炎症性サイトカインの1つであるIL-6(インターロイキン6)などの生成にが不可欠であることが分かったということから、この物質の分泌を抑える治療薬の開発につながると期待されます。
このニュースは23日付の英科学誌ネイチャーの電子版に掲載されました。
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【2004.12.20】抗リウマチ剤 抗APO-1抗体、国内外で臨床試験
聖マリアンナ医大学難病治療研究センターと参天製薬が、関節リウマチへの効果が期待される抗APO-1抗体を用いた新薬の開発のための臨床試験を国内外の医療機関と協力して始めるそうです。
臨床試験は、聖マリアンナ医大学や東京女子医大学、大阪大学など数か所の医療機関で実施予定で、欧米でも国立衛生研究所などで試験を検討中で、7年後の実用化を目指すそうです。
抗APO-1抗体は、滑膜の細胞の増殖を抑える働きがあり、関節腔内への投与(注射だと思われます)で今までの薬では対処できなかった骨の破壊を止められる可能性があるそうです。
このところ新薬といえば抗サイトカイン剤が主でしたが、関節に直接使って破壊を止めるちょっと違ったアプローチの新薬は目新しいのではないでしょうか。 動物実験では特に副作用もなかったとか、人でもそうならうれしいですね、ただし実用は早くても7年後ですが。
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■「関節リウマチ患者さんと社会との関わり」第2回調査
「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」の第2回の参加者の登録の受付はしめ切られました。
【2004.11.26】薬事・食品衛生審議会が22日、エンブレルを承認して差し支えないと結論
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は11月22日にヒト型抗体を用いた抗リウマチ薬エンブレル皮下注用25mg(一般名:エタネルセプト)の輸入を承認して差し支えないと結論したそうです。
一瞬もう発売されるのかとあわてましたが、まだです。 発売までにはもうしばらく時間がかかります。 次は薬事分科会に報告されて承認され、薬価収載され(薬価が決まって保険適応)、その後にやっと発売になります。
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【2004.11.8】長持ちする人工関節開発 東大チーム、臨床試験へ
東京大学の整形外科の中村耕三教授と、生体材料学の石原一彦教授らのグループが、長持ちする人工関節の開発に成功したそうで、英科学誌ネイチャーマテリアル電子版に論文が発表されました。
従来の人工関節では長年使用しているとソケット(受け側)の表面のポリエチレンが摩耗して微粉が発生し、これを除こうと集まった破骨細胞の働きによって人工関節を固定している周囲の骨が壊れてしまうという問題がありました。 新開発の生体になじみやすい有機化合物であるMPC(=phospholipid polymer 2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)をポリエチレンの表面に結合させたところ、摩擦と磨耗が著しく減少したとのことです。
この人工関節は、年度内にも臨床試験を始め、2年後の実用化をめざすそうです。
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■リウマチャーの仕事の体験
il cieloのvoloさんの体験がリウマチeネットの患者さんのための就職ガイドに掲載されています。 後編も読めるようになりました。
【2004.10.22】第68回米国リウマチ学会(ACR2004)のレポート
10月16日〜21日にテキサス州サンアントニオで開催された、第68回米国リウマチ学会(ACR2004)の情報です。
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【2004.9.29】充てん済み注射器「エンブレル」をFDAが承認
エンブレルは従来は小びんに入った粉薬を注射器の中の溶液で溶かして使う方法でしたが、すでに注射器の中ででき上がっている状態のものが承認されたそうです。 つまり、小びんに注射針を刺す、溶液を入れる、混ぜる、注射器へ吸い上げる、まだの動作が必要なくなるわけで、特に指先での細かい動作が難しいリウマチャーにはとても使いやすくなるだろうと思います。
しかし・・・これはアメリカでのお話、日本ではエンブレル自体の発売がまだです、かなり時間がかかっていますね。
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【2004.9.21】リウマチ薬の副作用など予測 患者の遺伝子調べるDNAチップ
東芝が東京女子医科大学の鎌谷直之教授のグループと協力し、抗リウマチ薬の効き目や副作用、合併症発症の確率を、個々の患者の持つ遺伝子情報の違いから予測できるDNAチップを開発したことが発表されました。 実用化に向けて、10月から1年間東京女子医科大学で性能を検証しいき、早期の製品化を目指すそうです。
このチップによってSNP(=一塩基多型)つまりDNAの遺伝情報の塩基配列の個人差、をもとにしたオーダーメイド医療が可能になるということです。 抗リウマチ薬の副作用はメトトレキサート(=MTX メソトレキセート、リウマトレックス)とサラゾスルファピリジン(アザルフィジン、サラゾピリン)について、合併症はアミロイドーシスについての個人差が予測できるようになるそうです。
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リウマチ治療の副作用診断 患者の遺伝子調べるチップ(2004/9/21 17:37) by Yahoo!NEWS(共同通信)
リウマチ治療の副作用診断 患者の遺伝子調べるチップ(2004/9/21 18:16) by 京都新聞
東芝、リウマチ薬の効果判定用DNAチップ開発=東京女子医大で検証へ(2004/9/21 20:03) by Yahoo!NEWS(時事通信)
リウマチ治療の副作用診断 患者の遺伝子調べるチップ(2004/9/21) by 岐阜新聞
リウマチ薬の副作用など予測――東芝と女子医大、DNAチップ(2004/9/22) by NIKKEY NET
リウマチ治療:薬の効き目判定 DNAに反応するチップを開発−−東芝など(2004/9/26 0:32) by 毎日新聞
【2004.9.7】免疫機能制御のタンパク質「RAPL」 京大のグルーブが解明
京都大医学研究科の木梨達雄教授と片桐晃子講師らのグループが、免疫機能全般を制御するRAPLというタンパク質を昨夏発見、その役割を解明して、米科学誌ネイチャー・イムノロジー電子版に発表しました。 アレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療にではこの物質だけを抑え、抗がん剤などで低下した免疫機能の回復には逆に活性化する、という方法が有効である可能性があるとして、すでに製薬会社と阻害剤の共同開発が始まっているそうです。
Crucial functions of the Rap1 effector molecule RAPL in lymphocyte and dendritic cell trafficking [Abstract] (2004/9/7) by nature immunology
免疫監視の破綻と修復:木梨達雄 by 文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究 免疫監視の基盤とその維持・制御
免疫監視の再生と制御、強化:木梨達夫 by 文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究 免疫監視の基盤とその維持・制御
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【2004.8.25】貼るボルタレンが新発売
みなさんおなじみのボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)の貼り薬版、ボルタレンテープが出ました。 市販薬(一般用医薬品)ではなく、処方薬(医療用医薬品)です。
ボルタレン by ノバルティス
プレスリリース(PDF Data) by ノバルティス
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【2004.4.14】リウマチ治療、若い世代にも人工関節推奨 学会が新指針
第48回 日本リウマチ学会総会・学術集会(2004年4月15〜17日 岡山コンベンションセンター)で、日本リウマチ学会の研究班がまとめたリウマチの治療ガイドラインが発表されました。 若い世代からの人工関節の導入や、薬物療法の注意点などが盛り込まれているそうです。
人工関節は骨と接する部分の素材の改良などで長持ちするようになったこと、比較的早期の方が定着しやすいことが分かってきたことから、20代の人にも勧められる治療法と位置づけられました。 薬物療法ではレフルノミド(アラバ)で間質性肺炎に注意が必要なことなどを解説、今後は患者向けの冊子も作る予定だそうです。
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【2004.4.18】「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」掲載記事 (前回更新 2003.12.25)
2003年2月3日に、8月にみなさんにご回答いただいた「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」のメディアに対する結果の発表がありました。
2004年3月30日までに関連記事が掲載された媒体は以下のとおりです。 ★印が4月18日追加分(情報提供 フライシュマン ヒラード ジャパン)
下の【2004.1.28】のリウマチeネットへの掲載の件も、合わせてご覧くださいね。
日付 | 媒体 | 発行部数 | インターネットで読める記事 |
12/4 | 日経MedWave | Online | 関節リウマチ患者の「心の健康」に男女差、重症度に加え「社会とのつながり」とも関連 |
RisFax (医薬経済) | Online | ||
月刊ミクス | Online | ||
12/7 | 山口新聞 | 83,766部 | |
岩手日報 | 459,959部 | ||
12/8 | 薬事日報 | 53,000部 | |
河北新報 | 504,374部 | ||
デーリー東北 | 105,534部 | ||
12/9 | 日経産業新聞 | 200,984部 | |
12/10 | 北海道新聞 | 1,228,096部 | |
埼玉新聞 | 162,071部 | ||
秋田魁新報★ | 262,152部 | ||
熊本日日新聞★ | 488,169部 | ||
12/11 | 高知新聞★ | 233,047部 | |
沖縄タイムス★ | 204,449部 | [メディカルニュース]/分かってもらえぬつらさ | |
12/12 | 中日新聞 | 2,698,383部 | |
北陸中日新聞★ | 123,000部 | ||
日刊県民福井★ | 60,348部 | ||
12/13 | 四国新聞 | 208,745部 | |
12/17 | 朝日新聞 | 4,479,619部 | |
化学工業日報 | 130,000部 | ||
12/18 | 新潟日報★ | 566,074部 | |
12/19 | 薬事ニュース★ | 不明 | |
12/20 | 琉球新報★ | 208,197部 | |
12/22 | 山梨日日新聞★ | 208,389部 | |
12/23 | 京都新聞★ | 505,269部 | |
12/29 | 岐阜新聞★ | 172,000部 | |
12/30 | 上毛新聞★ | 296,023部 | |
1/1 | Medical Nutrition★ | 31,000部 | |
1/25 | Medicament News★ | 41,500部 | |
1/26 | 南日本新聞★ | 402,162部 | |
1/30 | 宮崎日日新聞★ | 238,389部 | |
2/4 | 神戸新聞★ | 540,592部 |
【2004.3.26】特定患部に的を絞った薬物送達システムの開発にメド
テルモが特定の患部に的を絞って薬物を効果的に送達する新技術の開発にメドをつけたそうです。新技術は薬物送達システムDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の一種で、薬剤を直径百ナノ(ナノは十億分の一)の微小なカプセルに包み、異常な細胞にだけ入り込んで薬を放出するというしくみです。ネズミを使った実験ではリウマチ薬の効果を十倍近くに高められることを確かめたそうです。製薬会社と組んで一、二年以内に臨床試験を始める予定とのことで、DDSナノ粒子が実用に近づいてきているようですね。
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【2004.3.25】リウマチ薬「アラバ」服用の死者12人に
アベンティス ファーマの抗リウマチ薬のアラバ(一般名:レフルノミド)を服用し、重い肺炎で死亡した患者が12人に増加していることが厚生労働省の調べでわかりました。同社は1月の時点で、胸部のX線撮影やコンピューター断層撮影(CT)をしたうえ、症状がない人にのみ投与するよう医師に注意喚起していましたが、それ以後にも亡くなられた方が増えてしまいました。
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以下は1月に書いたことの繰り返しです。 服用中の方は充分に注意してください。
間質性肺炎・肺線維症にかかっている人や過去にかかったことのある人は、服用を開始する前に必ず医師に伝えるようにしてください。 服用中に発熱、せき、息切れなどの呼吸器の症状が現れた場合、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
アラバ錠 by アベンティス ファーマ
抗リウマチ剤「アラバ錠」緊急対応について(プレレスリリース 2004/1/27) by アベンティス ファーマ
【2004.3.22】線維筋痛症:患者数推計16万人以上 日本リウマチ財団初調査
線維筋痛症に関する初の実態調査を日本リウマチ財団が実施し、22日に東京都内で開かれた線維筋痛症国際公開シンポジウムで概要を発表しました。 この病気は関節リウマチと症状が似ているためリウマチ医の診察を受ける患者が多いそうです。
線維筋痛症も原因不明の病気で、全国の患者数は推計16万人以上だそうです。 関節リウマチと似た症状もあることから、関節リウマチと誤診されている場合も多いそうですが、自覚症状があっても検査では何も見つからず、関節の破壊も起こりません。 かつては心因性リウマチと呼ばれ、社会や周囲の人のみならず医師からも理解されにくく、苦しい闘病をされています。
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【2004.2.19】血液浄化しリウマチ治療、旭化成ファーマが装置販売
旭化成の医薬・医療事業会社である旭化成ファーマが、子会社の旭メディカルが発売している国内初のリウマチ治療機器の血液浄化器「セルソーバ」の販売を4月から始めるそうです。
これはすでに潰瘍性大腸炎で承認を得て発売されていた白血球除去療法(LCAP)の機器で、極細繊維の不織布でできた特殊なフィルターを使って、血液から活性化した白血球や血小板を選択的に除去できるだけを取り除いて戻す仕組みです。 このたび、新たにリウマチを適用領域とする承認を厚生労働省から取得したそうです。
『UC-WAVE』潰瘍性大腸炎とLCAP法
白血球除去療法(LCAP)とは by 旭メディカル
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【2004.2.17】エーザイ、国内で関節リウマチ薬の最終臨床試験へ
エーザイは、アボット・ジャパンと共同開発している関節リウマチ治療薬で事実上の国内最終臨床試験に入りました。 欧米での治験データを利用することで多数の患者に投与するフェーズVを省いて2005年内に厚労省に承認申請する計画だそうです。
ニュースソースには薬剤名がありませんが、この関節リウマチ治療薬とは、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)のことだと思われます。 米国では2002年に承認されて2003年1月に発売されています。
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【2004.2.15】リウマチで骨破壊、仕組み解明 治療法開発へ期待
国立相模原病院臨床研究センターや塩野義製薬医科学研究所を中心とする厚生労働省の研究班が、関節リウマチの骨破壊の仕組みを解明し、4月に岡山市で開かれる国際リウマチシンポジウムで発表される予定です。
未分化細胞がいくつも集まって変化して破骨細胞(骨を壊す巨大細胞)となること、その時に関わるナース細胞が異常に活性化していることなどが判明し、変化するときに細胞内に現れる遺伝子を取り出すことにも成功したそうです。 研究班を立ち上げた相模原病院の越智隆弘院長は「リウマチの重症患者は骨折で寝たきりになることもある。 今回の成果を、破骨細胞への変化を止める薬や遺伝子治療などの開発に役立てたい」と話しているそうです。
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【2004.1.28】だったのですが、お知らせが遅れてしまいました。(2004.2.26)
関節リウマチ患者と社会の関わり”に関する調査報告(抜粋)
8月にみなさんにご回答いただいた「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわりに関する調査」の報告から、抜粋されたものがリウマチeネットに掲載されました。
【2004.1.27】「アラバ錠」で副作用? 製薬会社が注意喚起
1月27日、アベンティスファーマが会見をし、抗リウマチ薬のアラバ(一般名:レフルノミド)を処方された患者5人が、副作用と見られる間質性肺炎の症状を起こし、死亡していたことを明らかにしました。 ほかに肺線維症にかかったり、症状が悪化したりしている患者もいることから、同社ではこれらの病気の患者や、過去にこれらの病気にかかったことのある人について、投与を中止するよう医療関係者に呼びかけています。
間質性肺炎・肺線維症にかかっている人や過去にかかったことのある人は、服用を開始する前に必ず医師に伝えるようにしてください。 服用中に発熱、せき、息切れなどの呼吸器の症状が現れた場合、何かおかしいと感じた場合は次の通院日を待たずにすぐに医師連絡して受診してください。
アラバ錠 by アベンティスファーマ
抗リウマチ剤「アラバ錠」緊急対応について(プレレスリリース 2004/1/27) byアベンティス ファーマ
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アラバに限らず、薬であれば副作用のないものは1つもありません。 日ごろから医師との話し合いを欠かさず、自らも薬についての正しい知識を得るようにしましょう。 とてもショックなニュースですが、隠ぺいなどが行われなかったことを評価したいと思います。 最後になりましたが、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
【2003.12.1】全席優先席
12月1日から、横浜市営地下鉄はすべての座席が優先席となりました。 そして、見た目だけではわからない人に関して「内部障害を持った人もいます」とのステッカーを貼るなどの工夫もされています。
なお、他では大阪の私鉄の阪急電鉄が1999年の4月から全席を優先座席としています。→2007年10月29日より優先座席が復活されました。
優先座席についてはいろいろな考え方がありますが、だれでもが必要としている時には座れる座席があるようになるといいですね。
【2003.12.5】米La Jolla Pharmaceutical社、低分子SSAO阻害剤が自己免疫病に有効
12月5日の日経バイオテク・オンラインにアメリカのLa Jolla Pharmaceutical社(ラホヤ・ファーマスーティカル)が、12月2日、自己免疫疾患と急性および慢性の炎症性疾患の治療に有用な、経口可能な低分子薬を発見したと発表しました。 前臨床試験では、多発性硬化症、関節リウマチ、急性炎症の動物モデルにおける有用性が示されたそうです。
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【2003.11.27】リウマチの原因遺伝子か 京大、マウスでZAP70の変異を確認
11月27日の毎日新聞・京都新聞・岐阜新聞・河北新聞・岩手日報・福島新聞など多数紙に京都大学の再生医科学研究所の生体機能調節学分野の坂口志文教授らがマウスを使った研究で、T細胞の遺伝子のZAP70(Zeta-chain-associated protein kinase 70)に変異があることを突き止めた、というニュースが掲載されました。 この論文は27日付の「ネイチャー」で発表されました。
ネイチャーでは「関節炎原因解明の手がかり」というタイトルですが、報道のセンセーショナルな見出しによって、関節リウマチの原因が遺伝のみであるという誤解が広がらないように願いたいです。 坂口教授も「リウマチは単一の原因で発症するものではないが、ZAP70の異常は原因の一つの可能性が強い。私たちがつくったリウマチ発症のモデルマウスを解析することで、さらに理解が進むのではないか」と話しています。
ネイチャーの記事は、ユーザ登録(無料)すると読めるようになっています。
なお、T細胞はリンパ球の1種。 くわしくはRA CITYの用語集でどうぞ。
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【2003.11.25】リウマチの原因物質「シノビオリン」を発見…聖マリアンナ医大
11月25日の読売新聞に聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センターのゲノム医科学研究部門の中島利博助教授が、滑膜の増殖時にシノビオリン(=Synoviolin)という酵素が活発に働いていることを発見した、というニュースが掲載されました。 この酵素はサイトカインなどと同様に関節リウマチの原因物質の1つという位置付けと考えてよいと思います。 発見自体は2000年の12月上旬で、2001年の12月にはともに開発に取り組んでいる創薬ベンチャーのロコモジェンが、製薬大手のエーザイと3年間の共同研究開発契約を結んでいました。 これは特許実施権をエーザイに提供し、エーザイは創薬研究に役立てるというものです。
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【2003.11.13】世界初、ミサイルドラッグ用DDSナノ粒子の作製に成功
産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門と大阪大学医学部眼科学教室が10月13日、アクティブターゲッティングDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)ナノ粒子の作製に成功したそうです。 これは、患部に能動的に取り込まれる極小のカプセルで、炎症の起こっている部分のみへの薬を届けるために使えるもので、新しい薬そのものではありませんが、この技術を応用した薬の開発につながるものです。 脳炎症性疾患全般や、続発的に炎症を引き起こす疾患の治療に使えるということですが、関節リウマチも「続発的に炎症を引き起こす疾患」に入っています。
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NTT DoCoMoのハーティ割引を皮切りに、携帯電話各社が続々と割引開始!
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかの交付を受けている方が対象の場合が多いです。
詳しくは携帯電話の割引等をご覧になり、他の割引とも比較検討してお選びください。
大まかな情報はこんな感じ↓ (リンクはなるべく新しく変更しています)
会社名 | 割引の名称 | サービス開始日 |
NTT DoCoMo | ハーティ割引(旧:ふれあい割引) | 2003年9月1日 |
SoftBank | ハートフレンド割引[基本プラン(音声)]、ハートフレンド割引(通話基本プラン)、ハートフレンド割引(スマ放題/スマ放題ライト)、ハートフレンド割引(ホワイトプラン)、ハートフレンド割引(ブループラン)、ハートフレンド割引(オレンジプラン) | 2003年10月1日 |
au | スマイルハート割引 | 2003年11月1日 |
■ニュースの情報をお知らせいただくなどで、今までにご協力いただいた方々(五十音順)
海さん、けんけんさん、こたつむりさん、T・Sさん、へろはるさん、ぽぽんたさん
どうもありがとうございました。
みなさん、これってニュースかも!と思われることを発見されましたら、ぜひRA CITYまでお知らせください。(できるだけネットでソースの見られるものをお願いします)
ニュースを扱っているページを作っているよというサイトオーナーの方、ぜひお互いにリンクさせてください。
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